作画の手本~ルパン三世 風魔一族の陰謀~

 出来る限り世に埋もれた作品を取り上げて紹介したい。いまのところ、これが本ブログの目指すところである。有名な作品はほかでもやってくれるだろうし。また最新作については、きちんとその時の感想や評論を残すことも、目的の1つである。1つの作品に1つの評価しかないなんて幻想だろう。誰だってさまざまな感想や考え方があるに違いない。それに他人の意見を聞きたいって事もあるだろう。多くの感想・評論ブログの1つとして楽しんでいただければ幸いである。

 今回のお題は「ルパン三世 風魔一族の陰謀」である。
 最近見直したのだが、劇場版DVDーBOXを購入した際に1度見たっきりだったので、ずいぶんと久しぶりだったのだが、以前より思っていたよりも好印象を覚えた。本作は1987年12月に劇場公開された作品であるが、公開後1988年4月にビデオが発売されている。そもそもOVAとして企画されており、 宣伝効果をねらっての劇場公開ではなっかたろうか。

 「風魔一族」に関するイメージってものがあるとすれば、まずはメインキャストの交代なのではないだろうか? でもこれってどこが悪いの?と、まずはそう思った。
 不二子的な演技なら、やはり小山茉美さんのあの演技になるだろうし、古川登志夫さんのあのルパンの、あの演技に文句の付け所がないだろう。単純にキャスティングの「if」を楽しめばいいのではないだろうか? 少なくても本作に関しては、ベテランの声優さんによる声の演技の妙味を味わえるので、満足してしまったというのが本音である。

 あまりに個人的な意見で恐縮だが、あるキャラクターにおける声優さんの交代など、最近ではごく当たり前に行われていることである。最近の傾向は、声優さんのスケジュールも押さえずに第2期を制作することで、キャストが曖昧になることがある。まあ制作スタジオごと変わってしまうこともしばしばであるから、声優さんの交代など些細なことではないのか? 某長寿番組のように、声優さんがお亡くなりになったり、高齢化やギャラの高騰を理由に交代することを受け入れるのであれば、現象面としてはこれと同じだと思えばよい。
 ただし、これがファンのサイドの意見を無視した意見であることは承知している。でも、洋画の吹き替えなどは、よほどのことがない限り、役者と吹き替えの1対1の関係が、常に一定であることなど、ほぼ無いと言っていい。残念であってもファンの側からはどうしようもないこともあることもあるだろう。と、わかっていても腹の立つことはあるけどね。

 話の冒頭、銭形が仏門に入り、ルパンを供養しているシーンに、主題歌がかぶる。このシーンは、「ルパンvs複製人間」の幻の冒頭部分に着想を得ている。ルパンが死んだと思っていた銭形が、ルパンを供養して余生を送ろうとしているところに、ルパンの活動再開の報告が入り、現役復帰を余儀なくされるところだ。銭形が本作で常にハゲなのは、このためだ。
「ルパンvs複製人間」制作時に、絵コンテ段階からあったシークエンスなので、制作側もよほど思い入れがあったのだろう。
 そして主題歌を歌うのが、麻倉未紀。あの「スクールウオーズ」の主題歌を歌ったあの人だ。関係ないけど。

 実のところ、本作にはふんだんにセル画が使われている。従来ではカットによりごまかしてしまいがちな細かい動きの芝居も、すべてセル画で動かしている。実に贅沢な作りだ。たとえば汽車のターンテーブルで、ツボを拾おうとする五右衛門が、風魔忍者をにらみながら腰をかがめるてツボを拾おうとするシーンは、五右衛門全身がフルに作画されて、芝居させている。こんなシーンなら、何もない風景に、上半身の五右衛門の演技だけで終わらせて、作画枚数を減らす場面であるが、それをちまちま作画していることになる。実に職人芸を思わせるプロの仕事が見られる。

 それは当然中盤の銭形とルパンのカーチェイスにも、同じ事が言える。このシーン、トーンがおとなしめであり、日本の温泉宿を背景としているため、色彩的な派手さはないのだが、それを補ってあまりある人間たちの動き、それをトレースし続ける作画マンの力量が、存分に味わえる見事なシーンである。このシーンが「ルパン三世 カリオストロの城」冒頭のカーチェイスへのオマージュであることは、すぐにわかるのだが、その密度の違いは、見ていただければ一目瞭然だ。もし私が作画マンに指示を出すのなら、見習うべきは「カリオストロ」で、目標とすべきは「風魔一族」と説明するだろう。

 ストーリー的にもまったく問題はない。短い時間の中での制約は当然ある中で、序盤の風魔一族の登場から、五右衛門の結婚の真相、そして隠された秘密へのアプローチ、お宝へのアタック、そしてバトルにお定まりの大崩壊と、見るものを全く飽きさせない展開は、多分にあっさりとしている点を除けば、本当に冒険活劇のお手本となるべき1本である。

 しかもその中には細かいくすぐりまで用意されている。たとえば中盤以降、本作のヒロインである「紫」が着る服は、新ルパンにおいてルパンが着ていた「赤ジャケット」である。そして中盤のカーチェイスに割って入ってくる車は、シトロエン2CVだ。この車は、「カリオストロ」の冒頭でクラリスが乗っていた車である。そんなこだわりと遊び心。気がつけば楽しめるし、気がつかなくてもいっこうにかまわない、そんな観客へのサービスにあふれている。

 ここまで読んでいただいた方にはおわかりだろうと思うが、私は本作を大変高く評価している。本作はそもそもオリジナルビデオとして発売が決定したところで、劇場公開された経緯があるらしい。話もそこそこだし、何より作画が素晴らしいが、劇場作品としてはやや小粒な感じがしたのも、オリジナルビデオであったことを考慮すれば合点がいく。

 残念なのは、あまりにも「カリオストロの城」にそっくりだということだ。ラストで五右衛門が紫のもとを旅立つシーンが、カリオストロのルパンに対する五右衛門バージョンと考えれば合点がいくシーンだ。なおかつ続く一連のシーンで見られるルパンと不二子のやりとりや、銭形との追いかけっこが、やはりカリオストロまんまだったことで、なんともお茶を濁された感じが否めない。しかもカリオストロにあった銭形のいいシーンはない。これではバランスが悪い。
 ストーリーの閉じ方は様々であろうが、きちんとつけるべき落とし前をつけた上で、広げた風呂敷をたたまねばならないことを、作画的にもお話的にも教えてくれているような気がする。

 しかしながら、本作の評価が低い事情は、声優陣の入れ替えの件と、なにより五右衛門が結婚するというアイデアの点に尽きるのではなかろうか? 世に五右衛門ファンは多いと聞く。メインメンバーの誰もが結婚をしない「ルパン三世」という物語の中では、五右衛門は特殊な扱いとなってしまった。だがこういう事情でこの作品が埋もれてしまうのは、観客側の度量の狭さを露呈しているようで、本当に情けない気持ちになる。上記にあげたように、本作の作画にかけたアニメーターの熱い思いが結実した作画を見るたび、「隠れた名作」という単語と同時に、声優さんの声まで入って総合芸術である「アニメーション」のバランス感覚に、思い悩む日々である。
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テーマ : アニメーションの評論・感想
ジャンル : アニメ・コミック

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