ゴジラを愛せないいくつかの理由

 平成ガメラシリーズを扱うと、どうしても比較対象として「ゴジラ」について考えたくなってくる。ところがいざ考えてみると、「ゴジラ」に対して私が抱いている思いが、あまりにも良くないことに気がついた。子供の頃に間違いなく親しんだ「ゴジラ」映画に、何を期待していたのか、今はまったく思い出せない。

 これというのも1954年の第1作目である「ゴジラ」を、リアルタイムで見ていないことに対する、思い入れの問題かと考えてみた。ゴジラの出自は「水爆大怪獣」であり、原水爆実験のために海底環境を破壊された古代の生物が、巨大化したというものである。ここが第1のポイントだ。ゴジラの出自には当時の世相が反映されているが、同時に世界で唯一の被爆国であることが関わっている。これは過去幾多の論者が示している話であり、今はこれを是としておく。
 またこの初代ゴジラを倒すのは、芹沢博士の作る、「オキシジェンデストロイヤー」という悪魔の兵器であった。芹沢博士には戦争で傷ついた顔があり、戦争を恨んでいる。ある種の戦争被害者による反戦思想である。戦争が持つ一面が「科学技術の進歩と発展」にあるのなら、彼の作った「オキシジェンデストロイヤー」は、まさに皮肉である。科学技術の二面性を論議しながら、これを作ってしまう芹沢博士に、まず矛盾を感じてしまう。そして兵器利用への懸念を表明し、自らオキシジェンデストロイヤーと海底へ沈んでいく芹沢に、感動すると同時に、強い「反戦」のメッセージが込められる。
 以上2点はいずれも「戦争」がキーワードとなっている。さてこれが頭では理解できても、説得力のある説明が出来る30~40代がいるだろうか? 海外派兵として任地にて仕事をした自衛隊員や戦争カメラマンでもない限り、声高に「反戦」をお題目に、説得力のある論を展開できる人間はそうはいないだろう。戦後生まれの持つジレンマである。

 つまるところ「戦争」を切り口にして「ゴジラ」を語ることは、戦後生まれにとっては全く意味をなさない。だから戦争を切り離して考える癖がつく。するとゴジラはあっというまにアイデンティティを失う。2作目以降さまざまな怪獣と対決し、1975年までは、人類と対峙するものではなく、むしろ人類の守護者を気取り始める。だがその間もゴジラは大戦怪獣に放射能の炎をはき続けているのだ。矛盾も甚だしい。

 一度幕を下ろしたゴジラシリーズは、1984年に再開する。明確に1954年の続編とされ、あらためて人類と敵対するゴジラは、今度はゴジラとしてのアイデンティティを無くしていく。まずあらゆる生物を凌駕するはずの怪獣であるゴジラが、帰巣本能を刺激されて、人類に撃退される。2足歩行をしながら蹂躙する怪獣王が、鳥と同じレベルで三宅島に引きよせられて、噴火口に足を滑らせるのだ。
 続く「VSビオランテ」では、科学の持つ二面性を協調されることで、自らの体をも科学に差し出すのだ。「抗核バクテリア」の生成と「ビオランテ」はまさに兄弟としてこの世に生まれる。と同時に宿主であるゴジラの存在も脅かすのだ。こんな皮肉もそうないだろう。そして「vsキングギドラ」では日本の栄えゆく経済成長に歯止めをかけるために、日本に登場させられる。しかもかつて自らを生み出した原水爆実験をおこなった大国のために戦わされている。さらに「vsモスラ」では、すでに出現の意味すら提示されず、モスラの明確な敵として暴れ回る。ここまでくればおわかりだろう、ゴジラにはすでに日本で暴れるだけの理由もなく、また自らの出自すらも消されてしまうほどにアイデンティティを失ってゆく。はたしてこれで「怪獣王ゴジラ」といえるのだろうか? そして「vsシリーズ」の最終作である「vsデストロイア」においては、核エネルギーを蓄えすぎたゴジラが、メルトダウン寸前となって暴れ回るお話だ。ことここにいたり、ゴジラはただの産業廃棄物扱いだ。

 2000年を期に復活した「ミレニアムシリーズ」もまたしかりである。ただ「ミレニアムシリーズ」の作品群には、「ゴジラ」という存在を、明確に「戦争の亡霊」と規定し、ゴジラをとらえなおした「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」という作品も存在する。またオキシジェンデストロイヤーで溶け残った「ゴジラの骨」をベースとして、メカゴジラが作られ、ゴジラと敵対する、「ゴジラ×メカゴジラ」、「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」の2作品があり、ゴジラが戦う理由付けを試みている。これらはおそらく「vsシリーズ」からの反省点を踏まえていると思いたいが、これらの作品だって手放しで喜びようがない。最終作「ファイナルウォーズ」にいたっては、怪獣たちの存在そのものに、理も非もない。

 1954年に登場し、世間に認知され、押しも押されぬ人気怪獣となったゴジラは、次回作を作るたびに、自らの個性を剥奪されながら、自分を殺して興業に取り組んだ結果だと言える。もちろん、ただ町が破壊されればよいとか、怪獣とのバトルが楽しみとか、水野久美が出てなくて残念だとか、沢口靖子は残念だとかいうお方には、全く意味のなさない論であることは承知している。だがゴジラ自らを否定するようなこれらの作品で、ゴジラの魅力を味わえというほうが、むしろ無理な願いだと思えるのだ。
 逆に「それがゴジラだ!」などと開き直るのなら、海外でも輸出可能な、日本でも数少ないキャラクターコンテンツであるゴジラとしては、なんとも情けないとも思えるのだが。
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