「救急戦隊ゴーゴーファイブ」~その1・意外と長い家族再生の物語~

 完全な家族など、もはやドラマの中にしか存在しない。せいぜい朝の連ドラと橋田ドラマにあるのかも知れないが、それとて完全にはほど遠い(完全ってなに?とか聞かないでね)。現実にあるのはそれぞれが勝手に思い描く「家族像」に近づける努力をする人々がいるだけであり、多くの人々はその大切さすら気づこうともしない。今でも「核家族」という言葉は小学校の社会科の授業で習うのだろうか。そして自分の家族がそれに当てはまることを、いつ気づくのだろうか。家族の大切さなんて、きっとそんな言葉と同じぐらい当たり前すぎて、だれも振り返りはしない。
 えらく教条的に書き始めてみたが、我ながらうっとおしいこと甚だしい。だがこういう説教というものは、特撮番組の中でも低年齢むけに作られた「戦隊シリーズ」では、重要なキーワードとなり得る。今回ご紹介する「救急戦隊ゴーゴーファイブ」という作品は、「兄弟愛」や「家族愛」というもの作品の中心的キーワードとして、敵味方の双方で問いただした作品である。しかも小難しい理屈は、ある一人の人物の根性論で、すべて吹き飛んでしまうというおまけ付きである。

 1999年にスタートした「救急戦隊ゴーゴーファイブ」は戦隊シリーズ23作目である。その着想は「ノストラダムスの大予言」にある世紀末に起こると予想されていた世界の破滅に基づいている。太陽系の惑星が地球を中心に十字に配列する「グランドクロス」が起こるとき、地球に大災害を起こす災魔一族が現れて地球を滅亡させようと企んでいた。その災魔一族の野望を挫く正義の戦士は、日本の一科学者である巽モンド博士の5人の子供達であった。巽博士が準備した装備を使って、巽5兄弟は人の命を救い、地球の平和を守るために立ち上がり、災魔一族と戦うというのが基本ストーリーである。

 かつて5人の戦士が兄弟であった戦隊が存在する。「地球戦隊ファイブマン」がそうであるし、後の「魔法戦隊マジレンジャー」がそうである。兄弟戦士という設定は諸刃の剣である。ただいるだけで「家族愛」や「兄弟愛」が表出し、メインターゲットの子供達に伝わりやすいモチーフでありながら、ドラマの肝心なところで「家族愛」や「兄弟愛」で片付けてしまうことがあり、ドラマがそれ以上ふくらまない可能性があるからだ。つまり「家族愛」や「兄弟愛」が理由付けになってしまうことで、そこで思考停止してしまい、それ以上ドラマを煮詰めることができなくなるからだ。またメンバー内で問題が発生しても、外界とやりとりで解決するのではなく、兄弟内で解決してしまうことが多く、これも世界観を狭めてしまう結果になる。5人兄弟を均等なバランスを取るために、傑出した個性を出しにくい。これもまた兄弟戦士の欠点である。ファイブマンなどはもっともそれが色濃く、主役の5兄弟の明確な個性も表現できずに終わってしまったイメージが強い。ところが本作「ゴーゴーファイブ」では、そうした点を解消する強烈な個性の人間と外界が登場する。その答えは後ほどにしておこう。

 さて物語はまず宇宙から突如巨大な隕石が落下し、東京のあたりで大規模な災害が発生する。巽5兄弟はいずれも災害現場のエキスパート達である。長男マトイはレスキュー隊の隊長で、自ら進んで炎の中に飛び込んでいく。次男のナガレは消防士。火事の現場で冷静に消火する。三男ショウは航空隊のパイロット。災害現場にヘリコプターで駆けつけて、状況を見定める。四男ダイモンは警察官。災害現場の避難誘導を担当する。末っ子で長女のマツリは救急救命士。災害現場に救急車で駆けつけて、けが人の治療に当たる。
 それぞれが自分たちの職責を全うしていると、災害の原因である隕石は、災魔一族が送り込んだ巨大な人型の災魔獣であった。災魔獣は街を蹂躙するが、なすすべもない兄弟達。だがそこに緊急連絡が入る。10年前に行方不明となり、死んだと思っていた父・モンドからの連絡だ。そしてモンドは高らかに宣言する。5人を救急戦隊ゴーゴーファイブとし、この地球を救えと。父の開発したレスキューマシンに登場し、それぞれのカラーのスーツに身を包んだ5人は、巨大災魔獣を倒し、災魔一族と戦うことを誓う。これが1話の大まかな内容だ。

