「重戦機エルガイム」~その1・メカニックの問題~

 この数週間、実に悩まされ続けたのはこの作品を見ていたからだ。「重戦機エガイム」。1984年に放送が開始された本作は、前年の「聖戦士ダンバイン」のあとを受けて制作された。エルガイムの次の年があの悩みのたね「機動戦士Zガンダム」である。私はこの1985年に高校1年になったので、エルガイムは高校受験の最中に放送されていた作品である。そうなれば勉強時間の合間をぬってエルガイムにかじりついていたかといえば、そうでもない。1983年という年は、春に「ヤマト完結篇」「クラッシャージョウ」「幻魔大戦」が劇場公開し、「超時空要塞マクロス」や先の「ダンバイン」などのロボットアニメが跳梁跋扈した年である。だから1983年は充実したアニメ視聴していたが、受験の年になるとそれなりに心機一転して勉学にいそしんだ。若干のテレビ視聴も塾帰りの時間のバラエティ番組に割かれ、アニメを視聴する時間はかなり減っていた。だがこの「エルガイム」だけは故意に遠ざけたという感触が残る。それは漠然とエルガイムに面白さを見出せなかったからだ。
 それ以降ずっとエルガイムに関しては自分の中でなんとも表現しがたく、評価の固まらない作品であり続けた。気になって仕方がなかったのだ。後年DVDのボックスが出たときにすぐに買ったが、いつも見るのは決まって最終回周辺の数話と序盤の数話のみ。真ん中らへんはまったく手付かずである。本ブログが軌道に乗り始めたら、なんとか視聴して評価したいと願いつつ、ついにその順番が回ってきたのだ。
 がしかし、その視聴にこれほどまでに時間が費やされてしまった。それは他の作品を同時並行で視聴していたこともあるが、なによりエルガイム自身があまりに退屈で、見ていて何度も寝こけてしまい、何度も見直したというのが真相である。まあこれほどまでに集中して見た作品もないので、これからゆっくりと語っていこうと思う。本作に関してはいくつもの問題がある。その問題点をすべてさらうのは大変であるが、出来るだけさらっておきたい。これは後世の自分に対する作品批評の指標の一つとしてもまとめる意味で、きちんと触れておくべきところは触れておき、メモを残しておきたいというのが狙いである。今回はエルガイムだけで3回を予定し、メカニック、キャラクター、物語の3つに分けてまとめ、最終的に私にとってのエルガイムという作品を検証してみたい。お付き合いいただければ幸いである。

 さてまずはメカニックから語っていこう。本作におけるメカニックデザインは、かの有名な永野護氏であることはご存知のことであろう。エルガイムではメカニック以外にキャラクターデザインまで手がけ、エルガイムの世界であるペンタゴナワールドの世界観を作り上げた第一の功労者であることは疑い得ない。またエルガイム以降では1985年に創刊されたアニメ誌「ニュータイプ」において「ファイブスター物語」のマンガを執筆し続けている(ってかまだ終わらない)。ファイブスターの世界観がエルガイムの世界に、局部的に着想を得ていることは周知の事実であろう。事実上ペンタゴナとファイブスターの世界にはなんの関連もないとされているが、その実どこかつながりの感じられるところに、連載開始当初のファイブスターには面白みがあったのも事実である。だからこそ私もエルガイムが気になり続けたのである。

 永野氏は本作に登場するメカニックをすべて一人でデザインした。この世界で劇中使われるメカニックは大きく分類すると(1)ヘビーメタル、(2)艦船類、(3)フロッサーやランドブースターなどに分類される。特に目立つのはヘビーメタルであるのだが、その前にあまり目立たない艦船類について指摘しておこう。

