GR-GIANT ROBO-~実景の中でうごめくもの~

  「GR-GIANT ROBO-」は2007年にネット配信などで放送、2007年10月に地上波で放送された作品である。放送形態がややマイナーながら、2004年に物故した横山光輝氏の漫画を原作としながらも、「世紀末という大きな時代の節目に『ジャイアントロボ』を代表とする巨大ロボットが活躍する、原点回帰的なアニメを見たい」(wikiより参照)という横山氏のたっての願いから企画された作品である。結果的には原作を大きく逸脱する作品ではあったが、「巨大ロボット」が現実の街を跋扈する姿にひたすら感銘を覚えた作品でもあった。

 物語は主人公の少年・草間大作が、南与那国島の沖合で巨大なロボットに出会い、その操縦者となってしまうところからスタートする。この巨大ロボットたちは、世界各国の遺跡の中から発見されており、そもそもは5万年前の宇宙の侵略者を撃退するために製作された、超古代人の作ったロボットであった。そのうちの1体であるGR-1を手に入れた草間大作は、「BFN」という国境を持たないネットワーク放送局によるカメラに捉えられたことにより、世界のVIPとなってしまう。この世界ではアメリカ国防総省を主体とする「UNISOM」と、世界の遺跡から発掘されたGRシリーズを運用し、機甲テロをしかける「GRO」という2大組織が激しく対立しており、大作はこの2つの組織に追われる羽目になる。なすべきことを知らない大作は、当初UNISOMに身を寄せ、GROのGRシリーズのロボットたちと戦っていた。だがGROの2面作戦により、大作はGROに拉致されてしまう。大作はGR-1を手に入れた時に出会った少女ヴィーに導かれて戦っていたつもりであったが、大作の目の間に現れる彼女は、いつまでたっても事の真相をあかさず、大作の質問にも答えない。しかも大作が正義と信じていたUNISOMも、ヴィーから培養されたクローンであるディーを監禁しており、大作の拉致はディーの裏切りであったから、大作はなおさらUNISOMの正義を疑うことになる。そしてGROのアジトであるフランスで、大作は心を閉ざしたヴィーと出会う。そしてヴィーは大作に伝える。「GR同士が戦ってはいけない」と。だが2大組織は戦いをやめようとはしない。激しくぶつかり合う2大組織は、自らが手に入れたGRを使い、その操縦者たちの命を消費して、互いの勝利のために戦い続ける。だがその2大組織は、BFNの実質的な指導者である一人の人間が作り出した戦争だったのだ。彼は2大組織を操り、その闘争をBFNにて世界中に放送することで人々の恐怖心をあおり、そのことで世界経済を自由に操ろうとしたのである。だがそんな愚かな理由により始められた戦争の結果は、すべてを破壊し尽くすGR-0を目覚めさせる。地球滅亡のカウントダウンが始まる中、ようやくすべてをさとった大作が、ヴィーと共にGR-1に乗り込み、GR-0との戦いにおもむき、GR-0をたたき壊すことにより、世界は滅亡の危機から救われるのであった。

 人間的なラインを残しながら、無骨で巨大ロボ然とした立ち姿。重量感もたっぷりであり、一見してすぐに横山光輝デザインを踏襲したとわかるデザインであるGRシリーズのデザインは目を見張る。どちらかと言えばその細かなデザインは3D-CGの出番のように思われるが、ところがどっこい、本作ではほぼ完全に作画により描かれている。そのかわり戦車や自動車、飛行機や戦闘機、ヘリコプターなど、現有戦力は3D-CGにより描かれており、きちんとその動きが差別化されている。だからロボットのアニメーションらしいダイナミックな動きも、CGによるちまちまとした動きも、両方とも体験できる作品となっている。それはかなりいいとこ取りの制作スタイルではある。だがそれがベストチョイスであることは、一目見ればご理解いただけるはずだ。

 本作のGRシリーズは、太古の遺跡から発掘された、失われた文明の遺産であるという設定である。このあたり、「ウルトラマンティガ」における超古代文明の光の巨人であるティガの設定を、最終回で掘り下げた脚本家・小中千昭氏の手腕がさえる設定でもある。どちらかというと「デビルマンレディ」などのゴシックホラー的な色合いの強い脚本家である氏が、「ビッグ・オー」などのような巨大ロボット物と超古代文明というタームを融合してできた本作の設定は相性がいいのだろう。全編一人で書き上げた物語は、世界を牛耳る組織が、すべて一人の人間に帰するという大胆なからくりを含めて、たった1クールのシリーズでは収まりきらないスケールの物語となっている。むしろGRシリーズの設定をすっ飛ばしてでも、世界の構造そのものに焦点を当てられた物語は、小中氏が世界を信じていないことがわかるし、そういった世界への疑いがそのまま超古代へのあこがれにもにた設定を作らせてしまう背景にもなっている気がする。

