「宇宙戦艦ヤマト」に関するオサーンの独り言

 現時点で40代以上の年齢の人々、特に男性にとって、「宇宙戦艦ヤマト」という作品の影響は計り知れないと思う。この作品がテレビシリーズから出発し、視聴率の低さにあえぎながらも再編集されて劇場公開にこぎ着け、あげく続編「さらば宇宙戦艦ヤマト」なる作品まで生み出してしまう過程は、まさに当時のファンが一から作り上げた事実であり、同時に伝説となっている。同様の変転を経た「機動戦士ガンダム」が現在までビジネス的にも成功している一方で、その先駆けとなった「ヤマト」が、やや不遇な状況である事情は今は語るまい。だがアムロがいなくてもガンダムという名のロボットが登場しさえすれば成立するガンダムという奥行きの深さとは対象に、「ヤマト」という宇宙戦艦なしでは成立し得ない状況は、ある種「ワンオフ」の至高だと言えるのではないか。

 それを知っていながら、同時に「ヤマト」という作品は、近年まで何か口にしがたい重さがあったことも事実である。調子よくお酒をいただいているときに、オタクでもない人間と「ヤマト」の話ができようか? 70年代後半から80年代中盤までのアニメシーンには、間違いなく「宇宙戦艦ヤマト」の名前があったろう。けれどその名を出すのをためらう時期も確かにあったのだ。完結するそぶりを見せながら、商業主義にかこつけて生きながらえるヤマトや古代たちクルーを見て、なんとも形容しがたい思いをしたのは、私一人ではないはずだ。そんな「ヤマト」がこの12月の、しかもゼロ年代の末期において「復活編」と名付けられて劇場公開されている。いまここでかつてのファンは、それぞれに雌伏の時を超えたその思いを告白すべき時期に来ているのではないだろうか?

 「宇宙戦艦ヤマト」の何がよかったのか? 「宇宙戦艦ヤマト伝説(フットワーク出版社)」を編集した安斎レオ氏は、この本の冒頭ではっきりと、「精密に描かれたメカニックだ」と書いている。これにはもう納得するしかない。日本近海に沈んだ戦艦大和を改造し、イスカンダル星からサーシャの命を奪ってまで送られてきた波動エンジンの設計図により宇宙戦艦として生まれ変わった「ヤマト」。そしてその艦橋に据え付けられている歯車状のメーター類や不思議な形状のレーダー類、何をどう使えばいいのか皆目わからないレバー類、リクライニングは良さそうだがシートは固そうな座席、そしてこれだけははっきりわかる艦首波動砲発射システムなど。戦艦のくせに空母機能まで有しており、ブラックタイガーやコスモタイガーを何十機と搭載する艦内や船体を縦に貫く波動エンジンの微細な設定、そのくせ全天球形レーダー室やらコスモハウンドの発射台、時間を遡って状況を映し出すタイムレーダー、次元潜行艇を探し出して次元ソナーなどを即座に受け入れる不思議なほど余裕のあるキャパシティー。だがそうした未来型メカニックを生みだし、物語とリンクさせてわれわれをSFの世界に取り込むのである。
 また地球艦隊の旗艦となったアンドロメダや主力戦艦、無人艦隊の戦艦、もちろん敵側であるガミラス、ガトランティス、暗黒星団帝国、ボラー連邦、ディンギル帝国艦隊など、そのカラーや特徴が一目でわかるデザインセンスと、ハイパー放射ミサイルやら火炎直撃砲やら、瞬間物質輸送器、ブラックホール砲やらといったなんだか説明のつかなそうな武器の数々に至るまで、まさに科学的な根拠のありそうでなさそうなセンスオブワンダーの結晶がここに集っている。

 そのセンスオブワンダーは、まだだれも見たことがない宇宙の深淵を覗こうとするかのような、スケールの大きな舞台設定にも現れる。意外に見落とされがちであるが、こうした宇宙の姿は仮想の世界であり、メカニック以上にセンスオブワンダーの宝庫といって言い。
 まず冥王星にあったガミラスの前線基地から放り出される「遊星爆弾」。これに地球は壊滅的にやられ、人類は爆弾に含まれる放射性物質の影響を避けるため地下での生活を余儀なくされる。そう隕石に偽装した爆弾なのだ。そしてヤマトが旅する片道14万8千光年の旅程において、惑星バランやビーメラ星の独特な生活習慣や原生生物など、すでに異星人コンタクトを成し遂げている「スタートレック」を手本としたような物語が展開される。またその敵母星であるガミラス星が、地球の救世主であるイスカンダル星と二連星であった驚愕の事実。それはすでに天文学では常識であった二重惑星をはじめてアニメーションで描き、神と悪魔が同じところにいるというドラマ的な驚きを倍加させる効果を持ってたわけだ。
 「さらば宇宙戦艦ヤマト」や「ヤマト2」に登場したテレザート星は、惑星の中心が空洞となっている空洞惑星であり、その空洞にたった一人幽閉されていたテレサは、反物質世界の人間であった。この反物質や対消滅という単語だって、ラストエピソードに欠かせない要素であるし、設定の科学的センスが光るしろものであった。
 「ヤマトよ永遠に」では、地球からは観測されないほどに、電波や電磁波を吸収する素材でできている暗黒銀河と、まばゆいばかりの星々がちりばめられた白色銀河が重なっている「二重銀河」が登場する。暗黒銀河の中心角を突っ切り、敵の追撃をかわしたどり着いたヤマトが見た驚きの光景は、瞬時に眼下に広がるまぶしいほどの光の渦であったのだ。劇場ではこの瞬間、スクリーンサイズが変わることで上映視野を広げる効果をもってその驚きを表現していた(ワープディメンションと呼称された)。
 そして「完結編」においては、序盤から交差する2つの銀河というトンデモな映像が登場する。また地球における人類創世の物語をとくための鍵として「回遊惑星アクエリアス」が登場する。なんでも火山からあふれ出るマグマにおおわれた惑星であった地球に、雨をもたらしたのは、接近したアクエリアスからもたらされた水だったそうで、その水の中に含まれている生命の素が、われわれ人類の原初だったという宇宙神話だそうだ。そしてこの惑星をむりやりワープさせることで、予定よりも早く地球人類を絶滅させようとするディンギル帝国の野望をくじくのが、完結編の骨子である。

