上原正三とヒーロー番組の礎~「宇宙刑事ギャバン」~

 1970年代に子供番組を見ていた人間にとって、「上原正三」氏という人は、切っても切れない関係にある。私も含めて、あのころ必死になってテレビにかじりついて見ていた番組の多くに、脚本を提供し続けた人だ。彼の出自についてはWikipediaにも詳細が書かれている。また本稿については切通理作著「怪獣使いと少年」や、この夏に発売された「上原正三シナリオ選集」(現代書館)のおまけにあるDVDのインタビューなどを参考にしている。

 「シナリオ選集」は、厚さ5cmにもなるハードカバーの本であるが、その中身には、氏がおもにアニメや特撮作品に書き続けたシナリオが約50編納められている。その作品の数たるや、他の追随を許さないのではなかろうか。「ウルトラQ」で脚本家デビューし、先輩脚本家・金城哲夫とともに「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」などを執筆・TBSの橋本洋二プロデューサーの関連で、「柔道一直線」や「ガッツジュン」などに参加する。後に東映特撮作品である「ロボット刑事」からアニメ作品である「ゲッターロボ」「大空魔竜ガイキング」などを執筆。そして我々がよく知るところでは、「がんばれロボコン」「秘密戦隊ゴレンジャー」「レッドビッキーズ」シリーズなどを執筆する。このころがもっとも脂ののった頃なのか、戦隊シリーズに関しては、氏が参加したシリーズ初期の作品は、そのほとんどの脚本を手がけているし、「宇宙刑事ギャバン」から「宇宙刑事シャイダー」、続く「巨獣特捜ジャスピオン」、「時空戦士スピルバン」にいたるほぼ5年間5作品を、一人で書ききったのである。

 上原氏の仕事をあげるとき、多くの人が「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」を持ち出すことがある。また「私が愛したウルトラセブン」の中でも、「300年間の復讐」という未制作シナリオをもとに、「沖縄人」としての差別意識や同胞意識などに目がいきがちであるが、その実上原氏の仕事の多くは、これら「ウルトラシリーズ」以降に書かれていることを考慮すれば、そこだけをあげつらうのはいかがなものかと思っていた。特に「ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」、「電子戦隊デンジマン」などで見せた、現在のヒーロー番組の礎の1つの形を作った功績をこそ讃えるべきではなかろうか。

 今回は上原氏の功績が、もっとも顕著な形であらわれた作品である、「宇宙刑事シリーズ」の第1作「宇宙刑事ギャバン」を題にとってみたい。
 「宇宙刑事シリーズ」とは、1983年3月にスタートした「宇宙刑事ギャバン」を1作目とし、翌年の「宇宙刑事シャリバン」、翌々年の「宇宙刑事シャイダー」の3作品をさす。このシリーズは、FRP素材にメッキ蒸着することで得られたメタルな質感のスーツを人間が装着して悪と戦う、それまでにないイメージを持った単体ヒーロー物として成立し、「メタルヒーローシリーズ」としてその後も継続されていく。「宇宙刑事ギャバン」はまさにその礎となった作品だ。

 宇宙犯罪組織マクーが、地球にその侵略の魔の手を伸ばし始めた。それをキャッチした銀河連邦警察のコム長官は、一人の宇宙刑事を地球に派遣する。その人の名は「宇宙刑事ギャバン」。彼は戦闘時には銀色に輝くコンバットスーツをまとい、必殺の「ギャバン・ダイナミック」で、次々とマクーの送り込むベム怪獣やダブルマンを葬り去った。しかし彼の目的は地球守備のためだけではなかった。ギャバンは宇宙人である父・ボイサーと地球人の女性とのハーフである。だが同じく宇宙刑事であった父は行方不明となっており、その父を行方を捜すことも、彼の目的であったのだ。彼は日本の市井に紛れて暮らしながら、マクーとの戦いを続けていくといったお話である。

 基本的には1話完結式の物語であり、ほぼ1年の放送期間内に、縦軸となる「父親探し」というストーリーもこなしていく物語運びは、決してこの手のヒーロー物のパイオニアではない事がわかる。当然それ以前に人気を博した「仮面ライダー」シリーズは同じような構成であるし、もとを正せば「月光仮面」だってそうだろう。だが「宇宙刑事ギャバン」の最終3部作を見る限り、この物語で示された「父親探し」というストーリーの縦軸は、物語の最後のたたみ方を見せるための方便ではなく、作家性を覗かせながら、「宇宙刑事ギャバン」という作品を語る上で決して外すことのできない設定であったからだ。

