冒険の意味(1)~轟轟戦隊ボウケンジャー~

 戦隊シリーズの根幹は、五色(あるいは三色)のヒーローが、悪の組織から地球を護ることにある。悪の組織は宇宙からの侵略者であったり、異次元からの侵略者であったり。第1作ゴレンジャーの黒十字軍は、宇宙人に操られた地球人の組織だったりして、意外にも複雑だったりする。だが敵組織がありながら、お宝探しに興ずる戦隊が、かつてあった。それがスーパー戦隊シリーズ第30作となる、「轟轟戦隊ボウケンジャー」である。

 こう書くと何かまじめに戦っていない印象を受けるが、決してそうではない。彼らは世界に眠る「プレシャス」と呼ばれる秘宝を求めるトレジャーハンターである。プレシャスの保護する「サージェス財団」により結成されたボウケンジャーたちは、現在よりも進んだ科学を持ちながら潰えていった古代文明の秘宝、それも大いなる力を秘めたプレシャスを回収し保護することを目的として、常人では困難な冒険を行い、数々の危険を乗り越えて任務を遂行するのである。その過程で「ネガティブシンジケート」と呼ばれる、プレシャスを悪用したり転売する敵組織と、お宝争奪戦を繰り返すことになる。

 番組開始当初、この設定にものすごく危機感を感じた。これでは敵を倒すカタルシスが欠如すると思っていたのだ。ネガティブシンジケートは開始当初で3つ存在する。1つはゴードム文明、2つめが邪竜一族、そして3つめがダークシャドウだ。この内ゴードムと邪竜一族は、プレシャスの力で世界を我が手につかもうとしている。しかしダークシャドウは、プレシャスを転売して、金儲けを企んでいる忍者の末裔だ。これでは目的のプレシャスさえ手に入れば、戦闘の必要性がなくなるではないか。おもちゃを売るためのプロモーションとしては、まったく魅力がないシチュエーションに感じたのだ。
 ところがこの疑念を、当のダークシャドウが晴らしてくれる。ダークシャドウは金銭目的であるから、他の2組織と手を組むこともいとわない。それ故に互いの組織を利用しあう展開は、至極納得できたのだ。当然ダークシャドウ自身も戦うし、闇のヤイバなどはむしろ積極的に戦いを挑んでくる。ここに丁々発止のプレシャス争奪戦が繰り広げられることになり、なおかつ巨大ロボ戦まで登場して我々の目を楽しませてくれる。

 なんと言っても魅力なのはボウケンジャー5人の面々だ。変身後の姿は意外とシンプルであり、ヘルメットのモチーフは車である。その車はそのまま各自のビークルをイメージさせる作りとなっている。
 ボウケンレッド・明石暁チーフはかつて「不滅の牙」と呼ばれた世界最高のトレジャーハンターであり、強力なリーダーシップで、メンバーを引っ張る。初めのうちはかなりきまじめで堅い感じに見えたが、そのうちその本性である明るい性格が露呈してくる。

 サブリーダー格にあたるボウケンピンク・西堀さくらは、財閥のお嬢様でありながら元・自衛隊員という肩書きを持つ。明石のヘッドハントでボウケンジャーに参加し、今では明石の片腕だが、生真面目な性格の裏に見え隠れする明石への淡い想いが、物語のアクセントとなる。

 初期メンバーの一人であるボウケンブルー・最上蒼太は、元国際エージェント。いやまあ手っ取り早く言えばフリーのスパイである。人を笑顔にするために参加した伊達男である。彼はチームのムードメイカー。緊張感のある現場でもおどけてしまう性格は、時にさくらを怒らせることもあるが、彼がいるからチームの和も保たれるのだ。

