ウルトラマンネクサス~その2・生きようとする命の輝き~

 前回ネクサスの姫矢編を題材にとって、ウルトラマンの本質である「光」について考えてみた。そして姫矢がその役割を終え、静かに退場する代わりに、青い色をしたウルトラマンが登場する。姫矢が行方不明となり、孤門ですらウルトラマンとなれなかった世界に、新しいウルトラマンが登場したのだ。その受容体として選ばれたのは、千樹憐(せんじゅ れん)という青年だった・・・・というところからシリーズ後半となる、憐編がスタートする。

 この憐編は、前半の陰鬱な雰囲気はなりをひそめる。たとえば憐自身は遊園地に住み込みで働いたり、憐のけなげさやひたむきさ、人なつっこさや憐と野々宮瑞生(ののみやみずお)という女性との淡い恋が前面にでてくることで、かなり前半の暗い雰囲気を払拭しているように仕上げられている。それはそもそものプロットだったのか、前半の反省を込めていたのか、どちらとも判別しがたい。とは言いながら、姫矢編と同じような重々しいドラマが控えていることがわかるのは、わりと早い段階でだ。

 憐のウルトラマンとしての戦い方は、時として無茶にうつる。それは憐の人間性に起因する動きだった。憐はアメリカ出身であるが、その実態は優秀な遺伝子の優秀な部分を組み合わせて誕生したハイブリッド生命体「プロメテの子」である。言うなれば遺伝子技術が生んだ擬似生命体だ。憐には寿命を決定する遺伝子に欠陥を抱えており、そのため16、17歳で命尽きることを宿命づけられた青年だったのだ。だから彼は自分の命を軽視する。そしてその命を燃やし尽くして(憐の指輪に書かれている文字の意味は「炎」)、誰かのために生きることを決意した青年であり、その想いがウルトラマンに光を見せたのだと思われる。一見「自己犠牲」という、人間が持つ感情の中ではかなり尊い感情を有しているように見えるが、その裏側には自分の命を軽んじるという感情があり、姫矢とほぼ同一地平に立つ若者なのである。だがウルトラマンに光を見せているのは、この自己犠牲なのである。ということはウルトラマンという生命体は、光であればその理由を問わないのであろうか? 光の質については問わないのではないだろうか? 物語は憐が生きる世界を、よりダーティに描くことで、この件を不問にしている。

 1つはビーストの存在である。ビーストは人間の恐怖やその記憶を食べる生き物として設定されている。事実、この「ウルトラマンネクサス」の前日譚となる劇場用映画「ULTRAMAN」は、地球上に初めてビーストが登場し、さらにそれを追うかのように飛来し、人間と同化したウルトラマンが戦う物語であるが、その時にこの事件を目撃した人間の記憶は、故意に改ざんされている世界なのだ。その方法については物語の奥の設定になるので、触れないでおくが、これを起点としてビースト事件に係わる人間の記憶を消して回るMP(メモリーポリス)が存在する。このMPは、まるで映画「メン・イン・ブラック」を想起させるが、実態は有無を言わせぬ記憶の消去が仕事であるため、かなり気持ちのいい存在ではないのだが、実態はビーストを引きつける人間の闇の部分を取り除くための措置であることが判明する。そしてその一員である瑞生が、憐の心の記憶に残ろうとしたことは、実にドラマティックだと思える。

 そしてもう一つの事情は、ナイトレイダーの上部組織である「TILT」が、ウルトラマンの力を手に入れようと画策したことだ。かつて「ウルトラマンダイナ」の最終章や、「ウルトラマンティガ」のイーヴィルティガの物語でもそうだったように、人類はウルトラマンの力を手に入れようとした。いずれの物語でも、人工的に作られたり、模造されたウルトラマンは必ず「光」の属性を失い、人類に敵対する。それはウルトラマンの力があたかも人類にはコントロール不可能であることを言わんとしているのだが、「ウルトラマンネクサス」の物語でも、似たような物語が展開してしまう。しかし今回はその事態に、人間自身が造反する。なんとナイトレイダーが上層部の命令を無視し、研究対象として運ばれてきた憐を逃亡させるのだ。ウルトラマンの力を欲する人間側が、光の属性を失いながら、パンドラの箱の中に見つかった光のように、ナイトレイダーが人間としての「光」を取り戻すのだ。

