「ULTRAMAN」と「真・仮面ライダー序章」~遺伝子へのあこがれと畏怖~

 「あなたは遺伝子組み換え食物に抵抗を感じますか?」 Yes or No?

 Yes。ええもう、ばりばり感じます。っつか、加工食品に「この製品には遺伝子組み換え食物は用いてまりません」という表示を見る度に、なぜか言いしれぬ抵抗感を感じている。なぜか?
 そもそも遺伝子組み替え食物とは、害虫駆除や除草剤などを必要としない作物を作ることが第一義で生産されてきた背景がある。要は作物を作るお百姓さんが、作りやすい作物を作りたいという願いが根本にある。それがさらに進化すると、定量生産ができ、なおかつ安定供給がはかれる作物として注目をあび、工業製品として二次使用されるものを生産することが主になっている。いずれこれらが私たちの口に入ることを前提として、第三世代の遺伝子組み換え食物が登場することは、現段階ではきちんと定義されてはいないのだが、いずれそうなるのは目に見えている、規定の事実だろう。それでも遺伝子組み換え食物に対しては、根強い反発がある。実際加工食品に混入されている事実は否定されていても、遺伝子組み替え食物を口に入れる抵抗感はぬぐえない。ここには科学者が持っている遺伝子へのあこがれにも似た期待と、同時に遺伝子という訳のわからない不気味なものという感じ方の大きな差が厳然と横たわっている。それはそのままSFの設定として引き継がれ、遺伝子に対して人間が持つ感情の矛盾を内包したドラマを形成する。今回紹介する劇場用作品「ULTRAMAN」そしてオリジナルビデオ作品「真・仮面ライダー序章」も、そうした言いしれぬ遺伝子に対する矛盾した思いを有する作品である。

 「ULTRAMAN」は2004年12月から公開された劇場用作品であり、続くテレビ作品「ウルトラマンネクサス」に連なる「ウルトラNプロジェクト」の一連の作品である。またその年の東京国際映画祭の特別招待作品でもあった、話題作である。その話題作の理由は、そもそもの「ウルトラマン」の設定を再利用し、新たな解釈を元に再構成し、よりリアルにウルトラマンを作り上げたらどうなるかの実験でもあった。

 物語は青い発光体に取り込まれてビースト・ザ・ワンとなってしまった海上自衛隊の男(演 大澄賢也)が暗躍する背景で、、航空自衛隊を除隊した真木(演 別所哲也)が赤い発光体と激突する事故が発生する。しかしその男は何事もなく日常に戻る。しかしビーストを監視する謎の一団は、真木を人質にビーストをおびき出す。だが真木は恐るべき力を発揮し、やがて銀色の戦士に変身し、ビーストと戦う。どうにかビーストを撃退した真木であったが、ビーストが他の生物を取り込み巨大化していき、町中で暴れ始める。真木は病床の息子と約束をして、巨大な銀色の戦士となってビーストと対決し、ついにこれを倒すという物語である。単純明快なストーリーではあるが、その実真木と家族が再生する物語や、ビーストになってしまった男と、それを殺さなければならない女性士官(演 遠山景織子)の愛情などがからまり、あのウルトラマンの物語が再誕している物語を見せるのである。

 ここで話題にしたいのは大澄賢也氏演じる男性が、ビーストに変化していく過程、そしてビーストと初対決する真木が変身するウルトラマンの異形さである。
 ビーストに関しては、人間がまずビーストにとりつかれ、徐々に人間性をなくしていき、近在の生物を取り込んで巨大化するというシステムだ。参考にしている本によれば、ビーストは素体となる人間の遺伝子をビースト寄りに変化させ、さらには取り込んだ生物の遺伝情報までとりこみ、その形質を表面化させるという怪物である。このデザインや設定に組み込まれている思考は、明らかに「遺伝子」というものへの畏怖であり、怪獣化したビーストはまさに「遺伝子」への得体の知れない恐怖である。
 また対するウルトラマンも、人間・真木に対して同化しようと試みる。だがその同化は精神的な合一と遺伝子的な合一、すなわち精神的なものと肉体的物理的な融合を目指しているように見える。だがこのときはウルトラマンの思考を阻害する真木の心が、遺伝子的な融合のみを進めた結果、凹凸の多い不思議で不完全な形態で登場する。それはまごう事なきウルトラマン、それもテレビに登場した初期の凹凸の多い顔をしたウルトラマンの顔を模している。だがこのウルトラマンが、ビーストとほぼ同じような遺伝子的なバケモノとして扱われていることは、劇中明らかであるから、この次点では光のヒーローといえども、劇中の人間にはビーストと同じ遺伝子への恐怖が具体化されているといって言い。後にウルトラマンの意志に賛同した真木が、次に変身した時には、よりすっきりした銀色に輝く超人となっていたことは、真木とウルトラマンの精神的な融合が成功したと理由づけられる。

