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「スタートレック(2009)」~これって「正史」なんですね?~

 1960年代より放送され、日本でも根強いファンがいる「スタートレック」。2009年に劇場公開された作品を知って、私も劇場へ駆けつけたかったが、願いかなわず、つい最近になってDVDでやっと見ることができた。まずはこの作品を、できればやはり劇場で見ておきたかったというのが、正直な感想である。
 
 それにしても面白い作品である。特に私にとっては最初のカーク船長による「スタートレック」(宇宙大作戦、あるいはTOS)にまったく思い入れがないため、そもそもオリジナルを尊重するつもりがない。むしろ新世紀に新作として生まれ変わってくれたことに感謝したいほどである。原作をもっていたジーン・ロッデンベリーはすでに故人である。仮面ライダーだってあのお方が亡くなったことで、東映が好きに作っているのであるから、日本人である私にしてみれば、同じような感慨を得たとて、誰も咎めはしないだろう。正直言って本作については大絶賛な私です。

 物語に関してはいくらでもあらすじの書いてるページがあるので、そちらをご参照下さい。また長くなるといけないので。それにしても、オリジナルをベースに、よくぞ練り込まれた物語である。
 
 とはいえ、疑問に思わない点がないでもない。スポックの出自やカークの出自については、まあいいだろう。ただカークについては「破天荒」をキャラクターとして絵に描こうとしているが、それはどうだろう。悲劇に見舞われながら多くの乗員を助け出しながら、一粒種を残して艦と一緒にこの世を去ったカークの父のエピソード。カークの出来の悪さや「勤勉」や「実直」からは遠いキャラクターに設定されているが、これとカークの父親のエピソードが、物語としてキャラクターにリンクしてこない。洋の東西を問わず、落ちこぼれのレッテルを貼られた人物が、何をか成し遂げる物語とは、確かにエピソード前後のキャラクターの落差を作りやすいから、観客に与える感動もひとしおであることは理解できるが、たやすくケンカに明け暮れたり、暴走行為で警察にご厄介になったりと、感動の父親のエピソードからの落差には、カークを諦めさせる情報にあふれており、これがあの伝説のカークかと言わしめるほどである。ここまでおとしめなくっても、という思いを感じる。
 特に伝説の「コバヤシマル・テスト」のくだりについて言えば、テレビシリーズや映画などでは、カークは「誰も考えもおよばなかった奇抜な方法で」、唯一パスしていることになっているが、あの方法では単なるカンニングである。「だれも考えも及ばなかった」のはバルカン人のほめ言葉であり、しかもその後でアカデミーに裁判すらかけられている。だれも考えないのは、実施するに当たりバカバカしいからだし、ばれたときのリスクが大きすぎるからだろう。後のことまで考えない行動力はカークの持ち味であるが、本当に出来の悪い子供を持つ親の気持ちにさせられる。

 またウフーラに関しては尻軽すぎる。これもひっかかる。カークに関してはまるっきり無視するくせに、スポックの状況にすぐにおいつき、キスして慰めてみせるシーンには、寒気すら覚えた。残念ながら私には、やさしいウフーラではなく、上官に取り入ろうとする利にさとい女性士官にしか見えなかった。特に配属先の発表時に上官にくってかかり、エンタープライズ入りを強行する彼女の姿を考えれば、決して見栄えのいいシーンではない。それがそもそも「ウフーラ」という役が、世界中の黒人女性に希望を与えた存在であり、できる女性、男性にも尻込みしない女性、男性と仕事を対等にできる女性を目指したキャラクターだというのはわかるが、今回のウフーラはやりすぎだ。

 私がTOSをなんとなく信じ切れないのは、船の責任者であるカークが、尻軽くほいほいと船をおり、自分の探求心を満足させるためだけに、クルーを巻き込むかに見えるからである。その点、今回のカークは、むしろ危機に際して自分の犠牲をいとわないという自己犠牲すら見せたことは驚愕に値するし、その判断のぎりぎりのところで正解に導く悪運の強さもカークらしい。だがスポックがこれに同行するのはどうだろう? 副長としてなすべきことがあるシーンで、カークと敵艦に乗り込むってのは、スポックの好きな理にかなっている行動とは思えない。当然映画としての見所という意味でのシーンであることは認めるが、ここぞというときにそうした脳みそにわだかまるシーンが連続すると、楽しんでいるのに、脳みそが拒否しようとするのが、実にふしぎな感覚であった。

