「重甲ビーファイター」~その1・メタルスーツのゆくえ~

 いわゆる「メタルヒーロー」シリーズと呼ばれる作品群、それはけっして時代のあだ花なんかじゃない。1982年に「宇宙刑事ギャバン」を最初とする「宇宙刑事シリーズ」に端を発したこの作品群は、実に17年もの歳月にわたり、仮面ライダー不在の東映特撮において、戦隊シリーズとともに2大看板として存続してきたのである。ギャバンが始まる前の金曜7時代の番組といえば、「がんばれ!!ロボコン」などの東映ロボットコメディ路線だったが、時間枠を入れ替えたりしつつ「ギャバン」をスタートさせ、これが大人気を博して3作品が継続して作られた。その後放送枠自体を月曜日や日曜日に移動させながらも、シリーズ自体は存続し続け、日曜日の朝に時間枠が固定するころには、視聴率的にも作品的にもはっきりと影が見え始め、1998年に「テツワン探偵ロボタック」の放送をもって、メタルヒーローシリーズは終了を迎え、1999年にかつての人気番組のリメイクである「燃えろ!ロボコン」が放送された。このことはまさにメタルヒーローシリーズの栄枯盛衰を感じさせるエピソードだろう。そして2000年という新しい年を境に、「仮面ライダークウガ」のスタートとともに、新世代の「仮面ライダー」が誕生し現在の「W(ダブル)」に至るのである。
 だがそんな老いさらばえていくメタルヒーローシリーズの末期に、シリーズに活気を与えたのは、まぎれもなく今回とりあげる「重甲ビーファイター」という作品であったと思うのだ。今回も2回にわたり本作について語ってみたい。なお2回目は久しぶりの「悪役冥利」としてお送りする予定である。

 「重甲ビーファイター」は1995年製作。同時期には「超力戦隊オーレンジャー」が製作されており、1995年の春には「人造人間ハカイダー」と3本立てで劇場公開されている。「ビーファイター」は前作「ブルースワット」が視聴者に受け入れられなかったことを反映し、できるだけメインターゲットとなる児童にアピールするよう設定が組まれている。それゆえに異次元からの侵略者と戦う正義のヒーローというわかりやすい構図が、人気を博する結果となる。だがこの展開だけで1年が持たせられるほど甘くはない。正邪2対の対立構造を軸としながら、その他の要素も貪欲に取り入れ、しかもその物語展開を巧におもちゃに反映させる仕組みは、それまでのメタルヒーローシリーズや戦隊シリーズからきちんと受け継がれている。

 物語は地球上の各地において昆虫が異常発生している事実から始まる。昆虫学者・甲斐拓也(演 土屋大輔)が昆虫界の長老・グルと出会い、この昆虫の異常発生が、何者かが地球を侵略しようとしており、それに対して昆虫たちが戦う準備を始めたためであると知る。このことを政府や国の機関に知らせたが取り合ってもらえず、向井博士(演 笹野高史)率いるアースアカデミアのメンバーは、密かに侵略者に対抗する手段を講じようとする。そして時が過ぎ、グルが予言したとおり、異次元からの侵略者・ジャマールによる総攻撃が開始される。都心に前線基地を置こうとするジャマールの一団は、一般市民を労働力とするために、人さらいを始める。そんなジャマールの侵攻を昆虫たちは許さない。小さな体で戦い続ける昆虫たちであるが、その力はあまりに非力だ。そしてグルは人間の力を信じ、共に戦う決意をする。昆虫たちのパワーを集め、向井博士や拓也が開発を進めていたアーマーに、昆虫のパワーを与えることに成功する。ここに誕生した3体のインセクトアーマーは、昆虫の力を利用してジャマールと戦う戦士となるため、装着者を選ぶ。一人は拓也、一人は樹木医の片霧大作(演 金井茂)、もう一人は水族館に勤務する動物学者の羽山麗(演 葉月レイナ)の3人。そして3人はインセクトアーマーを装着し、ビーファイターとして首領ガオーム率いるジャマールと戦う事を誓う。