 さて遺伝子とはなんだろうか? 一般的にはすべての生物でDNAを媒介として構成される生物の遺伝情報を担う主因要素である。そのDNAは4つの塩基(ATGC)とリン酸と糖からなる物質であり、これらの配列パターンによりさまざまな遺伝情報がコードされているものである。
 ビーストにしてもウルトラマンにしても、この遺伝子を自分が地球上に存在するために、人間のものを書き換える作業をしている点では同一の存在である。しかも生物の遺伝子をすべて書き換えるという作業自体、現時点の科学では完全には不可能な領域(一部を改編し、遺伝子に由来する病気に対する治療は存在する)であるから、そこにあるのは計り知れないものへの恐怖というものが存在する。つまり遺伝子の怪獣は、単に未知の科学技術への恐れがその正体であると結論づけられる。面白いのはたとえテレビ版でのマスクの不出来があったとしても、初期段階のウルトラマンとの融合で、不完全さ故にウルトラマンすら不気味なマスクや風貌にしてしまうデザインセンスは、ウルトラマンと怪獣が同価値であることを制作者が暗に認めているかに思えるところだ。

 「ULTRAMAN」を遡ること10年前の1994年、ウルトラマンと相対するコンテンツである「仮面ライダー」にも、こうした遺伝子のバケモノが誕生していた。それが「真・仮面ライダー序章」というビデオオリジナル作品である。折しも仮面ライダー誕生20周年を祝って製作された作品である。

 物語は「財団」と呼ばれる謎の組織に煽動され、人間を改造して強力な兵士を作るというコンセプトの元、被験者として選ばれた風祭博士の息子・真(演 石川真)はバッタの改造人間となってしまう。時を同じく、同じ研究に携わる鬼塚博士は自分の体にも同じ改造を施すが、精神のバランスに変調をきたし、夜な夜な殺人にあけくれる。財団の動きを調査するCIAのセーラ深町(演 塚田きよみ)は財団の壊滅に乗り出す一方で、協力者として真を指名する。だが鬼塚の殺人の記憶(同族の記憶の同期)による罪の意識にさいなまれる。そんな真を体をなげだしてまで愛する明日香愛(演 野村裕美)が、財団の手にかかり殺される。怒りの真はバッタ型の改造人間の体に変身し、財団の日本支部を壊滅させる。このときから真の仮面ライダーとしての戦いが始まった。

 目を見張るのは「仮面ライダーシン」のその体。その体はまさしくバッタの改造人間であり、原初の仮面ライダーのあるべき姿である。だがここにはバッタの遺伝子と人間の遺伝子の融合という、ウルトラマンレベルのことを、人間のもつ科学技術により、外科手術のように行っていることである。そこには改造人間としての強い兵士を作るという目的があり、それは遺伝子組み換え食物を作るのと同じ理由が掲げられているといって言い。またバッタの持つ群体としての性能が組み込まれることにより、軍隊としての性能をさらにアップさせる付加機能まで備わっている。結果的にその能力は、愛のお腹のなかに生まれた真との愛の結晶としてのベイビーとの感応に応用されているが、基本的にたった一人で戦う事を宿命とする仮面ライダーには、同族は必要ないのでは?と思わせる。なによりそのおぞましいと思えるほどの姿には、やはり遺伝子のバケモノとしての意匠が盛り込まれているといっていい。その上で非情なのは、人間の手で改造できるという、現代の「遺伝子」技術の応用の延長線上にある、夢のような科学技術の礼賛を挙げておきながら、変身過程を含めて、徹底的にヒロイズムを廃し、遺伝子のバケモノを作り上げようとするかに見えるシーンが続くことである。変身シーンの独特のグロさ、人間からバケモノになる過程のきわどさ、変身後のバッタ然とした体表や体色、脇腹に短くたたまれた足、驚異の再生能力など、当時の特撮をフルに活用し、気持ちの悪くなるような映像を惜しげもなく投入して作られている。

 これらの作品は、そうしたグロい映像が、人間の営みと平行して描かれていおり、そして先に指摘したように、科学礼賛を見せつけながら、結局は遺伝子への恐怖を隠そうともしない作りの作品なのである。そこにはこの次点での遺伝子への見えざる恐怖と遺伝子技術へのあこがれがない交ぜになっているともいえる。「ULTRAMAN」と共通していて面白いのは、ともにこの作品が原初の作品を意識して作られていることだ。新しい技術によって、原初のヒーローの形にこだわりながら、結果的に遺伝子のバケモノのようなヒーロー像を結んでしまうという共通項が存在する。10年たっても、同じことを繰り返すのは、いまもって人間の中にいながらにして、遺伝子はまだまだ未解読な部分があり、それが畏怖や恐怖につながっていることが垣間見える。10年たってもこれである。遺伝子に対する恐怖の念はそう簡単には人間の脳裏から離れようとしない。それはドラキュラが架空の人物でありながら、未だに多くの創作物を提供する素材としてもてはやされてる事実と似たようなものを感じる。いずれ遺伝子治療などが日常的になる可能性はいくらでもあるのだが、遺伝子治療の一般化を阻むのは、遺伝子に対する知識不足から来る誤解と得体の知れぬ恐怖だといえる。いずれ遺伝子組み換え食品しか食べられなくなる日もきっとくる。そんな中で食べずにいられる自身がありますか? 私はたべます。

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