ストライクウイッチーズ~少女たちの第二次大戦~

 「魔女」とはそもそもどんな存在だったろうか? 子供の頃に詠み聞かされた魔女は、黒い衣装に身を包み、とんがったツバの広い帽子をかぶり、なぜか老婆の姿で腰をかがめるように登場し、なにやら大きな鍋にあやしげな物を煮込んでいる姿かもしれない。それはどことなくこれから始まる物語が暗くしんどい物語であることを予感させる人物であるし、なにより魔女そのものが主人公に試練を与える存在である。「白雪姫」の物語に登場する魔女は、そのまま白雪姫を陥れようとする女王の仮の姿であるから、この老女としての姿が人間の二面性の醜い部分を担当していることは明らかである。そう考えると、魔女なんていないのかも知れない。魔女という姿を借りて、作中の人物に試練を与えるという役割を担って登場する、得体の知れない何かだという事もできる。だが日本人のイマジネーションは、そうした魔女のイメージを払拭し、「魔法で様々なことができる女性(少女)」という設定を作り出す。「魔法使いサリー」がブラウン管に登場して以降、テレビアニメのジャンルとして頭角を現した「魔女っこもの」というジャンルは、「キューティーハニー」を経て戦う戦闘美少女を生みだし、「美少女戦士セーラームーン」や「少女革命ウテナ」などに結実する。このジャンルは現在でも「プリキュア」シリーズとして確固たる地位を獲得しているし、本道である魔女っこものも、「ミンキーモモ」や「クリーミーマミ」などを経て、「しゅごキャラ」などに受け継がれていく。今回取り上げる「ストライクウイッチーズ」という作品だって、本質的にはこれら魔女っこものの系譜であると言い切りたい。

 なぜこうした歯切れの悪さが残るのかと言えば、「魔女っこもの」の物語の前提となる「魔法」自体が物語のキーとなり、それが主人公の願いや願望を叶えるために発動されることが必要だからであるが、この「ストライクウイッチーズ」は、その多岐にわたる魔法的能力を、戦闘行為に用い、なおかつその使用目的があまりに限定的な点だ。それゆえ本作は魔女っこものとしてはあくまで「亜種」としての位置づけしかできないし、むしろ「萌えアニメ」というジャンルこそが妥当となってしまうことが、本作の位置づけを曖昧模糊としたものにしている事情だと思う。だがしかしその物語に秘めたるテーマそのものは、かなりしんどいのではないかと思うのだ。

 「ストライクウイッチーズ」は2008年7月より全12話で放送された作品である。いろいろ調べてみると、その原作に相当するのはあくまでイラストであり、アニメ企画としてはOVAが存在するようであるが、こちらについては未見であるのでとりあえず触れないことにするので、ご了承いただきたい。
 物語は1944年の地球。そこでは魔法が存在する。ある日突如として空中に現れた黒い雲。そこから現れた謎の物体により、街は壊滅する。そしてその勢力範囲は欧州全域におよんだ。謎の物体「ネウロイ」に対抗するべく、人類は切り札としてストライクウイッチーズを結成する。そこに集まったものは、足に機械の「ストライカーユニット」をはき、魔法の力でそれを操り、さまざまな軍用兵器を用いて勇敢に立ち向かう、まだ年端もいかぬ少女たちであった。
 日本のような国「扶桑皇国」からやってきた主人公・宮藤芳佳は、同国出身のウイッチである坂本美緒に導かれ、ストライカーユニットの開発者である父の行方を知るために、ドーバー海峡に渡る。そこでであった仲間たちと共に、ネウロイとの戦いに飛び込んでいくことになる。はじめは新人軍曹として訓練に明け暮れる生活であったが、仲間たちとふれあい、技術を磨いていくことで、徐々に主戦力となっていく。
 しかしネウロイとの戦いの中で、ネウロイを理解し、戦いを回避することを願うようになる芳佳は、2度の命令違反を犯す。その気に乗じてストライクウイッチーズたちの立場を転覆しようとする一部の軍人により、ストライクウイッチーズは、一度解散に追い込まれてしまう。しかしネウロイへの総攻撃を開始した軍人たちは、自分たちの技術により窮地に追い込まれることになる。それはネウロイの技術を転用した報いでもあったのだ。巨大な空母にとりついたネウロイを迎撃に向かうため、再び結集したストライクウイッチーズがいままた空に羽ばたいていく。そして芳佳の活躍で敵を撃滅し、この戦闘を最後に、地上はネウロイの驚異から解放されたのである。

