巨獣特捜ジャスピオン~その1・巨大と等身大のせめぎ合い~

 「月光仮面」は巨大化しない。「忍者部隊月光」も「七色仮面」も巨大化しなかった。これらは基本的に時代劇がベースとなっているヒーローものだと思えばいい。剣や拳銃でかっこよく悪い奴らをなぎ倒すシークエンスは、正しくチャンバラ時代劇の系譜だろう。また「仮面ライダー」が登場するとこうした等身大のアクションは、「変身ブーム」となり現在のヒーロー番組につながっていく。
 ここに「ゴジラ」という特撮映画が出現する。特撮映画界の巨匠・円谷英二監督は、ミニチュア特撮や多くの特撮技術を考案することにより、人間大の物体をより巨大に見せる技術を見せる。それは瞬く間にテレビにも影響し、「マグマ大使」や「ウルトラマン」シリーズなどの、巨大ヒーロー特撮番組が成功する土台となる。
 一見するとこの「巨大ヒーロー」と「等身大ヒーロー」には、大きな隔たりがあるように感じてしまうのだが、実態としては意外にもフリーダムであることが、作品を見ているとすぐにわかる。例えばウルトラマン第2話「侵略者を撃て」に登場する「バルタン星人」は、変身前のハヤタ隊員と会話する。また科学特捜隊のメンバーとの絡みの関係で、バルタン星人は人間大の大きさで登場する。それは明確なバトルシーンではないが、バトルシーンとは異質なかけひきを見せるため、バトルシーンよりも緊迫するシーンとなる。この第2話が実は製作第1話だということもよく知られた話であるから、作り手としては巨大ヒーローと等身大ヒーローの区別を、ことさらしているわけではないことが伺える。同12話「ミイラの叫び」に登場するミイラ人間を、警察官たちと一緒に追いかける科学特捜隊のメンバーを見れば、科学特捜隊が等身大ヒーローとほぼ同等に扱われていることに気づけるだろう。また「ウルトラセブン」では1話にしてすでに、等身大のウルトラセブンが登場し、活躍するシーンが登場し、その後も大きさを自由に変えられるヒーローとして位置づけられる。平成に入ってからも、「ウルトラマンティガ」はレイビーク星人と等身大で戦っているし、「ウルトラマンガイア」はアグルと等身大でバトルしている。まあこれは巨大特撮の雄・円谷作品の話だ。
 もう一方の雄である東映特撮作品を見ると、「仮面の忍者赤影」では、巨大な怪獣と大立ち回りを演じる空飛ぶ赤影という映像が後半に頻出するし、「仮面ライダーX」では、最終回に巨大キングダークとXライダーの戦いで締めくくられている。「仮面ライダーストロンガー」の最終回でも、7人ライダーは岩石大首領と熾烈な戦いを繰り広げている。ましてや「スパイダーマン」では敵怪人が巨大化し、レオパルドンという巨大ロボットと戦うにおよび、これを取り入れた戦隊シリーズは、等身大と巨大ロボットを並列化させて描くことが一般化することになる。この時点で、本当の意味で巨大特撮と等身大特撮は、互いの垣根を乗り越えた感じがした。だが現在の戦隊シリーズを見てもおわかりの通り、巨大ロボ戦と等身大バトルの間には、有機的な連続性が感じられにくい。とにかくなにがしかの理由により敵怪人が巨大化し、ロボットが登場して戦うだけである。かつて、こうした巨大戦の意味に執着した作品が存在した。それが今回取り扱う「巨獣特捜ジャスピオン」である。

 いささか前置きが長すぎて、次回も続くことがモロバレではあるが、今回も作品紹介からいってみよう。「巨獣特捜ジャスピオン」は、1985年3月からスタートした作品である。前年に終了した「宇宙刑事シャイダー」で宇宙刑事シリーズが3部作として完結し、脚本家・上原正三氏が心血を注いで完成させた高いクオリティの物語は好評を博した。当然その次回作を楽しみにする気持ちは当然である。だがそこで東映が登場させたのは、むしろ初めてと言っていいほどの「巨獣」という名の怪獣をメインの敵に据えた物語だったのである。