 後発の二人は1話で正式にボウケンジャーになった。ボウケンブラック・伊能真墨は、幼い頃からトレジャーハンターとして育てられた青年だ。過去に闇のヤイバに、育ての親同然の仲間を殺されており、戦闘中もヤイバを見ると目の色を変えてしまうほどの直情径行が見られる。その心には最高のハンターである明石を目指すまっすぐな想いと、明石をうらやむ闇が存在し、話が進む中で闇の部分を自ら封印してきたが、最終シークエンスではひた隠しにしてきた闇の部分をヤイバに突かれてしまう。

 真墨の相棒であった間宮菜月はボウケンイエロー。記憶喪失の彼女は、ハントの現場で真墨に助けられ、記憶を取り戻すために真墨と同行するようになった過去を持つ。実は古代文明レムリアの生き残りで、王家の姫君だったことが明らかになるが、重要なのは、真墨が彼女を拾った理由が「かわいいから」だそうだ。

 初期メンバー5人は、普段はサージェス博物館の学芸員をしながら、冒険をつづけている。楽しいのは彼らは民間に雇われた会社員であるから、人並みに休日が存在する。そうなると彼らのプライベートが見られるわけだが、本屋や図書館で研究に余念のない明石、甘い物で普段のストレスを解消するさくらなどが見られ、いまそこに存在する生活感が感じられる。またプレシャス探しのために、仲間をだましてまで冒険にのめり込む明石の姿には、少々あきれながらも、さくらのボディブロー一発で、そのうさを晴らしてしまうこともあった。

 Task16までは、彼らの結束と活躍を見せる。その展開は微に入り細に入り、設定を消化していく感じにも見えるが、5人のキャラクターが見せるドラマ、特に明石と真墨の確執や真墨の成長、少しづつみえかくれし始める明石やさくらのプライベートなどがドラマに振幅をもたらす。同時に3つの敵組織が、入れ替わり立ち替わり出てくることで、戦い方や敵対関係(真墨とヤイバ、明石とリュウオーン、蒼太と風のシズカ)も明確化する。これで戦闘中の対話も、その意図するところがはっきりしており、見ていて何気ない彼らの一言が楽しく感じたものだ。

 当初から登場するボウケンビークルが合体し、ダイボウケンとなる。ビークルが格納庫にしまわれ、ボウケンジャーの号令1つで飛び出すのだが、ここしばらく半ば生態メカとなっていたロボットだったので、格納庫が作られなかったのだが、デカレンジャー以来1年ぶりの格納庫の登場である。またこの合体シークエンスはCGを用いず、ミニチュアによる特撮を存分に楽しめるシーンに仕上がっている。頭以外が合体し、2本の細いジャッキでジャッキアップされる様子は、ミニチュア特撮ならではの説得力がある。そしてダイボウケンのアタッチメントとして登場したビークル達が、すべて合体する「アルティメットダイボウケン」の迫力には、もう言葉もない。その姿はあまりに無骨であるのだが、むき出しにされたメカニック、水書に配置されたシルバーのアクセントが、画面上の強い印象につながっている。

 これらのメカニックに説得力を与えるのは、プレシャスの強いエネルギーを転用した「パラレルエンジン」という動力で動いていることだ。合体とはこのパラレルエンジンが動力を直結させることを意味しており、5体合体すれば、5体分のエンジンパワーを手に入れることが出来る。さらにこのパラレルエンジンの発想は、明石が仲間をだましてまで手に入れたプレシャス「レオン・ジョルダーナの画帳」に示されており、古代文明の技術を受け継ぎ、正しく昇華させたサージェス財団(あるいは開発担当の牧野博士)の力を多い知らされる。

 設定上のつながりやキャラクター配置の絶妙さ、書き込まれた初期設定を、惜しげもなくストーリーに反映する脚本(メインライターは会川昇氏)の腕など、数々の幸運に見舞われて、「轟轟戦隊ボウケンジャー」はスタートした。あまりに長くなった。次回はボウケンジャーのストーリーの魅力に迫りつつ、本作で描かれた「冒険」の意味を探ってみたい。
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波のまにまに☆

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