「スタートレック ジェネレーションズ」~世代交代はうまくいったか?~

 「世代交代」と一口に言っても、社会的な現状を考えるとうまくいっていないじゃないかと思っている人が大半だろう。実際ロートルのやり方を見て、もっと別の方法があるだろうと白い目で見る若い皆さんの気持ちはよくわかる。世代交代を完全にするためには、上の世代が完全にいなくなることが最低条件であるのだが、世の中どこを見たって居残って口だけ出してくる連中の、なんと多いことか。問題はそうした上からの圧力をものともしない人材があっても、場面によっては昔ながらのやり方が正しいときもあり、そんな場面を危惧した若い方々は、上を排除しきれないでいることだ。これでは世代交代はおぼつかない。
 いわずと知れた名作SFドラマ「スタートレック」に、そうした世代交代を題材にした作品がある。ファンならご存知だろう。劇場用映画としては7作目に当たる「ジェネレーションズ」がそれである。本作は旧世代「TOS(ジ・オリジナル・シリーズ)」のクルーであるカーク船長が、次世代「TNG」(ザ・ネクスト・ジェネレーション)のクルーであるピカード艦長と、しっかりとした世代交代を果たす物語であり、新旧艦長のそろい踏みが見られる映画として、ファンから広く注目された作品である。だが果たして、この世代交代はうまくいったのか?

 先に情報だけまとめておくと、本作は1994年にアメリカで公開、翌年の年末に日本で公開された。1994年5月にはアメリカ本国において、「新スタートレック」全7シーズン178話の放映が終了し、その後を受ける形で制作された作品である。
 物語は2293年、USSエンタープライズB型の就航式において、式に立ち会った行ける伝説・カーク船長が立ち会っている中で、輸送船が謎のエネルギーリボンに接触し、大破している状況に遭遇する。実戦装備前の状況下で、わずかながらの人数を救助することができたが、同時にエンタープライズは小破し、その時にカーク船長も死亡してしまう事件が起きた。
 本編はその78年後である。観測基地からのSOS信号を受信したUSSエンタープラズD型とそのクルーは、救援に向かう。その途上、ピカード艦長は血を分けた実兄と未来ある幼い甥が、火事で無くなった知らせを受け、悲嘆に暮れる。だが状況はピカードに悲しむだけの時間を与えてはくれない。急行したエンタープライズが遭遇したのは、手ひどく攻撃をうけた観測基地の姿であり、唯一の生存者はソランと名乗る学者であった。彼はピカードと交渉し、すぐに観測基地に自分を連れ戻せという。だがピカードは悲嘆に暮れるあまり、その真意を見抜けない。再度基地の調査に向かったジョーディとデータであったが、ソランの奸計にはまりはぐれクリンゴンの姉妹・ルーサとベトールにジョーディーを拉致されてしまう。
 風雲急を告げるエンタープライズ。その中にあってピカード艦長は冷静にクルーからの話に耳を澄ませ、ソランが78年前のエンタープライズB型の事件の時、輸送船から助け出された人物であったこと、ソランがあのエネルギーリボンとふたたび遭遇することを目論んでいること知る。その計画が成功すれば、生命体の住むペリディアン第3惑星までも崩壊してしまうことが発覚。エンタープライズはペリディアン星系に急行する。
 いくつかの打算からクリンゴンの姉妹と手を組んだソランは、エンタープライズに返したジョーディーのバイザーに細工を施し、エンタープライズからの情報を盗もうと企む。場所をペリディアン星系に移し、エンタープライズとクリンゴン姉妹の旧式バード・オブ・プレイとの死闘、そしてソランの企みを阻止するために、第2惑星に降り立つピカード。はたしてピカードたちは、ソランの企みを阻止できるのか?

