OVA「クイーンエメラルダス」~80年代の忘れ形見~

 以前劇場映画「わが青春のアルカディア」を扱ったとき、ハーロックとトチローについては十分な書き込みがなされているのだが、エメラルダスについてはどうしても不十分な感じを受けた。それもそのはずである。その翌年に控えていた劇場用作品のタイトルは「クイーンエメラルダス」であり、松本零士アニメの終焉にともない、製作中止となってしまったのである。そのため彼女に関しては知れることが少ないのである。

・ハーロックの旧知
・トチローが最愛の人で、彼を捜してさすらっている
・頬の傷は戦いでついたもの、あるいはイルミダスによる拷問でついた
・エメラルダス号は、他人(宇宙人)から譲ってもらった船で、フルオート船
・エメラルダス号はトチローの手により改修された

などといったところが、80年代初頭におけるエメラルダスに関する情報のすべてだと言ってもいい。
 ところがこの状況が90年代末期に始まる深夜アニメの大攻勢により、

・エメラルダスはメーテルと姉妹

という設定が加わるのである。80年代初頭に松本アニメの洗礼をあびた人々は「ああ、そうか、やっぱり」とうなずいた者もいれば、「んなわけあるか~!」と怒り心頭にきた者もいるだろう。名作「さよなら銀河鉄道999」のラストシーンにおける、惑星ラーメタルでのエメラルダスとメーテルの別れの会話にあった、「わたしたちの終わらない旅路」というあたりの含みは、こういうことだったのだと、私は妙に納得してしまった。また松本零士氏のマンガ「ハーロックサーガ ニーベルングの指輪」などにも、二人が姉妹であることがはっきりと描かれている。
 だがそれでもエメラルダスがメインをはるエピソードがない以上、これ以上エメラルダスの情報が増えるわけではない。だが神秘に包まれた彼女の物語は、ついにOVAとして制作された「クイーンエメラルダス」という作品によって、我々は溜飲を下げることになる。

 今回ご紹介する「クイーンエメラルダス」という作品は、1994年に制作され、全4話の物語となっている。正直に申し上げるが、これとてエメラルダスという謎の美女に関する謎を掘り下げる作品ではなく、もとの原作マンガ同様、すでに出来上がっているエメラルダス像ありきで物語はスタートする。血気盛んな少年「海野広」との運命的な出会いの中で、広が成長しエメラルダスはそれを見守るという立場の中で、冒険や闘争を繰り広げるという物語である。そうした意味では、80年代にお蔵入りとなった劇場用作品とは趣が違うのかも知れない。メーテルと姉妹であったという設定が、80年代当時に語られるたしたら、おそらくこの作品だったろうが、まあそれも今更いっても始まらない。

 本作では海野広とエメラルダスとの出会いとアルフレス軍との衝突を描く1話「無限への旅立ち」、アルフレス軍と戦う中で、広は仲間を得る2話「不滅の紋章」、惑星ナスカにおける殺人鬼ヴァイタスとの戦いを描く3話「宿命の絆」、サイレンの女神に捕まった広を助けるエメラルダス、そしてエメラルダスとサイレンの女神の過去の確執を描く4話「サイレンの女神」の、以上4話で構成されている。残念ながら3話以降で制作スタジオおよび作画スタッフが大きく入れ替わっているため、パッケージは同じでも中身はだいぶ印象が異なっている。

 本作について何がよいかと問われれば、真っ先に思いつくのが堂々たる女海賊としてのエメラルダスの描き方に尽きるだろう。まず主題歌がなんとも雄々しい。作詞・冬杜花代子であるのだが、この歌詞のつっこみようったらない。サビ前の歌詞「さえぎるな、怒らせるな私を、誰かの破滅見たくないなら」という、どう見ても上から目線。そしてサビの「碧いジュエルの名を持ちながら、旗印は My deep red glow 燃える血の赤 そのまま」という、原作者に突っ込むという大暴挙に及んでいる。単なる主題歌の作詞担当者が、その歌詞の内容で原作者にツッコミをするなんて、古今例がない。もっともこれがエメラルドの本当の色を知らなかった松本零士氏による勘違いだったことは、すでに世間的に知られているので、今更という話ではある。だがそれ以上に本作の威風堂々たるエメラルダスの様子をこれだけ歌い上げた曲もない。

