「舞-HiME」~その2・大事なものってなんですか?~

 前半の「陽」の雰囲気に比べると、後半は俄然しんどく、暗くなっていく。前半の盛り上がりがアリッサ・シアーズによる人工HiMEによる暗躍であるのだが、その白眉とは舞衣たち本物のHiMEたちが、学園の地下に隠されていた催事場からの出撃シーンや戦闘シーンに高揚感を感じる部分だろう。特に出撃シーンは、まるで特撮テイストで描かれており、金属の網でできたタラップを使って、地上付近まで昇り、なぜかそこにある発進口から、後方からのあおりでチャイルドとともに出撃するHiMEたちのシーンは、まったくもって「ウルトラセブン」のウルトラホークの出撃シーンである。ある一定の年齢に達したオタクが、これに食いつかないはずがない。タラップにうずくまっているチャイルドが、まさに戦闘用の機械に見えてくるあたりが、余計にその雰囲気を漂わす。
 結果的に人工チャイルドである破壊衛星を舞衣に壊されて、アリッサは打倒される。だが一見して爽快感がのこるラストにはアリッサと深優の関係性へと焦点を移し、あらためて「チャイルドを壊されることで大事な人を失う」という事の重要性に気づかされるのである。それはまさしく、本作の後半が何度も問いかける命題なのである。

 話を整理するために、「舞-HiME」に関するお約束を下に列記しておく。

・HiMEに選ばれしものは、体のどこかにアザがある。その力の覚醒は偶然性が高い。
・HiMEの能力を十分に引き出すため、チャイルドを召還する必要がある。
・チャイルド召還には、「自分の大切にしている人」の命を賭ける必要がある。
・HiME同士の戦いに限らず、チャイルドが倒されると「大切にしている人」が死ぬ。
・HiMEとは、彼女たちにしか見えない赤い星が月に重なるときに「蝕の祭」を行う女性のこと。
・「蝕の祭」とはHiMEたちが互いに戦いあう、バトルロワイヤルをいう。
・HiMEの数は12人。一人倒されるごとに、学園の神殿に柱が立つ。
・柱が11本になり最後に一人残ったHiMEには、代償として「強大な力」が与えられる。
・この「強大な力」をめぐり、「一番地」や「シアーズ財団」、「黒曜の君(神崎黎人)」が暗躍していた。

 この「自分の大切にしている人」を守るために、HiME同士のバトルロワイヤルになるという展開、どこかで見たことがないだろうか? そう、本作が放送される数年前に、特撮界をわかせたあの作品、「仮面ライダー龍騎」によく似ているではないか。「龍騎」も、バトルロワイヤルに勝ち残った最後の一人だけが、その願いを実現できるという神崎士郎の甘言により集められた13人のライダーが、しのぎを削る物語であり、ライダーになる人間がそれぞれ、自分の欲望やライダーバトルを止めるという願いのために、戦い続けた物語である。その意味では、本作は正しく「龍騎」の影響を受けている作品であるし、2004年という放送時期を考えれば、まっとうに「ゼロ年代」的である作品ということもできる。また舞衣たち主人公が少女である点は、むしろ本作を「萌えアニメ」として、2000年代という時代に固定する意味合いが強い。「舞-HiMEプロジェクト」が2009年に「宇宙をかける乙女」を第3弾として制作していた意味は、ここにもあったのだ。

 「舞-HiME」後半が「仮面ライダー龍騎」とよく似ている構造を持つことは理解していただけたかと思う。だが本作が「龍騎」と大きく異なる点を挙げるとするならば、本作では大事な人がすでに手に入れられる範囲にいることである。「龍騎」では自分の命や「バトルが永遠に続く」、「英雄になる」など形とらずに、夢想するしかない願いを対象にしていたのに対し、本作では「大事な人」が弟や身近にいる誰か、自分を愛してくれる人など、はっきりと形をもって、人物としてすぐHiMEたちのそばにいるのである。それを戦いの結果として、HiMEの大事な人の命を奪うという行為を描いている。はっきりと「与える」ではなく「奪う」にシフトチェンジしているのだ。

 「仮面ライダー龍騎」では、その願いの実現は、基本的に人間の「欲望」に根ざしていた。たとえその願いが純粋に、「幸せになりたい」という程度であっても、バトルロワイヤルに参加することは、命のやりとりをすることを意味しており、参加自体に人の生死を左右する意味が含まれている。負けることは死を意味し、戦いを放棄することもまた「死」しか残されていない。だからたとえその死に際がかわいそうに思えても、だれも同情できない構成になっている。

