SMガールズセイバーマリオネットR~クローンとアンドロイドの命題~

 自分が所有していることを忘れているものってありませんか? 過日友人に長いこと貸していたビデオテープが手元に帰ってきた。いやもうびっくりだ。貸したことすら忘れていた。しかもそのタイトルが「鉄腕バーディ」と今回のお題「SMガールズセイバーマリオネットR」だった。もうこの時点で赤面する思いだ。いやもうひと思いにどうにかして下さいってなもんだ。今更ながら恥ずかしいタイトルである。

 この「SMガールズセイバーマリオネットR」は、1995年に発売されたオリジナルビデオアニメであり、発売当時私はLDで購入した。吉祥寺駅に隣接していた新○堂さんにいた店員さんに、「面白そうなのお願いします」とか言って長い時間話し込んだ結果、お薦めしてもらった作品である。しかしかの「あかほりさとる」と「ねぎしひろし」原作というだけで、恥ずかしいったら(笑)。後に「R.O.D」シリーズや「かみちゅ」などを監督する「ますなりこうじ(舛成孝二)」監督はまあいいとして、なによりこのキャラクターたちのヴィジュアルがまた恥ずかしい。顔の面積のほとんどが目で設計されているキャラクターの顔は、はたして狙い澄ましたような「萌え絵」の記号でできている。かてて加えて主人公ライムの声が「林原めぐみ」ときては、なにかこう手が後ろに回ったような感覚すらしてくる。映画でも音楽でもアニメでもいいが、時代が変わることによってモラルが変わると、途端に古い物が恥ずかしかったり、しょうもないものに見えたりすることは、よくあることだが、「あかほり」「萌え絵」「林原」の3連打は、過去の自分の人格を疑いたくなるほどの破壊力がある。いやもう直視できるのか?

 もうHDレコーダーを使い始めてから長いこと使用していないビデオデッキに電源を入れ、とるものもとりあえず視聴する。すると、意外にも最近のブログで話題にしたキーワードがちりばめられていることに気がついた。せっかくなので、ブログで取り上げてみようと思った次第。

 さて本作の物語はかなりシンプルだ。ロマーナ国の二人の王子の兄である「スターフェイス」が、自分が作った3体のマリオネット(セクサドール)を使って反乱を起こす。弟の「ジュニア」は兄が作った3体のセイバーマリオネットと共に一度脱出するが、兄の手からロマーナ国を取り戻すため、マリオネットたちと共に兄らとの戦いに挑むという話だ。ただしこの話の裏には膨大な設定が存在する。しかもその設定は周辺書物やら、本作以降の作品に登場する設定のため、本作だけではまったく理解できない構造となっている。この時代では、そのような作り込んだ設定が喜ばれたし、それが作品上登場しなくても、制作者がなにかしらのメディアで設定の一端をあかすことで、メディアミックスが成立していた時代だったのである。本作が制作された1995年は「新世紀エヴァンゲリオン」が放送開始した年である。エヴァが設定だけ作って、謎のすべてを明かさないまま、物語を放棄したなどと揶揄されたものだが、この当時のアニメには、多かれ少なかれそのような雰囲気が蔓延し始めていたのだ。なにもエヴァだけが諸悪の根源ではない。さて本作では明かされなかった設定については、以下に箇条書きしておく。

・ロマーナを含むこの物語世界は、人口増加にあえいだ地球人類が、移住した先の惑星「テラツー」が舞台となっている。
・テラツーに移住した人類は、6人の生き残りがそれぞれ国を作って支配した。つまりテラツーにはロマーナを含めた6つの国がある。
・6人には女性がいない。
・そこで奇形的にクローン技術を発達させ、6つの国の王は、初代の王の体細胞クローンである。そのため現在でも初代の死体は、延命措置をとられながら保管されている。
・同時に女性型アンドロイドを作り、「マリオネット」や「セイバーマリオネット」、「セクサロイド」などを作る。
・だが生命体としての寿命が来つつある人類は、徐々に人口減少が問題となってきた。
・本作の後に制作された作品では、本作の前日譚として、人類に女性が復活する事件について描いた作品(「セイバーマリオネットJ」)が存在する。
・またこの世界の原初の女性をモチーフにした「乙女回路」というものが存在し、マリオネットにはこの乙女回路をつけることにより感情が生まれるものと、回路自体がないものが共存している。

