「機神兵団」~90年代の遺産にして、戦後の遺産~

 おことわり
 「1st」、「2nd」ときたら、「3rd」と来るのが本来の姿であろう。本当は「ルパン三世パートIII」をとりあげておきたかったのだが、すいません、見終わらなかったです(泣)。「パート3」以降の作品については、また改めて取り上げることとする。楽しみにして下さった方(いるかどうかは知らないが)、申し訳ありません。いずれ必ず。

 本日とりあげる作品は「機神兵団」である。1992年から翌年にかけて全7巻(7話)でパイオニアLDC社より発売されたOVAである。このパイオニアLDC社製作というのが一つの着目点である。この会社、そもそもパイオニアがレーザディスクの普及を目的としてソフトを作る会社としてスタートした会社なのである。つまりテレビアニメを作れないのでOVAを作るのではなく、レーザーディスクというハードの普及を目的としてソフトをそろえる目的で、アニメが作られていたということである。いささか本末転倒という気がするのだが、「レーザーディスク」が単なる過去作品を記録しておくためのメディアではなく、高画質でハイレベルの映像を支えるメディアであることを証明するために、アニメ制作に参入したという事である。パイオニアLDC社はこれ以外にも「モルダイバー」や「八犬伝」シリーズ、「アミテージ・ザ・サード」などのアニメ作品を送り出す。それは多くのアニメ作家が自分の企画で勝負し、そして自己研鑽していった修練の場としての時代であるとも言える。本作の製作会社である「銀河帝国」は、たしかに本作のために設立されたスタジオだったかもしれないが、そのために資本が投下され、本作を仕上げた後にあとかたもなく消えていることから、「銀河帝国」という制作会社は製作委員会のようなものであったかもしれない。それもまた時代だろう。「機神兵団」という作品は外部事情から見ても、それまでのOVAとは少し趣の異なる製作状況が伺える作品であった。

 さて本作は山田正紀氏の伝奇小説をベースとした物語である。第二次大戦の以前の世界を舞台に、一人の少年・鷹村大志が、「モジュール」と呼ばれる有機回路に人生をもてあそばれながら雄々しく成長し、エイリアンと敵対する「機神兵団」に入団し、エイリアンやエイリアンを利用しようと企む関東軍やドイツ軍と戦いを繰り広げる物語である。全7話の構成は以下の通りである。

第壱話「出撃! 雷神起動指令」
 物語の発端となる鷹村大志が父親とはぐれる物語でスタート。父から託されたモジュールを関東軍が奪いに来るが、機神兵団の白蘭花(バーレイホー)により助けられ、大志ははじめてその存在を知る。 

第弐話「奇襲! 要塞島攻防戦」
 前回のどさくさに、機神兵団に参加する大志は、関東軍の新型機神開発基地である要塞島攻撃に参加する。だが大志の失敗により作戦の進行がスムーズにいかない。自分の失敗を正直に話す大志は、はじめて機神兵団のメンバーとなる事ができた。

第参話「争奪! 爆走列車作戦」
 関東軍はなんども煮え湯を飲まされた機神兵団を罠にかけようと画策する。それは平行する2本の線路に機神兵団の装甲列車をおびき寄せておいて、これを撃退する作戦だ。しかも作戦が失敗しても、ドイツ軍が準備した弾丸列車を正面からぶつけるという二重の作戦。機神兵団はこの罠を切り抜けられるのか?

第四話「機神対装甲騎士(前編)」
第伍話「機神対装甲騎士(後編)」
 ドイツ軍は独自に開発した機神「装甲騎士(パンツァーカバリエ)」を持ちいて、機神兵団に対抗しようとする。関東軍はそれを手に入れたい。兵団内部でエイリアン掃滅作戦を検討するさなか、機神兵団は装甲騎士の力になすすべなく、ただ逃げるだけであった。そして第4の機神の必要性に迫られる。2度目の遭遇戦でも連係プレイでどうにか撃退する機神兵団は、これからの戦いのすさまじさを感じ戦慄する。それは悪魔的にエイリアンと結託したドイツ軍に対抗しなければならないということである。

第六話「進撃! 敵エイリアン基地」
第七話「少年よ、大志を抱け!」
 アメリカは独自に開発した原子爆弾を、ドイツ軍が所有する要塞島に落として、エイリアンの出現とドイツ軍との結託を止めさせようとする。機神兵団は最後のモジュールを奪還し、第4の機神を起動させ、装甲騎士を打ち破らなければならない。それも原子爆弾が投下される前に作戦を完遂する必要がある。機神兵団が最大にして最後の戦いにおもむく。