 通常ならここから5人力を合わせて戦いの日々が始まり、兄弟げんかなんかはさみながら進行するのであるが、問題はこの家族の構成である。父親は10年ぶりに唐突に登場し、しかもいきなり子供達に戦う事を強いる。しかも兄弟の母親は8年前に父親の行方を捜したままこちらも行方不明である。兄弟と父親の確執がここにある。そしてまたモンドは5人の生き甲斐である勤め先を、勝手に退職させてしまうのである。この強引さや身勝手さに、子供達が反抗する。そして父モンドが、災魔一族との戦いにそなえて10年前に行方をくらまして、レスキューマシンを作っていたことなどを告白し、数話かけて父親は子供達との誤解を解いていく展開がつづく。これが初期数話の話なのである。しかも両親と離れて暮らす兄弟の支えは、母親の「信じ合うのが家族です」という言葉と、長兄マトイの「気合いだ!」の言葉にかかっていたのである。そう、このマトイという男が、両親と生き別れたとき、どれだけの決意と我慢をしてきたのだろう。一見父親が息子達との絆を取り戻そうと必死にがんばる姿を見せながら、ドラマを牽引したのは、父親の勝手を知りながら、父親の正義の心に共感し、進んで父親と兄弟との絆を取り戻そうとしたマトイのドラマでもあるのだ。そうして見ていると本作はまさに家族が再生していくドラマと見ることができる。

 しかしマトイはすごい。ありとあらゆる事情を、「気合い」の一言ですべて退けてしまうのである。本作のドラマの特徴として、彼らは特殊な能力を持っている人間ではない。気合いのマトイにしろ、レスキュー隊員として能力が高いだけであり、常に体を鍛えることを怠らないレスキューのプロという自覚はあっても、戦闘のプロではない。このあたり、台詞としてVシネマ「ゴーゴーファイブ vsギンガマン」で、マトイがギンガレッド・リョウマに語っているので、自覚はあるらしい。その非力を父親の科学力と息子達の努力で補ってきたというのが、本作の特徴である。事実その装備の充実ぶりは目を見張る。合体ロボットだけでも都合4種類。しかも地上戦装備も印象的なVランサーやライフバード、ナガレが開発したゴーブラスターなど、これで負けたらゴレンジャーに申し訳が立たないほどの重装備である。だがそうした武器の使用も、マトイの気合い一発にかなうものなどないのである。

 対する災魔一族というのも、巽家に負けずおとらずの不完全家族である。初期登場の長兄ジルフィーザ、次兄コボルダ、長女ディーナス、三男ドロップ。これに呪術師ピエールの魔術により、それぞれが持つ災魔カードから災魔獣を復活させて、地球の破壊を目論むのである。彼らの目的は地球制服であるのだが、より積極的な目的としては、彼らの母親である大魔女グランディーヌの復活である。グランディーヌがなぜに封印されたのかは知る由もないのだが、災害などによる人々の悲しみと絶望によるマイナスエネルギーを糧にして、グランディーヌは復活するという。災魔一族の主な破壊活動やグランドクロス、暗黒惑星グランデ召還なども、大量のマイナスエネルギーを発生させてグランディーヌを復活させる為の所業なのである。
 この災魔一族、父親がいない。ゴーゴーファイブが父親を取り戻し、家族が再生していく過程で、災魔のみなさんは母親の復活を願って行動するのである。何度か(詳細は次回)の危機として、グランドクロスを迎えるタイミング(25、26話)で、グランディーヌはついに不完全ながら現世に降臨する。それは長兄ジルフィーザの命をかけた戦いの結果であり、ジルフィーザは死んでしまう。その一方でマユのように眠りについていたドロップは、グランディーネの力により再誕してサラマンデスとなる。しかしこのサラマンデスは母親の力を直接に受け継いでいたため、自信家であるから、長兄を慕っていた他の兄弟達とそりがあわない。戦いの中で何度もの危機を乗り越えたゴーゴーファイブが、戦いの度に兄弟と戦う仲間としての結束を固めていくのに対して、パワーアップを果たしたにも関わらず、災魔一族の足並みは乱れる一方なのである。ましてやその違いを長兄マトイとの一騎打ちで思い知らされる31話は、マトイとサラマンデスの対立構造をはっきりと示す物語となる。

 ともに家族の再生を願いながら、混迷する災魔との戦いで比較される「家族」というキーワードは、いくつかの試練を経て最終回に結実するのであるが、今回もいささか長くなりすぎのようである。 次回は最終回までの流れを追いつつ、家族や兄弟というキーワードを離れた傑作回についても言及してみようと思う。次回もお付き合い願えれば幸いでです。

追記
 1/17に本作のナレーションを勤めておられた郷里大輔さんが亡くなられました。ニュースを聞いたとき、驚きのあまり、声も出ませんでした。野太くたくましく、それでいて包み込むような懐の深さをのぞかせるその声を、聞けなくなるのは寂しい限りです。また1/13には目玉のおやじ役・田の中勇さんがお亡くなりになられました。なにかこう立て続けの不幸に、悲しみの染みだけが心をむしばんでいく思いです。お二人のご冥福をお祈りいたします。

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テーマ : 特撮・戦隊・ヒーロー
ジャンル : 映画

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No title

こんばんわ。

私の世代で郷里大輔さんですと、やはりロビンマスクです。
なんともできないことですが、悲しいです。ご冥福を。

No title

がたがたさま
 私の場合、本名の「長堀芳夫」さん名義で演じられていたものも数多くあります。あと「江田島平八」とか。自殺だと聞いて、さらに切ない気持ちです。長年親しんだ声優さんや役者さんなどが物故されるのは、しかたがないと思う反面、切なさもハンパないです。
 
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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