 しかし「舞-HiME」の人間関係は、前半に登場したHiMEたちに加え、後半に登場するHiMEたちは、完全に前半に登場したHiMEたちとの対になる関係として登場する。それもこれも登場する人間関係が「好き」を基準としている矢印のみで構成されている。その矢印をたどっても、「ライバル」関係はありえても、「敵対」関係は発生し得ない。一部、結城奈緒だけは自分の憎しみと母親を守るという約束事で動いていたため、除外できる珍しい存在であるが、他の人間の相関関係は「好き」の方向性でつながっている。そしてこの「好き」を逆手に取られることえ隙ができ、炎凪につけいられてしまう。遥を助けたい一心で舞衣を襲ってしまう雪之にしても、詩帆の呼び出すオーファンが舞衣だけを襲い続けたのも、神崎黎人を兄として慕う命が舞衣を戦う事になるのも、すべて「好き」から始まるまっすぐな思いと誤解のなせる「業」なのである。

 また恐ろしいことに、HiMEの大事な人は、別に固定されているわけでもない。舞衣は当初「巧海」を措定していたが、そのうち「神崎黎人」になり、「祐一」に変わっていく。それを舞衣の心変わりととるよりも、むしろHiMEとしての残酷な運命すら感じさせる設定である。その時にもっとも本人に哀しみを与える人の死をもって、チャイルドの死を償わせるという見方であれば、なんとも残酷な条件ではないか。しかも与えておきながら奪うという、まっとうな順番の組み合わせから、漠然とした欲望を奪われるよりもはるかに悲しい物語となる。
 ドラマとしての是非はあるだろう。「全滅富野」のように、人の死でドラマを盛り上げる手法が果たしてまっとうかどうかは、確かに意見の分かれるところであはある。だがどうしても愛するものの死は、否応なく「悲」としてのドラマを形成し、見ている我々にとってもインパクトが強い条件設定にように見える。見た以上あらがえない感情が、そこにある。

 だがしかし、ドラマの最終局面において、とんでもないどんでん返しが控えていたのである。
 物語の終盤26話において、HiMEの大事な人の死に呼応して立ち上がった11本の柱。その柱が碧によって復活させられた深優によって、破壊させられたのである。そしてまた人形でしかなかった真白の復活により、すべての命が元に戻されてしまうのである。HiMEの悲しい戦いによる犠牲者は、すべてなかったことになり、HiMEたちは再び力をあわせて、最後の敵・黒曜の君である神崎黎人を打倒する。ここに、数千年にわたり続けられたHiMEのバトルは完全に終結し、舞衣たちは自分たちのあるべき日常へと戻っていくのである。

 さあ、みんなで盛大に突っ込もう。

  おいおい!

 まあ、わが友人が本作を非難していたのも、この部分である。いや、わかるよ、わかる。そりゃそうだよ。ひどいもん、これ。俺の感動の涙や、なつきと静留さんのキスも、全部チャラかい? かえせよ俺の感動を!
 と、言いたくなるのはよくわかる。だがここでも「仮面ライダー龍騎」なのである。びっくりするほど、こうした幕引きまでまねしなくても良かったのであるが、そう考えると合点がゆく。「龍騎」では、妹・優衣の誕生日までに決着がつかなかった場合には、神崎の変身する時を司るライダー「オーディーン」の「タイムベント」により、ゼロリセットすることで、物語をチャラにしたのである。本作もまさにこの手法にのっとったわけではないだろうが、いずれにしてもHiMEによる「蝕の祭」自体を破壊して、すべての運命にケリをつけているのである。だからといって、柱を壊して代償となって消えていった命が元に戻るってのは、許容できる範囲なのかどうか。そこが本作を好きか嫌いなのかの分かれ目になるだろう。

 私の個人的な感情を吐露すれば、私にはこれが「好き」である。それは本作で描かれた悲劇を救う方法が、ドラマとしてあったかどうかである。たぶん舞衣が最後の一人として、「蝕の祭」やHiMEの運命自体を消し去ることもできたろう。神崎を倒し、凪を倒して、傷だらけで願いを叶えて貰う舞衣という物語もできたろうが、それでも自分の責任で失った命を取り戻そうとする舞衣だったろうか? 彼女はむしろその責任を負いながら、一人生きていくことを選択しそうな雰囲気である。その彼女すら救うには、あのドラマしかなかったんではなかろうか。また続編「舞-乙HiME」では、十分報われているキャラクターがスターシステムで再登場する。それを知っていて考慮すれば、これもまたよきかなと思えるのだが、みさなさんはいかがだろうか?

