巨獣特捜ジャスピオン~その2・子供たちに託されたこと~

 前回は「巨獣特捜ジャスピオン」のバトル、特に巨大戦と等身大戦がほぼ等価に行われていたことについて触れた。最近の「侍戦隊シンケンジャー」を見ていると、巨大化した外道衆との戦いが、その直前の等身大戦を引きずっている展開が時折見られるのがうれしい。もっとも、新しい折神が登場し、流ノ介が盛り上がって無茶な合体をしたりすると、シンケンジャー側のキャラクターまで巨大戦に反映されていると見れば、なおのことだ。このあたりのシンクロ具合はそのままおもちゃの遊びに影響するので、東映さんの商売のうまさもさることながら、脚本のうまさが光ると思える。

 さて「巨獣特捜ジャスピオン」の魅力は、演じている配役の魅力でもある。前年の「宇宙刑事シャイダー」におけるアニー役・森永奈緒美さんの配役が盛大に受けたせいか、このころのメタルヒーローの配役には、非常に気を遣っていることがよくわかる。まずは主役ジャスピオン役の黒崎輝さんだろう。あくまでも陽性のキャラクターであり、同時にヒーローとしての俊敏さや力強さを兼ね備えた彼がいてこその番組だ。番組開始当初のカーリーアフロヘアには正直のけぞったが、地球に到着してからの徐々に落ち着きをとりもどして、過酷な戦いに身を投じる姿と、アンリやミーヤと楽しげにじゃれ合う姿の対比は、宇宙の孤児である深刻な自分の素性とは裏腹の明るさで、ぼくらを勇気づけてくれる、まさに「兄貴」のような存在だ。そして生身のアクションを数多くこなし、ブーメランやマッドギャランとの戦いでも、正々堂々と生身で渡り合う姿は、その勇気を脳裏に焼き付けてくれる。

 サポートアンドロイドのアンリ役の塚田聖見さんがまた美しい。その美しさとは真逆な男性言葉のアンドロイドとして登場し、ジャスピオンを嘆かせるのだが、中盤での修理の結果、普通の女性言葉に変わってしまったのが悔やまれる。意外にも外界的に笑える場所の少ないジャスピオンの話の中では、アンリやミーヤとのコミュニケーションが、唯一の笑いどころであり安らぎどころとなっている。とはいえ大型のレーザーライフルを発射しながら、空中からジャスピオンを助けに来るシーンは、直立不動で飛来するアンリの姿のおかしさもさることながら、確実にジャスピオンの戦いをサポートする、頼もしい相棒であることもわかる。OPの映像で、修理中に目がよってしまうシーンもかわいらしくて忘れがたい。
 ブーメラン役の渡洋史さんはすでに紹介するまでもない。この時点ですでに「宇宙刑事シャリバン」役を終えての登場は、単なるファンサービスの枠ではおさまらない。しかも一度は洗脳されてジャスピオンを襲うくだりの、生身のアクションの切れは健在である。当初はマッドギャランを追い続けるハンターでしかなかったが、地球到着後はなんとインターポールの捜査官となり、ジャスピオンと何度か共闘する。それは地球という惑星規模の舞台を無意味に限定しない設定であったのだが、登場回数の少なさとラストバトルに駆けつけられなかったことが悔やまれる。

 そしてなんといってもマッドギャラン役の春田純一さんにトドメをさすのではないか。なんといってもすでにゴーグルブラックとダイナブラックを演じた実力派のアクション俳優が、悪役としてブラウン管に戻ってきたのである。この驚きようったらなかった。ヘタしたら主役の黒崎さんまで食ってしまうかと思わんばかりの力の入った悪役の演技は、スーツの演技をも完全に凌駕するほどの迫力があった。いくどか生身のジャスピオンと生身のマッドギャランの戦いも見られたが、そのたびに優勢に立っていたのはマッドギャランだった気がする。しかもその最後の死に際があれほどまでに見る者を圧倒する映像だったのだ。これ以降春田さんはつかこうへい氏の舞台などで活躍し、仕事の幅を広げていく。だが同時に「レスキューポリスシリーズ」などで見せた悪役の数々も忘れがたい。