 この作品の最大の問題は、タイプトリップにより、テレビシリーズで描かれた遠い未来から過去にタイムスリップしてきたスポックが登場したことにより、この物語が「正史」であるということを決定づけられたシーンである。このことにより、今後の「スタートレック」は別の人間があの役やこの役を演じても、「パラレルワールド」で逃げ切る用意があるよと、宣言しているようなものである。

 それはいくらでも許容できる。デフォレスト・ケリーは物故し、レナード・ニモイも老い、ウイリアム・シャトナーですらカーク同様のスケベそうな小太りのおっさんになった現在では、オリジナルメンバーでの続編は望めない。しかも各シリーズもすでに終了し、それぞれの役者もスタートレックから離れて生活しているのである。無理矢理過去の出演作に引き戻されるのは、主役と折り合わない柳葉敏郎が再度室井さんを強いられるようなものである。もうかつての熱量を込めては演じられないだろう。新しい役者に置き換える意味がそこにある。かつてブラウン管から感じた熱量を、新しいスタッフと新しい役者の熱量で補おうというアイデアは、考えられてしかるべきであり、当然オリジナルキャストとの違いを指摘する、オリジナル優先の見識者がいても、それを超える演技や、オリジナルを優先するこだわりがあれば、そんなものはいくらでも乗り越える。今回の映画の出来は、それを十分に証明しているし、いっそここから新しいシリーズを作ってくれていいとすら、私には思えたのである。

 ところが、そんな楽しい気持ちを押し込めるかのように、この物語はオリジナルシリーズの未来の話とリンクしている、「正史ですよ」と言い出したのである。「アメリカ横断ウルトラクイズ」のメインテーマにもされたあの曲をバックに、スタッフロールが流れる中、映画を見た爽快感に打ち震える私の中には、どうしてこれが新しく初めるスタートレックだと言ってくれないんだという、悲しい怒りしかわいてこなった。「スターウォーズ」には解放があるのに、どうして「スタートレック」には閉じこもるしかないのだろうか?

 SFXやCGに、実景をとりこんだアクションは素晴らしく、そのつなぎに出てくる物語の進行も楽しい。またスタートレックには少ない戦闘シーンもあったし、なにより惑星を破壊するシーンのダイナミックさは、おそらく劇場での音響と共に、体を揺らしたかったと思える出来映え。しかも新しいキャストによる若い顔ぶれは、これから始まるスタートレックの世界の期待感にかぶり、胸躍らせる。エンタープライズの艦長席に縁のなさそうなカークの姿に少しだけイラッとさせられるが、それを払拭する大活躍の後半部分には、圧倒的に見るべきものが多い。それだけに、新しいキャストによる新しい物語が、旧時代の古い映像に縛られている印象がぬぐえない、残念さが残る。

 「修羅の刻」というマンガがある。史実をベースに虚をおりまぜながら、陸奥圓明流という人殺しの技を受け継いできた一族の物語を描くマンガである。この作品の後書きに、ほぼかならず「これがあなたにとっての史実なら」という文が添えられているのをご存知か。私がこの映画のラストに一文を付け加えるなら、まさに、「あなたにとってこれが・・・」と付け加えたい。絶対にジーン・ロッデンベリーになんか捧げない。

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コメント

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No title

とうとう見ましたか、でも結構引っかかる部分が多かったみたいですね。
私は映画館で見たときに、キャラクターの無謀さは(スポックも含めて)若さゆえで
大体納得しちゃいました。
今回の映画はTVシリーズよりキャラの年齢が、5歳から10歳程度若くなってますから。

まあ新しいスタートレックにできなかったのは、スポンサーに配慮しないといけないからでは?
最近ハリウッド映画が続編ばかりなのは、映画会社が金融業に買収されて
役員が金融業界出身者ばかりのため、冒険的なオリジナル脚本はゴーサインが出ないので
続編ばかりになってしまっているそうです。

No title

mineさま
 コメントありがとうございました。
 まあ、ハリウッドの脚本に関しては、これはこれでいいと思うんです。「アバター」ではなく「ハートロッカー」が受賞する流れも、全然OK。フェザーンの商人にとって商売=冒険でしょうが、彼らにはそれがないってことですよ。
 同じ事が本作にも言える。スタートレックは冒険譚でしょ? 物語が冒険しないで、キャラクターをいじるだけってのは、小手先のささいな話でしかないし、トレッキーを満足させるために一連のシリーズに置いてしまうなら、新しく冒険した価値がないと思うんです。もっとトレッキーにガツンとくらわせるような作品でなんでダメなんだろうと思うわけで。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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