強さのステップアップを画で見せる(その2)~獣拳戦隊ゲキレンジャー~

 前回でストーリーのほぼ前半まできた。ところで話はズレるのだが、ゲキレンジャーはさまざまな遊びが組み込まれていた。目立ったところでは、七拳聖や三拳魔の声優さんであろう。それはある意味で「仮面劇」の真骨頂とも言える。その雰囲気は、同時期に放映されていた「仮面ライダー電王」でも炸裂する。たとえばサメの拳聖である「シャッキー・チェン」は名前の通り、かの「ジャッキー・チェン」が元ネタになっている。その吹き替えは石丸博也さんであったが、それは香港映画のジャッキーの吹き替えと同じ人をあてている。しかも七拳聖の中で一番格下扱いされているあたりが、お調子者のジャッキーを彷彿とさせる。狙っているのが見え見えなのに、まんまと楽しまされてしまう。エレハン・キン・ポーの水島裕さんも同様だ。拳聖はいずれ劣らぬ声優界の大御所さんが当てておられる。32話では七拳聖と三拳魔が勢揃いするのであるが、このシーンのアフレコスタジオは、さぞかしものすごいことになっていただろう。それこそ若手の俳優さんなどには計り知れない雰囲気が漂ったであろう。永井一郎氏、池田秀一氏、柴田勝秀氏、納谷六郎氏など、正直ちびりますな。

 またシャーフーの愛弟子である美希役に、伊藤かずえさんが配役されていたのも興味深い。23話では敵の技にかかってスケバンになってしまったランであったが、伝説のスケバンと言われた美希が、年期の違いを見せつけてランを更正させる話があった。この時の美希は、往年の大映テレビで見せた伊藤かずえを彷彿とさせる。東映が大映をぱくった、伝説のシーンとなっっている。33話では突然江戸時代に飛ばされたゲキレンジャーと理央たちが、「忠臣蔵」を演じてみせるサービス編だ。最近通例化している京都太秦撮影所とのタイアップ企画であるが、なにげに理央と夫婦の設定で暮らしているメレが、えらい可愛かった。また生前のジャンの父・ダン役に、あの「宇宙刑事ギャバン」の大場健二氏が登場する。現在は一線を退かれているとのおとだが、その若々しさには敬服するばかりだ。だがその登場には哀しい物語が隠されているのだ・・・・。

 さて話をもどそう。
 後半に突入すると、ゲキレッドに完敗した理央は、さらなる修行の必要を感じ、ついに最後の拳魔・マクを蘇らせる。だがマクは理央になりかわり実力で臨獣殿を掌握する。ゲキレンジャーはその事態を察知し、ゲキレンジャーの強化をすすめる。まずゲキブルー・レツの兄・ゴウをゲキバイオレットとして参加させる。そこには理央の盟友であった過去、そしてレツとの兄弟の約束などがあったが、それを押しての参戦となる。またすでにその格闘センスから修行に出ていた久津ケンを呼び戻し、「ゲキチョッパー」として参戦させた。3人が5人になったのだ。ゲキチョッパーのメインカラーである白はいいとして、ゲキバイオレットの「紫」にはおどろいた。しかも彼の持つ激気は、他の4人と異なり、紫色の光を放つ「紫激気」を持っていた。このカラーがそのままスーツの色として採用されている。紫色の戦士は戦隊シリーズの中で例がない。それ故に今回のゲキレンジャーのパワーアップは、人数が増えたことと、色のインパクトが重なったことで印象づけられている。またゲキバイオレットが他の4人とは異なる「ムエタイ」の動きを取り入れたアクションとなっており、これもパワーアップを印象づける一助になっている。

 こうした人数の追加により、ロボットも当然変化する。ゲキバイオレットの参戦で、ゲキウルフが登場し、ゲキファイヤーの影に隠れてしまった感のあったゲキトージャは、「ゲキトージャウルフ」としてゲキバイオレットの管理下に置かれる。ゲキチョッパーは、獣拳創始者の魂が宿る「サイダイン」を乗りこなし、人型の「サイダイオー」に変形させて戦う事になる。ここまでなら通年のおもちゃの追加で終わってしまう。だがゲキレンジャーはここからが違う。サイダインに触れることで、ゲキレンジャーたちは自らの力を解放する「獣力開花」をなしとげる。そしてこれまでどうしても倒すことができなかったマクら三拳魔を倒すことに成功する。このとき、地味な演出ながら、獣力開花したゲキレッドは、ゲキチョッパーのサイブレードに、自分のゲキクローを組み合わせた武器を用いてマクを倒したのだ。細かいおもちゃ展開も組み入れての、それは大きな成長の証であり、勝利であったことを示している。