 この作品、結果的に当時の子供たちに大変な喝采をもって受け入れられたのである。その理由は先ほど述べた単純な対立構造だけではない。その主たる原因は主人公・ビーファイターのメタルスーツにあると見た。
 さて比較しながらご覧いただきたい。上がそれまでのメタルヒーローのベースとなった宇宙刑事の3人、そして下がビーファイターである。
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    BF

この違いがおわかりだろうか。デザイン的に申し上げれば、上の宇宙刑事にはモチーフがない。これはビーファイター以前のブルースワットまで同じである。メタリックカラーを基調とし、所々に黒を配して全体を引き締めていることは、双方に共通するデザインである。また宇宙刑事は「メタリック」を強調するあまり、「シルバー」を多く取り入れているのだが、ビーファイターはかなり単色に近く、それぞれのシンボルカラーをめいっぱい使用しているデザインとなっている。そして最大の違いはやはりビーファイターが「昆虫」というモチーフを使用しており、甲虫の意匠がところどころに巧みに配置されている。
 「昆虫」という児童、それもメインターゲットとなる少年の共感を得やすいモチーフ。これこそがビーファイターを成功に導いた主要因である。だがしかけはそれだけではない。主役に「カブトムシ」の雄雌、そして「クワガタムシ」という人気のある昆虫を選んでいること、敵側に昆虫モチーフの怪物を極力無くしたことなどが考えられる。この敵側の昆虫モチーフに関しては、次回たっぷりご説明する。そしてこの昆虫をモチーフにすることが、物語の根幹にかかわる重要なポイントになる。

 前述のようにインセクトアーマーは昆虫たちの力の結晶である。そのため1対1体にどれほどの昆虫の命が重なっているのか計り知れないのである。つまり昆虫をモチーフとすることで、小さなものへの慈しみ、慈愛の心を持って欲しいとの願いが託されている。同時に昆虫の力と人間の力を合わせて戦うビーファイターの姿は、どれほどちっぽけな命であっても、力を合わせることでどんな強大な敵とも戦えるし、邪悪な意志に抵抗する事ができるという具体例でもある。
 インセクトアーマーがこれまでのメタルスーツとまったく異なる思想でデザインされている。これまでのメタルスーツは、機械や科学が持つ力が人間の力を倍加させることにより、人間の能力や勇気を補うアイテムである。それは「科学」という万能の力を人間の支配下に置いた形の表れであり、宇宙刑事や未来戦士たちが有する未来兵器はその延長線上に存在するアイテムである。それだけにメタルスーツのデータが敵に奪われたり、メタルスーツが呪術的な力により支配されることで、メタルスーツは容易に装着者本人に牙をむくのである。
 ところがインセクトアーマーは、人間の科学と昆虫の力の結晶である。それはグルだけではない、アースアカデミアのスーツ開発者たちが願う人間と自然の調和の証でもあるのだ。そこに必要なのは互いに頼り切ることなく、自分たちが持てる力を最大限に発揮できるための努力なのである。事実敵の奸計にはまり、自堕落となった拓也と大作は、インセクトアーマーを装着する意志を持たないし、なにより戦う意志がない者にインセクトアーマーは力を貸さないのである。1話の段階で、インセクトアーマーは自分たちの装着者を、自ら選んでいる。この事実一つとっても、インセクトアーマーは、これまでのメタルスーツとは一線を画す存在であるといえる。そしてその存在こそが本作のテーマ的な部分に直結しており、そこが本作のわかりやすさに繋がっている。これが子供たちに本作が喝采を持って受け入れられた本当の事情である。ジャマールの連中がビーファイターを「虫けら」と呼称するが、これとて同じ事を示しているのである。

 物語は中盤に差し掛かると負傷した羽山麗役の葉月レイナを降板させ、新戦士鷹取舞(演 巴千草)を登場させる。これにより新たな武器の登場、ビートマシーンのさらなる強化が進行する。また敵であるジャマールの首領ガウォームは3幹部に最終決戦を迫りつつビーファイターの秘密を探り、自らの体と引き替えにその力の源が、昆虫の力だということを突き止める。そして3幹部に加え新たに登場した漆黒の戦士は、物語を意外な方向に進める効果を発揮し出す。ビーファイターとジャマールの熾烈な戦い、そして漆黒の戦士の謎をはらんだ展開については、次回じっくりと語ってみたい。お付き合いいただければ幸いです。
 

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