「ロボット刑事」~その1・孤独の鋼鉄~

 前回「スケバン刑事」を書いた時に、ふっと思い出した作品があった。実に他愛もない話である。「フジテレビ」「東映」「刑事」・・・・・ああ、「ロボット刑事」だ、と。いやもう実に他愛もない連想ゲームである。だからといって「スケバン刑事」と「ロボット刑事」に直接的な関係なんてありません。でもよくよく調べてみると、本作以前の東映特撮作品といえば「仮面の忍者赤影」があるだけである(しかも東映京都太秦にて制作)。ってことは、「ロボット刑事」はフジテレビの東映特撮作品の源流の一つだと見ていいかと思えるのだ。まあ前置きはいいとして、さっそく本題に移ろう(今日も長いからねえ)。

 「ロボット刑事」は1973(昭和48)年4月にフジテレビ系列にて放送を開始した作品である。この時期のスチールには「仮面ライダー」や「V3」、あるいは「人造人間キカイダー」や「キカイダー01」などと一緒に撮影された特写スチールが数多く残されている。「テレビマガジン」や「てれびくん」等の雑誌で見た記憶がある方もいらっしゃるだろう。「仮面ライダー」でひとやま当てた東映は、石ノ森章太郎を原作に据えて、さまざまなヒーロー作品を作り続けた。それは1970年代の子供達にとって幸せな時間だったのかもしれない。東映のみならず、あらゆる曜日のゴールデンタイムは、アニメやヒーロー作品が軒をつらね、ともすれば同じ時間に番組がかちあって歯がみするほどだった。第二次怪獣ブームは変身ブームにとって変わり、日替わりのヒーローがあちこちの造成地で泥だらけになって撮影していたという。私たちはそんな時代に、そうした番組を浴びるように見ていた世代なのだ。そうした番組の中でもひときわ異才を放っていたのは、生み出したヒーローの数で勝る石ノ森章太郎氏であったろう。氏が生み出したヒーローは改造人間やサイボーグ、はてはロボットや超能力者まで、人間とは異なる能力を持つ者を描き続け、ヒーローの孤独と悲哀を描き続けたのである。「ロボット刑事」もそんな作品の1つである。

 本作はロボットを使って犯罪を犯す「バドー犯罪組織(あるいはバドーシンジケート)」を追い詰める警視庁の敏腕刑事・芝、若き刑事・新條、そしてロボット刑事Kの物語である。こうした警察に所属するロボットというモチーフは、現在では決して珍しいものではない。有名なところではアメリカの「ロボコップ」があるし、日本でも東映がそのままぱくったような「機動刑事ジバン」や「特捜ロボジャンパーソン」がある。特に「ジャンパーソン」の初期数話においては、革製のジャンパーとスラックスをはいて町中で捜査しているジャンパーソンが、ひとたび戦闘に入ると、それらの衣服を脱ぎ捨てるシーンがあった。これは「ロボット刑事」が戦闘スタイルに入る前に衣服を脱いで「ゴー!」あるいは「ブローアップ」と叫ぶ姿に似ているのである。まあオマージュですな。

 本稿では少し「K」についてまとめておきたい。「K」は前提として「ロボット」であり「刑事」である。この「刑事」の部分については、物語中盤で明かされるKの制作者である霧島サオリが、バドーの犯罪抑止のために製作されたロボットであり、そこには物語の核になる秘密が隠されている。これについて物語については次回でまとめることとする。
 「ロボット」ということについて言及する。Kの姿は鋼色の体に、いくつかの赤いラインが刻まれている。そして特徴的なの「K」とシンボライズされたベルトに黄色い手袋とブーツである。また目は通常時は黄色であるが、Kが悲しみに暮れるときは「青」、また怒りに燃えるときは「赤」くなる。非常に多機能なロボットで、刑事の捜査に有効と思われる装置が内蔵されており、殺人事件の現場検証の場面でも、鑑識の手を煩わせる必要がないほどの優秀なセンサー類がセットされているらしい。常時は黄色いハンチング帽に赤いダブルのスーツ、ワイシャツにネクタイ。そして白のスラックスという出で立ちであるが、バドーロボットとの戦闘時には「ゴー」のかけ声で衣服を脱ぎ捨て、鋼の体をむき出しにして戦闘に挑む。基本は格闘を行い、とどめは胸に装備されている破壊銃を使用する。22話で激化するバドーとの戦いに備えて自ら志願して改造を施し、「ブローアップ」のかけ声で一瞬にして赤い体となり、追加武装をむき出しにして戦闘するのである。だがこれほどの高性能であり、人間との複雑な会話をし、「詩」を作るような繊細さを合わせ持つにもかかわらず、Kには口の開閉機構がない。