 艦船類のデザインの特徴を一言で言えば、「横に長い」である。手持ちに資料がある方は比較しながらお読みいただきたいが、一様に戦艦は横に長く、幅がない。そして縦方向に展開する細い突起物などがこれを彩る形状だ。また先端が主砲である場合が多いためか、船首に向かって細くなる傾向が強い。ダバたちの居城となる「ターナ」をはじめ、アマンダラ・カマンダラが乗る「ホエール」、ギワザ・ロワウの乗艦「サージェ・オーパス」なども、ほぼ一様に同じようなシルエットを持っている。設定画などを見ている分には非常に整理された線で描かれており、その一つ一つの出来栄えはまことにすばらしいのであるが、問題なのはどれも同じシルエットを有するがゆえに、画面ではあまりにも判別しづらいのである。特にサージェ・オーパスなどはカラーが黒を基調としているため、宇宙空間でまったく映えないのである。またカラーリングは艦船中随一のカラフルさではあるが、あまりにデザインが地味すぎるのが、ダバたちの旗艦「ターナ」である。このターナはダバが反乱軍の旗艦として使用し、アマンダラから無償で手に入れた戦艦であり、小型だが強力な主砲を持っているし、なにより登場回数が多いので、視聴者の記憶にも残りやすい戦艦である。にもかかわらずそのデザインはあまりにのっぺりした印象で、決して印象に残りやすいとはいいがたい。
 ここで比較になってしまうのだが、主人公が旗艦として登場する戦艦であるから、ターナはガンダムで言えばホワイトベース、ダンバインで言えばゼラーナ、ザブングルでいえばアイアンギアーに相当するのである。それがこれほどまでに無個性極まりない戦艦でいいのだろうかという疑問が、視聴中ずっと私の脳内でうごめいていた。そのくせワークスという序盤でエルガイムを背負っていた大型の陸上用マシンは、かなり細かい設定画が上げられている。特に序盤はこのワークスでの生活がダバとキャオの居住空間であり、ダバたちにとっては志をともに立ち上がったマシンであるからか、各部に細かい指定まで施されている。この比較を考えるに、そもそもエルガイムって物語は、宇宙での戦闘を想定していなかったのではないかと疑ってしまう。単なるポーターとしての艦船であれば、ゲストメカ扱いの軽いものが好まれるだろう。それが物語の展開上、宇宙での戦闘がメインとなる中盤で、そのあたりのデザイン上の齟齬が出てきてしまったのではないかと推測している。

 それを端的に証明する事実が、主力となるヘビーメタルの操縦系統にある。特にダバが序盤で登場する主役機エルガイムは、エルガイムの操縦席と地上移動用の小型エアバイク・フロッサーとを兼ねるスパイラス・フローというものに登場し、フローそのものが変形して操縦ブロックとなり、エルガイムに合体することで起動する。フローが設置されたあと、前面の胸ハッチが閉まり、頭部が後方からせり出すようにしてフローの上にかぶさることで、起動開始するというのが、バンクシーンとして何度も登場する。よくよく見ると、この搭乗システムには機密性がない。つまりこのまま宇宙に出ることが出来ないのだ。だからダバたちはヘルメットと宇宙服がくっついたようなスペーススーツを着てヘビーメタルに搭乗する。OPの映像でも確認できるデザインではあるが、どうもひっかかるのである。

 さてヘビーメタルについては、これまでのロボットものにない洗練されたデザインが堪能できる。はっきり申しあげて、ロボットのデザインという1点のみで考えれば、現在のどのロボットよりも洗練されていると申しあげていいと思っている。
 特にひじや膝の二重間接部の描きかた、機体構造となるフレームに外装を施して形成される「ムーバルフレーム」という内部構造の考え方、そして体色を1~3色程度に抑えたデザインセンスは、他の類を見ない。OPの映像ではエルガイムが荒野を走る映像があるが、これこそデザインを忠実に再現した走りの映像であり、二重間接の動き方や見える内部構造、反対側に曲がらない外装の意味などが存分に味わえる映像である。なによりこれまでのロボット物ではありえなかった内部構造がむき出しになって空中に移動するロボットという映像が斬新である。手持ちの武器はセイバーか長い槍のようなものが多い。腕に装着するパワーランチャーがそれまでのビーム兵器に変わり、シールドの背面には様々なオプション兵器が存在する面白さが、男の子の目を誘う。序盤のライバルメカであるオージェやバッシュなど、カラーリングもエルガイムの対極に配し、特異な形状のラウンドバインダーの内側から射出される小型のセイバーや、バスターランチャーの大迫力の攻撃に度肝を抜かされる。

 こうしたムーバルフレームや二重間接の考え方の斬新さは、後々ガンダム作品の再評価につながることになる。劇中でのリアルの追求がおもちゃとしてのプラモデルにフィードバックした珍しい例であり、これ以降のZガンダム世界のモビルスーツはフレーム式に外装を取り付ける形状をするし、二重間接は当たり前の構造となり、過去のガンダムのデザインまで見直される結果となり、プラモデルデザインのリファインが当然のように行われていくことになる。

