冒険の意味(2)~轟轟戦隊ボウケンジャー~

 
 前回長すぎた反省はあるものの、もう少しボウケンジャーの面白さに迫った後で、「冒険」という本作のキーワードで、本作の魅力に迫ってみたい。おつきあい願えれば幸いである。

 「アクセルラー」はボウケンジャーの変身アイテムである。携帯電話のようなアクセルラーはプレシャスのハザードレベル(危険度を数値化)を計測したり、通信機の役割を果たす。アクセルラーのグリップの下にはダイヤルが付いており、変身時にはこのダイヤルを回すことで変身を果たす。基本的には右手でアクセルラーを持ち、左腕にダイヤルを滑らせることで変身する。ただし状況によっては、蒼太が橋の手すりを滑らせたりする。このまわし方が最高にいかしてるのは、剣の刃に滑らせて変身する明石や、仲間を殺されたと思ったさくらが怒りのままに地面を滑らせて変身したりする。このとき、明石やさくらの気持ちがダイヤルに乗って、ドラマを最高に盛り上げる。見ているこちらも気持ちが乗るので、本当に入り込める瞬間だ。

 ドラマはTask17で急展開を迎える。この話で「アシュ」と呼ばれる怪物が登場する。「アシュ」とは「亜種」とも読み替えられる、つまり人間の亜種ともいえる怪物たちだ。そして古くからこのアシュと戦う宿命を持つ「アシュの監視者」の一族がいた。その生き残りが高丘映士である。高丘家に残された数々の秘術を使い、アシュを封じ込めることを宿命付けられた男だった。
 圧倒的な力を持つアシュの登場で劣勢に立たされるボウケンジャーであるが、プレシャスの力と高丘の術でなんとか撃退する。このアシュの遺体を使い、ゴードム文明のガジャが作り上げた強力なゴードムエンジン(それはアンチパラレルエンジンであり、ボウケンジャーのエネルギー供給を阻害する能力を持つ)で「クエスター」としてよみがえる。クエスターの力に一敗地にまみれるボウケンジャーと映士。映士は自らの武器である錫杖まで破壊される。だが映士には秘密があった。その血に流れるのは人間である父の血と、アシュである母の血。そして錫杖が破壊されたとき、映士の体に眠るアシュの血が目覚めてアシュとなる運命だったのだ。しかし映士は明石の機転により、アシュの血をその身に封じ込め、同時に人間としてボウケンシルバーとなった。映士はボウケンジャーの一員として、アシュを追う事になる・・・・というのがTask.17~19までのあらすじである。

 この連続3話のストーリーがシリーズ中の白眉である理由は、ボウケンシルバー登場回というのみならず、明石が冒険者である理由と、映士がボウケンジャーとなる理由がドラマティックに描かれているからである。
 Task.18では、アシュの計略にはまり、毒の霧のせいで、かつて見殺しにしなければならなかった仲間の姿を見た明石は激しく動揺し、プレシャス「兵の弓」の攻撃をまともに食らってしまう。アクセルラーをさくらに渡し、自分にその資格がないとして指揮権をさくらに譲渡する明石。再度仲間に会う明石は映士に助けられる。映士に自分はボウケンジャーの仕事の意義を一人語りする明石。それを「お前らのやっていることは遊びだ。好きでやっているだけだろう」と、映士はそれをせせら笑う。そこで明石は翻然と悟るのだ。冒険が好きであることを。誰に与えられた使命ではなく、自分が自ら選んだことなのだと。

 一方Task.19では、錫杖をおられたことで、自らの宿命、自分の体に流れたアシュの血の宿命をおそれる映士。一時は獣になりかけ、人間としての正気を失いかけたとき、明石は映士に語る、「自分の中の血や宿命と戦ってみせろ」と。戦いの中で再び獣化する映士であるが、明石の「使命としてアシュの血と戦え」という叫びに、正気を取り戻し、ボウケンシルバーとなり、クエスターを圧倒する。しかし映士は、アシュの血に目覚めたことにより、ボウケンジャーの仲間となることを拒み、苦悩する。続くTask.20では、そんな映士を菜月が諭す。「映士にとって、はじめての仲間を作ることは、冒険なんだ」と。変身も出来ずに苦境に立たされているメインメンバーを助ける映士。自分がアシュである母と人間の父の愛にはぐくまれて生まれたことを知る映士。そして「憎しみでも使命でもなく、あいつらと冒険してみたいから」だと語る。6人目のボウケンジャー誕生の瞬間だった。

 明石と映士、2人の考え方や生き様の違いを明確にし、そしておなじ「冒険」という単語でつないでゆく。「冒険」することを目的とするならば、同じ道で戦ってゆける。6人目の新戦士が加入する話は、すでに慣例化して久しいが、これほどまでにドラマティックに、そしてちょっと観念的でいて、子供にもわかりやすいのは、近年例がない。

