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私が愛した「私が愛したウルトラセブン」

 「私が愛したウルトラセブン」は、1993年2月に2回に分けて放送されたテレビドラマである。脚本は市川森一氏。放送はNHKであり、その後も何度か再放送されている。このような特撮作品の裏側を描くドラマは少なく、他にTBSで放送された「ウルトラマンを作った男たち」というドラマや、同じTBSの2時間ドラマ枠で放送された、武田鉄矢氏主演でドラマ化されたものぐらいしか思いつかない。現在でもやや手つかずのジャンルではある。この手合いのドラマは史実にフィクションを織り交ぜて描かれることが多いが、それはドラマとしての構成上必要な措置である。個々のエピソードの虚実については、周辺書籍を探せばいくらでも確認できるから、興味があるかたはそちらを参照して欲しい。

 ドラマは脚本家による交通事故で、アンヌ役の女優が降板。代役を立てることになった円谷プロの演出陣が、田村英里子演ずる「ひし美ゆりこ」を探し出してアンヌが誕生する前編。そしてウルトラセブンが哀しい最終回を迎えるころに発生した、アメリカ兵の逃亡騒ぎに荷担するアンヌの物語であり、スタッフがアンヌという虚構の女性にのめり込んでいきながらも、ひし美ゆりこ自身がアンヌと決別する物語を描いた後編の2部構成となっている。

 繰り返すが、あくまでドラマである。だから虚実入り乱れた内容であることは認識している。だが新たにアンヌとして誕生したひし美ゆりこという女性が、克明にアンヌと一体化していき、徐々に円谷の監督や脚本家が彼女に夢中になるくだりは、まるで恋という名の流行病の狂騒を感じる。同時にスタッフの中心人物である「金城哲夫(演:佐野史郎氏)」が、ウルトラマンの景気に乗っかって、調子の良い口調で立ち回りながらも、暗い心を抱え込みながら鬱々としている様が描かれている。前編で新人脚本家の石川(もちろん市川森一のこと)と上原正三(演:仲村トオル氏)の脚本コンペのシーンでは、未映像化の「300年間の復讐」と「盗まれたウルトラアイ」が交互に映像化されるシーンは、錯誤感を感じさせるシーンに仕上がっており、まるで見ている自分が本当にセブンの舞台裏を覗いているような気分にさせてくれる。

 時代は昭和42、43年ごろだ。世間は安保闘争やら大学闘争やらがあったころだ。そのころ私はまだ生まれていないが、最近になってこの頃の写真やら手記を集めたような書籍が本屋に並んでいるのを見た。そのとき抱いたのは、そのころの日本人は、「狂騒」という名のもとに、民族的なボルテージが最高潮に達していた最後の時期だったのではないかと疑った。高度経済成長期のまっただ中で、新たな技術は確実に自分たちの生活を豊かにしてくれることを信じて邁進できた日々である。そうした中で金城が感じた異民族感は、いったい何だったのだろうか。自分の正義を信じられなくなったアメリカ兵をかくまうアンヌにとっては、人間である以上の理由なんかいらなかった。それがそのまま作品の落としどころになる。

 セブンの最終回の執筆が進まないと嘆く金城に、ドロップの差し入れをもっていくアンヌ。二人は自然と最終回のプロットに触れることになる。セブンと怪獣の戦いを見ていて、セブンの力の行使が正義に見えなくなっている金城。状況を認識できないアンヌには、物語と現実の区別がつきかねている。だがその錯誤感は二人とも感じていることだ。アンヌはダンと結ばれることを主張するが、金城はセブンはそこにとどまれないことを諭す。実のところ二人が根ざすところが異なるから、会話をしていてもどこかかみ合わないシーンだ。

 そして金城が出した答えは、最終話「史上最大の侵略 後編」に描かれている。最後のシルエットのみの美しいダンとアンヌの別れのシーンで、アンヌは「地球人だろうが宇宙人だろうが、ダンはダンじゃないの」と語る。それはアンヌとしてダンをありのままに受け入れる覚悟だ。だがダンはアンヌを諭すでもなく、一方的に別れを告げている。アンヌに受け入れられながら、ダンは受け入れてもセブンとしての自分はどうかと問うているのだ。それは金城自身が日本人でありながら沖縄人であるという、アイデンティティに関わる問題だと主張する。だがアンヌには伝わらない。先のシーンのかみあわなさが、もろに台詞として成立してしまっているように見えるのだ。

 ただのアルバイトでぬいぐるみに入っていた体育大学の少女は、アンヌになり世間を知り、酒を覚え、いつのまにか女性になっていた。その日常はアンヌというフィルターで見た世間であったが、ラストシーンで白いポロシャツで走り去っていく彼女は、アンヌとの離別により人間として成長した。この物語はそういう物語ではある。だがその背後では、日本と沖縄によって苦しめられたアイデンティティを持てあましてしまった金城哲夫という男の物語でもある。時代背景を考えると、よりそちらに重みを感じてしまう。

 多分、できあがったセブン本編だけでは感じられなかった話だと思う。周辺書籍などで金城という人間性の一端に触れることが可能な現在だからできたドラマだ。市川氏の脚本が光るドラマではあるが、同時に日本人のもつ独特の熱と冷たさの根源が垣間見えるドラマである気がする。忘れがたい作品である。


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(2002/10/23)
田村英里子松村雄基

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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
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