スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映画「涼宮ハルヒの消失」~有希が選んだ自分の立場~

 どうやっても御しがたい「好悪」の問題というものがある。「嫌いだけど好き」や「好きだけど嫌い」という感情が、確かに自分の中に存在する。それは感性の問題で、理性で割り切れるものではない。たとえば過日3回にわたってまとめた「エルガイム」という作品も、あれだけ問題点を指摘しながら、自分にとってはなんだか憎めない作品であるし、以前よりはっきりとこき下ろしている「アリオン」や「時をかける少女」などについても、「観る」ことの快感からは逃れられない。「宇宙戦艦ヤマト復活編」のように、好悪の感情をそのまま書くことも可能であるのだが、今回取り上げる作品については、はっきりと映画としての欠点がありながら、それゆえにどうしても好きな作品だ。「涼宮ハルヒの消失」、やっと今日観に行って参りましたので、さっそくご報告したいと思う。今作はすでに原作が公開されて久しいし、観ている人は内容を知っていて見に行く人が多いだろうと予測し、以下ネタバレ全開で書くことにする。原作を知らずにこれから観に行く方は、以下の文章を見ない方がよいと思われるので、ご注意されたし。

 まず先に、問題点だけは挙げておきたい。この映画、実にテレビ版を観ていないとまったく理解しがたい内容を含んでいる。そのため一般のお客さんのために、説明しようとするそぶりは、全くないといって言い。まったくもって一見さんお断りの映画である。
 そして上映時間が160分以上になる。約2時間40分である。これはいくら何でも長い。商業用映画としては一般的に90分から120分以内におさめ、集客のためにもよりよいローテーションで上映するべきである。だがこの映画は本当に長い。私の隣で座っていた青年は、上映時間内に2度もトイレに立ったほどだ。事実私も途中で睡魔と戦うのに必死であったことを告白しておく。
 最後に、キョン一人称によるしゃべりがひたすら長く続く。しかも劇中キーとなる内容についても、キョンの台詞で紹介してしまうのである。状況やキャラクターの思考を、台詞に頼って説明するのは、本来劇場用の映画であれば、固く戒めるところであるのだが、この映画においては、ひたすらキョンがモノローグをしゃべりまくり、説明しまくる。
 「涼宮ハルヒの消失」という映画は上記のような問題点があり、劇場用映画としてならば、どう考えても及第点を与えられない作品であることは明白である。これら劇映画としてのセオリーをことごとく無視して作られている映画なのだ。
 ところが、一見さんお断りの部分をのぞけば、それにはそれぞれきちんとした理由がある。それはすべて「涼宮ハルヒ」の物語を形成するためには、必要不可欠な事情があってこうなっている。もしあなたがだれかと本作について話題になったとき、上記のような点をあげつらって、勝ち誇ったように映画批評する人がいたら、さらに勝ち誇って以下のように説明し、こんこんとお説教してあげて欲しい。

 本作を含む「涼宮ハルヒ」シリーズの原作小説をお読みになった方はすぐにわかるだろう。本作がひたすらキョンが一人しゃべりで進行するのは、原作がもつキョン一人称のドラマを、原作に準拠してアニメとして再構成しているからである。しかも160分にもなる理由も同様で、原作における細々とした事象を余すところなく取り上げ、映像化する前提で作られているのがテレビシリーズからの「ハルヒ」のアニメの作り方であったからだ。すべては観客であるあなたのために作られている。しかもその観客は原作を読み、ハルヒやキョンや長門たちを大好きで、しかもアニメになるに及んでU局の深夜をエアチェックし、あまつさえDVDになってまで購入をしてしまうような人々を観客として設定しているのである。アニメ化されブームになって4年が経過し、エンドレスエイトの悲劇を介してもまだハルヒを応援している我々にむかって作られているのである。そういう観客にとっては、上記の問題点はまったく問題ではなくなるのである。