 最後になるが、現在ドラマやバラエティでも活躍中の高畑淳子さんの魔女ギルザにも触れておこう。「仮面ライダーブラックRX」のマリバロン、「特捜ロボジャンパーソン」の綾小路麗子と本作のギルザを、「高畑3大悪女」として永遠に名を刻むべきだと思う。それら悪女役の一発目は、まさにこの魔女ギルザだったのだ。美しく妖艶な容姿、それでいて呪文を唱えるときの怪しさ、自ら短剣をとってジャスピオンを追い詰める強さ、どれをとってもこれほどの魔女はなかなかいないだろう。その能力の高さ故に、マッドギャランの懐刀であり、マッドギャランがジャスピオンに敗死したときに、復活の儀式を行ったのも彼女だ。最後はジャスピオンに破れ、後釜を姉のギルマーザに譲ってしまったのだが、記憶に残る魔女であった。東映ヒーローMAXの記者さんたちは、即座にインタビューを敢行すべし!

 さて物語は終盤にさしかかる35話から急展開を迎える。それまで銀河バイブルに関する情報は、「黄金の鳥」伝説と共に、フリーカメラマン南原(演 ささきいさお)が発見したことで、娘息子とともに南原親子がマッドギャランに襲われる程度であり、自分たちの平和な生活を取り戻すため、南原親子はジャスピオンに協力し、27話で北海道に移住するという話があったぐらいだ。ところが35話の冒頭、ジャスピオンは強い光に撃たれる。それはアンリやミーヤには感じられなかった光なのだが、南原の娘かの子が見たという。また光に撃たれたその夜、ジャスピオンは黄金の鳥が銀河バイブルをくわえて飛んでいるイメージを夢に見る。聞けばかの子も同じ夢を見るという。
 
 なにか関連があるのか? 万能なる神の意志を感じたジャスピオンは、自分が受けた光の軌跡が7本あったことを突き止める。そしてエジンは地球に急行し、その時が来たことを告げる。残りの銀河バイブル発見の時が。かの子が書いたスケッチに従い、ジャスピオンは富士五湖付近を捜索する。だがなかなか見つからない。諦めかけたその時、天がにわかに曇り、一条の稲妻が地上を撃つ。そこに黄金に輝く銀河バイブルが現れた。エジンの解読によれば、そこに書かれていた予言は「サタンゴースを倒すのは、光に撃たれし一人の勇者と5人の子供の手の中にある。そして一人の赤子の手に戻る。」というものだった。同時にこれまでのエジンの研究成果から、サタンゴースは宇宙の負のエネルギーから生まれ、黄金の鳥は正のエネルギーでできていること、サタンゴースの行動がおとなしいことから、サタンゴースが脱皮の時を待っている可能性が示唆された。そしてこの物語のラストでは、サタンゴースがそのおそろしい本当の顔を、仮面の下に隠していることがわかる。またかの子の手に銀河バイブルのかけらをおくと、かけらは黄金の鳥にかわった。これで5人の光に撃たれし子供の判別方法が判明するのである。

 ここからはまさに急転直下の展開だ。ジャスピオンは残り4人の子供と一人の赤子を捜して日本中をかけずりまわるし、子供を使った生け贄の儀式を執り行い、サタンゴースは大サタンゴースに脱皮しようとする。だが間一髪で儀式は完遂することなく、大サタンゴースは不完全なままで脱皮を完了してしまう。その体を安定させるため、大サタンゴースは東京を中心に原始の密林を登場させ、巨獣帝国の完成を急ぐ。だが光に打たれし子供を3人まで探し当てたところで、マッドギャランは最後の勝負に打って出る。それが45話「おれはサタンゴースの息子だ」の中盤までのあらすじだ。そして誰の邪魔立ても入らず、静かに戦い始めるジャスピオンとマッドギャラン。その戦いはまさしく東映特撮史上、最高にボルテージの上がるバトルシーンとなっている。荒野に、不思議な空間に、廃工場跡にステージをさまざまに変えながら行われるバトルは、まさに一進一退。どちらが勝負を制してもおかしくない状況だ。その最中、父・大サタンゴースと共に、銀河を負の生命体にあふれる帝国を築こうとする夢を口にし、自らも大サタンゴースとなって父の後を継ぐことを誓うマッドギャランであったが、倒れたジャスピオンに空中から襲いかかり、トドメの一刀を突き入れんとしたとき、ジャスピオンのプラズマブレーザーソードはマッドギャランの脇腹をえぐる! 勝負は一転してジャスピオンが制したのである。このときのカメラは、まさに死にゆこうとするマッドギャランの目線になっているから、その悔しさ敗北感がダイレクトに伝わってくるのだ。この名勝負はぜひご自分の目で確認していただきたい。