 だがあらためてこのヘビーメタルのデザインをよく見て欲しい。一部のヘビーメタルを除き、そのシルエットはあまりに厚みがなく薄っぺらい印象がないだろうか。劇中の画面を見ると、エルガイムやそのコピー機であるディザードなどがブースターにつかまって空中を移動するシーンを見ると、その薄っぺらさに唖然とすることも何度かあった。ブースターにぶら下がっていても、横から見ると非常に薄っぺらいのである。艦船類が横に長く、縦に派手なのに比べると、横にボリュームが求められており、奥行きがない構造なのだ。特に反乱軍のディザードとポセイダル軍のバルブドの一騎打ちを横面から見ると、どっちがどっちかわからないほど薄っぺらいのである。こうなると遠景からの見分けは色でしか見分けることが出来ない。これもロボット同士の戦闘の印象を薄くする原因となっている。こうした横面からのボリュームのなさは、主役機であるエルガイムですら逃れられず、エルガイムマークIIはブースター形状に変形するシステムがあるのだが、この薄さはいかんともしがたく、派手な変形が見られないため、動きの細かいせせっこましい変形シーンとなっている。せっかくの主役機ですらこの結果である。

 またヘビーメタルの問題点はそれだけではない。ヘビーメタルにはA級やB級という等級がある。これの含むとところは、前時代に開発されて破棄されたものを発掘したものや、発掘したものからレストアしたもの、過去のもののレプリカとして存在するもの、外装だけを換装したものなど、さまざまな意味を持つヘビーメタルが搭乗する。一方のB級には攻撃力が低く扱いの簡素なものがこれに含まれており、そのシルエットはA級に比較してあまりにもお粗末な印象を持つ。
 前半が特につまらないと思う事情は、A級ヘビーメタルというかっこいいシルエットのロボットの出番が少なく、B級やリスタやゼッタなどのマシンナリィと呼ばれるヘビーメタルもどきばかりが登場するため、画面の華やかさが足りなかったこともあるだろう。なによりこうしたヘビーメタルの等級の意味合いが複雑すぎて、設定好きにはうまく乗れない複雑さがあったこともある。そうした設定の煩雑さは、制作する側にも混乱を与える。顕著な例としてはバスターランチャーの使用タイミングだろう。通常のパワーランチャーとして使用している場面もあれば、最大の決戦兵器としての威厳ある使用例もある。またA級とB級が普通に切り結んでいる姿には、ヘビーメタルの等級は性能差に由来しないイメージがあり、これもまた混乱の元となる。こういう混乱は、見ていて決して気持ちのいいものではなく、むしろ統一感のなさにあきれてしまうのである。

 本作品の総監督・富野由悠季氏のインタビューはかなり多く残されている。とくにヘビーメタルに関しては、ヘビーメタルという名前からイメージする重厚さが得られなかったことを、残念に思っていた内容の発言が目につく。それは富野監督自身がいつも通り強権発動せず、クリエイターに自由な発想の元で作品を作らせたいという想いがあったからなのかも知れないが、それゆえに収束せずに発散する一方の永野氏のイメージに振り回されていた印象も拭いきれない。

 以上のように、エルガイムという物語に登場するメカニックには、美しく統一感のあるデザインやよく練りこまれた魅力的な設定の数々がある反面、幅や奥行きのない設定画により、画面上の迫力が相殺されている事実や、設定の煩雑さゆえに、製作現場での混乱が起きてしまっている事実など、弊害が大きいことがわかってきた。
 次回は人物にスポットをあてて、エルガイムを語ってみたい。

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コメント

非公開コメント

本編を見たことはないのですが、メカデザインが好きで設定だけはよく知っています。
後はOPの曲が異常にかっこいいことぐらいしか(汗)
ゼータがあれだけ似ているの重量が3分1しかないのが納得いきません(笑)

すいません。
ゼータとでした。

No title

とぴろ様
 コメントありがとうございます。
 せっかくなんで調べてみました。

 エルガイム  身長20.7m/重量19.1t=重量比0.922
 Zガンダム  身長19.8m/重量28.7t=重量比1.449
 初代ガンダム 身長18.0m/重量43.4t=重量比2.411

エルガイムがずば抜けて軽いことがわかります。
なお水の単位体積重量は1t/m3です。これより小さい場合は水に浮くのですが、

 エルガイム=0.002t/m3
 Zガンダム=0.004t/m3
 初代ガンダム=0.007t/m3

こいつらみんな水に浮きます。しかも建設や土木の世界で知られている粘土や砂よりも軽いのです。
わはははは・・・ありえねー。

僕も調べ直してみました。
ゼータが60tだと思っていましたが、全装備時重量でした。

しかし設定は突っ込み処いっぱいですね。

No title

とぴろさま

 まあ、資料によって変わりますから。なにが本当かなんて、サンライズの公式だって本当かどうかわかりませんしね。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
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特撮は主食、
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後期必殺を好み、
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