「このマンガがすごい2010」~アニメ化作品原作マンガのゆくえ~

 今年も「このマンガがすごい」が発売された。私はこのシリーズが好きで、「このSFを読め」だの「このライトノベルがすごい」だの「このアニメがすごい」だのといった本を購入しては、その年の作品を思い出したり、現行の流行などを感じている。基本的には単なる売り上げ部数ではなく、著名な編集者やライター、有名人などのヒアリング、書店での売り上げ、読者投票などをポイントにして合算し、総合ポイントで順位をつける仕組みのシリーズである。アニメ、ラノベ、SF作品など、いかなるジャンルでもだいたい同じ手法で集計されている。

 正直に告白するが、私はマンガを選ぶのが下手くそなのである。自分の絵の好みでマンガを選んでも面白い作品に出会える確率が低い。だからどうしても雑誌などに掲載されている状況を確認すべく、コンビニなどで雑誌を読みあさっていた時期もあったのだが、この年になるとそれもかなりしんどい作業になる。んで、どうするかと言えば、自分のお財布の状況に合わせて、買える物は買ってしまい、読んで面白くなければ売り飛ばすという、無茶を繰り返しているのである。当然こうしたいきあったりばったりな方法だと、面白い作品に巡り会える確率は低いままなので、自然とアニメ化作品の原作に偏る結果となる。それがここ数年の私のマンガ購入の傾向である。アニメ作品であれば、最悪レンタルDVDでなんとかなることもあるが、SF作品なんかは絶望的だ。それでも作品タイトルぐらいは知っておきたい。これらの書籍はそうしたニーズもあるのである。

 さて今期のランキングについては、ここでお話する訳にもいかないので、購入していただくなり、発行元の宝島社のHPを見るなりしていただくこととして、今回はアニメ化された作品の原作マンガが、本書でどのような評価をされているかに注目したい。
 本書のランキングは少年・青年マンガと少女・女性向けマンガの2項目に分類してある。これは読者層が完全に異なることを意識し、どちらかのジャンルに偏らないよう配慮した結果である。まずは少年・青年マンガから見てみよう。目立つのは10位までに入っている作品で、アニメ化されている作品は「ワンピース」と「鋼の錬金術師」の2作品のみである。20位までを見てもOVA作品の「ヘルシング」と「銀魂」しかない。これらの作品は、昨年および一昨年のランキングを見ても、5位以内に入っている作品は一つもないのである。
 また少女・女性向けマンガに目を移すと、アニメ化作品が少ないせいもあるのだろうが、「君の届け」が唯一10位以内にランクインしている。20位までを見ても「夏目友人帳」があるだけだ。
 単純にランキングにある作品だけを見るならば、アニメ化された作品はほとんど評価の対象外となっている様子がよくわかる。いかも「ワンピース」や「銀魂」なんて作品は、べつに今年始まった作品ではなく、むしろ数年前からコンスタントに継続されている作品だ。面白いのは「君の届け」の存在が際立っていることだ。「君の届け」自体は、前年および一昨年においても5位以内にランクインしており、2008年では1位に輝いている作品である。その作品が満を持してこの秋からアニメ化され、こちらも日本テレビの強引なバックアップがあるにせよ、人気を博している作品である。はっきり申し上げれば、これほどアニメとしてもマンガとしても評価されている作品は珍しいのである。

 その一方で、今年とても話題になりながら、こうしたランキングにも顔を出さない作品は後をたたない。例えば「けいおん!」などはまさにその筆頭だろう。これほどのキャラクター人気に支えられ、CDも売り上げ、今年最初の大きな話題をさらった作品にも関わらず、本書での扱いは、「音楽部活マンガ」というくくりのページに登場した程度である。他にも「青い花」は30位以内にランクインしているが、その扱いは特殊な恋愛マンガの扱い以上ではない。「かんなぎ」なんて影も形もないし、「鉄のラインバレル」なども現れる気配がない。「のだめカンタービレ」だってほぼ沈静化している様子だし、「宙のまにまに」や「咲ーsakiー」、「GA 芸術科アートデザインクラス」、「かなめも」、「絶望先生」などの前期のマンガ、「そらのおとしもの」、「テガミバチ」、「夏のあらし!」、「ささめきこと」などの今期の原作マンガもランクインどころか、著名人のコメントにも登場しないのである。

 おかしいのではないか?

 だって、人気があるからアニメ化したのではないのか? そうした人気作がファンの後押しがあって、アニメ化されて訳ではないのか? そう、違うのである。少なくてもマンガとしての評価と、アニメ化とはなんの縁もゆかりもないことが、本書のランキングや著名人たちの扱いでも明らかなのである。そして読者に人気があるからアニメ化されたのではないのである。
 本ブログで何度か繰り返し書いた内容ではあるのだが、現在のアニメ業界には、出版社が自社作品の販売促進を目的に自社作品のアニメ化をしている側面がある。それはマンガ業界が疲弊する状況であり、現在のアニメの放送本数は、さらにアニメ業界までも疲弊させている状況にある。そうであればなぜ読者人気のある作品をアニメ化しないのか?

