ルパン三世、思いで語り(セカンドシーズン編)

 前回書いた「旧ルパン」の放送が1971~72年、今回のお題である「新ルパン」の放送は1977~80年になる。この間わずか5年。わずか5年と書いたが実はこの5年間はルパンという作品にとっては、旧ルパンの再放送が繰り返されていた年月に他ならない。ルパンという素材そのものが、当初の予定よりもより広い視聴者に受け入れられたのは、制作者側の努力のたまものであると思いたいが、むしろのぞき見的に本作の再放送を夕方の時間に見ていた当時の子供たちこそが、ルパン復活の本当の立役者であったと、いまでこそ思う。そして旧ルパンの後半にあるコメディタッチでありながら、アダルトな雰囲気を持ち、トリックもサスペンスも盛り込むことで、ルパン三世という作品は、いよいよ市民権を得て新シリーズが製作されたことになる。まさに再放送の効用と言える。現在も日本テレビの深い時間で、「あしたのジョー2」が放送されているが、これとて深夜に帰宅するおっさんをターゲットとした再放送である。だがやはり再放送を通じて、1度目の放送では開拓できなかった視聴者層を開拓することは、現在でも有効な手段であることが証明されているともいえる。だれもかれもがアニマックスやAT-Xを見ることができる環境になければ、自然と再放送という手段が有効であると思うのだが。

 さて、再放送の話をもう少し続けさせてもらえれば、「(新)ルパン三世」こそ、リピート率の高い作品であることは、アニメがお好きな方ならもはや常識だろう。夏場にルパンのTV-SPが放映されるタイミングで再放送される夕方の時間はすでにおきまりであるし、あの時間は外で遊んで帰宅する子供たちにとって、絶好の時間であるから、夕餉の支度を邪魔しないように見ていた記憶のある人も多かろう。

 再開されたルパン三世は緑色から赤いジャケットに着替え、よりスタイリッシュでありながら、よりコメディ色が強い。コメディ自体は製作の「東京ムービー」(現 トムス・エンターテイメント)の十八番であろう。「天才バカボン」や「ど根性ガエル」なども見飽きるほど見てきた我々にとって、ルパンの絵柄でコメディというのは少しばかり冒険なんじゃないかと思えたが、むしろそれこそがルパン味とでもいうように、画面せましと闊歩するのである。
 お好きな方はご存知だろうが、第1話「ルパン三世 颯爽登場」では、旧ルパンの第1話の敵であるスコーピオンが、ルパン一家の暗殺に乗り出す物語にかこつけて、ルパン一家が再度勢揃いするという趣向。旧ルパンの最終回「黄金の大勝負」以降、4人はそれぞれ雌伏の時を得て、今ここに再結成という運びになったのである。それは旧ルパンの再放送があいかわらず続けられていたからこそ、旧作の第1回も最終回も踏襲し得たといっていい。あくまでも顧客に向き合った真摯で堅実な商売だといえるし、これも再放送の効果だともいえる。そしてこれから約4年になる155話の長い旅の始まりでもあった。

 この長い155話、たまに2話連続の物語もあったが、基本的に各話単独の構成である。どこをとっても、どこをきってもルパンなのである。たとえ銭形を含めて5人のだれかをフューチャーしても、いずれも「ルパン」であることには変わりない。詳しくは後述するが、たとえ宮崎駿がつくっても、ルパンはルパンである。
 そうしたルパンである所以は、ルパンという作品の持つ懐の広さである。基本的にルパンたちが泥棒であることは基本設定であるからして、動かしがたい。基本の物語がルパンたちが獲物をさだめて、幾多の困難をくぐり抜けて、どうやってお宝を手に入れるかだ。まずそのお宝の種類が多岐にわたる。基本的に金目のものが多いのだが、中には美術品や著名人の隠し財宝などが含まれる。この財宝類というのがくせ者で、いざ探し当てたらなんとかというオチが非常に多いのが、ルパンの物語には異常に多い。またルパンが正真正銘の犯罪者であるから、当然銭形を初め各国の警察が彼を追ったり、刑務所に入れたルパンが脱獄するなんて話もある。またこうした物語に隠れているが、はじめっからルパンが絡まないような不条理な物語まで存在する。歴史があり、SFがあり、文学があり、ホラーがある。世界中のありとあらゆる物語は、ルパン三世という素材に斟酌されて、我々に提供され続けているのである。あたかもルパンが世界中から盗んでいるのは、「物語の素材である」とでもいうかのようだ。

 おすすめしたい話も、お好きな方にとってはそれぞれあるだろう。ここはまっとうに人気作を紹介しようと思えば、以前NHK-BS2で放送された「BSアニメ夜話スペシャル とことんルパン三世」における人気エピソードは以下の通りである。

第69話「とっつあんの惚れた女」
第99話 「荒野に散ったコンバットマグナム」
第112話 「五右ェ門危機一髪」
第137話 「華麗なるチームプレイ作戦」
第145話 「死の翼アルバトロス」
第155話 「さらば愛しきルパンよ」

