宮崎駿作品に関するあれこれ

 先週の金曜日に「天空の城ラピュタ」が放映されると、今回も視聴率が良かったんだろうと漠然と思う。某巨大掲示板には実況スレがあったし、ラピュタ崩壊直前は、「バルス」の大連呼状態だったようだ。今回おもしろいのは、Twitterに関しての話題で、この「バルス」の瞬間でさえも落ちることがなかったというニュースだった。Twitterというツールがやっと認識されはじめた昨今で、これほど同時性や即時性を体現したエピソードもないだろう。それほどTwitter というツールが、人間の生のぼやきや思いの発露につながっていた事に改めて驚くし、ソフト的な優位性がこんな形で証明されたこともなんだか面白い。同時に地上波のテレビにおける最末期のエピソードとしては非常に優秀な話だろうし、DVDなどのソフトが充実しても、テレビという媒体が、いまもって「娯楽」をリードしている姿を見るにつけ、しかつめらしく「テレビの未来」などと議論しあっているテレビの、なんと無意味なことかを思い知らされる。だがそれらの背景として留意したいのは、この「天空の城ラピュタ」を含めた宮崎駿という個人、およびスタジオジブリが作り出したコンテンツの優秀性に起因するということである。

 テレビという媒体そのものには、清濁あわせもつ魅力があっていい。だから優秀な作品や感動的なドキュメンタリー、事実と意見を区別できる情報提供をする情報番組、娯楽を徹底的に追求するバラエティ番組などが混在しているところに価値があり、その中から視聴する側の人間が選択できることに意義がある。過剰な虚偽や人の心理条件に踏み込むような作りは問題があるだろうが、それとて享受する側の求める刺激をどこまで考慮するかは、作り手の良心に任せてしまうところがある。だからこそ倫理委員会が存在するし、機能するのである。

 そしてここに、だれもが優秀性を認めるコンテンツが存在する。その一端が宮崎駿監督作品という一つのブランドとも認識できる作品群である。私もそれを認めるのにやぶさかではない。こう表現するのにも、個人的な理由がある。

 私は「未来少年コナン」を見ていない。多分本放送の時に習い事をしていて見られなかったことに起因しており、あの時間のNHKのアニメ作品はほとんど見逃している。だがこの作品がSFとしても少年の冒険譚としても非常に評価された作品であることは知っている。またギガントに関するくだりについては、映画「超人ロック」の併映として公開された作品があり、私はそこで初めてあの丸みをおびたメカニックやそこにむき出しに現れる機械や鉄板の継ぎ目のあるレトロチックなメカ描写に目をむいた。だが時代はすでに「機動戦士ガンダム」のリアリティが提示された後の話である。「ああー、すげー」と漠然と感じながらも、それ以上の感動は抱けなかった。

 「ルパン三世カリオストロの城」については、異様に執着した記憶がある。スクリーンの画面が1ページに掲載され、サイドに台詞が書かれている6巻分冊のアニメ文庫を、何度も繰り返し読み、テレビで放映された時にカセットテープで録音し、すり切れるほど繰り返し聞いたものだ。アニメ文庫は当然そのお供になるし、ルパンの台詞はいまでも空で言えるほど暗記している。当然「ルパン三世(新)」における宮崎作品「死の翼アルバトロス」や「さらば愛しきルパン」なども、アクション満載であり、細かく描かれたディティールに面白さを感じた。だがそれも色あせる。はたしてこれがルパンであろうかと。「さらば愛しきルパン」などは、劇中で活躍するルパンは偽物であるというオチが用意されており、偽物の悪戯を本物の暗躍により精算するくだりは、物語の爽快さとぎりぎりのところにあるキャラクターへの不信感を感じた。こうしてルパン三世は、今も迷走の中にあるというていたらくだ。それはまさにクラリスを前にして本心を明かせない、微妙なルパンを際立たせるし、良い意味で下世話さが信条であるルパンを包み隠してしまう。しかも宮崎駿監督は、これを故意にやってのけたようだ。

 そして「風の谷のナウシカ」が春先に公開される。1984年のことである。月刊アニメー序に連載されてた漫画は、まだ行き先不透明なままのでありながら、アニメとしてどのように完結させるのか、この1点のみで視聴した。そしてこの作品に触れて俯瞰できたのは、人間の身勝手で好き放題汚してしまった地球の浄化システムであった「腐海」というシステムと、それでもまだ地上を汚そうとする人間のおろかさだった。聖女としてのナウシカの人となりはどこかオミットされ、小さなナウシカを含めた虫たちを含めた腐海という自然が、ひたすら意味を語りかけてくるかに見えた。それは当時中学3年生だった私には、完全なエコロジーの姿に見えた。現在の私の「エコ心」の中心にはいまでも「ナウシカ」がいる。だが当時の興行的には、やはり併映の「名探偵ホームズ」におけるがちゃがちゃしたアクションと笑いが満載された漫画映画の方が面白く、宮崎駿という個人に対する思い入れは少なかったように思う。

 次作「天空の城ラピュタ」を初めて見たのはテレビ放映であり、その時のビデオを繰り返し見た。それほどに漫画映画としての楽しさを内包しながら、最後には地上に帰れという強いメッセージ性が、高校2年生の心を捉えたのである。ここにアニメ監督・宮崎駿という人物を、改めて認識した瞬間であった。前半の牧歌的なくだりは盟友高畑勲とのコンビで作りだした名作アニメのイメージがあり、戦車や飛行機類の描写は「ナウシカ」同様の緻密さであり、ラピュタのどこか浮世離れした伝説やSF設定、そして落としどころの自然と人間の密接な関係と、これまで宮崎駿が自作でしつらえたものを、惜しげもなく投入した作品である。どうやら興行的には苦戦した作品だったらしいが、公開終了後より年々歳々評価が高まるにつれ、宮崎駿の名前が浮上するきっかけとなった作品である。

