映画「鴨川ホルモー」~いまこそ5月病対策~

 去年の春に劇場公開していた作品を、いまさらながらやっとDVDで鑑賞できました。小説として面白い素材に、使われているCGは業界トップクラスの「GONZO」が担当している。しかも山田孝之に栗山千明って、十分ビッグネームだし、劇場での特報も楽しかったので、かなり期待して見てましたが、後半は小説とは少しだけ異なる展開に、なるほど映画ならではと思わせる展開をはらんでおり、十分に楽しめる作品になっている。この春、もう一つの京都ファンタジー「四畳半神話体系」がアニメ化されるので、作者は異なるがこちらもご覧になってからアニメを見ると、京都をよくご存じない方には、とてもよいガイドになるかと思われる。ぜひともレンタルで借りるなり、購入するなりしてご覧いただきたい。

 物語は大学に入り、特に何も考えることなくモラトリアムを楽しんでいる主人公たちが、ある日突然サークルに誘われるところから始まる。誘われて出向いたサークルのコンパで、同じ1回生の女性の「鼻」に惚れた主人公が、謎のサークルの正体をいぶかしみながらも、惚れた女に会いたいがために、サークルに参加し続ける主人公たち。そしてそのサークルの目的がある日明かされる。それは「ホルモー」と呼ばれる勝負で京都の4つの大学の勝敗を決する、謎のゲームであった。
 さて「ホルモー」とは古くからさまざまな伝説のある土地柄らしく、「鬼」とよばれ人に使役される式神を用いて、一人100匹、10人で1000匹の鬼の大群同士がぶつかり合う神事とされている。まあいわば京都に住まう神々を楽しませるためのゲームであるのだが、これに京都の東西南北に鎮座する4大学の学生がとりおこなうところに、この「ホルモー」の妙味がある。約束事を列記しておこう。

・一人100匹で10人一チームで争う対抗戦
・引退する3年生が1年生を勧誘し、鬼を次世代に受け渡すことで、完了。
・リーグ戦は2年間行われる。
・戦闘中は敵の人間に接触してはいけない。接触すると負け。
・鬼とは言葉が通じないため、戦闘に関連する「鬼語」を取得する必要がある。
・戦闘の勝敗は、鬼たちが全滅するか、チームの責任者が負けを宣告することで決まる。
・自分の鬼がすべて負けると、「ホルモー」と叫ぶことになる。これによりなにかしらのペナルティが科せられるが、命に別状はない。とはいえ、かなり恥ずかしいことになる。
 
 主人公はそもそもほのかな恋心からスタートしたので、気がつくとチーム内の恋のいざこざから、チームが5人対5人に分裂することになる。このようなことも過去に例があったようであるのだが、このことで京都上空に巨大な鬼の黒い影が現れるようになる。この巨大な鬼がもたらす災いをおそれた主人公たちは、この巨大な鬼を満足させるために、5vs5の紅白戦を実施、恋のいざこざを晴らすかのように、京都の町中を舞台にホルモーを展開することになる。果たして主人公の恋の行方は、そして京都の町はどうなってしまうのか?

 最後の巨大な鬼の展開は小説版と異なるところ。ましてやホルモー自体は鬼が見えない他人に迷惑をかけない趣旨なので、本来夜に行われるし、しかも場所を限定するのであるが、本映画ではそのあたりが取っ払われることにより、京都を舞台にした映画らしく、京都の名所史跡がふんだんに登場する。そうした情緒あふれる京都の街並みが、よくよく見れば碁盤の目状になってっていることは知っていても、その実態として迷路のような入り組んだ道が存在することは、なかなか知ることができない。そんな海外の城塞都市真っ青な迷宮ぶりも、京都という町の見所であることを、本作の後半は教えてくれる。

