「スケバン刑事」~その2・母校愛の正体~

承前

 「スケバン刑事」に出演していた当時、斉藤由貴は本作の出演以外にも、多くの歌番組やバラエティ番組に顔を出していた。基本的な彼女の肩書きは、「アイドル歌手」であり同時に「女優」だったはずである。だがどちらの活動も同じ比重でこなしていたのでは、どっちつかずのタレントになってしまう。当時のファンはその幅広い活動を喜びながら、彼女の行く先を心配していたと証言してくれた人がいた。だがそんな心配とはうらはらに、劇場用映画にたてつづけに主演し、同時にその主題歌もこなし、歌番組にも極力出演していく。1992年に公開された「ゴジラvsモスラ」では、大阪城ホールにてコンサート中の斉藤由貴が、大阪にゴジラが上陸したことによりコンサートを中止し、観客を非難誘導する音声が流れる一幕がある(背景に流れていた曲は「夢の中へ」であった)。90年代中期にはおおむね活動が収束していた彼女。現在では2時間ドラマが主な舞台となってはいるが、80年代末期には大活躍した人だったのだ。その起点となったのが本作「スケバン刑事」であった。

 物語の当初はあくまでも原作に準拠するようにスタートする。ささいな傷害事件でつかまった麻宮サキ(演 斉藤由貴)は、神恭一郎(演 中康次)により暗闇指令(当初は「?」で表記、22話で長門裕之)と名乗る謎の男の前に引きずり出される。暗闇指令は殺人罪で死刑執行を待つ身となっているサキの母親の、死刑執行延期と引き替えに、特命刑事としてとある高校での潜入捜査に協力することを強制する。たった一度という約束である高校に潜入し、不正入学事件の主犯を逮捕するサキ(1話)。だがこの成功に気をよくした暗闇指令は、母親の死刑施行の無期延期を条件に、さらなる事件にサキを介入させることにする。そしてサキは停学処分の解けた母校・私立鷹の羽学園に舞い戻る。そこには口うるさい教師・沼(演 平泉征)やスケバンの美也子(演 渡辺千秋)などが首をそろえて待っていた。彼らはサキを目の敵にするし、だれもサキをこわがって近寄らない。だが野分三平(演 増田康好)だけは興味本位でサキに好意的である。そんななか、学園の金が強盗される事件が発生する。容疑者として逮捕されたのはサキだ。留置所に閉じ込められたサキは、神との約束の待ち合わせに行けないことで母親の死刑が執行してしまうことにいらだつ。そして死刑執行の時間に、失意のサキの前に現れたのは神恭一郎であった。そしてサキに容疑をかぶせた犯人を取り押さえ、ここにあらためて特命刑事「スケバン刑事」が誕生するのであった(2話)。

 こうしてスタートした物語は、当初さまざまな高校にサキが潜入し、そこで起こった事件をサキが解決するというパターンが繰り返される。鷹の羽学園に現れた爆弾魔を追い詰める3話、頻出する自殺者を出す高校に入り込み、自殺の原因を突き止める5話、前途有望なスポーツ選手にまつわる事件を解決した7話や10話、連続放火事件の容疑者となったアイドル歌手の無実を晴らした6話など、高校の内外にまつわる事件を解決していくサキであった。4話では殺人罪で留置されている母親を思い出す場面もある。
 そもそもこの「特命刑事」というのは、暗闇指令の持つ国家機関が、通常の警察では介入しづらい場所に潜入し、事件の全貌をあばくことを目的とする捜査員のことである。いわばスパイと言い換えてもいいのだが、桜の代紋をもっているため、捜査特権と逮捕特権が付与されていると考えていいのかもしれない。本編中には18話に別の特命刑事が登場することで、その世界観を広げることに寄与している。

 そして物語が展開を始めるのは11話である。まず鷹の羽学園に3人の女生徒が転校してくる。この3人は海槌財閥の二女・亜悠巳(演 遠藤康子)による策略で学園に送られてきた刺客であり、学園は亜悠巳の手に落ち、サキも追い詰められていく。どうにかこれを撃退したサキではあった(11、12話)。それもつかの間、次は三女の久巳(演 浅野なつみ)が出場するピアノコンクールで陰謀を巡らし、自分の上位にいる女生徒の陥れようとする。サキはその事件の全貌を暴く(13、14話)。そしてついに長女・麗巳(演 高橋ひとみ)が登場し、サキを罠にかけて少年院送りにする(15話)。その少年院の中でも麗巳の魔の手は追ってくる。その刺客から逃れ、サキは脱走を試みる(16話)。サキの汚名は晴らされて、ようやく日常に戻れたかと思いきや、母校・鷹の羽学園は海槌家に経営権を乗っ取られ、学生達の自治は失われてしまう。そして麗巳の策略で、鷹の羽学園を根城とした日本全国の高校を牛耳るための作戦が開始される(17、18話)。

