ルパン三世、思い出がたり~パートIIIはダブルトリック~

 スピーディでシリアスな主題歌に活躍の場である町を箱庭的に捉えたセンスのあるOP、ピンクのジャケットに精悍なマスクで登場した「ルパン三世part III」のルパン。その姿に不思議な違和感を感じた人も少なくないだろう。事実、赤ジャケットを見慣れた世代でも、これはあまりにも軽薄な色であり、むしろ軽率である。1984年3月から1985年末までの放送期間で50話が放送されているが、約2年にわたる放送期間に対して少ない放送話数の理由は、放送日である土曜日のゴールデンタイムに野球中継をしていたからだ。それでもルパン三世としての作品の質はまったく失われていない。それどころか現行で放送されているSPとは比べ物にならないくらい充実した作品群となっている。

 パート3の特徴をひとことで現すなら、「ダブルトリック」というところだろうか。簡単に言えば一つの物語にかならず二つのトリックを用意しており、それが30分という作品時間の中に巧妙に配置されている。それが作品の質として新ルパンのときよりも物語を面白く見せている。たとえば2話の「大いなる罠を暴け」の物語は、銭形がICPOの上層部に掛け合ってるパン逮捕のための罠に、莫大な金塊を用意するが、結局ルパンに盗み出されてしまう。その責任をとって銭形とICPOの長官が辞職する羽目になるのだが、実はこの長官が金塊を着服していたのである。ルパンは銭形に事実を話すのだが、長官は知らぬ存ぜぬの一点張り。しかもその莫大な金塊を背景に政界に打って出ようとする始末。あまりの調子の乗りっぷりに、結局はルパンに金塊を強奪され、銭形は長官の罪を暴いてお手柄となる。この物語にもあるように、金塊強奪というねたが二重の意味を持っていたり、長官が銭形までだますというトリックなど、ネタが常にダブルトリックとなっている。それゆえに1話単品で見た場合の充実感は、新ルパンやSPよりもはるかに高い結果となる。同じネタ数を2時間に薄めて見せられても、無理がある。どうみても軍配は30分にシリーズに上がってしまう。

 またパート3については、例によって原作マンガからネタを持ってきている作品もある。5話「五右エ門無双」、8話「聖母マリアの脱出作戦」、13話「悪のり変装曲」20話「過去を消した男」などがそうである。また原作マンガのシーンのみをアニメ化している場合もある。話数を見てもらえばわかるのだが、比較的前半に集中している傾向がある。逆に後半はオリジナルの物語が突出するため、結果としてはそういった印象が薄い。それはむしいろマンガでのイメージをアニメのために借用した印象が強いともいえる。

 さらにもう一つ特徴を挙げるとすれば、後のテレビSPにつながるアイデアの宝庫でもある。つまりテレビSPの多くのアイデアは、パート3で使われたネタの拡大再生産である場合が多い。4話「テレパシーは愛のシグナル」は「愛のダ・カーポ」に進化しているし、6話「ルパンが戦車でやってきた」は「ヘミングウェイペーペーの謎」にとてもよく似たイメージがある。21話「さらば黄金伝説」と24話「友よ深く眠れ」は「燃えよ斬鉄剣」にシチュエーションがよく似ている。また50話「原潜イワノフの抹殺指令」は「ルパン暗殺指令」にほぼ引き継がれている物語である。よく言えばパート3の物語は非常に優秀な物語であったがゆえに再生産されたとも言えるし、悪い言い方をすればあまり視聴率の低かったパート3ゆえに、積極的に再活用することも出来たともいえる。

 またファンの間で人気の高い作品もある。7話「死神ガープと呼ばれた男」は、以前紹介したNHK-BSで放送された「ルパン三世」のSP番組においてパート3から唯一放送された作品である。また30話「カクテルの名は復讐(リベンジ)」も、ルパンがメインで活躍しないにもかかわらず、非常にしっとりと大人の雰囲気をたたえた名作である。また五右衛門が女性の幽霊にたじたじとなる26話「ニューヨークの幽霊」も楽しい話である。また銭形がルパン逮捕ではなく射殺に乗り出す37話「とっつあん大いに怒る」もトリックの仕掛けが楽しい話である。作画面を指摘すれば、前半に集中している本橋秀之氏や神村幸子さんの作画回はつくりが丁寧であり、見ていて充実感がある。特に本橋回は動きまですばらしく、部分的にぷち金田っぽい印象の作画も見受けられる。また2回と少ないながら、荒木伸吾氏による作画も登場する。こうした有名どころの作画マンは後半で姿を消していく。

 本作に登場するルパンは、あまり車や周辺機器にこだわりがない。もっともこだわりがないのは車であり、新ルパンでしつこく使用していたベンツSSKはオープニング映像にしか登場しない。またTPOにあわせて車を使用しているようで、郊外でのジープの使用例が意外に多い。拳銃に関してはコンバット・マグナムやワルサーなどの基本は忠実に守っているのだが、不二子にいたっては使う銃を決めている様子はない。はたしてそうしたこだわりがない作品群をルパンと呼んでも差し支えないのかは、ファンとしても気になるところだ。

 また本編製作中に制作された劇場用映画「バビロンの黄金伝説」にも引き継がれているのだが、作画監修の青木悠三氏によるキャラクターが、どんどん崩れていく。OPの映像が崩れ始めた後半からは、もはや1話のきりっとしたルパンなど見る影もない。だがそれでもウィットのあるルパンであることには違いがない。不思議ではあるのだが、ルパン三世という作品自体は、ピンクのジャケットをはじめ、そうしたキャラクター絵の幅まで許容してしまうのである。実際こうした後半の青木絵のルパンを良しとしないファンもいることだろうが、現時点でそのように残っている作品であるので、受け入れるしかない。もう一つは山田康雄氏によるルパン三世のテレビシリーズは、これで最後であることもそうである。その後テレビSPなどでも披露している声ではあるのだが、後半はやはり老いの影響がある。元気な氏の声が聞けるのは、あくまでこのパート3であるのかもしれない。

 いわずもがなのことをいまさら申し述べても仕方がない。問題はこの作品の認知度が非常に低いことである。放送していたのを知っている人はいても、実際に見ている人は少ないのではないか。しかも野球中継による不定期放送に加えて、再放送もない時代の作品である。そうした事実が災いして、新ルパンが再放送を重ねて知名度以前の作品になっている事実とはうらはらに、日の目をみないパート3なのであった。
 この場を借りて申しあげる。ルパン三世パート3は、現時点で見直すの価値の高い作品である。しかもへたに新作のTV-SPを見るぐらいなら、こちらを見るほうがよほど興奮と充実感をおぼえる作品群である。今ならレンタルDVDで間違いなく見ることが出来る作品であるから、へたな先入観なしにぜひご覧いただきたい。

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