2009年10月の「マンガ夜話」について

 約1ヶ月遅れでの話題で申し訳ないのであるが、10/21~23までBS-NHK2で放送された「マンガ夜話」について、少し書いておきたいと思う。念のため、今回のラインナップは以下の通り。

10/21 ケロロ軍曹(公開収録)
10/22 リストランテ・パラディーゾ
10/23 もやしもん

 さて、今回話題にしたいのは、最終日に放送された「もやしもん」である。この放送の冒頭では、メインパネラーが紹介されるときに、パネラーが簡単な作品の感想を言うのであるが、このときマンが・コラムニストの夏目房之介氏は、こんなことをおっしゃっていた。「「もやしもん」はある意味で「美味しんぼ」を超えた」と。実に興味深い。いいつかみするなあ、夏目さんと思っていると、話がこみいってきて、中盤から終盤に差し掛かるとき、この件について説明していた。つまるとこ、「「美味しんぼ」は、結局素材の新鮮さ、素材そのままの味が最高であるとの見解にたち、価値観を固定することで物語を構築したのだが、「もやしもん」は様々な見方、様々な考え方、様々な価値観があることを示して、それを豊かさだと言い切った。この点に「美味しんぼ」を超えたと考える。」という趣旨の発言をして、補足されていた。これに目から鱗が落ちるほどの感銘を受けた。

 これって、たぶん重要な示唆を含んでいると思う。「美味しんぼ」という漫画自体は、「食べ物漫画」というジャンルのパイオニアであろう。また「お仕事漫画」などのジャンル漫画の先駆けともなった漫画だ。この作品一つで漫画の価値観新しい側面が付加された作品なのだ。この漫画により、少年漫画の延長線上のバトル漫画や劇画経由のヤクザ漫画、スポーツ漫画が主流だった青年誌に、職業やジャンルを固定してとことんまで突き詰めるような形態の漫画が登場し出す土壌となった。そこから漫画の価値観は、たんなる娯楽の域を脱し、さまざまな知識や体験を活写し、そこに独自の物語を加えてドラマティックに脚色することで、市民権を得てきたのだ。そう、「美味しんぼ」は漫画が持っている表現の多様性を開拓したのである。

 問題はそこで、一つの結論を導き出し、すべてがそれで解決する道筋を提示してしまったことだ。「美味しんぼ」においては、あらゆる料理、食材を前に、「自然に即した食材」と「食材本来が持っている味」が至高の味であると言い切ってしまったことにある。それ以外の味の価値を、認めない方向に進んでしまったのだ。そして出来上がった料理の質や味が同等のものであった場合、その優劣は「もてなす心」に行き着いてしまうのだ。「美味しんぼ」自体は、山岡さんと栗田さんが結婚し、双子が生まれてなお現在も継続中の作品である。その道しるべは間違いなくおいしい食材を育む「地球環境」にむけられ、結果的に「エコ」を標榜するしかなくなってしまう。だがそんなきれい事だけで食材は供給されていないことは、我々自身がよく知ることだ。そうした画一的な価値観だけでは、生きていけない世の中である。「もやしもん」が書いているのは、そうした余分な出来事までふくめて、自分たちが生活し、口に入れているものの実態としての「農」に触れようとしているように見える。それはもっとふところが広く、そして多様でいて、そのどれにも価値があると言っている。わかっていて買う発泡酒とビールになんの差があるだろう。嗜好品である「酒」に何をもとめるかは、その人の自由だ。さまざまなビールがあり、さまざまな発酵食品がある。そこに存在する理由を知り、味を知る。それでいいのではないかと思うのだ。「冷やし中華」も「辛子明太子」も認められる世界でよくはないだろうか?

 同じ事がアニメや特撮番組ふくむサブカル世界周辺だって言えるだろう。私が自分でこのブログにおいて否定的な見解を示した作品群だって、それを面白いと見る人々がたくさんいることも知っているつもりだ。だからこそ、そういった作品の何が面白いのか、何がダメなのかを、議論したいと思うのだ。話を聞きたいのだ。それはネット巡回をすれば叶えられるのかというと、それははなはだ疑問だ。

 「ゼロ年代」という単語の背景にある「決断主義」というのは、はたして多様な価値観を認めているのだろうか? 実は「決断」の段階で、ある画一的な思考に準じて、決断してしまっている可能性はないだろうか? ゼロ年代的なものの中に潜む思考の一方向化があるとしたら。それは思考の硬直化を考える以前に、その考え方の根本を考えてみる必要があるのかも知れない。いずれにしても自分考え方さえも疑う必要がある。今はそんな時代だからこそ、多様な価値観があることを知るほうが、豊かなんじゃないかと思う。判断材料は多いに越したことはないからね。


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