 かつて「デスノート」のように、映画化されるはアニメ化されるは、どちらも人気作となるような状況が現出したことはご記憶だろう。そこに2匹目のドジョウをねらうことがあっても、それはいたしかたないことである。だが、いくら評価のリテラシーが異なる媒体だからといって、これほどの差異はあまりに酷すぎるだろう。そこにあるのはアニメ化されるために原作マンガを選出するプロセスであり、そこに出版社の思惑が隠れていることは明白なのだが、その正体までは私には理解できていない。ただこうした漫画作品がアニメ化されるためには、その作品をもとに企画書を作成し、それにGoサインを出す人間がいることだけは、よく知られている事実であろう。

 反面、「このライトノベルがすごい」を読むと、昨今アニメ化されている作品は、どうしたものかいずれも評価が高く、20位以内にランクインしている作品が散見される。正直いってどうしてこれがアニメになるのか心配された「生徒会の一存」なんてシリーズまでアニメ化しているのである。いずれにしてもマンガの評価とアニメの評価は、まったく別物であると断定してもよさそうだ。事実、なんでこんな作品がアニメに・・・なんて思う事もしばしばある。だがそうしたサプライズは決してイヤではない。むしろアニメ自体が酷い出来でなければいいなと願うばかりだ。その意味においては、現在アニメの流れはマンガよりもラノベに傾いていると言えるのではないか? だがええ年したおっさんが、ラノベを読むところを想像して欲しい。その人が会社の課長クラスであれば、周囲に気を配ってお読みになることを進めする。仕事の場に上司の威厳は少なからず必要である。またその人が会社の社長であれば、きっと「カンブリア宮殿」には呼ばれないだろうし、「よその社長はいいこと言うなあ」とかは、絶対に言われないはずである。

 しかし売り上げは別として、これほどマンガとアニメの作品の評価や扱いに差があったとは思いもよらなかった。こればかりはアニメ化の企画を出した人間の先見の明を讃えるしかないだろう。どれほど素晴らしいマンガでも、アニメ化するに当たっての素材の善し悪しがあるのは、おぼろげながら理解しているつもりだが。逆を言えば、アニメに比べてさらに母数としての作品数が圧倒的に多いことは、「マンガ」という表現媒体の最大の特徴であることも、一面の事実だろう。その中からアニメ化作品を選ぶというのは、並大抵ではない。時折アニメのプロデューサーのインタビュー記事を見て、「偶然目に入った」とか言う話は、にわかに信じられなくなってきた。やはり何らかの理由で誰かに愛された作品であるから、アニメ化にもこぎ着けることができたのだろう。マンガがこれほど多くの作品がありながら、多くの人に愛されているのだから、アニメ作品も愛してほしいのである。ましてや特撮作品も同じ思いである。

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(2009/12/10)
このマンガがすごい!編集部

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テーマ : マンガ
ジャンル : アニメ・コミック

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No title

どうも、はじめまして、のりすけと申します。
近年のアニメ化される作品の傾向についての記事、興味深く読ませていただきました。

確かに、最近では アニメ化されるマンガ=人気のバロメータ ではなくなってきているのかもしれませんが、やはり個々の作品には「ジャンル」という区切りがありますから、「少年・青年マンガ」、「少女・女性向けマンガ」という2つの分類だけでのランキングではアニメ化される作品の傾向を正しく分析することはできないと思うのですよ。

たとえば、「けいおん!」は「少年・青年マンガの中でランクが上位だったためアニメ化した」のではなく、「萌え系のマンガの中でランクが高かったために「萌え枠」でのアニメ化を果たした」というように、細分化して考えると、各ジャンルで人気のある作品がそれぞれアニメ化しているはずです。

「ラインバレル」も同じように「ロボット物のマンガ作品の中で秀逸だったためにアニメ化された」と考えれば「少年・青年マンガ」上位にランクインしていなくてもさほど不自然ではないですよね?

「このマンガがすごい!」への批判的な意見のコメントになってしまいましたが、2つの資料だけでこれだけの記事を作り上げるとは…波のまにまにさんGJ!(グッジョブ!)としか言いようがないですね。


No title

のりすけさま
 コメントありがとうございます。ご理解いただき感謝いたします。
 しかもジャンルや文脈を押さえた細分化で見たら、決しておかしくないという話は、書き上げてしばらくたってから気づいたのですが、指摘されてしまいました。ご指摘ありがとうございました。ただ、それを裏付ける資料をさがすのは大変だろうなと漠然と感じてはおります。今後ともご指摘いただけたら、幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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