鉄腕バーディ(OVA)~なぜそんなにバーディが好きなの?~

 現在ビッグコミックスピリッツ誌において、絶賛連載中の「鉄腕バーディEVOLUTION」。テレビ版として放映された「~DECODE」シリーズも好調で、第2シリーズまで放送され、好評を博していた。だがそもそも「鉄腕バーディ」という作品は、未完の作品として原作者のゆうきまさみ氏が長らく執筆できなかった作品としても有名である。このシリーズについては一般に「旧作」とされ、1巻分のコミックスと外伝的な作品が発表されている。しかもそのコミックスが発売されたのも、今回のお題である「OVA」版が無ければ発売すらしてもらえなかったのだ。しかもOVAのメインキャラクターとなる「氷川」なる人物は、その後リメイク版の漫画にも登場している。言ってみればこの「OVA」が無ければ、それ以降の「鉄腕バーディ」という作品は、存在していなかったかもしれないのだ。そういう訳で、OVA版「鉄腕バーディ」をご紹介したいと思う。

 重犯罪者クリステラ・レビとその一党はすでに地球に進入していた。連邦の捜査官であるバーディ・シフォン・アルティラは、彼女たちの逮捕を目的に地球に進入する。レビの手下であるギーガーを追跡中、高校受験を控えた中学3年生の千川つとむをあやまって殺してしまったバーディは、つとむの体を補完するため、その身を使うことになる。はたしてつとむという体につとむとバーディの人格が同居するという奇妙な生活が始まる。だがその生活は、レビとの闘争に巻き込まれる生活でもあった。バーディに協力しているうちに、しだいにバーディと親和的になっていくつとむは、レビ一党に対する怒りを募らせる。警察が調査するひからびた人間の死体、町中で発生した看板の落下事件などから、レビたちが何事かを企んでいることをかぎつけるバーディ。レビと地球人・氷川がしかけた非人道的な作戦を阻止するために、バーディとつとむは、まさに身一つで戦いに挑む、という物語だ。

 まずは、未完の作品をネタに、よくこれほどまでに物語を作り上げたものだと感心する。それが脚本家・小中千昭氏の手腕によるものか、監督である川尻善昭氏の力量なのかは判然としない。なんでもマッドハウスの若手スタッフの底上げのための企画だったらしいのだが、作画面でも演出面でも稚拙な面などまったく見えない。全4話のエピソードで構成されているが、2話目の絵コンテ・演出を担当しているのが浅香守生氏である。「カードキャプターさくら」や「ガンスリンガーガール」の第1期を担当していた監督である。特にバーディのバトルシーンは、実に気持ちよく豪快に動かしている印象が強い。3話目終盤に、アンドロイド・オンディーヌに、いいようにやられているバーディのやられっぷりもいい。オンディーヌのパンチの力をうまく逃し、相手の肘をくじいて破壊するシーンは、タイミングといい作画といい、きちんと力が乗っている感じが伝わるシーンだ。また最終回の狂気の氷川とのバトルシーンでは、いままでのうっぷんを晴らそうとしているバーディがいかに暴れるかという演出意図なだけに、皮肉まじりの笑いまで見せるバーディの表情にも注目したい。

 同時にバーディ役の三石琴乃さんの力量も忘れてはならない。発売当時はまさに女性声優ブームのまっさかり。林原めぐみさんを筆頭にした女性声優の演技は底上げされた上、そのルックスがもてはやされ、声優雑誌などが出版されはじめたのもこの頃だ。その中で「美少女戦士セーラームーン」でひとやま当てた彼女は、まさに「売れっ子」の名にふさわしい活躍をされていた(当時のプロマイド持ってます)。実のところ、オーディションでは彼女を使わない方向で考えていたスタッフだったのだが、オーディションでの一声で、どう考えてもバーディという役には、彼女が妥当だと判断され、当初の考えを棄却しての抜擢だったという話を聞いたことがある。その彼女が、バーディのアクションと共に、乗りに乗った抑揚も勢いもある演技でバーディを演じている。現在の演技しかご存じない方は、一度本作をご覧いただいて、声優・三石琴乃の実力を堪能していただきたい。まじで、よだれものである。