 事実として口が開かないことについては、実生活上はなんの問題もない。最終回のクロージングでは、芝親子や新條とともに、ビールで乾杯しながらも、ビールを口にできないオチを担当して物語を締めくくるのである。それ自体に違和感など感じさせないのだ。だがサイバロイドである「宇宙鉄人キョーダイン」のスカイゼルとグランゼルは、お腹のベルトに穴があり、そこから食物を摂取する機能があり、しかも「旨い」と言っているのだから、場所は違えど味覚すら持っているのだ。これに比べるとKの能力はかたよりすぎではないだろうか。
 またそれ以上に丸みを帯びてはいるが、無骨で鋼色のデザインは、ただでさえ初対面の人間をおどかすのに十分な容姿を持っているのである。劇中でのKは幾度も人間に「誰だお前は!」呼ばわりされては不審がられているし、警察手帳を持ちながら、2話で職務質問された上に留置場に放り込まれてうなだれているのである。
 制作者である霧島サオリはロボット工学の権威である故・霧島博士の娘である。優秀な科学者でありながら、Kはどうしてこんな容姿とこうもかたよった能力のロボットになったのだろうか?

 「不気味の谷現象」という言葉をご存知だろうか? 詳しくはwiki(http://ja.wikipedia.org/wiki/不気味の谷現象)でもご覧いただけるといいだろう。そもそもは日本のロボット工学者・森政弘氏が提唱した考えである。


たに

 この図(wikiより)にある赤い曲線のように、ロボットの仕草や行動様式が人間近くなればなるほど、そのロボットに対する人間の好感度は上がるのだが、ある一定のところでそれが逆に嫌悪感に転じてしまうという。そしてさらに人間に酷似するとまた好感度があがるということらしい。この曲線はあくまで理論に過ぎず、数値的に推し量れるものではないため、そこを指摘して反論する見識者もいるそうだが、漠然と意味するところはわかる気がする。
 また自分そっくりのロボットをお作りになったことで有名な石黒浩工学博士は、自著「ロボットとは何か」(講談社現代新書)において、人間の持つ認識する力の中で、異質な者同士の境界線を見分ける能力である「側抑制」に起因するのではないかという「側抑制仮説」を提唱している。いずれに説にしても、そこにあるのは人間が敏感に見分ける力により好悪を判断している能力があるということを言っているのである。

 小難しい話はここまでとするが、例えば「不気味の谷」の話で行けば、Kの容姿はまさにこの「谷」の前後近くにおかれているといっても言い。それは制作者霧島サオリが故意にそういう形で作ったとしか思えないのである。これだけ高機能に作っておきながら、人間同様に摂食し、エネルギーを自力で補充する機能がなく、話ができるのに口の開閉機構がない。しかも詩を理解したり作るほどに繊細な心を持たせておきながら、あれほどの無骨な容姿である。
 だがここで重要なキャラクターがいる。Kがエネルギーがなくなったり、破壊されたりしたときに修理を依頼するのは、「マザー」と呼ばれる巨大なロボットである。霧島サオリは始終このマザーというロボット中にいながら、Kを見守っているのである。この「マザー」は真の意味でKという存在に対する「母」である。一見霧島サオリ=Kの母のように見えるのであるが、霧島サオリがKに直接触れることすらON AIRでは見ることができない。Kにとっては母と呼べるのはロボットの形をした「マザー」であり、霧島サオリではない。しかも霧島サオリはただ一つの理由でKという高性能ロボットを作ったが、その機能はあくまで犯罪捜査に限定的である。その観点から行けば霧島サオリにとってKは手段として必要性にかられて作った機械でしかないのである。

 石ノ森章太郎氏が書いた原作のマンガでは、人間との確執に悩み弱ったKが、マザーに泣きついてくるのを、何度か拒否しているシーンがある。これで決定的である。Kは本当に孤独なヒーローとして宿命づけられて生まれたロボットだったということだ。しかもマザーという存在ですら、霧島サオリという本来の命令者との関係を切らせないための、Kの「鎖」でしかないのである。これを「親離れ子離れ」の比喩ととることもできるだろう。だがKにとって人間を理解するために、霧島サオリという「母」としてのケースが必要だったはずだし、そこから人間関係の根本を知ることもあっただろう。にもかかわらず生みの親にすら便利な機械扱いされ、人間世界に放り込まれたKは、どこの世界でも受け入れられない孤独な存在として生まれていることになる。テレビ版では結果的に芝親子や新條刑事たちと心を通わせるラストになるのだが、それでもKが孤独にさいなまれるであろうことは、だれしも予想がつくだろう。

 次回は本作の物語を追いながら、ロボット刑事Kのもう一つの孤独について考察してみたい。

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