 三拳魔が倒されたことで、事実上臨獣殿はふたたび理央の支配におかれる。だが己が勝つことができなかったマクさえ倒したゲキレッドに、対処する方法が見つからない。そうした理央の心の隙を突くように、一人の男が現れる。その名は「ロン」。ロンは理央に、獣拳を超える「幻獣拳」の存在を示す。そして新たなる臨獣殿による世界支配を目論んでいた。やがて理央もメレも、ロンの手引きで幻獣拳士に転生してパワーアップを果たすことになる。こうした臨獣殿側のパワーアップは眼にも明らかな形で進行する。まず幻獣拳の使い手たちはいずれも「金色」を基調としたデザインがされている。またかつての臨獣伝は理央、あるいは三拳魔といったトップがいるだけで、組織としてはあまりに不完全であったのだが、幻獣拳となってからは、理央を幻獣王とし、ロン、メレ、サンヨ、スウグの4人を四幻将とし、各人に2人の双幻士と呼ばれる拳士を配置することになる。臨獣殿は組織を少人数なれど組織を形成するにいたるのだ。これによりまず格下の双幻士が戦い、後に四幻将の一人を戦うというラインが形成される。誰もがそうした物語展開を想像する。だが物語はこれでは終わらない。理央とジャンには、宿命となる秘密が隠されていたことが判明する。それが二人にとっての最後の試練となる。

 細かい話は見ていただくとして、ざっくり説明させてもらえれば、理央が力に過信したのも、ジャンが生まれ落ちてすぐ中国奥地に捨てられたのも、元はといえばロンの仕業である。このロンは仮の姿で地上に生きながらえながら、長寿に飽いた気晴らしに、この世の崩壊を望んでいるのだった。そのための破壊神をつくるために、理央やジャンを利用したのである。しかも物言わぬ四幻将の一人・スウグは、ジャンの父の魂が込められていた。スウグと戦う事をためらうジャン。そして理央は己がロンに利用されていただけであることに気づき、苦悩し始める、己が求めた強さの本質はなんなのかと。かくして物語は、理央とジャンに最後の「心」の試練を与える。やがて彼らは心の強さを自分のモノとして、ロンの野望を打ち砕くのである。

 終盤の物語では、現実の世界よりも、やや過去の因縁話に重心が置かれ、理央と盟友であったはずのゴウ兄さんが、理央を独自の力で倒そうとしたりするなどの物語運びとなる。こうなると物語は収束を迎えるべく、最後のまとめに入ることになる。これまで映像表現として「強さ」やパワーアップを描いてきた派手な印象はなりをひそめ、戦士たちの心の葛藤と、それに打ち勝つ最後の修行という側面に移行する。まずジャンの葛藤を振り切らせ、強さを手に入れたはずの理央は、ジャンの心の強さに結局負ける。それは同時にロンの企みに乗せられた自分への失望だった。本来その弱さをメレによって隠し通してきた理央は、メレを助けることで自分を取り戻し、ジャンとの共闘によってロンを倒すことに成功する。こうして最終的には物語を背景に、彼らのパワーアップは映像化され、完結を迎えるのだ。

 最終回でロンは復活する。ここで理央もメレも、これまでの悪逆の報いとして死ぬことになるのだが、最終回でのゲキレンジャーの最後のパワーアップは、ぜひその眼で確かめていただきたい。若者たちがまさに命をかけて磨き抜いた心と体と技を、死してなお受け継いでいく力こそを、その眼に焼き付けて欲しい。それはこれまでの修行の成果が形となって現れた瞬間である。

 こうしてゲキレンジャーの物語は幕を閉じる。後に残ったのはおもちゃの山という人々もいるのかも知れないが、こうした演出と物語と、商品展開がはっきりと「修行」や「成長」として1つにつながった作品も珍しい。それはボール1つに苦闘と苦悩を重ねた「巨人の星」の星飛雄馬の努力につながる。一時期はたしかに敬遠されてきた「スポ根」ものである。だが武器1つで事態が好展開する物語は、つい信じられなくなってしまうのも事実だ。そうした安易なドラマに作らず、それがきちんと連動して、視聴者側の感動につながるように作られたドラマなら、なにか信じてみようという気にさせるではないか。「獣拳戦隊ゲキレンジャー」は視聴率もおもちゃの売り上げも、確かに苦戦した作品ではある。コンスタントに作り続けられているからこその苦労が忍ばれる。だがそのための試行錯誤や努力を惜しまない、そのプロ根性こそ、こうした演出や見せ方に現れているとはいえまいか。やはり私は戦隊シリーズが好きなのだ。


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