「銀河旋風ブライガー」~意外なSF考証~

「夜空の星が輝く中で、悪の笑いがこだまする
 星から星に泣く人の、涙背負って宇宙の始末
 銀河旋風ブライガー、お呼びとあらば即、参上!!」(OPナレーションより)

 声優・柴田秀勝氏の名調子で毎回始まるこの作品、「銀河旋風ブライガー」。この作品が近年話題になったのは、NHK-BSにおいて、本作のOP映像が「アニメ夜話」のテキストとして放送されたことである。まさか30歳も半ばを過ぎてから、NHKにてこの作品のOPを見ることになろうとは思いもよらなかった。

 だが扱いはあくまでこのOPの映像が、物故された「金田伊功」氏の手による映像であったことが最大の要因である。エフェクトアニメの神様が、まさかそのまま神様になって天に召されてしまったのか。氏が残した本編映像やOP映像は多い。だがこんな言い方するのは先達に対して失礼ではあるのだが、あまりにも「ブライガー」という作品が、この「金田作画OP」の側面だけで語られすぎている気がするのである。はっきり言えば本編自体を顧みられていない気がしたのである。この作品、放映当時は非常に人気のあった作品で、しかもその人気は女性ファンによるものであったのだ。ならば本作の魅力に迫ってみたいと思うのが、筋ってもんじゃあありませんか。

 本作「銀河旋風ブライガー」が放送されたのは1981年10月から1982年6月。前々回の記事にて、物語の概略を把握していただくこととして、以前の記事で書いたキャラクターの魅力について、補足しておきたい。

 前々回の記事で、J9のメンバー構成が、「ルパン三世」に酷似している指摘をし、こうした黄金配置がキャラクター人気に火を付ける前提条件であったことを述べた。今回は余裕があるのでよくよく比較してみよう。

「ルパン一家」vs「コズモレンジャーJ9」
 ルパン三世  →  ブラスター・キッド
 次元大介   →  飛ばし屋・ボウイ
 峰不二子   →  エンジェル・お町
 石川五右衛門 →  かみそり・アイザック(?)

 ね、なんかおかしいでしょ? アイザックは基本的にJ9の実質的リーダーであり、チーム一の頭脳派なのである。とするとアイザックはルパンか?という疑問もわいてくるのであるが、キッドもルパンも前線で活躍する一番のポイントゲッターである。そのアクティビティや位置から考えれば、やはりルパン=キッドとならざるを得ない。
 ではブライガーが「必殺シリーズ」をモチーフにしていたことは前々回の記事で述べた。同様にもっとも著名なあたりの「仕事人グループ」で考えてみよう。

「仕事人グループ」vs「コズモレンジャーJ9」
 飾り職の秀    → ブラスター・キッド
 三味線屋の勇次  → 飛ばし屋・ボウイ(?)
 なんでも屋の加代 → エンジェル・お町
 中村主水     → かみそり・アイザック

 するとですね、今度はボウイの位置関係が少しあやふやになるのですよ。しかもお町は加代よりよほど役に立つ。まあ細かいことはおいといて、当代きっての人気シリーズに、キャラクター配置が似ているとはいえ、よくよく比較すると、実はいずれのチーム構成にも似ていないことがわかる。ちなみにこの仕事人グループの構成は、ブライガー放送当時にはまだ成立していないことをお断りしておく。
 自分で書いておきながら申し訳ないがこうしたキャラクター配置は、確かに一見しただけではわかりずらく、むしろそれらルパン一家や仕事人グループのようなものが先にあり、それをあくまで導入のガイド役として役立たせているのであり、実態としてのチームの各人のキャラクターは作品オリジナルといってよいのである。

 こうした導入としての先達があったうえで、あらためて本作のキャラクターを見ると、こちらも物故されて久しいキャラクターデザインの「小松原一男」氏のデザインの勝利とも言える。
 悪く言えば軟弱そうであるが、そこか少年っぽいいたずらな瞳を合わせ持つ青年・ブラスター・キッド。その少年っぽい面立ちからはかけ離れた、軍に所属する優秀なスナイパーでありながら、腐敗した軍の構造を嫌い、たった一人で逃げだして追われる身となる。”かみそり”の異名を持つアイザックに見込まれて、新兵器ブライサンダーのパイロットとして雇われた飛ばし屋ボウイは、偶然に人目を避けてブライサンダーに入り込んでいたキッドとも意気投合し、3人で依頼人の元へ移動する。そこでであったエンジェル・お町を仲間に入れて、コズモレンジャーJ9の旗揚げとあいなります。ボウイも走り屋としては十分に有名人。初見のキッドともなれ合う姿は、一流の腕以上に、人の良さがにじみ出る。初回の時がもっともミステリアスだったお町ではあるが、それでもキッドとボウイをからめ手でやりこめたり、したたかさをにじませながら、”ボンバー・ギャル”の異名通りの爆弾を扱う知識と腕、そして探索にもってこいの経歴が買われることになる。これにJ9に仕事を運んでくるパンチョ・ポンチョ、そしてなによりも頭脳明晰にして切れ者のアイザックがかれらをまとめて、仕事に乗り出すのである。

