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非現実の中の現実~「空中ブランコ」と「深夜食堂」~

 ほぼ壊滅的な今期アニメではあるが、ある意味で野心作といえるものがないでもない。ドラマの世界でも、マンガや小説を原作にとる作品がドラマ化される傾向にある。それでも脚本家が不在なわけでもなく、きちんとオリジナルの脚本を作り続けているのがドラマの世界だとすれば、アニメの世界よりもずいぶんと先んじているような気もする。

 毎度東京中心で申し訳ないのだが、フジテレビ系列の深夜ノイタミナ枠で、「空中ブランコ」がスタートした。原作は奥田秀朗氏による小説が原作だ。一応タイトルの「空中ブランコ」は第131回の直木賞受賞作である。2005年にはやはりフジテレビにてドラマ化されていた。物語は精神科医・伊良部のもとにやってくるさまざまな心の病を抱えた患者を通じて、現代に生きる人間の病理を問いかけるものである。なおアニメのエンディングに流れるテロップを見る限り、「空中ブランコ」以外の作品もクレジットされていることから、1クールの中でいくつかの物語を消化するつもりのようだ。

 第1話は表題の「空中ブランコ」を原作とした物語である。サーカスの花形、空中ブランコ乗りの山下公平は、雇い入れた外国人の相手と共に、空中ブランコをおこなうが、まったくうまくいかない。夜も眠れず練習もままならない山下は、周りのすすめで精神科医にかかることにする。精神科医・伊良部のもとを訪れた山下は、奇妙な状況に振り回されつつも、注射一本で追い返される。その後心の安定を取り戻したかに見えた山下は、空中ブランコの練習を再開したところ、ブランコが成功できないある事情に気がつくのだった。それは・・・・という話だ。

 製作が「東映アニメーション」だというのに、非常に実験的な映像となっている。目につくのが実景を取り込んだような背景、色を無くしたかのような町の色、逆にきつすぎるほどのサイケデリックな印象の配色を見せる精神科医の部屋。キャラクターも写真とアニメ絵が交錯するし、看護婦役の杉本有美嬢はショッキングピンクの看護服に、露出が目立つ。また伊良部自身も、うさぎのかぶりもののような時もあれば、金髪おかっぱの少女のようでもある。キャラクターの動きに一貫性がなく、連続性が無いように見えるその映像は一見でたらめだ。扇情的でもあり色彩過剰な作品である本作は、現実と非現実の境界をきちんと見せているのが特徴的だ。山下がはじめて精神科医を訪れたとき、薄暗い廊下の映像があった。この映像は、しかも写りの悪い実写の映像だ。廊下の先にはほのかに明るい光がさし、その部屋が伊良部の部屋であるのだが、この写りの悪い実写映像こそが、本作で現実と非現実を隔てる役割をしているように見える。

 その上で、山下の病名が明かされる。病名自体は小難しいので、見直して貰うこととするが、その実態はコミュニケーション不全の人間が漠然と抱えている不安である。そしてその原因を外部に求めた山下は、本当の原因が自分にあったことに気づいてしまう。それをあたかも山下の多重人格のように説明しているのだが、こんなこと現実によくある話ではないか。人間同士のコミュニケーション不全など、今にはじまった話ではない。上司と部下、妻と夫、親と子、先生と生徒、先輩と後輩。どんな人間関係でもいいが、その人間の間にコミュニケーション不全は常につきまとう。人はいつだって自分を理解して貰いたいと思う一方で、他人を理解したいとも思っている。だがその思いは常に成就されることなく、つかず離れずを繰り返しながら、互いの距離感を覚えていく。コミュニケーションとはそうした互いの距離感の計り合いの事だ。「ALWAYS三丁目の夕日」などに見られる回顧的な物語を見て、「昔はよかった」などの安易な論法を持ち出すことがあるが、そうした戦後の日本の姿にだって、当然のようにコミュニケーション不全は存在する。そんな現実を非現実の中に浮き彫りにすることが、本作の主張でもあるようだ。その実、伊良部の話に耳を傾けると、彼の話がさもコミュニケーションをとっているように見えるが、伊良部は一方的に話をしている。山下にとっては伊良部の言葉がどう捉えられたのか? それを考えても、コミュニケーションの不全は成立している。非現実の象徴のように見える伊良部の部屋でも、現実は頭をもたげているということだ。作品上、明確に現実と非現実を分けていながら、山下にとっては区別がつかないような物語運びになっている。構成の妙が光る演出だといえる。