 このように、「ヤマト」という物語には深遠なる「宇宙の神秘」、だれも見たことがない「宇宙の姿」がちりばめられ、ヤマトの旅程の中にそれら大宇宙の驚異を見せつけることが主眼にあったのだ。この限りない宇宙へのあこがれの心こそ、「ヤマト」という作品の重要な魅力だったろう。前述の通り「スタートレック」のような深宇宙探査による人間のあくなき探求心と冒険に熱狂したように、「ヤマト」でやりたかったことの半分は、まさにこれだったんじゃないかと思わせる。未知の銀河に到達し宇宙に思いをはせる乗組員たち。わくわくさせるではないか。このわくわくこそ、「ヤマト」の真骨頂だと思う。
 「アニメとSFの親和性(ロトさんの本 Vol.22)」において、氷川竜介氏が指摘するまでもなく、この未知なる映像やセンスオブワンダーをフィルムに定着させるために、「アニメーション」という表現媒体は非常に有効に働いている。当時の私たち子供にとってはSF=アニメだったし、ヤマト=SFだったのである。そういう観点から見ると、当時のSF作家やSFファンにとって「アニメはSFではない」との言説があったにも関わらず、「ガンダム」をしてごく普通にSFアニメであるという捉え方をしたのは、先人たる「ヤマト」と無関係ではないはずだ。

 物語に関しては、ツッコミどころが多いのは覚悟している。後年そのご都合主義的な展開をやり玉に挙げられたり、「愛」を無闇に口にすることで敬遠されたのは周知の事実だ。「ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義(文藝春秋刊)」において、著者・佐藤健志氏いわく「破綻する物語」だの「第二次大戦のやりなおし」だの「まちがったナショナリズム」だの言われたのも、こうした傾向を加速させたろう。事実防戦一方になっているヤマトが、相手から受けていたミサイルを逆回転させて敵に打ち返しただけで逆転してしまう「七色星団の決戦」や、敵と相対しながら古代と雪のちちくりあいになぜか同情してしまうデスラー、波動エネルギーをやたらと怖がる暗黒星団帝国の腰抜けなどなど、設定とか文芸以前の問題だと指摘されても仕方がないストーリー展開が多すぎる。だいたいにして最初のツッコミどころはガミラス星の本土決戦後の古代と雪のやりとりだろう。だれも戦う前に気づけよと突っ込んだであろう。

 だがそれがいいのである。「ヤマト」に関してはそれこそが「味」であるし、それを承知で指摘されればおどけてみせるぐらいの覚悟はこちらにもある。他のアニメ作品なら絶対に許さない些細なことも、「ヤマト」ならあえて許す。これが40代以上のアニメファンの偽らざる本音じゃないだろうか。それをえこひいきだと思うのだが、「ヤマト」のおかげでこうして40歳過ぎてもアニメファンでいることができるのである。罪深い奴なのだ。互いに酒を酌み交わしながら、暖炉の前で語り合っても、まなじりに涙をにじませながら許容してしまう。それが「ヤマト」でこちらがわに転んだ人の人間性なんじゃないだろうか。

 先頃公開された「ヤマト復活編」。上記のようなヤマトを愛していた人々にとって、これはもう怖い物見たさなんじゃないだろうか。アクエリアスからの水柱に沈んだヤマトが、どのように改修されたのか、6連波動砲は本当に役に立つのか、古代君ごときが艦長で大丈夫なのかと、不安の種はつきることがない。だが先述のようにヤマトがいなければ成立しないことも知っている。かつてOVAで作品化された「YAMATO2520」という作品があったこをご記憶の方もいるだろう。だがしかしシド・ミードデザインのヤマトは、おひげのガンダムのようには受け入れられなかったわけだ。だからこそ「復活編」ではまさしくあのときの姿で蘇るヤマトの勇姿が見られるのである。今年のアニメーションは非常に意義深いというようなことを、かの氷川竜介さんはおっしゃっている。それはかつての人気作があらたに復活してきたものが多いこと、それが往年同様に人気を得ており、再編集映画まで作られること、同時に新世代のアニメが同時に台頭していることなどから、これまでの総決算の年であったことが協調されている。ヤマトがその終わりを飾るにふさわしい作品であるともおっしゃっている。それはまさに第一次アニメブームの立役者といしての重責を認識しているかのような現れ方をしているようだ。

 かっこいいメカニックと、まだ見たことがない宇宙の懐の深さとワンダー、そして他の追随をゆるさない漢気(この場合は「漢字」の「漢」と書いて「おとこ」と読むのがいいだろう)があればそれでいい。もういい、ごちゃごちゃいわんとこ。あとはもう見るだけである。

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