「科学者」たちの肖像~「ファイヤーマン」「怪奇大作戦」~

 サブカル作品群における「科学者」の姿とは、どのようなイメージだろうか? 頑健な備えをもつ研究所におり、なぜか研究用のロボットを所有する、一見では何を研究しているかわからない人だろうか。それとも戦争を憎みながら、怪獣を倒すために、トンデモな発明をしちゃう人だろうか。はたまた強力な敵に負けた味方のために、新しい兵器を作る人だろうか。

 我々が子供のころに見た「科学」とは、まさに「夢」を与えてくれるものであった。1985年頃に筑波で行われた科学博などは、まさにそれを具現化した物であり、さまざまな映像技術や展示物を見て、我々は心躍らせた。そしてそんな素晴らしい「科学」は私たちを幸せに導いてくれるものだと信じていたから、漠然と「科学者」にあこがれた。この世の中のすべての現象を、「科学」の手法でアプローチして解明する。それが「科学者」のあるべき姿だと思っていた。私は地質学を志して大学に進む。そして「科学者」の一端に繋がれた。まあ結局はいろいろうまくいかなくて諦めたのであるが。だがこのときの恩師に、「科学」というものの考え方に触れる事ができたのは幸いである。恩師のたまわく、科学とは「自然現象を再現できる法則性を導き出す」こと、そしてそのために「圧倒的な量のデータに裏打ちされた仮説を組み立てる」ことであると。それが一般に言う「科学」というものと同一であるかどうかはわからないが、少なくても自分の中の研究に対する指針のようなものとなった。以後、大学院を出て建設コンサルタント会社で地質調査関連の仕事をしていたときにおいても、この考え方はかわらなかった。

 だがこれは、サブカル世界の「科学者」とは異なるスタンスのものである。私が志した「地質学」のせいなのかどうかわからないが、私は自分と縁のないジャンルの研究をした覚えはないし、自分が導き出した法則性で、敵の攻撃を防いだこともない(だいたい敵って何よ?)。だからサブカル世界の科学者たちを、かなり奇異な眼で見ていた。だがこうした作品の中にも、かなり現実に即した科学者の姿を見せる作品もあるのだ。それが今回紹介する「ファイヤーマン」と「怪奇大作戦」である。

 まず「ファイヤーマン」からご紹介しよう。
 本作は円谷プロ10周年記念作品として、「ウルトラマンタロウ」「ジャンボーグA」とともに製作された作品である。「タロウ」では「超獣を超える怪獣」の存在があり、「ジャンボーグA」では地球を侵略する宇宙人と、それが繰り出す怪獣というものが存在した。そのためこれらの作品と異なるスタンスを求めた結果、「ファイヤーマン」ではシンプルに「怪獣化された太古の恐竜」と設定された。その証拠に前半に出現する怪獣の多くは、恐竜のような凹凸の少ないフォルムをしており、前述の作品と差別化された。こうした怪獣たちが、地上や海洋において奇怪な現象を起こす。その現象を重く見た「SAF」の面々が奇怪な現象の真実に直面するところが、本作のドラマの骨子となる。ところが人間の科学では対抗できないとなるや、SAFの隊員である岬大介(演 誠直也)がファイヤーマンに変身して怪獣と戦うとうのが、「ファイヤーマン」の基本スタンスだ。なお岬の正体は、「ミサキー」という名の地底人であり、地底人の長老から変身アイテム「ファイヤースティック」を授かり、地上防衛の任務を得た若者である。

 ここで注目すべきは「SAF」の存在である。4人の男性と1人の女性の計5人で構成される特殊チームは、あきらかに「ウルトラマン」の「科学特捜隊」の流れを汲むチームであるが、面白いのはチーム構成員の男性4人はすべて科学者で構成されていることだ。隊長の海野(演 睦五郎)は海洋学と生物学の博士号を持ち、SAFの母体となった海洋開発センターの所長である。彼の剛直でいながら懐の広い人柄が、隊員たちをまとめていく。副隊長を務める水島(演 岸田森)は宇宙工学を専攻し、特殊ロケット燃料の開発に従事していた人だ。彼はSAFの航空戦力を開発することになる。その飄々としていながら、時にユーモラスに、時に真摯な科学者の顔をのぞかせて、事件を解決に導くキーパーソンである。千葉(演 平泉征)はSAFの初期装備である潜水艦シーマリン号の設計をおこなった工学博士である。どちらかというと科学者と言うよりも潜水艦乗りの趣が強く、戦場を空に移してからも、率先して戦場を切り開くような猪突さを見せる若者だ。これに地質学者の岬を加えた4人がメインキャラクターとなる。