 新勢力のクエスターと6人目の仲間を迎え、新展開に突入するボウケンジャーの物語は、映士の加入による仲間同士のいざこざも含めて、より振幅を増していく。こうしたドラマの課程で、ボウケンビークル6~9の強力すぎるエンジンパワーが、メンバーに悪影響を及ぼす点などうやむやにしていったりもしたりして、少々残念な展開もあるけれど、例年になくメインメンバー6人の結束が、画面からあふれることになる。

 話が進んでくると、メンバーのパーソナリティが大きく変化し出す。笑うことが出来なかったさくらは、徐々に自然と笑うことが出来るようになり、ミッションによってアイドルのふりをしたりする。また明石も邪竜により、自分の運気を落とされて落ち込んだりしている。徐々にメンバーによるコントのような芝居も見られる。変身時の名乗りの背後で爆発した炎で、自分の衣装が燃えるなどの、楽屋落ちめいたお笑いなども頻出しだし、ドラマの中心がしんどくなっていくバランスをとるように、画面でのお遊びもエスカレートし出す。これを面白がってくれるかは、テレビの前の子供達次第なのだが、なによりこれを作っている大人達が悪のりしている雰囲気が画面から伝わってくるのである。これはもう笑うしかない。

 そしてパーソナリティが見えてくることにより、だんだんと各人の「冒険とは何か?」が見えてくる。それはTask.2で明石が言った、「誰にでも、たった1つの大切な宝がある」ということを、脚本と役者が追求した結果だ。
 明石はかつて見殺しにした仲間を思いながら、仲間を殺さずに冒険のワクワクを心から楽しむこと、蒼太は人々の笑顔のために出来ることをすること、さくらは自分の居場所を探すこと、菜月は自分の過去を探すこと、真墨は明石を超えるトレジャーハンターになること、映士はアシュの監視者ではない、新しい自分の道を見つけること。

 それぞれの目指すところは異なるけれど、着実に歩んでいく彼らの姿にはまぶしいものを感じる。冒険を夢と置き換えてもいい。冒険は自分の夢を叶えるための過程だと思えばいい。そして夢を叶えるために行動することは、すべて冒険であると、この物語はやさしく語りかけている。これから夢を追いかける子供達に問いかけながら、いつしか夢を忘れて日常に埋没している大人にむけて放たれたメッセージなような気がした。あたりまえとも思えるほどのメッセージに、私は間違いなく勇気づけられたし、画面で見ているボウケンジャーの戦いに、いつしか自分を重ねていたかも知れない。
 
 ラストエピソードでは、ヤイバにそそのかされた真墨が、ダークサイドに落ちていく。それはずっと自分のうちに秘めていた、明石への対抗心だったが、ボウケンジャーを去り、さすらった後に、変身すら出来なくなったメンバー達の最大の危機に、いつしか明石のようなリーダーシップを発揮する。それは明石と並び立つ、真墨の新たな姿であった。敗戦のどん底で彼らを支えたのは、仲間への信頼と、自分の冒険への強い想いであった。その想いは、まさにプレシャスと同じ光を放ち、ロボットを起動させ、ボウケンジャー達はついに最後の敵を葬ることに成功した。

 最終回の戦闘の後、後日談が紹介される。明石は宇宙のプレシャスを探索するため、宇宙へ行く決意をする。明石の変わりにチーフに抜擢されたのは、明石と並び立つ男・真墨である。そして宇宙へ向かうダイボイジャーにそっと乗り込むさくら。いわなくてもわかるでしょ! 驚きとも納得ともつかない奇妙な感情を乗せて、ボウケンジャーのドラマは閉幕した。

 さまざまな新しい試みをし、出来る限りシンプルに、変えるべきは変えて、そうして出来上がったボウケンジャーの物語は、結果的にどこまで子供達に受け入れられたかは、よくわからない。けれど日常にふと置き忘れていた何かを思い出す、そんなきっかけをちりばめてある作品だった。そもそもプレシャスという物自体が、夢の固まりなのだ。その夢を追いかける彼らの姿に、今の自分をダブらせたり、過去の自分をダブらせることも出来るだろう。それが容易に手に入らないことを、繰り返しながら、追い続けることにこそ価値を見いだすことが、決して間違いじゃないことを教えてくれる、。私にとってボウケンジャーは、そんな作品だ。多かれ少なかれ、戦隊シリーズは似たようなもんだろうとおっしゃるだろう。けれど夢を諦めないことを、台詞として恥ずかしげもなく言うには、もはやこういった番組に頼るしかないだろう。それは送り出すスタッフ・役者の勇気だろうし、受け取るぼくらの勇気でもある気がしてならない。
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テーマ : 映像・アニメーション
ジャンル : 学問・文化・芸術

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波のまにまに☆

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