再編集映画を見る視点

 最近立て続けに見た映画が、おおむねテレビ版の再編集による劇場版であった。「マクロスF」しかり「ドキュメントダグラム」しかり。それ以外にも「長編映画ウルトラマン」やらを見ていると、こうした再編集映画というのが、映画のある一形態となっていることに気がつく。絶賛公開中の「東のエデン」も、ひっそりとながらテレビ版再編集映画を公開しており、それが興業として現在公開されている映画に対するプロモーションとなっている。

 例えば「攻殻機動隊SAC」の再編集DVDにしても、「笑い男事件」や「個別の十一人事件」などに的をしぼった形で編集し、都合によっては新作カットを入れることで、前後関係の不都合を修正し、1本の映画の質として完成させようとしている。また我々がよく知るところでは、「機動戦士ガンダム」劇場版3部作や「機動戦士Zガンダム」の劇場版3部作などがある。これらが興業として映画たり得た事情や背景には複雑な版権が絡むので、一概に論じることはできないのだが、少なくてもガンダム3部作のまとめと、「Z」のまとめとはまったく異質なものを感じる事は理解してもらえると思うのだ。より単純にいえば、面白かったかそうでないかの差は、歴然としているだろうということだ。

 かつて「宇宙戦艦ヤマト」は中途半端に放送期間を短縮されながら、その後劇場版において人気に火がつき、アニメブームを牽引してきた経緯がある。このとき「宇宙戦艦ヤマト」という物語は、本来の未知なる宇宙に乗り出して、冒険をする物語であったはずが、ガミラス帝国との戦闘に主眼をおいた方針により編集された映画となっていたために、それ以降の「ヤマト」シリーズの方向性を決定づけてしまったといって言い。未知なる宇宙を冒険する驚きは極力抑えられ、第二次大戦に起因する日本の敗戦の業を叩きつけるような作品に、その本質が変化してしまったのである。
 「機動戦士ガンダム」が再編集された結果、アムロがニュータイプとして覚醒する様子が、じっくり描かれることになり、それ以外のエピソードをそぎ落とす結果になっても、ニュータイプが未来を開く可能性を示唆して物語が閉じていたので、本質的な感動は、むしろテレビ版よりも増したと思える。ところが続編である「Zガンダム」については、「A New Translation」とされながら、物語に手を入れ、あまつさえラストシーンの哀しい情景まで改編している。これがどのような受け止められたかは、あえてここでは言及しない。だが再編集映画とは監督の権限で、顧客のニーズを無視してでも、ここまでやってのけることができるものなのである。そこにあるのは「健やかな物語」にするという、監督・富野由悠希氏の考えに基づくものだったからだ。

 これはそんなに難しい話ではない。様々な要素をふんだんにつぎ込んで構成されてテレビ版を、1本の映画に再構成するためには、なにかしらの視点が必要になる。
 「てこの原理」というものをご存知だろう。支点、力点、作用点という3カ所に働く力のバランスで、小さな力で重量のある物体を動かす仕組みの原理である。「力点」を製作状況などとすれば、「支点」はまさにこの製作スタンスとなる「視点」に他ならない。そして観客の感動が「作用点」となる。再編集映画にはこうした「てこの原理」のような物理法則にも似た原理が必要なのだろう。「ドキュメントダグラム」が「政治闘争」に視点がおかれて再編集されたことが好例である(もう少し尺の制約が無ければ、さらに充実した映画になったはずだ)。

 逆説的ではあるが物語を漫然と繋げただけの「海のトリトン」の編集版(富野氏はチーフディレクターにもかかわらず、本作の編集に携わっていない)や、「ヤマト」のブームに乗っかるように上映された「科学忍者隊ガッチャマン」、ヤマトやガンダム同様に打ち切りの憂き目にあった「宇宙戦士バルディオス」の前半部分など、視点がはっきりとしない再編集版は、やはり作用点がふるえないのだろう。これらの作品は、できるだけ短時間にテレビシリーズの内容をおさらいするという、最低限の約束が守られているだけである。ここには制作側の落とし穴がある。もとの素材が出来上がっている中で、そこそこ人気の作品を映画化して集客すれば、とりあえず興業になり得るというものだ。だがそうした編集作業がまったく安価ではないことは、新たに書き起こされた新作作画や、画質調整などにかかる手間、結局やりなおしになるアフレコなどを考慮しても、決して一方的に黒字になるものではないのである。しかもファンにすら見捨てられたら、それこそ大赤字だ。再編集版の劇場公開とは、おいそれとできる代物ではない。