 海槌三姉妹は、幾度も苦渋をなめさせられたサキを目の敵にし、彼女の抹殺を目論むが、それを制止したのはなんと彼女たちの父である海槌財閥の総帥・海槌剛三(演 神山繁)であった。彼はまたサキの実の父親であったと告げるのだ。サキの能力の高さを買い、一族に迎え入れようとする剛三であったが、三姉妹の恨みは深い。一度ならずサキを従わせようとした剛三であったが、一度は服従するかに見えたサキは、反旗を翻し反撃に出る。そして支配された鷹の羽学園の仲間達の助けを借りて、単身学園に乗り込んだサキは、そこで驚愕の真実を知る。サキの母親と剛三との関係、そして海槌の収賄の事実をつかんだジャーナリストであるサキの父を亡き者にし、その罪をサキの母親にかぶせたのである。校内放送を使って自分の悪事をばらされた剛三は、拳銃をこめかみにあてて自殺する。そして二女と三女は警察に捕縛され、鷹の羽学園は海槌の手から解放されたのである(19~22話)。

 父親が失態を見せる愁嘆場をからくも逃げた長女・麗巳は、最後のターゲットをサキ一人に絞り、じわじわと真綿で首を絞めるがごとくサキを追い詰める。人形爆弾で身寄りのない少女と一緒に殺す作戦に怒り心頭のサキは、麗巳との対決を誓う(23話)。そして迎える最終24話の冒頭で、仲間であり一度はサキへの愛を告げた三平が麗巳に誘拐される。そして三平に24時間後には発狂死してしまう洗脳薬を注射し、三平にサキを襲わせる。24時間以内にワクチンを投与しなければ三平が死んでしまう。その状況下でサキの動きを牽制する麗巳。サキは麗巳がワクチンを持っていると信じ、単身麗巳の挑戦を受けようとするが、神恭一郎に当て身を食らわされてしまう。神はサキの身を案じて、単身麗巳のもとへ乗り込んでいく。だがその過程で麗巳は流れ弾にあたり重傷を負い、その麗巳のライフルに当てられ、神はサキの目の前で死亡する。三平の身の安全が確保できたのを確認すると、サキは麗巳との対決に向かう。だがその対決の場すら罠として準備した麗巳は、サキと共に自爆するのである。そして解放された鷹の羽学園には、サキの机に一輪の花が添えられており、仲間達がサキのことを思い出して涙していた。だが三平はサキの死を信じない。いつかかならず再会できることを信じて、物語は終幕するのである。

 「セーラー服は学園の戦闘服だ!」というのは次作「スケバン刑事II」のキャッチコピーである。それゆえに「II」以降のシリーズではどこででも制服を着ることが条件付けされている。だからこそ、本作の後半ではサキがあまりセーラー服を着ているシーンが少ないことが意外に感じるのである。だがむしろ制服を着ていないサキ自身は、なぜだか鷹の羽学園という学校に執拗にこだわっているように見える。それをドラマ上の理由と読み取ることも可能だが、彼女が持っている「母校愛」には、以降のシリーズが持ち得なかった理由がありそうな気がするのである。事実「母校愛」を口にしながら、2代目サキは自分の出生の謎を解くことが第1命題だったし、3代目にいたっては世界を守るという大命題を押しつけられたのだ。しかし原作では鷹の羽学園にこだわっている。それは沼先生や三平がいたという事実が、学園をして自分が本来いるべき場所である認識があったからであろう。それはよくわかる。

 テレビ版の本作ではしきりに母親との絆を思わせる描写がある。サキが記憶していたいくつかのこと。それは悲しげな母親の姿であり、嘘を隠し続けた悲しい女性の記憶である。思い続けても満たされない母親への思慕。テレビ版のサキの根本は、ここにあるのだろう。
 サキが不良のレッテルを貼られてグレていったのは、母親不在の疎外感だろうし、母親が犯罪者であるための疎外感であろう。それが小規模な社会を形成する学校というコミュニティでは当然サキは阻害される要因になり得る。当然仲間に入れてもらえないサキが一人つっぱって生きていくこと自体は、なんとなく自然のなりゆきに見えるし、事実として母親の無実を信じている少女なら、世界に反発を覚えるだろう。そうした過程で「学校」というコミュニティになぜこれほどこだわるのか、理由がつかないではないか。
 しかもどこの世界にいっても、事件がからんだ世間は汚い大人の悪事ばかりである。しかも「特命刑事」の役職故に、サキはどこからも受け入れられない門外漢なのである。そう、彼女はこの世界のどこにも行き場がないのである。こうなるといまどきのみなさんなら、誰彼かまうことなくお家に引きこもるだろう。だが発言したい気持ちが彼女にはある。誰かに自分の話を聞いて欲しい。母親の無実を知って欲しい。そうした発露があるから、人のぬくもりをもとめて、サキは閉じこもることすらできないのだ。
 そこで彼女が注目したのは、卒業というぎりぎりまで場所を提供してくれる「学校」である。母親の愛にも飢えていたサキにとって、唯一人間に触れていられる場所が「鷹の羽学園」だったということになる。と、彼女が言っている「母校愛」の正体は、自分を受け入れてくれる場所としての「学校」だったのである。しかも阻害されるのを覚悟で学校にいるということだ。逆説でいえば、その疎外感ですらサキにとっては人とのふれあいだった可能性もある。サキはそれほど寂しかったのだ。だからだろうか、23話で暗闇指令が用意した家で、母親と暮らすようになると、途端に鷹の羽学園に通うサキの様子が描かれない。母親を取り戻したサキには、学園は必要ないことになる。そして有り余る愛は、そのまま身寄りのない少女にそそがれるのである。これではまさに麗巳の思惑通りである。