 とはいえ、本作に映し出される映像の多くは、京都大学とい華のある大学、しかも熾烈な生存競争を勝ち残った人々が集う知の集積場としての大学の、ある意味「実態」ともいえる大学生の醜態が前面に描かれている。こういう映画はここを見て欲しい。初めての一人暮らし、それも古都・京都である。建物の築年数を聞くのもあきれるほどの古い建造物に住む主人公に、それこそ学生の魔窟と化した学生寮。この光景こそ、大学生のあるべき姿だと言うつもりはないが、ああいうものとかけ離れた生活ができぬのもまた、一面の事実である。
 そして飲み会を契機に暴れる学生なんてのも、今では少ない話ではあるが、そこはそれ、大なり小なり逸話はいくらでも残されているものである。映画序盤の飲み会風景なんてのは、まさにそんな情景だ。そして酒に浮かれ狂気に走るのも学生のウチだけだろう。鬼の引き継ぎを行う神事のまあなんともの悲しいことよ。あのシーンを見て笑えて尚かつ涙を流せるのは、学生時代にバカをやった経験のある正しい大学生だけだ。祝詞やなんかとまったくかけはなれた「レナウン娘」を歌い踊り狂う姿は、大学生の時しかできないし、それこそ卒業してやるなら警察にご厄介になるのは間違いない。笑ってすませてもらえるのも学生のウチだけである。

 そうして主人公たちが学ぶ鬼語である。その言葉に独特の振り付けがつくのであるが、この振り付け師が最近おやせになられたパパイヤ鈴木さんである。劇中先輩による模範演技のVTRに登場するが、これがまた異常におかしい。この時点で、笑いどころを指摘されているシーンであり、このあと、呑気に構えているこいつらが、山田や栗山がやりますよと言っている、笑いの前段階なのだが、前振りがパパイヤ氏では全く隙がない。
 またCGで作られた鬼であるが、鬼とは言ってもなんだか小坊主のようでもあり、なんだか憎めないデザインだ。これがう~んと力を込めて武器を取り出したり、力をこめてたたき合ったり、跳んだりはねたりと、画面狭しと縦横無尽に暴れる姿は、爽快ですらある。またやられて顔の中心がきゅ~っとなった鬼が、レーズンでキュッポンと治るかわいらしさもあり、ひょうきんである。撮影は素材であるから、実際に京都の町を鬼立ちがうろついていることなんかないだろうが、もし鬼たちがたむろしていたら、その数に圧倒されそうな雰囲気ではある。目が細くてかわいいんだけどな。

 小説を読んでいたときには、このホルモーの試合自体が面白く描写されており、なにしろ連敗中の京都大学が他の大学に勝つというあたりに視点が絞られている。ところがこの勝敗に色恋が絡んでくることにより、いつのまにか色恋を中心としたラブコメが中心に割り込んでくる。これが不思議だったのだが、その入れ替わりについては映画でも同様に、不思議なほどすっといれかわる。けど映画では巨大な鬼の顛末が加わることで、最終的に色恋さえもかなりどうでも良くなってくるのには、心底おかしかった。さて、この入れ替わりの理由、なぜだろうか?

 誰もが必死になる誰かとの恋。それがはたして他人から見ても熱病でしかない恋が、誰の心にも中心になることはよくあること。でもそれも他に集中し楽しめることができたら、ついぞ冷めてしまうもの、それも恋の一面である。恋もホルモーも同じもの。結局は熱病に浮かされるように、燃えたやつの勝ちである。そんなことなんじゃないのだろうか? 人の生き死にでなし、人生の岐路に立たされているわけでなし。学生が学生らしく学生の時にできることは、実に他愛もないことだけど、そのときにしか出来ないことを、その時にやっておく。たぶん、30歳や40歳までにしておかなきゃならないことなんて実はなくて、その時にある目の前のことを、出来る限り楽しめばいいんだよって、そんな刹那的な快楽を教えてくれる話だったかもなあと、見終わったあとに、ふと懐かしさと一緒に思える映画であった。見せるものが入れ替わっても、見せたいものは同じ。この映画の構成そのものが、「学生時代」の面白さを語ってくれている、そんな気がした。

 さてさて、いまごろから燃え尽き症候群やら5月病になる皆様へ。どうせなら「鴨川ホルモー」でも見て、自分らしい何かを、見つけられたらいいだろうね。

追記
 それにしても、ラストシーンで登場する栗山千明の「凡ちゃん」は、変わりすぎだろう。

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