劇場用アニメーションの栄枯盛衰

 私の父はすでに70歳を超えている。仕事をしていた時分はやや恐妻家であり、母が少し体が不自由になってからは、その世話をかいがいしく勤めている。そんな親父であるが、私が生まれる前の若い頃は、かなり威勢が良かったらしく、親戚の年下をつれて映画を見たり、飲みに行ったりしていたらしい。なんでもやくざ映画を見終わると、肩で風を切って歩いていたという。そんな親父に育てられたので、子供の頃から映画を見に行くのは、親父と決まってた。

 ある程度私が大きくなれば、映画に行くと言えば、親父から小遣いを貰って見に行っていたし、アニメーションの映画でも、親父につきあってもらうこともあった。「映画はやっぱりスクリーンで見なくちゃ」これは、私と親父の合言葉だった。だから映画を見に行くとなると、親父は進んでお金をくれたし、自分の小遣いで見に行く映画も、なにか特別な事をしている印象があった。それは映画そのものが、エンターテインメントでありながら、かつイベント事であった証拠だと思う。そのころはそういうイベント性の高い映画が多かったように思う。

 「さらば宇宙戦艦ヤマト」とテレビ編集版の「宇宙戦艦ヤマト」の2本は、テレビで見た口だ。特に「さらば~」の方は、年末に放映していていたのを、熱海の宿で見た記憶がある。すでに両親共に寝静まった中で、部屋の電気を消し、暗くした部屋で見たこの映画は、劇場で見たような感動があったことを記憶している。
 おそらく「東映まんがまつり」などにも連れて行ってもらった記憶もあるのだが、「ヤマト」にはまった同じ年、「スターウォーズ」が日本に上陸し、「ヤマト」ブームも相まって、日本はやおらSFブームが訪れる。
 大学時代の友人に話を聞くと、このときに「スターウォーズ」や「ヤマト」でSFにはまり、ミリタリーの分野に興味を持つ者は、やがて政治にはまる。またそうでないやつがおたくになっていくようである。また同時期に公開していた「宇宙からのメッセージ」を見て、熱が冷めて、そのまま日常にもどるやつと、本気でUFOの存在を信じたり、「ムー」の世界にはまるものなど、この時期の過ごし方でだいたいの方向性が決まると、彼はいいのけた。言い得て妙である。
 そして1980年の夏に、劇場用新作「ヤマトよ永遠に」が公開される。前年の夏にテレビスペシャルとして放映された「~新たなる旅立ち」の続編として公開された。「新たなる旅立ち」で謎の敵とされた「暗黒星団帝国」の正体が明らかになるとあり、あおりも上々。ヒロインの森雪とは別の美少女・サーシャの存在も手伝って、いやおうなしに盛り上がり、友人達とこぞって劇場に足を運んだ。まさしく夏休みのイベントだったのだ。

 だから夏休みに劇場用のアニメ作品が、毎年のように公開され、それが1つのイベントだった。「さよなら銀河鉄道999」、「わが青春のアルカディア」、などの松本零士作品、そして「マクロス 愛おぼえていますか」や「イデオン接触編発動編」も夏の盛りだった。別に夏のイベントはアニメだけではない。「インディージョーンズ」、「007」、「スターウォーズ ジェダイの復讐」なんかの大作も、夏の公開だった。

 実のところ冬休みや春休みだって、大作は公開されている。たとえば「あしたのジョー」や「火の鳥2772」、「ガンダム」の劇場版三部作は、春→夏→冬と、またいで公開されている。ただ夏の暑さというのが、印象に残りやすいからだろう。しかし1983年の春だけは、自分のその後のおたく人生を決定づける年だったに違いない。「ヤマト完結編」「幻魔大戦」「クラッシャージョウ」が劇場公開した時だ。

 「ヤマト」は子供の頃から自分なりに必死になって追いかけてきた作品で、それがこれで最後ってんだから、盛り上がろうってもんだ。
 「クラッシャージョウ」は、あのガンダムの安彦良和が監督するってんで、偉い盛り上がった気がするが、実際の映画は、面白いんだけど、どこか間延びした映画で、すこし退屈だった。あの面白さを正しく理解できるまでに、結構時間がかかった。
 「幻魔」にいたっては、角川書店がこれ以上ないってぐらいに押すもんだから、必要以上に期待していったら、期待以上の出来でものすごく満足した記憶がある。なんてったって、「地球を護る者」というキース・エマーソンの曲がひたすらかっこいいので、それだけでノックアウトされた。
 翌年には、「うる星やつら ビューティフルドリーマー」も公開されてたらしいけど、私見てません。

 ところがこれ以降、アニメの劇場用作品が、だんだん小粒になってくる。
 角川映画が唯一の望みとばかりに、「少年ケニヤ」や「カムイの剣」などを繰り出すが、いまいち。テレビ版のスピンオフっぽいものも多く、大作というにはほど遠い。ときおりオリジナル作品を繰り出すことがあっても、宣伝効果が低い。そして気がつけば、劇場用のアニメーションはあきらかに冬の時代を迎える。最後の砦は宮崎駿監督作品だけとなっていく。後続は圧倒的に少ない。「時をかける少女」ぐらいか。

 大作映画ってなんだったっけ? というぐらい、劇場用アニメーションから遠ざかっていく。我を振り返れば、長中期の休みなんてなくなった社会人になっており、時期も考えずに映画を見る日々だ。それでも最近では深夜アニメの隆盛もあり、やや大作感のある映画もないではない。ただ最近ではアニメーション作品を公開する劇場が減っている。一時期宮崎監督作品ばかりが注目され、大型の劇場ばかりが上映するものだから、小型の劇場がどんどんつぶれているし、公開規模も小さいせいもある。「エウレカセブン」なんて、全国ロードショーとかいうくせに、公開している劇場は、大都市圏の数件に限られている。これでは地方の人は見られないではないか。こうなるとDVDになるまで待つ人が増え、映画産業が廃れていく様相をみせている。特にアニメ作品はこの傾向が強い。

 アニメーション映画という表現媒体は、宮崎駿監督の作品群のおかげで、きちんと評価されるべき土壌を勝ち取ることが出来た。なぜその土壌を、いつまでも同監督の作品のためだけにあけておくのか。事実どれだけ非難されても、興行収入が期待されている宮崎監督作品は、いつまでも存在しない。商売しか念頭にない興行主は、放っておくしかない。最近では署名や嘆願書の存在など、何の役にも立たないことが知られて久しいが、自分たちが劇場の大スクリーンで見る価値があると信じた作品だけでも、劇場版となるよう祈りたいし、そんな作品に1つでも多く出会いたい。ただその前に、スクリーンでアニメーションを見る快感そのものを、一人でも多くの人々に知ってもらうしかない。
 
 とりあえず、今月末に公開される「エヴァンゲリオン」から初めてみてはいかがだろうか?
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テーマ : アニメーションの評論・感想
ジャンル : アニメ・コミック

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波のまにまに☆

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