 サキを演じた斉藤由貴は本作以降でさらに人気を集め、朝の連ドラの主演をしたりして女優とアイドル歌手の道を駆け上がる。そして「スケバン刑事」というブランドは南野陽子という2代目を擁してさらに加熱する。私がもっとも加熱したのもこの頃である。「スケバン刑事」シリーズのスタッフのインタビューを見ると、「目に力のある人材を選んだ」という発言を目にする。斉藤由貴も南野陽子も浅香唯も、いずれおとらぬ目力の持ち主である。それは同時にアイドルだけがもつカリスマ性にも似た印象を与えるが、時代はそういった特殊なアイドル性よりも、いつでも隣で微笑んでくれそうな普通の女の子を求め始めていたのである。スターの資質を持つ者が放つオーラよりも、親しみやすさが優先されたのである。
 その最たるものが「おにゃんこクラブ」のメンバーの台頭であったろう。オーディションで勝ち抜ける彼女たちを目の当たりにしながら、特技らしい特技もなければ、質としてのスター性もない娘たちが、「夕やけにゃんにゃん」というテレビ番組に出演するのを見て、アイドル熱が冷めていくのを私は感じたのである。それは秋元康氏らがしかけるムーブメントに乗ることでもあったからかもしれない。こうしたできそこないのアイドルよりも「スケバン刑事」に登場するアイドル達を見逃さないことが、ウオッチャーとしての使命だとでも勘違いしていたのかもしれない。こうして女性アイドルという業界は、先細りを始めるきっかけの時期を迎えたといってもいい。それは出現しやすく残りにくい状況の出現であった。

 「スケバン刑事」に話を戻せば、その後十八年たって松浦亜弥主演で、スケバン刑事は復活をはたす。しかも松浦亜弥演じる4代目サキの実母を斉藤由貴が演じ、しかも海外で暮らしているというシーンが見られたのである。それは容易に日本という国にすら居場所を失ったサキの姿だと思えるのだ。まあ4代目の活躍についてはここでは述べるまい。しかも初代サキの娘がハロプロの申し子だとはまた、なんとも皮肉にしか思えない。実の母親のもとですら居場所を失った4代目サキは、もうどこへも行けないのではないか? 最近松浦亜弥をテレビで見なくなり、かわりにエアあややこと「はるな愛」がもてはやされるのを見て、なにか4代目に重なるのである(わかちこ、わかちこ~っ!)。

スケバン刑事 VOL.3<完> [DVD]スケバン刑事 VOL.3<完> [DVD]
(2004/12/10)
斉藤由貴

商品詳細を見る

スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ コレクターズ・エディション (数量限定生産) [DVD]スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ コレクターズ・エディション (数量限定生産) [DVD]
(2007/04/21)
松浦亜弥石川梨華

商品詳細を見る
スポンサーサイト

テーマ : 特撮
ジャンル : サブカル

コメント

非公開コメント

No title

懐かしいー!

白い炎でしたっけ、よく聞いてました。

ところで、ちょっと前に拾った画像ですが。
http://blog-imgs-36.fc2.com/a/n/i/animecut/manaka_.jpg

それぐらいの作品だったということでしょうね。

ではでは。

No title

がたがたさま
 コメントありがとうございます。そうそう「白い炎」です。あれが斉藤由貴の2曲目のシングルレコードでした。
 にしてもこの画像、すごいわ! よく見つけてこられましたね。まあスケバンとは縁もゆかりもないようなアイドルがはすっぱな言葉を使うのが面白かったんでしょうね。DVD、全シリーズもってますよ。松浦亜弥以外(ポリシーです)。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
01 | 2017/03 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺@感動をありがとう福大大濠高校

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->