 つまり本作での世界観は、女性との生殖行為により子孫を増やすことができる世界でありながら、マリオネットたちも同時に存在する世界となる。本作の肝となるのは、ロマーナ国王の息子として育てられた2人の王子の出生についてである。特に事件の張本人であるスターフェイスは、自身が父のクローンであることは知っていたのだが、ジュニアが(その名が示すとおり)父王と行方の知れない女性との間に生まれた子供であることまでは知らなかった。ジュニアは兄にむかって、父がクローンの限界に気づいて、通常生殖により子供を産ませたこと、それが自分であることを語る。その言葉で自分の寄るべきところを失ったスターフェイスは、ジュニアとの闘争に負けたことを認めながらも、ジュニアへの呪詛としての自分の死を見せつけるように投身自殺する。父を、兄を失ってしまい、なにもかも失ったように見えるジュニアであるが、自分の身を守ってくれた、兄が残したライムとチェリーの2体のマリオネットがそばにいることを感じ、ロマーナの再建のために立ち上がるところで、物語は終幕する。

 全体のヴィジュアルが持つ陽性な雰囲気とは裏腹に、物語はかなり陰鬱である。そして背景もどちらかといえば暗いシーンが多い。それは世界観に裏付けされたドラマのはらむ暗さそのものだ。
 まずはマリオネットたちの存在についてである。すべからく女性型のアンドロイドであり、日常のあらゆる人間の作業をサポートする。必要に応じて夜のお相手だってする。物語中盤に登場する、ロマーナの最下層に住むおじじは、子供の頃に買ってもらったマリオネットと共に暮らしており、結婚すらしていない。つまりマリオネットがいれば恋愛をする必要もなく、生活が充足してしまうのである。さらにセイバータイプについては戦闘までこなし、数々のアタッチメントを用いて、電撃や銃器まで使いこなすのである。だがこれらのマリオネットには主人の言いつけを守ることはあっても、感情はない。愛想笑いの表情を見せることはあっても、感情がない。その一方でスターフェイスが開発した「乙女回路」を装着したマリオネットには感情が発生する。

 この「乙女回路」、物語冒頭でライムに取り付けられるシーンがあるのだが、乙女回路と刻印されたメインパーツに、チューブが幾本か巻き付いヴィジュアルで、ライムに取り付けた直後に起動すると、チューブ内に血のような液体が流れ、まさに心臓が動くような動きをみせる。その動きが生々しくってかなり気持ち悪い。だがこの回路によりライムたちは感情を持ち得ているのだ。だがスターフェイスは、自らがつくった3体のセイバーマリオネットをジュニアに与えるのみならず、自分の身の回りを担当する3体にも回路を取り付け、ライムたちと戦わせ、悦に入っている。おじじの話に寄れば、乙女回路を取り付けているのは金持ちと王族ぐらいだそうで、スターフェイスが彼女たちに回路を取りつけたのは、あくまで自分たちが王族である証を示したかっただけかもしれない。だがスターフェイス側の3体だって、スターフェイスの気持ちを優先し、まるでフェイス至上主義とでもいうかのように、行動する。2話の冒頭にフェイス入浴シーンの色っぽさは、テレビでは放送できないのかも知れないが、フェイス同様に快楽を得ようとフェイスを求める彼女たちの姿は、性欲をもつ人間のそれである。一方でジュニア側のマリオネットたちも、ジュニアを好きだという気持ちは変わらない。ジュニア自身がマリオネットたちをかわいいと思っていることは明らかだし、チェリーはあきらかにジュニアに行為を抱いている。またライムは「ジュニア大好き」と公言してはばからないが、成長途中のマリオネットとして描かれており、ジュニアは彼女を育てつつ父性を持つことになる。
 このようにマリオネットが感情をもつ存在として描かれておきながら、事件の首謀者であるスターフェイスにとっては、生み出す物としての認識があるから、その感情を是とできない。その一方で、王族としての誇りや父王のクローンとしての誇りがあり、弟ジュニアが父にかわいがられているのと反対に、危険人物と見なされて幽閉された事実が、彼をねじ曲げたのだ。