 それにしても本作の主役とでもいうべき「氷川」という男が面白い。先述のように本作に初登場した「氷川」は、その後リメイク版の漫画のほうにも登場する。いわば「鉄腕バーディ」という一連のメディアの救世主とでもいえるキャラクターなのだ。しかしその実態は、旧日本軍の軍事科学者であり、人体実験を繰り返し、人間の脳をいじくることで最強の兵士を誕生させるという夢にとりつかれた人物だ。しかも本作では、レビが宇宙より持ち込んだ「スピリッツ」というクスリを研究し、人間のDNAにまで浸食して脳細胞を侵すことで、人間を退行化させて超能力を引き出すというクスリを開発する。おまけにその実験のために自分の体まで供するマッドさは、最近のゆるんだSF界にはなかなか現れないマッドさ加減である。その作用のために80歳になろうとする老人ながら、20代の若さを保っているという人物だ。未完の作品だった旧作の「バーディ」を、1本の作品として仕上げたのみならず、レビが宇宙から来訪し、同時にエイリアンやアンドロイドを使って地味な侵攻を進めながら、地球人の科学者に接触し自分たちの有用な研究のために利用するという、レビの底知れない犯罪の構成要素を広げた形になる。したがってバーディが戦う相手のレビという存在が、バーディのトラウマに起因する復讐という側面だけではなくなったため、物語に奥行きができた。そここそが、本作が今日まで展開できた理由である。

 とはいえ、「鉄腕バーディ」という作品は、作者ゆうきまさみ氏のみならず、ゆうき氏の周辺のアーティストにも広く愛され、同時にリメイクさせたり、テレビ版のアニメが制作されたような理由はなんだろうか? いうたら、みんななんでそんなにバーディが好きなのよ?ということだ。この理由、実は現行のアニメの筋では考えづらい。現在では女性キャラがメインをはるアニメなんて、普通に腐るほどいる(むしろ腐れてるほどだ)。だがそもそもゆうき氏が考えていたのは、女性キャラクターでSFアクションをまじめに書いてみたかったようなのだ。当然バーディをゆうき氏が書き始めた頃は、女性向けの漫画を覗けば男性キャラクターが主人公の漫画ばかりだし、アニメの世界もそうだった。「キューティーハニー」なんての例外中の例外であるし、魔法少女物はやはり少女漫画の延長でしかなかった。だから少年漫画誌という狭いジャンルの中で、女性だって主人公になれるということを、自分の漫画で証明したかったのではないかと思われる。現にバーディの連載を中断して執筆した「究極超人あ~る」も「機動警察パトレイバー」も、主人公は女の子だった。それはバーディで芽吹いた萌芽が、確実に花開いた成果だろう。そこから逆算すると、バーディという作品、キャラクターは、当時の少年漫画の世界では、非常にレアな存在だったのだ。しかも連載されていた「サンデー」という雑誌を俯瞰すれば、あだち充や高橋留美子という作家が最先端を走っていたのである。かたや不条理SFのふりしたラブコメだし、かたや熱量の低い青春野球漫画である。またその後のサンデーの連載を考えても、SFの要素は極力抑えられている。「鉄腕バーディ」という作品が愛された理由は、まさにSFアクションというジャンル故に、時代が要求したアイドルのような存在だったのだ。

 現行でもSFを題材にした漫画はあっても王道のSF漫画など、ほとんど存在しない。ところが女性キャラがスカートの裾も気にせず、高く足をあげてバトルしたりする漫画は、いくらでもある。こうしてバーディの萌芽は、「女性キャラ」の側面だけが時代の要求に従って生き残っていく。そうした流れを作ってしまった自覚はあるのだろうが、漫画界にもアニメ界にもそれを是正しようとする動きは、今のところ見られない。描き手が自覚的であればあるほど、それは問題性を帯びてくるし、商業構造からの脱却も難しくなる一方だ。今日(2009/11/6)のネットでのニュースでは、とある漫画家が出版社を糾弾する内容の日記をブログに発表し話題になっている。なぜこうなってしまったのか、サブカル周辺に生息するだれもが、一度は考える必要があるのであなかろうか。


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