 この「涼宮ハルヒの消失」という物語は、原作でもターニングポイントとなる話である。だからアニメでも重要視された結果、今回のような劇場用作品として公開される運びになったことは疑い得ない。またこれまで陰になり日向になりキョンたちを支えていた長門有希が堂々の主役である物語でもあり、彼女をヨメと言い張る無粋なみなさんの熱い支持を受けている作品である(風早みたく「みんなの長門」じゃ、だめかい?)。
 物語はキョンたちが高校1年の冬休みを迎えようとする頃に始まる。いつもの日常、ハルヒのいるドタバタとした日常が、ある日を境に突然無くなってしまう。しかもキョンの目の前にいる長門やみくるは自分のことをしらず、ハルヒと古泉は学校にいない。けれどキョンだけはいつもの記憶を持ったままだ。そしていなくなったはずの朝倉涼子までクラスメイトになって復活している。なぜだ? その謎を探るため、キョンは走り回り悩みまくる。この世界はどうなっちまったのか? 世界改変の謎を探るべく、キョンは行動を開始。別の学校で生活しているハルヒを古泉を見つけ、文芸部の部室でこれまで別の生活をしてきたSOS団の5人が集合したとき、世界改変の謎が徐々に明らかにされる。そして世界の改変を望んだものの正体とは?

 この物語、実に謎解きの要素があり、普通に作るとすればこの謎に焦点が当たるように作られる。そうこんなに時間をかけなくても、いくつかのシーンをカットし、出来事の順序を入れ替えたりするだけで、時間短縮がはかれたり、仕掛けの効果を最大限に引き上げる手法だってあるのである。本映画がその方法を採択しないただ一つの理由は、先ほど示したとおり、原作を忠実にアニメとして再現するという、テレビシリーズからの不文律に準じているからである。原作重視派の人からすると、こうした小手先の技術の頼ると、かならずやり玉に挙げられる事が多い。それを真っ正面から説き伏せるには、真っ正面から原作を忠実に再現することを念頭において作るしかないのである。そしてその作り方こそが、ハルヒシリーズを見続けてきたファンの納得する作り方だからである。キョンが一人でしゃべってていいし、2時間超える上映時間だっていいのである。

 そして本作のもつキャラクターの魅力は尽きない。しかも上記にあげつらった問題点を容易に覆い隠してしまう。なによりハルヒ、長門、みくる(大ふくむ)の3人のかわいらしさは格別である。この長い映画を作るに当たり、製作会社の京都アニメーションの本気も充実しており、そのためスタッフ総出で作画しているのがよくわかる。よそ様のブログでは複数種類の顔を持つハルヒたちキャラクターの顔の作画について、指摘する声もあるようだ。だがおそらくトーンの調整に失敗したいくつかのシーンを除けば、それほど気になるものではない。
 とにかく改変された世界の長門のかわいらしさの破壊力はとんでもない。本気でスクリーンに飛び込んで、長門を抱きしめて、「キョン、彼女をおびえさせるな!」と言ってやりたいシーンの続出である(そんなことできたら、俺がびっくりするわい)。また改変後の世界での不満げな表情のハルヒは、キョンの話にだんだん乗り始めて声のトーンがあがる件は、ああ、ハルヒの物語はこうでなくてはと、キョンとおなじ心境に至るのである。個人的なことを言わせて貰えば、みくるはオトナバージョンがいい。声のトーンも落ち着いており、不自然なはしゃぎもないので、安心して観ていられる。まあハルヒにもてあそばれて泣きじゃくっている彼女も嫌いではないけど。

 また背景や美術の美しさには目を見張る。まるで実景と見間違えるほどの街の風景や校舎の様子、対比するような有希の部屋の中のモダンアート的な空間など、観るべきところは多い。ハルヒが通っていた高校の正門前の駐車場脇の小屋とか、コンビニ看板にむらがる蛾とか、どうでもいいところまで精緻に書き分けている。その力量、本作に入れ込んでいる力のほどが存分に現れているといって差し支えないだろう。むしろ荒く見せているシーンほど、ぼやかした情景が美しく感じられる背景である。

 本作がシリーズのターニングポイントである理由はいくつかある。長門が主人公になるとか、ハルヒの世界の中で「if」を具現化した物語であるとか。
 しかし私が思うに、この物語がシリーズの白眉である最大の理由は、それまでSOS団として一線を引いていた位置にいた長門が、この物語によりキョン以外のメンバーとやっと同列になったことではないだろうか。
 SOS団というのはハルヒを中心として発足しながら、その実態はキョンにおんぶにだっこの組織であることは、愛すべき賢明なる皆様ならおわかりだろう。そうだれもかれも、キョンに対してわがままを押しつけるということでは、ハルヒ、みくる、古泉は同列である。ハルヒはいわんをや、みくるも未来人としての役割故にキョンに対して事態の一部を押しつけており、場合によっては気を失ったりしてキョンの役に立っているとは言いづらい。古泉にいたっては、機関に属して事態を静観しながら、その実事件の首謀者であったりするし、全権をキョンに移譲しているそぶりすらみせる。それだけキョンが重要人物である証拠なのだが、それ以上にキョンに依存している関係であるのは間違いない。だがその中にあって一人だけキョンから全幅の信頼を寄せられている万能の存在、それが長門有希である。この物語は有希がはじめての抗いきれないわがままを、キョンに止めて貰いたがっている話だと解釈すれば、はじめて長門有希はキョンに依存したことになる。こうして長門有希はキョンにはじめて依存し、自分弱点をさらすことで、ハルヒやみくるたちと同列になる事ができたのである。今回の話に限らず、すべてのシリーズにおいてキョンが主人公だとしても、本作のポスター絵となっている壁に寄りかかっている5人の位置関係は、キョンを中心にして横一線に並ぶ様子は、いみじくもこの関係性を物語っているとは言えまいか。