 物語開始当初より父親の話は、ギャバンが持つペンダントにより表現されてきたが、11話「父は生きているのか?謎のSOS信号」で初めて展開し始める。そして父の生存の確証を得るのだ。このとき父ボイサーは、ホシノ・スペースカノンという強力な兵器の秘密を持ったまま行方不明だという。マクーはこのホシノスペースカノンの秘密に目をつけており、マクーもボイサーの行方を追っているのだ。
 マクーの本部・魔空城では、首領ドン・ホラーの息子・サンドルバが帰還したことで、戦力が増強される。丁々発止の戦いを続けるギャバンとマクーであったが、最終回1歩手前の43話「再会」にて、ついにギャバンは父と再会を果たす。それはサンドルバに拷問され、さらには自白剤をもられてなお、ホシノスペースカノンの秘密を守り通し、生き残った父の姿だ。父と十数年ぶりの二人だけの時間を過ごすボイサーとギャバン。しかしその安らぎもつかのま、ボイサーはギャバンに見守られながら、安らかに息を引き取ってしまう。なぜ? 地獄のような拷問にも耐えたはずの父が! 泣きながら父の手を取るギャバンが目にしたのは、父の手に隠されたホシノスペースカノンの設計図であった。ボイサーの体温が無くなると浮かび上がるようになっていたのだ。だからボイサーは生き続けなければならなかった。命をとして守り続けなければいけない秘密を守るために、生き続けたのだ。父の意志を継ぎ、マクーの壊滅に乗り出すギャバンは、翌週の44話にて、ギャバンの怒りの反撃と、新戦士「宇宙刑事シャリバン」との共闘により、マクーを壊滅におい込むのであった。

 この物語を、単なる「肉親の死の悲しみと怒り」を読み取ることは、感受性のある子供ならだれでも可能だろう。だがそこに込められた上原氏の思いを読み取るには、もう少し解釈が必要になる。まずもってこの作品の根底にある「父と子の絆」については、見て貰えばすぐにわかる。上原氏自身が肉親の情については心から信じていると思えるし、それ以上に「裏切らない」ということに力点をおいて語られている。これは「怪獣使いと少年」にも上原正三の項で示されている。
 ギャバンとボイサーの場合は、ボイサーが星野博士とかわした約束に準じた形となっており、ギャバンとの血のつながりより約束を優先したボイサーの男気が感じられる。同時にそうした自分の背中で自分の役割を演じきり、ギャバンに見せることで、ギャバンが今後宇宙刑事として進むべき道を示していることでもある。そして父が果たせなかったマクー壊滅をなしとげるギャバンは、ここで父を超えたのだ(本人は否定するかも知れないけど)。これをもって「父と子の相克」を克明に描いているわけだ。こんな裏事情があるから、ギャバンは絶対にマクーを許さないし、マクー壊滅のためにどんな困難にも立ち向かうのである。

 「宇宙刑事ギャバン」には、他にもレーザーブレードによる殺陣演出のすばらしさ、光刃が敵を切り裂く合成画像のイメージ、銀河連邦警察の凡スペース的に広がる宇宙観、魔空空間というバトルスペースの強烈なイメージ、渡辺宙明氏の音楽の完成など、特筆すべきことはいくらでもある。だが忘れて欲しくないのは、こうしたどこか人間性に根ざした優しさや厳しさを垣間見せる脚本を上原氏が書き、われわれ当時の子供たちを魅了したという事実だ。その反対側でこどもを主要ゲストに据えて、主役と絡むことで、子供たちの主張や生活環境の矛盾、現代の悩める時代の子供の姿を活写した作品があり、こうした1話完結の物語を積み重ねた上で、ギャバンやそのほかの作品が成り立っている。子供は子供っぽい物がきらいなはずだ。けれどあえて子供の視点をきちんと採用し、その視点こそが今の時代を切り取るセンテンスになる得ることを提示しえたのは、上原氏が書き続けた子供番組の脚本にある本質なのかも知れない。

 ところが上原の脚本のセンスは、次第にわれわれのセンスからずれてしまう。「時空戦士スピルバン」以降は、東映作品とも疎遠となる。「仮面ライダーブラック」では初期数話を担当したのみで、後続に譲ってしまう。久しぶりの登板となった「超力戦隊オーレンジャー」では、どうもその脚本のセンスが、あまりにもストレートすぎて、空回りしているかに見えた。非難を承知で申し上げれば、正直面白くなかったのだ。特に「オーレンジャー」での上原は、機械帝国バラノイアという、「心の宿らないマシン」という得意なジャンルを前にしながら、まったくおもしろみを感じられないシナリオになっている。それはある意味で付け加えたり掘り下げたりできるような素材ではなかった故かも知れない。だが時はすでに「鳥人戦隊ジェットマン」のような色恋に走るメンバーの相克を描いたり、犯罪者の心理を掘り下げようとする「レスキューポリスシリーズ」が放送されている。そこが上原氏のセンスとは相容れない作品であったかもしれない。「オーレンジャー」での上原氏には、完全に作品に乗り切れていない彼を見つけて、さもありなんと思ったものだ。

 今回は「宇宙刑事ギャバン」を題材にとったが、上原氏の作品で取り上げたい作品は、いくらでもある。戦隊シリーズでも腕をふるった氏の仕事にあらためて触れることも、けっして悪い感触はしない。現在の小難しいストーリーを基本として、子供たちから敬遠されている特撮作品を見るにつけ、おおらかで懐深く、それでいて誰が見ても感じあえる作品を送り出した上原氏の作品は、今も輝きを失わない。むしろ上原氏の感性を刺激できる企画がでないものか、そしてまたその腕を振るってもらえないものかと思う次第である。

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