 本作が意外にもゼロ年代の作品であり、尚かつ「龍騎」ではなし得なかった幸せな結末を選び取ることで、「龍騎」の裏のテーマすらのぞき見した気分にさせられた。これも本作単品だけでは不本意だろうが、望外の喜びであった。「宇宙をかける乙女」の主人公・秋葉は、なにも選択できず、なにも答えを選ばないまま、流れに飲み込まれるように事態を収拾したヒロインであったが、プロジェクトとして俯瞰したとき、やはり動機なき主人公にはドラマを動かす力がないこと、それぞれの場面での葛藤と選択が、強いドラマを生むことがはっきりとわかった。
 友人よ、いろいろと考えさせられる面白い作品であったよ。だって舞衣という、考えることが苦手な主人公には、ああしたあっけらかんとしたラストが、よく似合うじゃないか。

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テレビ版とは異なるお話らしいです(未見)。
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コメント

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そ~ですか~~。みちゃいましたか~~(笑)

 私、「舞-HiME」好きですよ。だから続編の「舞-乙HiME」(ツヴァイ・シフル等)や「宇宙をかける乙女」も見たんだし。波のまにまに☆さんのお書きになった事に激しく同意出来る、ええアニメなんですは。
キャストも良いし~。軽い話も、重い話も良いし~。キャラやチャイルドのデザイン良いですよね。

 「龍騎」との相似性は「龍騎」見てないので分かりませんが、バトルロイヤル(否バトルロワイヤル)って
他にもありませんか?ただし「蝕の祭」について、バトルロイヤルとゆうよりは蠱毒だと思います。
なにせ勝者に与えられるはずの「強大な力」は、結局「黒曜の君」が使いますから。
「Fate/stay night」もこのパターですね。ゲームは、プレイヤーよりマスターが得ということですよ。

 で、このように好きなんですが、でも、好きだからこそ許せない事ってありますよね。
こんなにええ話しなのに、ラストで何もかもぶち壊し。

うら~~! 私の感動を返せ~~~~~!!v-40

 あんなジャンプ的な話に歪ませなくてもいいジャン。キャラクターの救済をやりたいならの
「舞-乙HiME」でいいジャン。みろシズルさんなんて「舞-乙HiME」では、「舞-HiME」で
隠さなければならなかった本性全開で、
「ガルデローベたら私のパラダイス(狩場)v-238
状態ジャン。そりゃ自分らしく生きれれば性格も歪まわんは!パラダイス守るために命も掛けるって。



 す・すいません興奮してしまいました。でも、私の中で「舞-HiME」は「舞-乙HiME」の番外編。
見とけば「舞-乙HiME」のいくつかのエピソードが笑えるかなという程度です。
ゆえに別に見なくても良いとゆう話になるのですが。まあ、波のまにまに☆さんも、
いつかは見ると思っていましたが。(笑)

ネタを振ってくれたので、駄文ですがコメントします。では。

PS.「ぼくの地球をまもって」読み終わりました?続編も控えていますよ!

見ちまっただよ(笑)

おか~さん
 コメントありがとうございます。
 振っただけのことはある内容のコメントで、記事を書いた甲斐がありました。
 そうね、キャラの救済運動なら「舞乙」でやれば、「舞」の中でまでやることなかったかも。
私が「龍騎」を取り上げた理由は、「蝕の祭」の構造が、「龍騎」におけるバトルロワイヤルの「裏テーマ」な感じがしたからで、順番で言えばむしろ「龍騎」ありきなの。龍騎の物語が、戦い続けてすべてを倒してやっと手に入れた大切ななにかを、今度はそれを賭けてまた戦い続けるとしたら・・・という、龍騎のその後のバトルを予見していたという発想が先にあったのね。ゼロ年代の総決算となった「仮面ライダーディケイド」にしても、自分のいるべき場所を探す旅という、ある意味他人にはどうしようもない話になっているのも、これに連なるテーマだと思ってるわけなんです。すまん、わかりづらいね。

 まあ他にもあるでしょといわれると、そうだねとしか言いようがない。東映の映画「バトルロワイヤル」なんて、もろにそうだろうし、あの話で最後に勝ち残った奴は、続編映画では伝説の英雄扱いで再登場するんだけど、このあたりもちょっと舞-HiMEプロジェクトのスターシステムみたいだなって思うぐらいです。

Fateを例にしてくれたんで思いだしたんだけど、奈須きのことか、 TYPE-MOONとか竜騎士07とかが紡ぐ物語がどうにも苦手で、一連の作品で示される「死」に疑問を持っています。ジャンプマンガにおける「死」と復活が、こうした現象に先行していたのかと思うと、我ながらあれらの作品を楽しんでいた自分が恥ずかしくさえ思うのです。だからあなたの怒りはごもっとも。DVD見ていて、「あ~、これね」と一人で声出してうなずいていたぐらい。

けどさ、「アイマス・ゼノグラシア」もこのシリーズだってんだけど、見るかい?
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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