 ひるがえって、これほどの大事件をおこした長門自身のストレスを思いやってみれば、あの夏の日をだらだらと観察者として過ごした日々を忘れるわけにはいかない。テレビの前でイライラしていた諸君、その苛立ちはまさに長門が体験した苛立ちである。長門をヨメと自認する皆様よ、あの長きにわたる冗談とも本気ともつかない「エンドレスエイト」の時間は、諸君の愛した長門の感情を追体験したものに他ならない。であれば、あれほどの事件を起こすだけの原因として、いまさらながら「エンドレスエイト」を認めるにやぶさかではないのではなかろうか。

 また最終的にキョンが選ぶ日常は、本来我々が知っている日常とは似てもにつかない日常であるのだが、どれだけ安寧な生活であっても、日常における安心感はそれを遙かに超える貴重さを有していることが示されている。観客ひとりひとりにとっての日常とは、だれにも壊されたくない日常とは何なのか? それを自分の身勝手な理由で壊してしまってもいいのかどうか、そんなありきたりな教訓だって示してくれている気がしてならない。きっとそれは日常だから気がつかない大事なものなんだけど、大事なものがあるから日常なのか、日常だから大事なのか。それは人それぞれかもしれない。キョンは立ち止まり迷い悩む自分を足蹴にしてまで非日常の日常を勝ち取った。あなたが手にしようとする日常は、それまでの自分を足蹴にするほどの価値があるのだろうか?

 さて最後になるが、本作の音楽についても述べておきたい。本作の音楽を担当したのは、テレビシリーズも担当した神前暁氏である。京アニとは「らきすた」などでも縁のある氏であるが、ハルヒ関連のBGMで、商品化されているのは、本作が最初である(テレビ版DVDのおまけCDに収録されているけどね)。テレビでも使用された日常のキョンたちの曲を含めた楽曲が、これまでよりも大きな編成の楽器を使用して演奏されており、キョンやハルヒの昂揚するシーンに効果的使われたり、サティの曲が静かに流れてくるタイミングの、なんと切ない思いが交錯することよ。学園を舞台にした「けいおん!」などの音楽とも味わいの異なる楽曲を、CDで楽しむことができる。これも本作の一つの効用である。
 またいずれDVDなどのメディアで発売される本作。再見を楽しみに待ちつつ、今は一度筆を止めておこうと思う。

公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失
(2010/02/25)
ニュータイプ編集部

商品詳細を見る

買うしかないよねえ、この絵見たらさあ。
劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック
(2010/01/27)
サントラエミネンス交響楽団合唱団

商品詳細を見る

本文中のCDです。
スポンサーサイト

テーマ : 涼宮ハルヒの憂鬱
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

非公開コメント

見る前に自分は一切のネタバレを防ぐ為に原作はおろか、予告すら目にしないようにしていました。

見終わって原作を手にとって衝撃が走りました。原作が台本だと言っても過言ではないほどこの作品は原作に忠実に作られていたからです。
原作を音読してもらっていた感じですね。

ある意味ではファンサービスの究極系なのかもしれないですね。

しかし、ファンでない一見さんみたいな人は途中寝てしまっていました。

こんなに人を選ぶ劇場作品は見たことないです(笑)

No title

とぴろ様
 コメントありがとうございます。
 そうですね。本編でも触れましたが、映画としては非常に評価しづらい映画です。そのぶん、ファンに向けて作られていることは間違いなくて、新房監督×シャフトが新しい映像表現を模索し続け、視聴者側をリードしていくのとは異なる質の作品だと言えると思います。
 もう楽しめない人は絶対寝るし。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆早田ひな

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->