 ここでもう一つの問題が発生する。クローン人間の優位性についての問題である。劇中のスターフェイスの言い様は、王族のクローンである自分こそが、ロマーナという国においてもっとも有為な人物であり、惰弱な弟に国を治める資格はないという。また創造主という立場から、マリオネットたちはいかな感情があろうとも、人間以下の存在であるということなのだ。だが物語は、さらに生殖により生まれた自然分娩の子であるジュニアが真に王であるとして幕をとじ、スターフェイスの負けとなる。

 これまで「イヴの時間」や「メトロポリス」を取り上げて、「機械の体に心が宿る」という話をしてきた。それはあくまでアンドロイドたちが経てきた時間に見合う経験がもたらした行動様式であるが、それこそが感情の発生源になると、私は説明してきたつもりだ。それはたとえはちゃめちゃであっても、人間が発想するような思考にたどり着いた機械が、心を持つにいたる瞬間に、新しい人類が生まれるような錯覚さえ覚える感動の瞬間だと思っていたのである。だがそれが単に王族の血統を主張するためのクローン技術程度で、無視されるような思いを持ったのだ。ここにはクローンの技術に関する倫理的な問題は無視することにする。だがどれだけ有為な人物の細胞だろうが、そこからクローンで派生した人間は、細胞を提供した人物と同一人物ではない。ましてやクローンですら、時間を経て経験した事物しか判断材料がないのであれば、人間と同等になりようがないではないか。逆説的に考えてみるといい。誕生して十分な時間と経験が経過したクローン人間と、アンドロイドと、生殖行為を経て誕生した人間がいたとする。3人とも能力的には申し分なしとした場合、3人の優劣はどうやってつければいいのか?

 本作の物語では、「クローン<心を持つアンドロイド<人間」という順列をつけているのだが、それはこの答えを導くだけの設定が存在するからである。これはあくまで奇形的な解答であり、実世界での解答にはなり得ないことはおわかりいただけると思う。ではあなたはどう考える? 本作は意外にもこのような示唆をもつ物語なのであった。
 いやあかほりだから、そんなことまで考えないてないだろうと言う人もいるだろう。私もそう思う(笑)。だが本作がこのような示唆を含むことは、本作の次にテレビで放送された「セイバーマリオネットJ」以降の作品でも、繰り返される。とすれば、あかほり氏もこうした問題点を決してないがしろにしているとも思えない。だがこの物語のねじれ構造は、純粋培養のクローンが遺伝的にも先代の王とまったく同じであるにもかかわらず、母親の遺伝という不純物を含めたジュニアの血統こそが、クローンよりも優位に立つという回答例を示していることだ。このあたりは非常に屈折している。物語だからと笑っていられる話でもない。

 付け加えるが、本作はアクションアニメとしても十分に楽しめる。特にライムがブラッドベリーに特訓されて強くなった Act.2 後半の戦闘シーンは見所が多い。超常の戦闘ではありがちなシーンではあるが、ライムにパンチを浴びせる敵マリオネットが、ライムが押し出されて岩に激突してすぐに、激突地点に到着し2撃目を与えるシーンなど、今日び格闘ゲームでも見られるような物理的にありえへんシーンも見られる。そのタイミングや力の乗り加減は、キックやパンチの重さを感じられて、なかなかに迫力のある戦闘シーンに仕上がっている。特に永遠の17歳・井上喜久子が演じるマリオネットは、「サイボーグ009」に登場する「004」よろしく、指からマシンガンを放ち、肘からミサイルを出すエンターティナーっぷりを見せてくれる。しかも戦闘の狂気が表情に浮かぶとなれば、そのシーンに乗る演技の声は、まさに「艶技」ともとれる。まだ清楚なお嬢様の役が多かった彼女の艶技は、ファン必見である。

 とはいえ、時代はまだ「林原めぐみ」がトップを独走していた時代である。まだ女性声優ブームの残滓が残っていた時代の作品である。彼女のとぼけたようなライムの声を楽しむぶんには、十分おつりが来る作品だ。設定の見えない分をさっ引くと、ずいぶんと不親切な作りの作品であるが、前述のようにこれすらも当たり前の時代の物語である。そのあたり、周辺作品と一緒に楽しむことを前提として、「あかほり」「萌え絵」「林原」の3連撃を楽しんで見てはいかがだろうか?

追記
 林原めぐみの声は、「ポケモン」のロケット団や、「カウボーイビバップ」のフェイがいいなあと、漠然と思いましたです、はい。


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