 少女たちがストライカーユニットと呼ばれるモジュールを両足にはく、ましてやパンツは丸見えである。特に戦闘時にアップになる股間のショットを観ると、無用なほどに線が多い。ユニットが大戦時の戦闘機が意匠化されたデザインでありながら、実に近代的にまとめられたデザインであるのに対して、手持ちの武器はまさしく第二次大戦で使用された兵器ばかりというギャップ。そして彼女たちが身にまとう衣服(上着のみ)も大戦中の軍隊の軍服を簡略化した物である。どこか「ヘタリア」にも通ずるデザインである。
 そして繰り返されるおっぱいネタの数々。私はDVDで観たので丸見えであったのだが、きっと当時でも湯気で隠されていたんでしょうなあ。しかも主人子のサイズはお粗末というお約束もきっちりしている。しかも主人公はパンツではなくスクール水着であるというこだわりもまた、その筋の方々を驚喜させたことだろう。そんな意味で見た目のイメージはまったくもって今時の「萌えアニメ」の典型のような構成である。

 また敵である「ネウロイ」のイメージは、ほぼ毎回形状が異なるのであるが、その形状はステルス機やロケットなどの、地球上に存在する航空機などをモチーフにした形状となっている。そういったものが毎回変形し、キューブ型でありながら、小型のキューブに分裂してみたり、二段ロケットが分離してみたりと、どのような形状に変化してウイッチーズに攻撃を仕掛けるのかというのが楽しみの一つである。ただそこにあるのは撃たれても切られても再生する能力を有しながら、コアを破壊されると、光の結晶に還元されるというところが面白い。特に光の結晶がきらきら舞う様子は、ウイッチーズたちの勝利の凱歌とも捉えることができる美しい情景である。ただしその目的などが最後までわからずじまいである上、最終的には自分たちと同じ技術で作られた「ウォーロック」に隠されているコアを取り戻したいような様子を見せていた。また芳佳と対峙した「もどき」などの存在は、ネウロイがなんらかの意志をもって人間と接触しようとしているようにも見える。そうしたイメージから、「エヴァンゲリオン」の「使徒」にも似ているし、「機神兵団」の「エイリアン」にも見えてくる。

 そうしたヴィジュアルに支えられながら展開された物語は、主人公・芳佳が「だれかを守る」という戦うための大義名分を手に入れるための物語であり、それがウイッチーズ全員の共通した思いであったことで、最終的に心が一つに重なる展開を見せる。その流れそのものはまことに感動的であるのだが、これだけのヴィジュアルに支えられた物語としてはいささか軽めである。なぜ第二次大戦の意匠を取り入れたのかを検証する必要があるだろう。むしろストライカーユニットというまか不思議な装備に、現実よりも後退した重火器の類を組み合わせる事情は、単なる原作者の趣味の範疇を超えた事情が垣間見える。