 本作は「エネルギーリボン」や「ネクサス」などのスタートレックらしいSF的アイデアをつぎ込み、惑星破壊によるリボンのコース変更というソランの計画を上手に見せている。しかも人間同士のシーンが多く、クリンゴン姉妹の去就(クリンゴン帝国から追放)のその後、データの感情の行方、ピカード家のその後など、シリーズを見てきた人には十分に楽しんでもらえる情報にあふれている。またサービス面でも充実しており、これまで劇場用映画「スタートレック」シリーズで就航していたエンタープライズA型の後継艦の登場、長きにわかるクリンゴンとの共存を結んだカークのその後、そしてなんといっても伝説の艦長・カークの再登場とそのあいかわらずの活躍が見られるのである。戦闘シーンが少ないのは、シリーズを見ていれば納得できる範囲だろう。冒頭部のエンタープライズBによる輸送艦救出劇や、後半のバード・オブ・プレイとの死闘、そしてエンタープライズDの円盤部分離による脱出も、派手な演出を避けて手堅く映像化している。また被弾したり艦が負傷したときには、ブリッジクルーが盛大に飛び上がる。このシーンを見ているだけでも胸がすく思いである。まさにお家芸といってもいいだろう。火花が散り、悲鳴があがり、被弾のショックで船体が大きく揺れる中での、名も無き士官のダイブ。これこそスタートレックの華というべきシーンだろう。十分に堪能して貰いたい。

 テーマ的な話をするならば、「大事なものをなくしたとき、人は・・・?」ということだろう。本作の事件の中心人物であるソランは、現世での生活に疲れ、エネルギーリボンの向こうにある世界「ネクサス」に思いをはせ、その人間よりも長い寿命をかけて、ネクサスに向かうことを至上の命題として活動する。クリンゴン姉妹も、エンタープライズのクルーも、彼の行動に巻き込まれただけである。だがそれほどネクサスはいいところなのか? それはB型エンタープライズで死んだはずのカーク船長が教えてくれるのである。
 たったひとりでソランに挑んだピカードは、結局ソランの計画を阻止できず、一度はペリディアン星系を壊滅させてしまう。そこでピカードはネクサスに取り込まれることになる。そこでピカードが見たものは、ピカードですら現実には持ち得なかった自分の家族を目の当たりにし、頬をゆるめるほどの幸せである。だがそれが「嘘」であることを知るピカードは、カークをたきつけて、ソランの野望を砕こうとするのである。だがこの世界でやりなおそうとするカーク。カークが見た世界は、悔やんだ過去を取り戻し、自分がきらめいていた時代を取り戻し、恋人との暖かで安らぎに満ちた生活を取り戻す。そこにあるのは「if」である。そしてやり直したい自分の過去があり、その気になればすべての自分の時間を取り戻せる世界であった。だがやがてその世界があまりに都合が良すぎることに気がつくカーク。そしてピカードの話を承諾し、最後の一花を咲かせようと、走り出すのである。

 ピカードは序盤に愛する実兄と甥を失い、一度ならず艦隊任務に影響するほど感情を制御できなかった。それは「ピカード家」という血統が途絶えることを意味し、それを受け入れがたいと思ってるピカードの哀しみなのである。ソランはすべてをやり直すためにエネルギーリボンとの接触を試みるために、あらゆる手段を講じた。カークはB型エンタープライズの就航時に、「エンタープライズの艦長の席」を失っている。だがネクサスでの彼は、もっとも自分が輝いていた艦長席の自分ではなく、恋人へのプロポーズをした時の自分、エンタープライズでの任務以外の幸せを求めようとしていた自分に再会するのである。他にも感情を付加するためのチップを取り付けたデータが、感情の変化に戸惑い、自分の感情を制御できなかったことで、ジョーディーという大親友を一度は失い(後に取り戻すが)、同時にピカードらの助力により感情を制御する力を身につけ始める。それはテレビシリーズでは持ち得なかった「感情」を獲得したデータの物語の、一応の結末でもあったのだ。「失ったもの」の存在、それに気づくときの人の行動、そしてそれを取り戻したときという場面の設定の仕方。それはラストシーンで失われたエンタープライズ、瓦礫の山の中から出てきたデータの愛猫、ピカードのアルバムなどに、ストレートに繋がっている出来事として劇中に描かれてるのである。