 ところが、昨今の再編集版映画の事情が、これらとはかなり異なってきている。たとえば「交響詩篇エウレカセブン」の劇場版は、素材としてテレビ版を使いながら、物語も作画もまったく新規に作り起こしている。今回の「マクロスF」も、劇場用にあわせてテレビ版とはことなる物語を作り出そうとしている。「東のエデン」にいたっては完全にテレビ版の後日談となる物語だ。そこにあるのは制作陣の熱量やパッション、新しい物を作り出そうとする力だろう。そうすることでテレビ版とはことなる価値観を持つ作品が出来上がるのである。かつてテレビ版「超時空要塞マクロス」が劇場版になったとき、すべてを作り直して再構成し直したうえで、「三角関係、歌、バルキリー」という三種の神器を使いこなしたことが、一つのエポックとなっている。「マクロスF」に関連する書籍の中で、河森監督が「マクロスプラス」に関しては、そもそも劇場用作品を意識して作っていたので、元のOVAに追加シーンを入れるだけで映画たり得たが、「F」に関してはまったく作り直すことを前提としている旨のインタビューがあった。製作状況や時代もあるだろうが、そうした再編集映画の最前線においても、作り手の意識が変革していることが伺える話である。その一方で2部作で公開された「天元突破グレンラガン」も記憶に新しい。そしてファンへのサービスとして、どこに感動の山を持ってくるかを意識をくだいて作られた作品は、どこまでも感動を呼び起こすつくりだったし、後編のラストバトルはむしろテレビ版からの想像を遙かに超えた映像と感動を届けてくれた。古き良き再編集映画の体裁をとりながら、新作カットをふんだんに入れて、テレビ版とは異なる新しい地平を目指す目論見は、観客の涙できっと報われたことだろう。そこにはテレビ版の物語を俯瞰する以上の価値があったと思えたからだ。

 昔「銀河鉄道999」という劇場用映画は、同時にテレビ版がありながら、その先を描くことで、鉄郎の旅のゆくえを示し、もはや必然であるメーテルとの美しすぎる別れで幕をとじ、最高の感動を与えてくれた。キャラクターも新規に作り直した精悍な鉄郎の面影は、まさに青春の幻影であるし、人間が生きる一生という名の果てしない旅路を擬似的に体験したと思わせた。本作は再編集映画のくくりではない。また宇宙戦艦ヤマトのシリーズが、テレビ版の再編集版は1作目だけというのも(「ヤマト2」は「さらば宇宙戦艦ヤマト」のスピンオフだけど)、制作陣のこだわりだろう。けれど劇場用映画という時間制約は、テレビ版ほどの情報量を入れ込みにくい点も指摘できるし、再編集映画はテレビ版を見ていないとわかりづらいという指摘もある。劇場用新作映画と再編集映画に、本来的な善し悪しはない。そうした興業形態の違いは、あくまで制作陣の英断が形となって現れているに過ぎないからだ。だが少なくても再編集映画ならば、先の「てこの原理」ぐらいはしっかりしてないと、そもそも映画として成立しない。

 ある意味で再編集映画というジャンルの大家である富野由悠希監督が、劇場版ガンダムの2枚のサントラアルバムに、「ツギハギ映画 考1&2」という文章を寄せている(こうした文章はCDやレコードを買わないと見られないのでやっかいです)。最後にここからの文章を引用して、本稿を終えよう。

「一つの作品とは様式(フォルム)として整っていなければならない。これは作品を成立させるための最低限の条件である。(中略) が、であればこそ作品としての最低条件だけは満たしていなければ、観ていていちいちひっかかって、お楽しみどころではなくなるのだ。 これがツギハギ映画の根本的な欠陥といえる。」(「ツギハギ映画 考2 富野喜幸」CD「MOBILE SUIT GUNDAM・2」より)

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