仮面の世界~その1・アメリカの仮面、「バットマン」と「スパイダーマン」~

 「仮面舞踏会」。いったことねえけど、よく知られている「マスカレード」と呼ばれるこうした催しは、自分の身分や正体を隠して参加することが習わしであるらしい。「仮面」とはそもそも自らの正体を隠すものであり、仮面をかぶるという行為は「隠している」ことを公言していることになる。
 日本では武者鎧の飾り姿には必ずといっていいほど鼻のあたりから口元を隠すほどの仮面がついている。だが時代劇であれをつけている武将を、あまり見たことがない。それは役者の顔を隠さないための措置だろうか。一説によると影武者の顔を隠すために用いられたような記述も見られる。日本で仮面と言えば、「能」や歌舞音曲で披露される舞、歌舞伎などの伝統芸能、そして地方に残る因習(なまはげなど)に由来する仮面が多い。西洋とは異なる意味で、やはり仮面に親しんできたことは間違いない。
 中南米のプロレスラーの大半がマスクマンであったりするのと、日本の特撮ヒーローが仮面をかぶるのは、同じ臭いがしていたのであるが、ではアメコミヒーローとの比較はどうだろうか? 今回はざくっと「仮面」にまつわる自分の意見をまとめてみたい。
 ちなみにタイトルの「仮面の世界」は石ノ森章太郎氏の原作版「仮面ライダー」にあるタイトルから取った。特に意味はないのだが。
 先にアメリカンヒーローについて述べておきたい。日本人が一般的に知るアメリカのヒーローと言ったら、「スーパーマン」だろうか。だがこの人はマスクをしていない。だがスーパーマンとして素顔をさらしておいて、人間の姿をするときはメガネをかけ、出来の悪い新聞編集者を装うのである。これはヒーローであることを偽っているための仮面である。このタイプのヒーローは、あとは「600万ドルの男」と「バイオミック・ジェミー」ぐらいという感じだし、日本には現れていないタイプではなかろうか。

 次に著名なヒーローは、やはり「バットマン」ではなかろうか。日本では長くアニメとして登場し、実写作品もあり、主人公役を転々と変えながら映画化されている事実は、アメリカに広く親しまれているキャラクターであることを印象づける。代表的な意見としては「陽性なスーパーマンよりも、暗い過去やトラウマを持ったバットマンや悪人たちが好き」という意見だろう。バットマン自身について、あのコウモリの姿を借りた事情は、悪人を覚えさせる目的である第一義があるものの、自身の幼少期のトラウマであることが映画「バットマン・ビギンズ」で紹介されている。弱かった、親の庇護下で甘えていた自分を克服する意志、それがあのバットスーツに込められているという。単にゴッサムシティの億万長者・ブルース・ウェインの正体を隠す以上の目的があり、歴史や背景にあこがれるアメリカ人には魅力的な設定に写るだろう。だがこのマスクは、バットマン自身が悪人と対峙したときに、その重みを増す仕掛けにあふれているのが、この「バットマン」という作品の魅力でもある。例えば一番の宿敵であるジョーカー。アニメなどではあっさりと「狂人」扱いであるが、ティム・バートンによる「バットマン」では、自分が所属していたマフィアのボスに裏切られて、危険な化学薬品の中に落ちてしまったことがきっかけで、口元がにやけたままもどらなくなったあげく、それを隠すために化粧をしているという設定になっている。亡くなったヒース・レジャーが演じたジョーカーが登場する「ダークナイト」では、口を耳元まで切っているという異形で登場する。その理由も劇中で何度か語るものの、一貫性はない。徹底的に隠匿しているのである。
 もう一人の悪役トゥーフェイス。トミー・リー・ジョーンズが演じたのは「バットマン・フォーエヴァー」であり、有能な地方検事が暗黒街の人間に硫酸を浴びせられ、左半身が焼けただれたようになったために精神に異常をきたしたのは、原作のマンガの通りである。いっぽう「ダークナイト」におけるトゥーファイスは、バットマンと共闘するも、ジョーカーの卑劣な罠にはまり、助け出された時に浴びた石油に引火し、左半身を焼かれてしまう。このことで心の隙を突かれたためにトゥーフェイスを名乗るようになるという経緯である。
 意外なのはバットマン自身はマスクマンでありながら、それ以外の敵キャラは、いずれも素顔をさらしており、その異形な顔を隠そうともしない。むしろ自分の過去を捨てて犯罪に手を染めているのである。富豪であり社長であるブルース・ウェインが自身の正体を隠していることと、明らかに対照的であり、その異形の顔自体がマスクだと言い放っているようにも見える。バットマン自身もそのマスクが自分自身のトラウマの克服であり、過去の自分との決別であるがゆえに、彼らの異形の顔の意味が重くのしかかるのである。バットマンでいるために、捨てられない表の顔がある。それをして犯罪者たちと相対するバットマン自身が、その存在意義を問われ続けているのである。

