食べ物マンガを2つほど

 普段からマンガはよく読むほうだが、最近はアニメ原作ばかりに偏りすぎて、自分の力で面白いマンガを開拓する楽しみを忘れている気がする。本屋に行ってずらりと並んだマンガを見ても、何を買っていいのかよくわからない時がある。そんな私でもときおり気に入ったマンガに出会うときがある。今回はそんなマンガをご紹介したい。

「深夜食堂」(既刊4巻)
 ビッグコミックオリジナルで連載されているマンガで、作者は安倍夜郎氏。「深夜食堂」という名の飯屋を舞台に、寡黙でわけありそうなマスターとこの店に通うお客との交流を描いた物語である。この食堂、メニューに載っかっているのは豚汁定食とビール、焼酎、お酒のみ。あとはマスターのできるものならなんでも作ってくれるというお店だ。ここに足繁く通ってくる常連は多く、それも一癖も二癖もある連中ばかりだ。だがやくざ風のこわもてが、タコを象った赤いウインナーを好んでみたり、卵焼きだけで酒をのむ人、フライ物に醤油かソースをかけるかで論争を始める奴など、おもしろい奴らばかりである。そんな中で思い出をたぐり寄せながら東京の片隅で必至にがんばっている人や、故郷を思い出しながら歯を食いしばって働いている人、実にささいなメニューに哀しい思い出を募らせる人々などが、ぞくぞくとこの店に足を運ぶのだ。しかもどの回で取り上げられているメニューも、いっさい華美なところがない、質素なメニューだ。だから読んでいる内にどうしても食べたくなるし、物語に登場するキャラクターの追体験をしたくなる。しかもお手頃のメニューばかりなので、その気になればいつでもどこでも。これがやばい。ちくわにきゅうりをつっこんだやつなんて、コンビニにいけばいつだって手に入る食材だ。その気になれば夜中に固ゆでのゆで卵だって食える。でもそんなメニューにも、誰かの思い出があったり、何かのエピソードが見え隠れする。ちょっとくすぐったくって、少し腹が減る。渋面のマスターは、いつも都会の片隅で待っていてくれる。そんな心のオアシス的なマンガだ。

 いつか番組間の5分番組とかでドラマ化したら面白いだろうなと思っていたら、なんと今月からTBS系列にて深夜にドラマ化されることになっている。マスター役は小林薫さんだそうだ。面白いだろうな。原作に登場する店の常連で、まゆみちゃんという常にダイエットに失敗し続ける太めの女性がいるのだが、誰がやるのだろう? もはやメニューではなく、配役に興味が出てくる始末だ。現在も連載中。

「そばもん」(既刊2巻)
 そばは日本のソウルフードである。そのわりによく知らない。私もそばは好きで、会社に勤務していたときは、会社近くのそば屋に足繁く通ったし、自宅近くのそば屋に、月に1度そばおかわり自由な日があって、一度出かけていったが、せいろで5枚が限度であったとか、そばのエピソードもある。だがやっぱりそばのこと、よく知らない。

 「そばもん」は、現在ビックコミック連載中のマンガである。作者は山本おさむ氏。名人とうたわれた人物のもとで修行した、名人の孫に当たる青年・矢代稜が、おいしいそばとの出会いを求めて物語を展開するマンガである。このマンガ、よくある食べ物マンガと同様に、うんちくも十分だし、ドラマ性もある。そこは「美味しんぼ」を成功させた小学館が発行元であるだけに、画力も構成も十分の、読んでいるだけでそばが食べたくなるマンガである。その中に含まれる豊富なうんちくには、やはり頭がさがる。そして現状でのそばの世界における問題点も明らかにし、そこに一石を投じようとする真摯な姿勢がある。だが少しも押しつけがましくない。かつてあった食べ物マンガには、すくなからず食べ物に関する知識も野心もあるから、どうしても押しつけがまし主張が展開されることもしばしばだ。だがことは「そば」である。日常にありふれていながら、本当においしいそばとは何かと、的確に応えられる人は少ないだろう。主人公の矢代稜という青年は、その舌で、味覚で、指先で、嗅覚で、それこそすべての五感をもってそばに相対する。だがその主張は決して押しつけがましい物ではない。もっといえば「そば」というものに、振り回されていることもあるだろう。うまいまずいは知識ではなく、経験である。自分の舌で確認しない味を表現出来はしないだろう。経験と味覚、その回数を重ねただけの重みがある。この「そばもん」の根底にあるのはそうした経験の上での表現であり、うんちくなのだろう。でも心配する事なかれ。この「そばもん」はそうした重さから解放されている。なんのかんのうんちくを振り回しているのだが、結局は「食べた」もん勝ちであることを、きちんと語っている。食べておいしいそばがおいしくて、まずい物はまずいのだと。だがだれもその原因を究明しようとはしないし、実態を知り得ないので言葉が見あたらない。その事実の認識のズレを、見事にマンガで表現している。おいしいそばの事情が、きちんと説明されているのだ。まずい理由が書いてあるのだ。
 2話「目で食べるそば」で、余命幾ばくもない老婆が、近くのそば屋にそばの出前を頼むのだが、一向に認めてもらえない話が出てくる。このとき矢代がそば屋の主人に指摘したことは、手を抜いて作られたそばの実態だろう。だがそれをだれが指摘できるのか、だれが責めることができるのか? だが出来上がったそばは雄弁に味を語る。その老婆は一口も手をつけずにそばのまずさを指摘するのだ。けど老婆はそばの作り方は知らない。老婆が小さい頃に母が手作りしたおいしいそばを食べたかっただけなのだ。物語の顛末はどうかその目で確認して欲しい。ここにはそばを愛した人の郷愁があり、そばに疲れた主人の実態がある。
 ほかにも「ざる」と「もり」の実態の話、そば湯にまつわる話、天ぷらそばの天ぷらの話など、そばにまつわるエピソードが満載だ。駅の立ち食いを食している間にも、このマンガを思い出して欲しいぐらいだ。でも度々のつまりは、いかにおいしく食べるかであり、ジャッジすることが目的のマンガではない。しかも知識を振りかざして自分の味覚を押しつける輩の話でもない。その点はかのグルメマンガと異なる点だ。いかにおいしく食べるか。ただそれだけでいいと、そばが教えてくれている。


深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル)深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル)
(2007/12)
安倍 夜郎

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テーマ : マンガ
ジャンル : アニメ・コミック

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波のまにまに☆

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