 近代における女性の社会進出はめざましいと言われることは、周知の通りである。その反面「草食系男子」などと牙を抜かれた男性が跋扈して平気になってしまった世の中で、いまさら女性の強さを強調することに意味はない。漫画「美少女戦士セーラームーン」の幕間のページに、原作者の武内直子の直筆で、「大好きな男の子は女の子が守ってあげなきゃ」と書いてあるのを観たことがある人もいるだろう。時代は間違いなくそういう流れだったのである。ではそうした日本における女性の社会進出の流れはなぜ出てきたかと言えば、それは第二次世界大戦後の日本の状況に端を発していることは間違いない。戦争に敗れ、意気消沈している男性たちの影で、子供に食べさせるために強くならざるを得なかった女性の姿は、後の「ウーマンリブ」と呼ばれる女性たちのひな形である。このときに女性たちは何をおもったのか。それは「男どもはなぜ戦争をしたがるのか」という命題だったろう。私たち女性にまかせておけば、戦争なんて起きはしなかったのよ、という女性たちの声の固まりが、社会的に勢いを無くした男性陣たちの間から漏れてきた物が形になったのが、現代の女性の社会進出である。だが大戦当時の女性は、子供を産み育てるために、銃後の女子となるしかなったのである。むしろそういう役目を押しつけられてきたのである。そこからの反発は、男性自身が男性の論理に従って世界を動かし、戦争を始めた罰としての終戦しか与えられなかった。そして具体的な事情をしらないまま、戦火におびえて暮らした女性の立場を考えれば、敵であるアメリカ軍などは正体不明の敵であっただろう。

 つまりネウロイとは正体不明の敵のことであるし、ストライクウイッチーズが戦う理由が「大切な人を守る」ことだとすれば、それに合致する日本の歴史的背景は、第二次大戦後にたくましく生き延びた女性たちの姿に他ならない。その証拠に、「守る」以外の理由が認められていないのは劇中明らかであるし、そんな女性たちがあっけらかんと基地周辺で好きなように暮らしている姿も、規律で縛られた男性自身が作り上げた軍隊とはことなる事情で成立している故である。表面的に観て、これほどのんきな戦争などありはしない。それはおおらかに時代を乗り切った女性への憧憬であるし、そうした女性の力強さを認めている男性自身が、力なさげに道を譲っている姿でもある。そうしたアイロニーがごく自然と出てくれば、女性の社会進出とアニメの主人公が女性中心になっている事情は、どこか根っこが同じような気がする。ごく簡単に考えてみても、疲れた男性よりも元気な女性が主人公の方が、観ていて気持ちがいいはずだ。それは男性が男性キャラクターを書けなくなっている事情の奥にある、女性への畏怖だろうし、女性に感じている可能性でもあるだろう。

 だがそろそろ女性だけで物語を作ることにも飽きがこないだろうか。少なくても観ている側からすれば、飽きてきている。最近では「もやしもん」や「げんしけん」のような作品で、元気が無くても現実が切り取れる男性キャラクターで物語を回す作品だってあるのだから、そろそろ元気な男性キャラクターが主人公のアニメが観たいと思っても、無理からぬ話である。そう「ドラゴンボール」とか以外でね。


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No title

はじめまして。
小さなアニメレビューブログをやっている者です。

このレビューを見て感服しました。ここまで書けるのかと。
以下、失礼なお話になったら申し訳ありません。

このアニメの何が凄いかと言えば
真面目にレビューすればするほど、
どうしようもなく笑えてくるあたりだと思うのです。

なので、私もだいぶとがんばってはみたのですが、
このような文章力も分析眼もなく、ネタでお茶を濁す結末になってしまいました。

すごかったです。ありがとうございました。

No title

がたがたさま
 コメントありがとうございます。ええと、そのお、お褒めいただいてありがとうございます。
 おっしゃるとおり、基本的にネタアニメですので、逆に大まじめに問いただしてみたくなったというのが、真相なんです。戦う少女たちの守られる立場の男性というものに、日々歯がゆさを感じています。とはいえ、それが陳腐に見えてしまうのも、この作品を初めとする現在のアニメの傾向かもしれませんよね。今後ともお付き合いいただければ幸いです。

 がたがたさんのレビューも拝見させていただきますね。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
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