 彼らにとって「科学」とは、奇怪な事件の真実を暴くための道具である。そのために現地におもむき、奇怪な現象を調査し、現象の正体を暴き、対処するという論法が用いられることが多い。その科学的な調査は、かなり現実に即したイメージで行われている。例えば湖の水が怪獣化するような物語の場合、まず現地で水温を計測し、その後水を採取して室内に持ち帰るという、実に当たり前の作業を行う。また事件解決後にも再度採水をし、異常がないかを確認する作業まで見せる。こうした真摯な態度で事態に接する彼らの姿を見ていると、たとえ奇異な事態に遭遇しても、真実を暴くための手法は、常日頃の研究と、常識的な対応でしかないことが知れる。「ファイヤーマン」という物語の根底にあるのは、現実の地平の延長線上にある「科学」であることがうれしい。だからこそ低い視聴率のために、後半テコ入れされ、派手な空中戦が主体となる怪獣とのバトルは残念だし、不可思議な事態の原因を宇宙人の仕業だとなってしまう物語が残念でならない。しかもそうしたところで視聴率は持ち直さなかったとなれば、いっそう哀しい事実である。

 さてもう一つの作品「怪奇大作戦」は、ある意味で言わずもがなの名作である。簡単に骨子だけ説明しておくと、SRIという半民半官の組織が、警察が手に負えない不可思議犯罪の真実に迫るという物語である。SRIは「科学捜査研究所」の略称であるが、所長の的矢(演 原保美)は警視庁の鑑識課出身でるが、中心人物となる牧(演 岸田森)の出自がはっきりしない。キャラクター設定上は科学犯罪で肉親を亡くしており、強度の科学信望者。そのため犯罪を強く憎みながら、トリックの解明のために時に冷酷なほどの対応を見せる人物とされている。それでも後半にしたがって徐々にユーモラスな面を見せていくのだが。これに防衛大出身の肉体派・三沢(演 勝呂誉)や助手の野村(演 松山省二)がメインメンバーとなり、町田警部(演 小林昭二)の持ち込んでくる不可解犯罪の謎をといていくのである。

 ここで注目したいのは牧である。ほとんどの物語のトリックは彼の手により解明される。時にSRIの一室に白衣を着てこもり、毒や死因となった薬物の研究に没頭し、時に犯罪抑止のための兵器を開発したりと大活躍をする。その一方で死因を特定するために、被害者の女性を音響室に監禁状態にし、死因となった音波を特定する状況などは、かなり冷酷に描かれている。そのくせ情にもろく、京都での仏像失踪事件の際には、犯人を特定しながら追い詰めることができないほどの繊細さを見せることもある。その活躍がオールマイティであるだけに、サブカル的な「科学者」のイメージを持っているのだが、ふしぎとマッドさを感じさせない人柄を見せるのだ。ただどのような犯罪やトリックであっても、恐れず現場に足を運び、納得のいくまでデータをとろうとする態度、確証が持てるまで粘る姿勢は、やはり現実に即した「科学者」のありようだと思えるのだ。

 2作品共にキーパーソンとして科学者を演じているのが「岸田 森」氏であることが面白い。彼は「帰ってきたウルトラマン」では自動車のエンジニアであり、兄弟のよき兄であったし、「太陽戦隊サンバルカン」でも科学者でありながら太陽戦隊の長官と、スナックのマスターという2面性を垣間見せる。ユーモラスな演技なら「探偵物語」でも見られるし、より重要なことは日本で唯一のドラキュラ役者であったことだ。亡くなって久しいが、まずもって名優であったことは間違いがない。同人誌などでは研究本もあるので、気になる方はご覧になってはいかがだろうか。

 「科学者」として現象に対して真摯に望む態度、そしてデータをとり、それを検証することに情熱を傾ける。空想科学世界の住人が、いろいろすっ飛ばしてしまいそうな手順を、律儀に守っている彼らサブカル世界の科学者たちに、まずはエールを送りたい。そうした科学的なアプローチが、常に一定の真実を暴き出し、事件解明の糸口をつかんでくれていることは、異論がないだろう。こうしたリアルな科学者の肖像は、アメリカ産の刑事ドラマなどを経て、日本のドラマでも再現される。鑑識課を舞台にした作品は2時間ドラマでも一般的になっているし、東映制作の「科捜研の女」などは、沢口靖子扮する主人公が、現場検証から指紋、現場に残されたさまざまな証拠から、事実を暴き出す物語だ。実に「怪奇大作戦」を突き詰めたような物語である。だが犯罪そのものは不可思議でも何でもない。それでもこれらの作品群に共通して言えるのは、科学は事象を暴くことができるが、それを引き起こす人間側の事象には立ち入れないということだ。「ファイヤーマン」が現象の事実を、宇宙人の仕業としていることに似ている気もする。どれだけ科学が発達しても、犯罪を引き起こす人間の心の闇こそが犯罪を引き起こすなら、科学自体にはどれだけの効力があるのかと、少しむなしさを感じる。そのむなしさこそが、こうしたドラマのオチになるのだ。何か科学博で感じた未来への希望など、すでにないのかも知れない。「科学」への期待は、ただの妄想でしかないのだろうか?


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