 だから「となりのトトロ」を劇場で見に行くことは自然の流れだったのである。疑問点があるとすれば併映の「火垂るの墓」の存在だろう。私はいまでも「トトロ」の興行成績がふるわなかった事情は、「火垂るの墓」にあると勝手に信じている(おそらくちがうけど)。けれど実態は、その年の映画賞を総なめにし、ファミリーピクチャーとして定着した本作は、レンタルビデオへの子供の参入を許し、子供が繰り返し見るアニメのナンバーワンになっていく。私自身も姪たちにせがまれるまま、「トトロ」と「アンパンマン」の無限ループに引きずり込まれた思い出がある。だがそこにある日本の原風景や、そこで生き生きと暮らす年寄りと子供の組み合わせによる農村のコミュニティを奇妙に感じながらも、自然の代弁者のような振りした「トトロ」の存在故に、都会の核家族や足早に流れていく日常の時間を否定していることをオブラートに包むことで、寓話として完成してしまった感のある作品となった。(これと「耳をすませば」や「おもいでぽろぽろ」を比較すれば、主張が明確すぎる2作品よりも「トトロ」の完成度が高いと思えるのは、こうした事情だと思う。)これ以降、作品批評の眼に触れることで、宮崎駿作品は袋小路へ突き進むことになる。

 続く「魔女の宅急便」は、スポンサーの意向により原作付きの物語をアニメ化したものである。「トトロ」を作ったことで、やりたいことこはすべてやったと思っていた宮崎駿監督にとって、原作付きにチャレンジするのが果たして魅力的な行為だったか、それ以降のオリジナル作品を見てもなんとなく透けて見えるような気がする。その一方で、働く女性を持ち上げるようなかたちの切り口で批評される作品である。性別として明確であるが故に、魔女として未成熟な少女「キキ」の職業婦人としての側面ばかりがクローズアップされている。それは宣伝媒体でも同じことだから、狙って作られたのであろうが、キキの行動原理や本来生まれ持ったバイタリティを見ていると、少女キキは男の子に置き換えてもまったく遜色なく動くことがわかるはずだ。なぜこの作品が「女性」の側面だけで語られるのか、力が未発達で制限された魔法使いが、なぜ女性の属性で語られるのか。そこに疑問を持たせない作りになってはいる。だけど宮崎駿監督が、キキを動かすに当たり、少女の行動規範にどこまで意をくだいたかについては、少しばかり疑問が残る。私はキキの行動原理に男女差がないものとして見ているので、作品自体の楽しさとうらはらに、あつかわれかたに不満がある作品である。

 次作「紅の豚」は、宮崎駿監督が湾岸戦争を尻目に作った娯楽作品である。本来航空会社の機内上映作品として企画された本作は、紆余曲折を経て劇場用作品となって私たちの目の前に現れる。そこに現れたのは戦争や戦争行為を小馬鹿にしながら、戦争の道具である飛行機の気持ちよさを追求したような作りであり、「漫画映画」を作っていた宮崎駿の本領発揮ともいえる内容の、気持ちの良い作品となった。中盤および終盤の戦闘艇の空中戦の楽しさは、男の子のアニメだと思えるし、大人の男としての照れの部分も含めて、今の自分に向き合ったように作られている作品だ。

 さて問題は「もののけ姫」である。この作品については、個人的に良い思いを持っていない。問題なのは他でも言及されているとおり「もののけ姫」が「ナウシカ」の再生産品としか、私の目に写らなかったことである。だからカタルシスの小さい物語、神自身が語りかけてしまう陳腐さ、そして繰り返される「エコロジー」がらみの説教にうんざりしてしまったのである。そして本作につけられた「生きろ!」というコピーが、それらすべての作品メッセージを相殺する、人間側のエゴイズムに見えてしまうことで、宣伝的にも興行的にもいらいらさせる結果となる。それは宮崎駿監督とは別に、プロデューサーの鈴木敏夫氏をして仮想敵に設定してしまうことになる。これによりそれ以降のジブリ作品を、私は「お金を出してみない」という行為で自己保身に走ったのである。

 これ以降、私の宮崎監督に関する思いは、ひたすらボルテージをさげていく。いわくエコロジー的な言説の数々は、私を疲れさせたし、建設の現場にいた人間として、開発と自然破壊というアンビバレンツな意識は、常に念頭にあったから、建設側の片棒を担いでいた人間として、彼の物言いに耳を傾ける必要性を感じなかった。だからとある年末ににわか宮崎アニメファンとなった常務取締役を、酒の席とはいえへこましたことがあった。二回りも上の上役を相手に、1時間ほど議論ふっかけたのである。今もって大人げない行為だったと反省している。
 だが精力的に仕事を続け作品を世に送り出し、作品の是非を世界に問うて勝負している日本人である彼を、今なら大人の男として認めることができるかも知れない。先頃発売された「CUT スタジオジブリ、その現在、過去、未来」という記事を見ていると、そう思えた。まあよそ様のブログのように、どこまで気の利いたことが書けるのか疑問はつきないが、せっかくだから「もののけ姫」以降の作品にまじめに向き合ってみようと思う。


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