 「スパイダーマン」もアメリカで人気のあるマスクマンであろう。近作のトビー・マグワイヤ主演により、CG技術の粋を凝らして映画化され、人気を博している。現在は3作目までが公開され、4作目は頓挫しそうな雰囲気であるのが残念だ。
 スパイダーマンがこのマスクをしている事実は、なんといってもピーター・パーカーである正体を隠すことである。スパイダーマンの超能力自体は、ピーター自身が体得している能力であるから、ピーターが能力を隠せば、その能力が世間的に認知されることもないまま終われるのである。映画の2作目では心理的要因により自身の能力の低下を招いているし、3作目でははっきり止めようとしている。つまりスパイダーマンの仮面とは、いつでも止めることができるという意味において着脱可能であり、同時にヒーローとして戦う事の意味を、ピーター自身が自分に問いかけるドラマをはらみ、戦う意志を表すアイテムとして描かれていると言える。
 さて映画の1作目(実は1977年に製作されている実写テレビ版の映画化作品もあるのだが)でのスパイダーマンの敵は、グリーンゴブリン。スパイダーマンことピーター・パーカーの友人であるハリー・オズボーンの父・ノーマンがその正体である。このグリーンゴブリンの戦いは、同色のグライダーに乗り、町中を駆け回るスパイダーマンとの大空中戦が描かれており、実に爽快感のあるバトルシーンであるのだが、その結末はその正体を知ってしまった上に、その息子が二代目グリーンゴブリンとなるという、なんとも後味の悪い幕切れとなっている。グリーンゴブリンだけを見れば、そのマスクの価値は、バトルのラストで正体を明かしてスパイダーマンと観客にショックを与えるために存在し、しかも殺された父のあとを引き継ぐという意味において、怨恨の連鎖しか生まない悲劇を描いている。それはあまりにもドラマに寄った仮面の定義であり、バットマンとその悪役ほどのインパクトは残せないという印象がある。2作目に登場したオクトパスにしても、彼は仮面をしていないのだが、その異形さはマスクの存在と同義であろう。だが人工知能の暴走というトリガーがあるせいで、スパイダーマンの説得による改心による結末は、なんともやるせない。彼が自ら開発した実験装置の暴走を止めるために、装置と共に海に沈んだ様は、ゴジラを倒すため、オキシジェンデストロイヤーと共に海に沈んだ芹沢博士を想起させる。
 そして3作目に登場したヴェノムこそは、絶対に死なない悪のスパイダーマンとして登場する。ヴェノムは悪質な宇宙生命体が人間にとりついたもので、最初にスパイダーマンにとりついたために、その異形を獲得している。だがその悪意だけが増長した結果、とりついたスパイダーマンのスーツとともに捨てられていたものが、意志を持ったようである。前述の通り、スパイダーマンのマスクとはピーターの戦う意志であり、その意志が無くなりさえすれば、いつでもスパイダーマンを捨てることができるのである。破り捨てられたスパイダーマンのスーツは意志を持つ。そしてスパイダーマンと敵対する。このダブルミーニングにより、ヴェノムはスパイダーマンと表裏一体をなして存在し続けるのである。それはあたかも仮面をかぶること、匿名性による人格の変貌を表現しているようである。

 アメリカンヒーローにおける仮面の定義、それは仮面に含まれる人間の二面性を認めることであり、肯定も否定もできない複雑な要素を含んでいる。そこにある悪意を知りながら、そこに近寄れずにはいられない、人間の弱さを隠しきれない。アメリカの仮面には、そうした自分の弱さを隠す印象が、私にはある。
 次回は日本の仮面について検証してみたい。はたしてアメリカの仮面と同じか否か?

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コメント

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No title

「バットマン・リターンズ」ではキャットウーマンはマスクの怪人である時の方が
本当の自分であるように描写されていますし、
悪役ペンギンはバットマンに
「お前はマスクが必要だが、俺は生まれ付いての怪物だ。」というようなセリフを
はいています。
そしてバットマンも素顔の普段は
金持ちのボンボン「ブルース・ウェイン」という「仮面」で振る舞い、
悪を憎み戦う「バットマン」のときがむしろ真実の自分
であるという奇妙な逆転が起きているように思えたりします。
まさに、「この仮面が今の俺の本当の顔なのだ」by本郷猛(原作仮面ライダー)
というあたりですね。

No title

う様(たぶん、うめさんよね?)
 コメントありがとうございます。さすがに細かいところまでよくご存知ですね。
 ビギンズおよびダークナイトのバットマンの場合、ブルースとバットマン関係性が際だって面白いと感じます。どちらに真実の自分があるのか、どちらが偽りなのか。何度でもその問いを繰り返す彼の悩みと相まって、悪に邁進するジョーカーの存在がひときわ輝きを放っていると思えるのです。過去を捨て顔を隠さず悪につきすすむジョーカー、表裏で仮面をかぶり続けるバットマン=ブルースという対比構造は、本質的なバットマンの永遠の問題だと言えそうです。

No title

あの無くなったというかしょなんですけど、亡くなったに訂正してもらえますか。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
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