いずれおとらぬ名作である。また個人的にはツタンカーメンの呪いのマスクをかぶったルパンが、呪いに苦しむ7話「ツタンカーメン三千年の呪い」(アイキャッチが笑わす)、二重人格となったルパンにつくす不二子のけなげさが光る16話「二つの顔のルパン」、親子二代わたる金庫破りの勝負をルパンに挑む19話「十年金庫は破れるか」、不二子の叔母・峰ブジ子がルパンを翻弄する「第4次元の魔女」、脱獄囚に追跡ミサイルを発射する刑務所からルパンたちが脱獄する25話「必殺鉄トカゲ見参」、ルパンと次元が殺し合う事になる26話「バラとピストル」、お宝探しのために、ルパンが女装する42話「花嫁になったルパン」、なぜか銭形のために一肌脱いでしまう57話「コンピューターかルパンか」、五右衛門の斬鉄剣がリモコン飛行機でルパンたちに襲いかかる61話「空飛ぶ斬鉄剣」、殺しや刑事ビューティがルパンを襲う66話「射殺命令!!」、ルパンたちが音楽家に変装してお宝を狙う92話「マダムと泥棒四重奏」、ルパンの脳みそを食おうとする美食家と対決する96話「ルパンのお料理天国」、不条理話の極みである106話「君はネコ、ぼくはカツオ節」、斬鉄剣の秘密が暴かれる108話「哀しみの斬鉄剣」、ポップコーンで宇宙へ?124話「1999年ポップコーンの旅」、襲撃した銀行が人気を集める143話「マイアミ銀行襲撃記念日」、次元のプロフェッショナル魂が熱い148話「ターゲットは555M」、次元の射撃の秘密が暴かれる152話「次元と帽子と拳銃と」などがおすすめだ(はあ、つかりた)。

 これら私が傑作だと申し上げる作品群には、実は原作マンガが存在することが多い。そもそも「ルパン三世」というマンガは、かなり不条理でオチもはっきりしないマンガであるが、その実スタイリッシュでアダルトで、その不条理感を楽しみやくすぐりに変えてしまうウイットさが売りのマンガである。原作マンガをそのまま映像化してもとてもわかりにくい欠点があるのだが、それをアニメ版のスタッフが洗練された手腕で、わかりやすく再構成したものである。こうした原作付きの物語が、並々ならぬスタッフの努力により名作となっていることは、原作の面白さをアニメが引き立たせているともいえる。またポップコーンやカツオ節のように、時折現れる不条理ものが、こうしたドラマにエッセンスとして加わるのである。同じような泥棒話の合間に、こうしたわけのわからない物語が入る余地がある、それがルパン三世という物語の懐の広さである。

 そして4年という月日の間に、2本の傑作映画を登場させたのは、ひとえにファンの後押しと制作者側の熱意の賜物だろう。この2本の映画については本ブログで語る必要もないほどの大人気作である。
 本作の作画に関してあれこれいうのは、まあ現在でも無粋だろう。だがどうひいき目に見ても、けっしていい出来と言える作品ばかりだったわけでもない。声優・山田康雄氏が、フィルムが出来上がっていない時のアフレコを極端に拒んだという武勇伝は、それ故とも言える作画をさらしたことにもつながっているのではなかろうか。
 また本作ではあまり「透過光」などの特殊効果などはあまり使われなかったのであるが、後半にはいって作画に参入した宮崎駿を擁する「テレコム」が参入することにより「透過光」も一部で使われ出し、俄然作画が安定して動きも良くなってくるのは、一面の事実である。そしてシリーズ最末期には「死の翼アルバトロス」、そして最終回「さらば愛しきルパンよ」という改作が作られることとなる。この2本に関して物語としても作画としても文句の付け所がないというのは一般的な意見だろう。

 だがしかし、この最終回はどうだ。これまでのルパンの活躍がまるで偽物による大はしゃぎだったというような内容、そしてそれを冷ややかに見つめる銭形こそがルパンであり、偽物を退治して颯爽と去っていく4人で締めくくられる物語。これではまるでこれまで4年間見てきたファンに対する裏切りにも似た行為ではないのか。これを監督したのは誰あろう宮崎駿そのひとである。それとて寓話だというのはわかる。それを許容しようとすることもまた大人的な対応であろう。だがこの宮崎駿氏のやりようはいかにも偽悪的であり、大人げないと思えないか。しかも本来の東京ムービーのスタッフがこれを作るならまだよしとしよう。事実がどうあれ、最終回という大団円を下請けにまるごとまかすこの体制、そしてこの作品になにも言えなかった東京ムービースタッフの悔しさは、想像してあまりある。テレビ作品がこうした私的な感情の発露として機能していいものか、迷うところだ。それは「富野由悠季」という感情を押し殺さないで物語を構成してしまう人物を知るが故に、宮崎駿という人を否定しがたい事実である。うーん、アニメ界めんどくせえな(笑)。

 さて、いずれにしても「(新)ルパン三世」という作品、その放送期間に作られた2本の名作映画が、その後のルパンという作品に大きく影響しているのは、ご理解いただけると思う。少なくてもルパンにまつわるビジネススキームは、ほぼここで完成されたといっていいはずだ。あとはいかに観客に飽きられずに作品を作っていくかという問題だけである。なお本作放送期間中に「ルパン三世 念力珍作戦」という実写映画が作られたことは、特撮を扱うブログとしては特筆すべきことだろう。残念ながら未見のためここで扱うことができないのが残念だ。いずれどうにかして本ブログでご紹介したい。そしてこういう実写作品でも受け入れてしまえる懐の広さこそが「ルパン三世」の大事な味の素であることをご承知おきいただきたい。

追記
 最後になるが、本編を支えた音楽をほぼすべて担当した大野雄二氏の仕事に、最大の敬意を表したい。あなたの音楽がなければやはりしまらないし、このサントラ好きも誕生しなかったのである。この人のおかげでさまざまな音楽と出会い、門戸を広げることができたと思っている。そう劇盤音楽とはジャンルをまたいだ総合芸術であるとも言えるのだ(これを書きながら聞いてます)。

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ジャケがかっこいいんで並べてみました。ただ画質が向上してない映像をBDで見るってのには、抵抗を感じます。
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