 そして息子の死を悲しむ大サタンゴースは、我を忘れて暴れ出す。これを制しようとするダイレオンも寄せ付けないパワーで圧倒してしまう。これが最終回「手をつなぐ全銀河の人類たち」の冒頭シーンである。
 この時点で、5人の子供を見つけることができたジャスピオンであるが、最後のキーとなる「光に打たれし赤子」だけが見つからない。勝ちに急ぐ子供たちは、エジンやジャスピオンのいいつけを無視し、5人だけで大サタンゴースを倒そうと試みる。だが5人が手をつなぎ、黄金の鳥を呼んでも現れる気配がない。ギルマーザ率いるマッドギャラン軍団の生き残りに追われた5人をジャスピオンが助けるが、そのジャスピオンも大サタンゴースになぶられるままだ。業を煮やしたエジンは、大サタンゴースに戦いを挑み、その圧倒的なパワーの前に敗北し、ついにはジャスピオンの腕の中で息絶える。こらえていた怒りが爆発し、ダイレオンを駆って大サタンゴースに戦いを挑むジャスピオン。そしてこのときとばかりに、5人の子供たちの手から黄金の鳥が現れ、ダイレオンの前に黄金の剣に変化した。まさに夢にまでみた瞬間だ。だが黄金の剣で斬りつけても、大サタンゴースはびくともしないし、すぐに再生してしまう。万事休すと思われたその瞬間、轟音を響かせ、大地が割れたと思いきや、そこから金色の光の玉が現れ、その光に乗って赤子の泣き声が響き渡った。その声を聞き、動きが制された大サタンゴースを、ダイレオンが黄金の剣で斬りつけた! そして体内に蓄積された強大なパワーを解放し、負のエネルギーから生まれたマッドギャラン軍団を巻き込んで、大サタンゴースは消滅した。ここにジャスピオンは勝利の凱歌をあげたのであった。

 クロージングでは、この度の一件の顛末を語るジャスピオンのシーンで締めくくられる。銀河バイブルに示されていた予言は、一人の勇者と5人の子供、そして宇宙を放浪していた赤子に託された。そこにあったのは、まさしく「協力と協調」である。銀河バイブルは、「全銀河の人類よ、手を繋げ、そして驚異に立ち向かえ」と示していたことになる。これをみていた当時、私は中学生であったが、この説教くさいくだりも、あまり冗談めかして受け取ったつもりがない。むしろまじめに「協力と協調」について考えたほうの口である。それはむしろ前作までの「宇宙刑事シリーズ」が、銀河連邦警察という凡宇宙的な規模の背景を持っていながら、それを生かし切れず、結局は地球担当の宇宙刑事にのみ、宇宙の平和を託してしまったことに対する反省から、このような「協力と協調」という答えを導き出した、本作の脚本家・上原正三氏の姿が見え隠れした気がしたからだ。言ってしまえば陳腐な説教かも知れない。だが巨悪に立ち向かうには人間同士の横の連携が必要であることを真摯に語ってくれる。そんな脚本を否定できる材料を私は持たない。ましてやその巨悪の成り立ちが、宇宙に存在する「負のエネルギー」という設定にしても、それが人間だれしもが持っている「負の感情」だとしたら、ジャスピオンの敵に寝返った幼なじみのタイガージョーの存在や、お金にまけてマッドギャラン軍団に入ろうとしたロッドとサチのエピソードの意味が、的確に理解できるはずだ。

 「巨獣特捜ジャスピオン」は宇宙刑事シリーズのありながら、脚本的意義の上では、宇宙刑事シリーズで完遂できなかったことを、宇宙刑事シリーズの枠をとっぱらうことで獲得できた物語である。見るべき箇所は多いし、熟達した等身大アクションと、巨大特撮アクション若々しさを堪能できる作品となっている。また「宇宙刑事シリーズ」を書き上げた上原脚本が目指した、一つの到達点ともなっている。そうした意味でも再度注目してもらいたい作品である。

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