 結局、助け出された憐は、最後の力を振り絞り、ビーストとの戦いに身を投じる。その命は尽きかけていたのだが、特効薬「ラファエル」の完成で、憐はあらためて生を得ることになる。ウルトラマンの立場だけを追ってみると、憐という光を見つけ、その自己犠牲の精神に同化したのだが、ウルトラマンが守るはずの人間は、闇だけを増大化させてビーストを呼び込み、ウルトラマンと敵対さえしようとした。これは裏切り行為にも似た人間の闇だった。しかし人類の底なしの光を見つけることで、ウルトラマンは戦う力を得て、力尽きようとした憐と分離した、という物語だったのだ。上記2つの人間の闇は、ウルトラマンの存在そのものを消すほどの勢いだったのだ。ウルトラマンが存在を許されるためには、「光」の質についてとやかく言える状況では無かったともいえる。憐の自己犠牲の気持ちは、確かに後ろ向きな気持ちだろうが、そうしたぎりぎりの精神状況での人間の「光」を当てにするしかなかったウルトラマンだともいえる。

 憐は次の受容体として、ナイトレイダー副隊長の凪を指名する。それは死すらいとわない戦いの中で、それを否定して見せ、憐に生きる意味を教えたのが凪だったからだ。だが自分の過去、それも両親をビーストに殺された恨み、尊敬する上官を闇に奪われた悔しさが、凪をしてウルトラマンに変身させようとするのだが、負の感情に支配された凪は、光の受容体になり得ない。闇に包まれた凪自身は結局ウルトラマンになれないまま、身の危険を承知で凪を助けようとした孤門が、つぎのウルトラマンとなる。最終回に倒れ傷ついたウルトラマンは、やはり光の属性である証明をしてみせるように、人間の声援を背景にして最終形態に変わり、ダークザギを倒して、物語は終焉を迎えることになる。このあたりの展開は、「ウルトラマンティガ」の最終回をトレースしたような物語であり、打ち切りによる決着の付け方がありありと見て取れる。最終回に姫矢や憐が登場したのも、クロージングとしては申し分ない出来ではあるけれど、どうしても二番煎じな雰囲気は否めない。

 けれども本作のスタッフが、「ウルトラマン」という存在について、考え直そうとした結果の物語であることは、間違いない。劇場用作品である「ULTRAMAN」をふくめ、「ウルトラNプロジェクト」と題された壮大なプロジェクトは、「ネクサス」のラストをもって幕を閉じた形になるのだが、スタッフたちの想いは果たして完遂したのであろうか? 打ち切り、時間短縮、路線変更と言われた本作であるが、本作でスタッフが挑戦した試みは、結局ウルトラマンの本質を問いただした行為のみであり、自分たちが創出した架空のヒーローであるはずの「ウルトラマン」というキャラクターの存在をつかむことができなかったように思える。「光」の属性であるウルトラマンという片鱗を、つかんだだけで精一杯であり、逆に闇の属性に対して、その力を十全に発揮できず、ウルトラマンや受容体の生命まで奪いかねない存在であることがわかっただけだ。それだけでも良しとすべきなのか。

 これ以降、「ウルトラマンマックス」「ウルトラマンメビウス」を作り出すわけだが、これれらの作品は、かつて「ウルトラマン」が持っていた陽性の部分が拡大解釈され、ウルトラマンの本質については、あまり触れない方向性をとった。それは最善の方策であったことは、その後の劇場用映画やカードバトルゲームの好調などで明らかではある。それは一抹の寂しさをともなった、喜びではあるのだが。

 その一方で、再度光の属性であるウルトラマンの本質を問うかのようなキャラクターが登場する。今年の12月から公開される「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」では、「ベリアル」という名のウルトラマンが登場し、光の国と敵対する。その姿はサメをモチーフとしており、丸めた背中、棍棒のような武器がまがまがしく、好戦的に見える。ウルトラマンでありながら、悪である点が、非常に興味をそそられるキャラクターである。本ブログの最初のほうで、「無限の力を行使し、悪となるウルトラマンの可能性」について、ちらっと触れていたのであるが、ベリアルはまさにそうした存在になり得ているのか、注目している。今ここに、「ウルトラマンネクサス」で問いただそうとした答えが、導かれるかもしれないのだ。ウルトラマン”小泉”にうつつを抜かしている場合ではない。


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