 このように本作ではキャラクターそれぞれに、何かを獲得し、何かをなくすという行為を見せつける。特にピカードとカークのやりとりは生々しく、「エンタープライズの艦長の席を、だれにも渡すな。自分が輝きたいのであれば、絶対に他人に譲るな。昇進の話にも耳を貸すな」とカークはピカードに語っている。大事なものは絶対に他人に渡すな。それをエゴといってもいいかもしれないが、そんな人間的ないやらしさを、カークはピカードに語って聞かせるのである。ではこれを聞いたピカードはどう思ったか。大破したエンタープライズDにおいて、艦長席をはさんでピカードは副長であるライカーと歓談するシーンがある。その中でライカーが艦長席を指して、「いつかこれに座りたいと思っていたんですがね」と残念そうに語る。これをピカードは満足そうな笑みをたたえながら、答えないシーンがある。旧作の「TOS」はとかくカーク、スポック、マッコイの3人が活躍し、特に宇宙一の女たらしであるカークは、望んで危険の中に飛び込んでいく人物として描かれている。それは未知の世界への冒険へのあこがれが行動となって現れていると思うし、これこそが「TOS」の魅力である。一方の「TNG」はよく「父系家族」と表現される。ピカードという厳格でありながら懐の拾い父親がいて、その息子たちであるクルーが、ドラマを構成するというスタイルである。こうなるとカークのいう「輝かしい時代」=「エンタープライズの艦長の席」という図式を理解していながら、ピカードはいずれライカーを含めた後輩に明け渡すという準備をし始めている「理想の上司」という位置づけにならないだろうか。ピカードが冒険を繰り広げた時代では、「エンタープライズの艦長の席」が、どれだけ輝かしいものであっても、いずれは後進に譲るべきものであるという認識がピカードの中にあるのだろう。

 自分の大事なものは是が非でも自分のもとにおいておきたいカーク、大事なものであるならばいずれは自分のもとを離れ、優秀な後進に譲ることを知っているピカード。文頭で提示した「世代交代」に関していえば、二人はあえて異なる道を選んでいるのである。だがピカードの中にも過去を取り戻したいという思いがあることは、ネクサスの風景でわかるとおり。だからピカードはカークの心情を思いやることはできても、同意はしない。だからソランを許さないという図式なのである。むしろソランはカーク寄りであるから、カークがピカードの敵に回ることだって考えられてもいいだろう。そこはまあ、艦隊士官の正義ってことなのかなあ?

 いずれにしても「世代交代」というか、「引き継ぎ」は上手くいかなかったようだ。いやむしろ「ジェネレーションズ」という言葉通り、世代が変わったことを証明する記念碑的な作品とでもいうべきか。1960年代のいけいけのころのアメリカや日本では、誰よりも先頭を切って苦難にぶつかっていくカークの姿が、わかりやすいヒロイズムとして像を結びやすかっただろうし、さらに時代が下った23世紀を舞台にする「TNG」の世界では、すでに行われている「世代交代」をどのように進めていくかということが、織り込み済みの世界であり、時代が60年代から90年代に変わったことを端的に示す表現だったろう。その違いが一つの映画としてぶつかり合っているこの作品は、イヤでも通過しないといけない今後の僕らの問題としての「世代交代」を暗示しているし、一つのテストケースとも言える内容である。

 なお、この物語で死んだことになっているカークであるが、日本でもハヤカワ文庫版として出版された翻訳の小説によれば、カーク役ウイリアム・シャトナー自身が著した作品で、「暗黒皇帝カーク」として登場しているらしい。このあたりの平行世界については、SFとしてもやりすぎな感がある。なによりウイリアム・シャトナーの大人げなさが光る逸品である。こうした意味でも世代交代が完遂できていないことを思い知らされる。まことおそろしい話。おあとがよろしいようで。

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これ、まだ見てないんだよね。見たらレビューします。
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崇拝する私の艦長ピカード

じゃん・・・るっく・・・ぴかぁど。

http://www.valras-plage.net/red-rhino/

波のまにまに☆のアニメ・特撮のゆる~いコラム 「スタートレック ジェネレーションズ」~世代交代はうまくいったか?~

コメント

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No title

いや~素晴しいレビューでした。
スタートレックが本当に好きなんだなぁ~と
熱いものがヒシヒシと伝わってきますねw

かなり前にDVDコレクターボックス買っていたのですが
また観直して見ようかな~

No title

ナオ百式様
 コメントありがとうございます。
 自信があるのが熱量だけですので、それだけでも伝われば、
書いた甲斐がありました。

 ネクストジェネレーションを全話レビューなんて無理かも知れませんが、
いつかチャレンジしてみたいと思っております。
 今後ともお付き合い下されば幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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