 こういってはなんだが、本作に登場するキャラクターには、あまり入れ込める人物がいない。美少女設定のヴィーでさえ、多くは語らない少女であることから、綾波レイの焼き直し臭いし、主人公ながら状況に流されるままの大作にはまったく入れ込めない。どこか主人公格のキャラクターには自主性が乏しいからなのだが、むしろ彼らの周囲に登場するテキサスやGROの司令官マイク・ホッジスなどの、剛性な戦う理由の方に入れ込んでみてしまう。大作たちが自分のアイデンティティや戦う理由に悩む姿よりも、彼らが戦いの場に身を置いて、どこまでも戦いたがる姿の方が理解できる気がするのだ。それをして自分の年齢が彼らに近いからとはいいたくないのだが、その「男」の部分にこそ、ロボットアニメのアイデンティティさえ感じるのだ。

 本作の特徴の一つは、実際の我々の世界での出来事であることだ。序盤の物語で登場するお台場でのGR-1とGR-8やGR-3との戦闘シーンや、大作があてもなくさまよう新宿の風景がそれを伝えている。この点におけるスタッフの主張は、「実際に私たちが住むこの町に、巨大ロボットが現れたらどうだろう」という問いかけなのである。かつてのアニメは、名前だけの架空の街であった。その一方で特撮作品は積極的に実景を取り入れてミニチュアの街を作り込み、怪獣やウルトラマンをそこに登場させることで、現実感との対比やリアリティを追求していった。アニメでもこうした特撮側のセンスを取り込むことになるのだが、そうした動きはOVAや劇場用映画という大舞台でしかなしえなかった。例えば「破邪大星ダンガイオー」での地球でのロボット戦闘シーンでは、新宿が舞台に選ばれているし、富士の樹海を舞台にしたのは「冥王計画ゼオライマー」での戦闘シーンだ。またルパン三世(新)最終話「さらば愛しきルパン」の序盤のシーンでは、やはり銀座や新宿の町並みを自由に動き回るロボット・ラムダの活躍シーンが登場する。いずれもこうした危険な戦闘が、もし私たちがよく知る町中で行われたらという過程に基づいてのシーンである。

 本作もそうした狙いがあって実景を取り入れていることは容易にわかる。だが本作で登場するのは超古代の遺跡から発掘されたロボットであるし、それを撃退しようとするのは現代兵器なのである。ここに潜むダブルトリックに注目したい。
 これらの実景の戦闘シーンで描かれるのは、どこまでも強い超古代の巨大ロボットの姿であり、そのロボットに攻撃を仕掛けても倒すことができない現行兵器の姿である。同時に破壊される町並みは、強大な力に蹂躙されるがままの脆弱な世界の姿なのである。これこそが実景に巨大ロボットを登場させる本当に意味である。つまり、我々が住んでいる世界の脆弱さであり、守ってくれるはずの近代兵器も、ひとたび訳のわからない巨大で得体の知れない「何か」に、いとも簡単に破壊されてしまう脆弱さを表している。それは単なる不等式としての「巨大ロボット>現代兵器>自分の住む街」という図式ではない。
 これに報道としてのカメラの映像として、BFNが放送する映像が入り込むことで、われわれがかつて目にした「湾岸戦争」の情景や「9.11」の状況を想起させるに及び、そうした危険性は「対岸の火事」ではないことを、私たちに知らしめる効果をもっているのだ。しかも巨大ロボに蹂躙されながらも、これを攻撃する兵器により破壊されている町の姿は、まさに近代兵器の危険性まで見せているのである。
 ましてやこの物語世界の構造が、たった一人の人間の利己的な経済活動により引き起こされている恐怖感は、他の作品ではなかなか味わえない、じわじわと忍び寄る、まとわりつくようなイヤな恐怖なのである。それは映像として我々にあてて一方的に送られてきている情報の真実性を疑わなければいけいということを、ダイレクトに教えてくれていると言うことだ。序盤から登場するBFNのレポーター・マリア・ヴォイニッチたちが、己の報道の精神にもとづいてBFNを離反する姿は、報道のあり方の懐疑性を浮き彫りにするし、送り出す側と受け取る側のモラルを問いただす瞬間だった。だとすればこの物語の現実への裏付けとしての物語が現実味を帯びてきて、なんだか心当たりのある気がしてくるではないか。ほら、あの人なんか・・・・・。

 そもそもの「ジャイアント・ロボ」という作品が、特撮作品やOVAシリーズなどによる圧倒的な人気の作品があるだけに、GR-1という存在そのものにメスを入れてしまったことは、2作品との差別化のためでもあろう。だがその2作品にも負けないクオリティとロボットアクションを見せてくれた本作には、頭が下がる思いだ。実に巨大ロボットらしいがちゃがちゃとした動きや、ロボットならでは鉄のかたまりの殴り合う様は十分に見応えがあったし、ロボットアニメとしての見せ場も十分に見せてくれた。特にGR-1vsGR-2,3との戦闘シーンは必見である。特にGR-3の背中のジェット部分の動きや、指からレーザーを放つギミックは、見ていてロボットアニメらしい興奮を覚えさせてくれる。またGR-8と合体し、急に思い出したように空を飛んだり、ロケットパンチを繰り出したりするGR-1の千両役者ぶりには、笑うのを通り越してまじめに喝采してしまう。最近ロボットアニメを見ていない方、特にロボットアニメに恋愛なんぞ持ち込みたくないというお方には、ぜひともご覧いただきたい1作である。むしろキャラ萌だけはやりようがないのでご注意を。

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