仮面の世界~その2・日本の仮面の意味の喪失~

 ♪どこの誰かは知らないけれど、
  誰もがみんな知っている。

 それこそ知らない人だって知っていそうな、日本のTVヒーローの元祖的存在である、「月光仮面」の主題歌の歌詞を引用した。この歌詞をよく見て欲しい。前半の歌詞は仮面の中身の人物について言っている。逆に後半の歌詞は仮面をかぶった状態の人物について語っている。つまりこの場合の「仮面」とは、その正体を隠すこと、さらには悪をくじき、弱きを助けるという善行に対する他人からの賞賛を、おくゆかしく辞退するという態度が明確に現れている。昭和44年生まれの私は見るべくも無いが、当時の少年たちを胸を熱くさせた「月光仮面」。1958年2月から約1年5ヶ月にわって放送され、人気を博した。そのOPのテロップには、「月光仮面:?」と表記され、探偵・祝十郎が月光仮面であるという断定はしていない(一部表記では「月光仮面・祝十郎:大瀬康一」との表記もあるが)。このことからも、本作での仮面の意味が、先述の2つの意味が含まれていることは、あきらかだと考える。

いまさら言うまでもないことであるが、日本の特撮ヒーローは、そもそも時代劇ヒーローから分化した存在である。先年亡くなった山城新吾氏が演じた「白馬童子」や「仮面の忍者赤影」などは、こうした作品の過渡期にあたる存在だろう。もう一つの潮流は「ゴジラ」から派生する巨大怪獣特撮であり、テレビへの進出はこちらが先であった。「ウルトラQ」を皮切りに、「マグマ大使」「ウルトラマン」が登場するのが昭和41年である。いわゆる「第一次怪獣ブーム」であるが、この流れが急激に変化し出すのが、昭和46年に登場する「仮面ライダー」である。それまで大規模なスタジオにセットを持ち込んで撮影していたものが、人間に仮面やスーツを着せて、屋外での肉弾戦を主体にした物語をつくり、人気を博したのである。それ以降の特撮作品は、右を向いても左を見ても、こうした等身大ヒーローの作品が跋扈し始めるのである。

 さて前回の続きとして「仮面」の意味に着目して、「仮面ライダー」について考えてみたい。
 「仮面ライダー」についての詳細は、あえて省くことにする。だが基本設定だけは押さえておかねばならない。

 「仮面ライダー 本郷猛は改造人間である。彼を改造したショッカーは、世界制覇を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーは人間の自由のため、ショッカーと戦うのだ」(OPナレーション)

 本編の主人公・本郷猛は、その卓抜した体力・知能を見込まれて、ショッカーに拉致される。そしてバッタ型の改造人間として改造されるのである。彼はショッカーにだまされて協力をさせられていた恩師・緑川博士の説得により、改造された自分の力を、ショッカーと戦うために活用することを誓うのである。戦闘時には仮面をかぶり、その能力を強化して、強力なショッカー怪人と戦うのである。さて問題はこの「仮面」である。

 テレビの「仮面ライダー」は、あくまでその顔にかぶるマスクであり、自分の改造人間としての能力を強化するために必要なアイテムである。仮面ライダーという作品自体は、「変身っ!」というかけ声と変身ポーズによって、世に言う「変身ブーム」の立役者となるのだが、初期段階ではあくまで仮面をかぶって正義を行うヒーローの枠を一歩も超えていない。その役割はあくまでも「月光仮面」のそれと同義なのである。
 ところが原作者・石ノ森章太郎氏のマンガによれば、この仮面は、本郷猛の感情の起伏により顔面に現れる改造時の傷を隠すために用いられているという説明がなされる。ここに日本における「仮面」の意味の到達点がある。仮面ライダーの仮面、それは自分の正体を隠すこと、そして醜い自分の傷、そして過去を隠すためにかぶるのである。そしてこの仮面が意味するところ、それは世界でたった一人、悪の組織に改造された自分が、その改造された力を持って戦わねばならないことの誓い、そしてたとえ悪の組織を打倒しても、自分の体はもう元に人間には戻れないという悲哀。しかしその悲哀を他人に知られてはいけない。そのために哀しみを隠す「仮面」なのである。

 単なる仮面であるならば、なにもあの醜いバッタの仮面をつけなくてもいいのではないか? だがそのこだわりに、もう一つの意味が込められている。敵に改造された受け取った仮面、そしてその仮面をつけて戦う理由、それは自分をこんな姿に変えたショッカーへの反逆の証であり、復讐の証であるのだ。この意味を正しく引き継いだ作品が、映画「仮面ライダーThe First」であり、続編の「仮面ライダーThe Next」である。また「仮面ライダーZO」の注場名足では、主人公・麻生勝が改造手術を受けた後、森をさまよい歩いているときに、水たまりに映った自分の顔に、醜い改造の痕跡があるのを見て、驚愕する場面がある。これなどはまさに原作のライダーの意匠を継承しているシーンと言えよう。
 なお原作マンガではもう一つ、バッタの改造人間であることの理由として、大自然の代弁者としての意味を持たせている。だがこれについてきちんと言及している作品は、現段階ではないようだ。