 基本の物語はこんなところである。これに双子の姉妹が大志にからんだり、関東軍とドイツ軍の確執、大志が育った孤児のたまりばにいた子供たちとの邂逅など、モジュールや機神開発の裏側にある複雑な人間模様を垣間見ることができる物語である。一見するとこの人間関係は決して複雑ではないのであるが、単純に出来上がった映像からではなかなか読み取りにくいのも事実である。また物語が盛り上がる中で、大志というキャラクターに思い入れをしても、彼自身が事件の中心人物ではない場面が多く、それゆえに物語の起伏に、観客の感情が沿いにくい状況まで発生する。群像劇である以上、交通整理が必要なのであるが、物語と人物配置の整理状況がけっしてうまくいっている状況とは言いづらいため、7話連続で見ていると、どうしても眠たく感じてしまうのも、一面の事実である。
 この根本的な原因は、「鷹村大志」という原作小説には登場しない少年を主軸に据えたことだろう。本来いないはずの物語に、別の主人公が存在するのであるから、この不具合を矯正するのは、並大抵ではない。そうなると物語の発端部分である鷹村親子の死別の物語もないのであるから、スタートからして混乱させるだけだったとも言える。まあ実際本作が売れたという話も、好評をもってアニメファンに受け入れられた話も聞かないので、そうした評判から推して知るべしなのかもしれない。

 ところが話がかわって「機神」というロボットに関して申し述べれば、これが非常に興味深い。謎の回路「モジュール」は実はエイリアンがもたらした未知のブラックボックスであるが、どうやら特殊なエイリアン自体のコアであるかのような演出がなされてる。世界各地にはこうしたモジュールがいくつか存在し、それをつかって機神はコントロールされているという。ドイツ軍はこれを兵器に転用して、来るべき第二次大戦を有利に進めようと画策していたが、これは機神兵団により阻止されるというのが、物語の骨子である。ではドイツ軍が装甲騎士を量産しようとしていた背景にはモジュールのかわりとなるエイリアン自体が協力することで、モジュールの変わりを果たしていたのだが、このモジュールの代わりに登場した人間がエイリアンに乗っ取られてしまうという事実が、物語末期に発覚する。そう、ドイツ軍は兵士の無駄づかいしてでも、装甲騎士により戦争を有利に進めようとしていたのである。そしてエイリアンの巣でるドイツ軍の秘密工場のある要塞島に、アメリカは開発された新型爆弾の投下を決める。それが原子爆弾である。後々日本に投下される爆弾は、本来エイリアンに対して使われたものであったのだ。こうした戦争の暗部に隠れていたさまざまな事柄が、現実の世界での出来事に少しづつ絡んでいく感覚が、本作の味わいの一つであると、私は考えている。

 また技術的な時代考証の問題はあるが、「雷神」「風塵」「龍神」といった機神のスタートアップの細かな描写は、特筆に値する。特に壱話で白蘭花の操縦する「雷神」が起動する時のシークエンスには、本当に血湧き肉躍る感じだ。列車「機神号」で発電された電気を蓄えて、雷神の4機のタービンが、手動で一斉にスタートし、コンセントとなる電熱盤を接続し、発熱した信管が破裂すると、モジュールが動き出す。そして操縦レバーを無造作に動かしながらシステムに連結させ、雷神の灯りがともると軌道作業が終了し、出撃するのである。これの起動のために10人ほどの人間がかり出されている。これに限らず、機神兵団は基本的にマンパワーの集団であるから、そうした前線に出て戦う人間のために、非戦闘員となるバックアップがはっきりと描かれていることに、驚喜する。そう例えば富野由悠季監督が「ガンダム」を製作したときに、「補給」などという裏方が大事であることが綿密に描かれていたことを思い出す。ロボット一つ動かすのに、どれほどの人間が裏で活躍しているかを描くことで、リアリティを演出していたといえる。私にとってはこの起動シーンがあれば、その他のいくつもの問題点すら気にならなくなるほどの名シーンであると考えている。ロボットアニメ好きの方には、ぜひともご覧いただきたいシーンである。

 先にも述べたようにレーザーディスクというメディアを普及させるために作られた作品である、物語的にはいささか難がある作品ではあるが、時代の雰囲気という点では申し分ない作品である。ロボットもリアルリアルといいながら、徹しきれない部分を上げればきりがない。そんな中で裏方に注視させてリアルを追求したロボットの姿は、リアルロボットを追求した先に現れた、90年代初頭ならではの独特の雰囲気とも言える。こうした作品はもはや遺産である。まさに90年代の遺産だ。現在でも視聴可能でふれることができる遺産であるので、時代の雰囲気を味わうことができるに違いない。

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