侍になるためにおいてきたもの~侍戦隊シンケンジャーその2~

 現在絶賛放送中の「侍戦隊シンケンジャー」が熱い。前回書いたときよりもさらに熱さが増している感じだ。まず触れておきたいのは源太を含む6人の若者たちのエピソードだろう。序盤のままの設定でも、なんら問題ないはずなのだが、話が進むにつれて各人の身内の話が飛び出し始めた。

 まず殿様・丈瑠の父親の話で口火を切る。単なる親への思慕ではなく、彼が受け継いだ志葉家頭首の意味を問いただし、自分のアイデンティティを確立させる話だが、その上で臣下ではなく仲間を欲したり、幼なじみとの約束を重荷に感じたりするあたり、むしろ殿様としての重圧よりも、実直で不器用な青年の顔をのぞかせる。きっと丈瑠のファンにはたまらないだろう。それでも殿様として振る舞う必要性や場面は絶対に間違わない。そうした空気を読める感じが、むしろ彼の若さゆえの実直さを見え隠れさせる。
 また丈瑠を目標とし追いかける千明の場合には、血筋を感じさせるほどのオヤジが登場する。侍としてどこまで千明を育てたつもりかはわからないが、その根っこのところで千明の素直さに通じる気持ちを持っている人だった。彦馬さんあたりと絡めばよかったのに。
 近々の物語では、茉子の両親が登場した。お母さん、伊藤かずえさんでしたね。先代のシンケンピンクが、その戦いの後ハワイに去っていく。茉子の心の傷の意味、そして人の泣き顔に無条件で反応してしまう意味、彼女が料理下手な理由まで、この話で理解できる内容になっていた。そして彼女の心の隙間が、急激に埋められていく過程は、見ていてやはり胸がすく思いだ。
 流ノ介が侍になるために捨ててきた物。それは歌舞伎とその師匠であった父の存在である。若者歌舞伎の存在が彼の気持ちを大きく揺さぶるが、だれも彼をフォローしようとしない。それは流ノ介がかならず一人で立ち上がる心の強さを持っていることを、誰もが知っているから。けれどそんな流ノ介は、チームでもっとも心配をかけやすい人物でもある。直接手出しできない位置に追い込むからこそ、誰の手助けも必要とせずに立ち上がることができるのかも知れない。それにしてもサムライハオーの無茶ぶりテンションにはおそれいった。だがそうした「いっちゃえ!」的なテンションは、流ノ介のもう一つの若者としての素顔である。実にこれまでの無茶ぶり合体のきっかけは、おおむね彼の発案だ(おいおい)。
 それに比べると、源太の扱いについては、やや放り投げているように見える。どうにも新アイテムの登場のためのキーマン以上の役割を与えられていない気さえする。そのあまりの万能ぶりが、かえって彼のキャラクターや活躍をスポイルしているように見えるのだが、うがちすぎだろうか?
 またことはについては、序盤での姉との確執部分で、身内ネタをやってしまっているだけに、主要メンバーの掘り下げ時期に、一人割を食ってしまっている感じがやや気の毒でならない。そのぶん、丈瑠を召使いににしたパロディをこなすのも、彼女の役目。茉子とは異なるかわいらしい少女のキャラクターを、きちんとこなしているともいえる。

 さてその一方であいかわらずの外道衆であったが、丈瑠に十臓が切られてから、不協和音が響き始める。愛刀を折られて人間界をさまよう十臓に接触する太夫。しかも太夫が外道に落ちた理由が公開されるにいたり、外道といいながらも、結局は人間対人間の戦いであることが示される。特に十臓が丈瑠にむかって、似たもの同士である旨を告げたとき、欲望におぼれたものと欲望を自ずとセーブすることで区別できていたはずの境界が、曖昧になりそうな予感がしてくるではないか。
 とどめはアクマロの参戦だ。通常通りの幹部候補の参戦だと思いたいが、十臓とも因縁深い間柄、そして太夫にも手をさしのべる。なんとも胡散臭い公家言葉を考慮しても、ドウコクの隙をつきそうな気配がプンプンする。機先を制しているのはドウコクのほうだが、いずれ油断ならない男、それがアクマロだ。

 この物語が仮面劇を模した人間の欲望の物語であることは、上記を読んでもらえばご理解いただけると思う。その脚本家が「仮面ライダー龍騎」の脚本家である小林靖子だとすれば、そうした理由もうなずける。ただ「龍騎」の物語が「人間の欲望に忠実」であるために、ヒーロー物の枠をはみ出そうとしたように、シンケンジャーの物語も、通常の戦隊にあるスタンダードをはみ出しそうな勢いのある物語運びである。そしてそれ故に、「秘密戦隊ゴレンジャー」以降のシリーズにも少ない、人間対人間の図式を見せる戦隊シリーズとなっているのだ。かつて池田憲章が「SFヒーロー列伝」のなかで、しきりにほめて見せた「人間ドラマ」という言葉は、ことここにいたり完全な「人間ドラマ」として成立したと思えるのだ。じゃあ本来的な「人間ドラマ」がこうした特撮ドラマより高尚かという話ではなく、脚本家が1年のメインストーリーとして選択したドラマであることが、より重要なのである。それ故に、薄皮太夫のドラマが成立するし、主人公6人の設定が生きてくるドラマが成立しているのだと思われる。

 なんにせよ、昨年の不作を忘れられるほど、今年は出来がいい。やり過ぎというなかれ。そこまでの強力なストーリーがあってこそ、すべてはついてくるはずだ。まあサムライハオーの姿を見たら、そりゃ引くけどさ。あれはもう超常スマッシュの域だろ(笑)。


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