 その後、ヒーローは仮面がつきものになっていく。その反面、「快傑ライオン丸」や「イナズマン」などのように、単に異形のヒーローという存在もあるので、一概には言えないが、いわゆる「変身ヒーローもの」は作品数を着実に増やしていった。仮面をかぶるという行為ではなく、「変身」という行為によって、異形の存在になることで、能力を最大限に発揮し、悪をくじくというコンセプトである。そうした時間の経過の中で、大ヒット作「仮面ライダー」の二番煎じと言われない作品作りが求められた結果、マスクをかぶったようなヒーローにも関わらず、仮面をかぶる意味をどんどん喪失していくのである。

 端的な例を挙げれば「宇宙刑事シリーズ」などがそうである。宇宙刑事として訓練された強靱な体や身体能力は、個々に与えられたコンバットスーツを着ることで、その能力を倍加させる。仮面はスーツと連動し、人間の力を飛躍的に倍加させるアイテムとなる。しかも宇宙刑事たちは敵組織に対して顔を隠そうとしない。ということは、本質的に顔を隠す仮面をかぶる必要性すらないのである。現行での戦隊シリーズのマスクにしてもそうである。仮面をかぶることで自分たちの正体を隠す必要性があったのは、高校生戦士であった「電磁戦隊メガレンジャー」ぐらいであり、他の戦隊では仮面をかぶった状態のヒーローネームと、自分の本名まで同時に告げる場合もある(「シンケンレッド、志葉丈瑠」とか)。こうなると仮面自体の意味はどんどん失われ、能力のパワーアップアイテムに成り下がってしまっている。

 初期のバットマンが有しているノー天気な自己顕示欲という仮面の意味は、日本では「おくゆかしさ」に置き換えられ、あまり意味をなさない。しかし仮面が意味を喪失するにおいて、自己顕示欲が出てくるヒーローもいる(既出のメガレンジャーのメガレッドがまさにそれ)。対比として面白いのは、時代の変遷の中で、仮面の意味が喪失した日本と、逆に仮面の意味を問いただそうとしているアメリカと対比だろう。日本の場合はあまりに強烈な印象を残す「仮面ライダー」とは別の作品を作ろうとして無くしていったものを、アメリカでは社会情勢や人間関係などが複雑化していく背景から、人間の多面性の検証を、映画に託したようにも見受けられる。

 現在日本のヒーローがアメリカに輸出され、「パワーレンジャー」や「KAMEN-RIDER」として注目されている。そこに日本的な仮面の意味を見いだすことはできない中で、はたしてアメリカ人たちは何を見いだしているのだろう。日本のヒロイズムはアメリカのそれとはだいぶ違う。それでも見かけの仮面だけは容易に受け入れてしまう。それをアメリカのおおらかさと取るのか、貪欲さととるのか。日本の場合はバットマンやスパイダーマンを受け入れている状況を見るに、より複雑さを感じさせるのだが、商品展開を見る限りはどちらもがさつさしか見えてこない。

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No title

諸星大二郎氏の傑作「オンゴロの仮面」で、人間が神や精霊の仮面を
かぶることでその神や精霊の力を使えるようになる、という事が描かれて
いました。石森章太郎先生の「ゴレンジャー」が人間以上の力を発揮する
黒十字軍の「仮面」怪人に自分たちも「仮面」をつけて戦うというあたり、
一種の呪術的闘争なのでないか、などと思ったりします。
(ゴレンジャーが使うのも鞭とか弓とか原始的な武器ですし。)
石森先生が仮面ライダーのデザインをしたとき最初のラフを
「異形さが足りない」といって没にして、今のバッタ型仮面になったようですし
やはり異形の姿は人間を超えた力の象徴なのでしょうね。

No title

うめさん
 コメントありがとうございます。
 たとえば「ジョジョの奇妙な冒険」の第1部に出てくる「石仮面」なんて、まさにそんな感じですよね。
日本古来の歌舞音曲のたぐいが、仮面を付けることにより、降霊したり、別人格になったりすることにより、奉納の儀式を行うことを考えると、基本的な意味での「仮面」の捉え方って、洋の東西を問わないと思っていたんですが、現代では少しずつ食い違いが出てきてるってところに、今回の記事は注目したわけです。あいかわらず伝わりにくい文章で、すいませんです。本にする頃には改稿します。

No title

どもども初めまして!
プロフの所に目をやると
スタートレックはピカード艦長が大好物とあったのでw
スタートレックはやっぱピカード艦長のやつですよね~
データが好きだったなぁ~

No title

ナオ百式さま
 コメントありがとうございます。
 そうなんですよ、ピカード艦長とヴォイジャーが大好きです。
 近々ではありますが、「ジェネレーションズ」の記事をアップする予定です。あれを見なければ、ピカード艦長を好きにはならなかった、私にとっては大事な作品です。お付き合い下されば幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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