 そしてまた本編はそれ以上に堂々としたエメラルダスが描かれる。序盤に輸送船を狩りでもするがごとく追い回すアルフレス艦隊など歯牙にもかけない。このアルフレス艦隊の指揮官役と補佐官役は、鈴置洋孝(故人)さんと小杉十郎太さんである。決してそんじょそこいらの声優さんではないのである。かたやブライトさんで、かたやビリー隊長である。それをまったく相手にすることなく、そのかたわらに堂々と立ち続けるエメラルダスなのである。どうだ、おそれいったかってなもんだ。
 中盤以降でとある惑星での一騎打ちでは、エメラルダス号のステルスバリヤのサポートもさることながら、身じろぎもせずに「戦士の銃」の一撃で、指揮官の航空機を撃破するかっこよさは、身震いするほどである。それまで活躍していた広くんが完全に前座扱いされている感じがとってもGoodである。また2話では、広くんたちサロンの皆さんがアルフレスに人質に取られ、復讐に燃えるアルフレス艦隊の包囲にあって、エメラルダス号はフルボッコにされるのであるが、広くんたちが反撃するのを見越して、その瞬間まで堪え忍んでいるエメラルダスが見られる。これは一見すると広くんたちの力量を見極めての行動にも取れるのだが、見方によってはエメラルダスが、彼らに花を持たせてやっているともとれるのである。こういうふうに男を立てるなんて、なんていい女だエメラルダスと思いきや、そのあとのいいところはきちんとさらっていくエメラルダスなのである。また直後のアルフレス総司令バラルーダとの直接対決にて、すさまじい剣劇まで魅せてくれる。そして後ろからエメラルダスを撃とうとする卑怯者の補佐官は、エメラルダスの「戦士の銃」を広いあげた広くん射殺する。このとき、「戦士の銃」を使いこなせたことにより、エメラルダスは広に、正式に「戦士の銃」を授与するのである。

 この「戦士の銃」については、壁に飾られた1丁が広の手に渡るのだが、これがトチローの所持していたものと考えていいのだろうか? どうやらこの世界には5丁の「戦士の銃」があり、シリアルナンバーまで知られているそうだ。くわしいことはわからないが、ハーロック、エメラルダス、鉄郎、そして制作者のトチローと4丁まではわかる。広にわたったのがトチローのだとすれば、あと1丁はだれのだって話になるわけだ。一節によるとメーテルさんがお持ちらしい。個人的には「999」の車掌さんにあげたい気持ちはあります。

 3話以降の物語では続編となっている「999」での鉄郎たちの敵である「メタノイド」という機械人間たちが、宇宙で暗躍している様子が描かれ、松本零士サーガに連結しているそぶりをのぞかせる。殺人鬼ヴァイタスもサイレンの女神も、ともに機械化人であったことで共通性を見せているのだが、問題は4話目におけるサイレンの女神の回想シーンにおける、トチローを助けに来たエメラルダスが顔に傷つけられるシーンと、さらにそれを助けに来るハーロックのアルカディア号が、TV版「宇宙海賊キャプテンハーロック」に登場するアルカディア号であったことだ。1話での回想シーンにおけるトチローが建造中だと言ったアルカディア号は、船首にどくろマークのある、劇場版「999」で初登場したあのアルカディア号であったにも関わらずだ。あのTV版のアルカディア号は、一節によるとアルカディア号の3番艦だという話もある。もうね、頭んなかぐっちゃぐちゃですわ。

 このように、物語以前の段階でつっこみどころがありまくる本作なのではあるが、この作品がより重要なのは、本作の製作を起点に、ふたたび松本零士作品に焦点が当たり始めたということである。先述のとおり「メーテルとエメラルダスが姉妹」という内容に突っ込んだ「メーテルレジェンド」なるOVA作品が製作されたのは2000年であるし、「銀河鉄道物語」や「コスモウオーリアー零」など、深夜枠アニメなどにも進出し、さまざまな展開を試みたのはこの頃である。また1996年「銀河鉄道999 エターナルファンタジー」が製作され、鉄郎は再び銀河へ旅立つのである。原作マンガの連載がこれに前後しているので、おおむねこの「エメラルダス」が起点になったことは疑いえないだろう。まあそれらの作品が、往時の盛り上がりを見せたかどうかは、言及しないでおくことにする。

 東京都練馬区大泉学園の界隈では、いま「銀河鉄道999」の巨大な壁画が展示されているそうだ。練馬区がアニメで町おこしを考え、そのために松本零士御大が担ぎ出されていること自体は、まあ本人が楽しんでいるようなので、結構なことである。一時期さまざまな雑誌であたらしいサーガを作り出していた御大ではあるが、昨今はそれでも執筆量が減じてきたか、最新のマンガに出会う機会も減ってきてはいる。だがひとたび作品を世に送り出せば、即座に反応してしまう私のようなロートルがいることも事実である。今後も企画次第では食いつく人間もいるだろう。お願いがあるとすれば、広げる作業はとりあえずおいといて、伏線などを回収するマンガに徹していただければと思う、今日この頃である。

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