 その一方で、TBS系列の深夜枠でひっそりと始まった感がある「深夜食堂」。前々回の更新で取り上げたのだが、かなり雑なつなぎをしているものの、落ち着いたトーンでまとめられた、しっとりとしたよいドラマであった。現在既刊が4巻まであり、放送予定が1クール程度(実質10話)とのことだから、その素材としては十分だろう。マンガの1話目である「赤いウインナーと卵焼き」のエピソードを1話分にふくらますのは、並大抵の努力ではない。この1話にストリッパー・マリリンの話を少しだけ絡めていた。しかもマリリンの話には、まだオチがついていない。きっと別のエピソードとして、きれいにオチがつくのだろう。そしてドラマの土壇場で、次回のエピソードの主役が登場して終わるのである。この締め方は、「空中ブランコ」の話の途中で、次回のエピソードの主役が登場する手法に、よく似ている。

 ドラマは実写映像で構成される。この特性上、ドラマは現実の地平に繋がれてしまう。たとえCGなどの映像表現で過剰に演出されても、人間が演じる以上、見ている人間の感覚からすれば、決して現実を超えることはない。あれほど多彩な映像表現が駆使されている「マトリックス」シリーズが、現実の地平線にある物語である感覚から離れられない理由は、そのためだ。「深夜食堂」という作品は、むしろ現実寄りの作品であるから、理解しやすいと思う。だがこのドラマにも、ヤクザ同士の抗争という、一般には想像できない非現実が隣り合わせていることをドラマにしているのである。それは「新宿」という雑多な町という背景が醸し出す雰囲気なのである。

 1話冒頭で印象的に映し出される新宿の町。私にとっては日常的に足を運んでいる町であるが、その夜の風景はまた、私の知っている風景とは異なる。ましてや新宿などイメージでしかしらない人々にとってはなおさらだろう。知名度以上に危険な町である印象があるかもしれない。それは「新宿」という町が持ち得た、現実と非現実の曖昧さかも知れない。
 「深夜食堂」の主な舞台となるお店は、本作では新宿3丁目にある「ゴールデン街」と呼ばれる一角であるようだ(原作では特定されていない)。ロケーションだけ見ると、路地を進み、脇に入る3段ばかりの石積みの階段をおりたところに、お店がある。本当にこんな石積みの階段があるのかどうか、私も寡聞にして知らないが、一度いってみようと思っている。この階段が本作の現実と非現実の境界な気がする。

 食堂内で演じられるドラマは、まさに人間の欲望だ。食欲であるし、食べ物に対する郷愁であるし、総じて欲望である。それは紛れもない人間の現実の姿を暴き出すし、それをむしろすすんでさらけ出そうとしているのが、この物語の主人公たちである。小林薫氏演じるマスターは、それを食を通じて傍観する人でしかない。そして大きなドラマはむしろ店の外で行われる。それが「新宿」という現実とも非現実ともつかない曖昧な世界だ。なんとなくドラマの範疇を超えない人間ドラマが繰り広げられ、それでも物語は食堂で閉じていく。現実と非現実が行ったり来たりし、本当にハートフルな物語が展開される。その境界が、あのゴールデン街の脇道にある階段なのかもしれない。

 アニメや特撮の世界は、あまりにも非現実だ。それは人間の空想や願望を具現化した映像だからだが、その中に現実の事象を少なからず織り交ぜる事で、作品が現実離れしないように鎖としていた気がする。たとえば現実にありそうな世界観に、非現実の事象を持ち込んで物語が展開する話は、くさるほど転がっている。「美少女戦士セーラームーン」などは、現実に非現実を持ち込むことで、現実を守ろうとする戦闘美少女物である。「ドラえもん」や「おばけのQ太郎」なども同じだろう。この例を見るまでもなく、現実の地平に非現実を持ち込む手法は、すでに陳腐化した。残された方法は、非現実の中に現実を持ち込むことだけだ。一見現実のような世界を見せながら、現実と非現実を相対化、あるいはその境界を歪ませることで、現実と非現実をゆっくりといったりきたりする。人間の精神世界などを表現するには、有効な映像表現かも知れない。今回取り上げた作品は、そうした非現実の物語に飽きた人々が見るには、最適な物語かも知れない。ただし、現実の痛みを伴うこともお忘れなく。かように現実は厳しいのだ。


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