 宇宙の仙人であるエジンは、自分が住む星で銀河バイブルのかけらを発見する。その内容を解読したエジンは、サタンゴースにより巨獣たちが目覚めて暴走し、全宇宙が巨獣たちに蹂躙されるという予言を知る。そのとき巨大な黒い甲冑を着たような巨人サタンゴースが登場し、予言通りに巨獣たちを目覚めさせて暴れさせるのを目撃する。エジンは宇宙で拾い育てていた野生児ジャスピオンに、超惑星戦闘母艦ダイレオンとサポートアンドロイド・アンリを託し、サタンゴースの野望を食い止めるべく旅立たせる。
 やがてサタンゴース一党は、かつて巨獣が繁栄していたという惑星・地球に、巨獣帝国を建設しようと企む。そこでジャスピオンも地球に向かい、サタンゴースやその息子マッドギャランと激しくぶつかり合う。マッドギャランは自分の軍団を率いて、直接ジャスピオンに襲いかかる。軍団のメンバーは強敵揃いであり、四天王を初め魔女ギルザやギルマーザ、マッドギャランが雇った宇宙の殺し屋などが登場し、ジャスピオンを苦しめる。
 そしてサタンゴースが大サタンゴースへ脱皮しようとするころ、エジンが地球にやってくる。銀河バイブルの残りを探し出し、同時にバイブルの啓示に従えば、サタンゴースらを倒せることを知ったからだ。そして銀河バイブルの秘密を巡って、熱き戦いが繰り広げられる、という物語である。

 前年までの「宇宙刑事シリーズ」でも、敵戦艦などが登場し、部分的な巨大特撮も登場してはいるが、これはあくまでおまけ程度であった印象が強い。特に戦闘シーンの多くがバンクフィルムの多用であったせいもあり、あまりいい印象を受けなかったし、それ以上にギャバンたち宇宙刑事の生身のライブアクションに力が入れられたシリーズだった。レーザーブレードのテーマがかかり、レーザーブレードが輝き出せば、戦闘のボルテージは最高潮に達する。そのカタルシスが最高に気持ちのいい作品群だったのだ。本作ではそのカタルシスを、一度は巨獣と巨大ロボット・ダイレオンの戦いにゆだねることになる。巨獣たちから距離をとり、全重量に加速度をあわせて放つ必殺のパンチ・コズミック・クラッシュで、巨獣たちを排除するのである。だがこれではいまいち迫力に欠けてしまう。それまで積み上げてきた「宇宙刑事シリーズ」のカタルシスが、まったく失われてしまう。そこで登場したのがジャスピオンの好敵手となるマッドギャランである。人間に化けて行動するかたわら、漆黒の体に大きな剣をさげて、ジャスピオンに直接戦いを挑むのだ。それはダイレオンの強力さ故に、その搭乗者を狙うという常套手段であるから、この時点で巨大戦と等身大バトルに密接な関連性が感じられる。しかもマッドギャランは卑劣巻であるから、人質を取る作戦を好む傾向がある。そしてジャスピオンをメタルテックスーツを装着させないままいたぶったりもする。ここでアンリやブーメランといった等身大のキャラクターが助けに来ることで事態を打開することに成功するのである。そういった巨大ロボ戦だけではどうしても物語が展開しない懸念がうまく転び、「巨獣特捜ジャスピオン」という作品は、等身大ヒーローに巨大特撮を有機的に融合させた作品として成立することになる。

 ジャスピオンは自らの剣を光らせ、必殺のコズミック・ハーレーという技を繰り出し、敵を退治する。あるいはマッドギャランが作戦のために特殊な能力を用いた巨獣を登場させ、ダイレオンと戦わせる。多くの場合、巨大戦か等身大戦のどちらかが、物語を締めくくるのであるが、28話に登場した巨獣アイガーとその操縦者アイガーマンのように、巨大戦と等身大戦がまったく同等に行われた話もあれば、36話のように、巨獣をジャスピオンが切り伏せるという話まで登場する。そうした展開と物語、戦闘シーンの融合に目もくらむ思いがした。印象深いのは四天王が登場した18話でジャスピオンをターミネータのように追い詰めたザンパや、終盤に魔女ギルマーザと登場した宇宙忍者の変化具合、ジャスピオンの幼なじみタイガージョーとの一騎打ちなどか。そして終盤における宿敵・マッドギャランとの死闘は、忘れられない名勝負だ。一度はジャスピオンに切られて倒れたマッドギャランが、立ち上がりサタンゴースに変化するように見せかけたシーン、そして果たせず死んでしまうマッドギャランの悔しさに、悪役ながらな涙が出るのを止められなかったほどだ。

 このように魅力的な悪役を配置し、巨大戦のみで物語を彩るだけでなく、有機的に等身大戦を絡めることで、それまでの東映特撮とは一線を画した作品になった。それはやはり巨大特撮と等身大特撮の垣根を越えたところにある、多用で多彩な作品作りの賜物であったということだ。次回、登場したキャラクターの魅力に触れ、さらに最終回までの物語に着目してみたい。それは脚本家・上原正三氏が勝ち得た、視聴者の子供たちへの照れることのない強いメッセージだと思えるのだ。以下次号!


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