 少年っぽさを残すキッド、顔のそばかすもおちゃめながら、かぶったキャップがプロ意識をにじませるボウイ、単なる色気だけではない、出来る姉御肌のお町、そして誰もが認める切れ者にして、酒が飲めないという反面を持つアイザック。エピソードを重ねることで、一見してわかりやすいメインメンバー4人のキャラクターは一層個性化される。個性派揃いのメンバーに、女性ファンは目をつける。このあたりのシステムは今と何ら変わらないのである。彼らの合い言葉は「イェイ!」。書き文字だと圧倒的に恥ずかしいのであるが、本作のDVDを見続けていると、ふいに口をついて出てくる。40を越えたおっさんにはひたすら恐ろしい言葉である。

 キッド、ボウイ、お町の3人はひたすら軽い。その軽妙洒脱な会話は、なによりこのチームを体現しているし、この会話の妙こそが、本作の華だと言ってもいい。そう「華」なのである。本作の華は主役ロボットブライガーでもなく、ましてやロボットが活躍する戦闘シーンではない。そんなロボット物のセオリーからはことごとくはずれた位置にある、彼ら3人(アイザック含めて4人)の軽い軽い会話なのである。基本的な物語が、依頼を受けてその仕事をまっとうするために、敵地に潜入したり捕まって拷問を受けたりと。危険に身をさらすのであるが、どんな状況でも軽口を忘れないし、だからこそ泣き言も言わない4人なのである。似たものを捜すとすれば、「秘密戦隊ゴレンジャー」の5人に近い気もするのだ。血まみれの宮内洋がふるぼっこにされても、唇青くしてニヤリと笑い、身内には「来るのが遅いぜ」とかいって強がっちゃう。そんな感じは、とてもこの雰囲気によく似ているのである。

 なんて素敵な彼らだろう。こうした古今東西のヒーロー物に共通するキャラクターを持ち、それでいてどれにも属さないキャラクターが、オリジナルとしてそこにいるのである。以降のアニメ界を見れば、「カウボーイビバップ」の4人が、またさらにアレンジの加わったメンバー構成をしており、興味深い。こうして主人公チームは、さまざまな要因を取り込みながら、成長を繰り返し、新しいキャラクターを生み出しているのである。

 J9という始末屋チームは、なにもおとずれた依頼だけを遂行するグループではない。それまではほぼ1話完結となる物語進行であったが、終盤になると連続ストーリーがやがて動き出す。地球を含めた太陽系全域を股にかけるヌビア・コネクションにカーメン・カーメンというカリスマが現れて、主要なコネクションを統合していった。これによりコネクションの影で泣いている人々の仕事から、より直接的にコネクションとの戦いを経験し、やがてカーメンと対決の度合いを深めていくJ9であった。それは木星を大爆発させることで、地球軌道上に地球サイズの惑星を数多く作り、世界を再統合しようとするカーメンの企みがあったからだ。これまではいわゆるヤクザの下部機構と戦っていたJ9だったが、これにより地球政府との連携をしながら、太陽系を守護する目的を持つようになるJ9なのである。

 さて木星を破壊しようとする「大アトゥーム計画」であるが、元ネタ自体はアメリカの物理学者・フリーマン・J・ダイソン博士が1959年に提唱した「ダイソン環天体」が元となっており、本作のシリーズ構成を担当した山本優氏によれば、これをもとにしたSF小説をもちだして説明しているインタビューが残されている。
 作品世界は太陽系の隅々まで惑星間移動がワープなしに可能な状態であり、宇宙船の形もさまざまで、大は宇宙戦艦から小はオートバイレベルの大きさとなっている。そうした意味では結構デタラメなSF考証であるのだが、物語の度々のつまりで、ものすんごいSF設定を持ち出してきたのである。しかもこの計画によれば、木星崩壊によるバランスの変化で太陽から降りそそぐ放射線のレベルが上昇し、地球上の全生物は死滅、カーメンをあがめる一定の連中だけを生き残らせるという選民思想にこりかたまった計画なのである。世界観はSFというよりもスペースオペラに近い。しかも肝心の「ブライシンクロン理論」が大上段に構えた単なるはったりのあるデタラメであるから、この「大アトゥーム計画」の持つ一握りの科学的根拠が、浮いて見えるほど真実みをもってくる。見ているこちらがわとしては、なんだか知らないうちに、大事に巻き込まれたJ9ってな感じがするのである。

 34話で発覚した「大アトゥーム計画」は39話までの残り話数を、これまでにない激しい戦闘に塗り替えていく。J9はなんとしても地球人類の死滅だけは免れたいので、地球軌道にパイプ上のバリヤを張り巡らせ、木星崩壊の余波を最小限に防ごうと、まさに孤軍奮闘するのである。だがすべてを見通していたカーメンの策略からは逃れられず、まんまと木星は大爆発を起こしてしまう。J9の活躍で地球人類への影響は最小限ではあったが、その爪痕は太陽系に大きく残されることになる。結果的に木星崩壊を許したJ9ではあったが、地球を救った英雄としてその名は残っていく。そしてアステロイドからはるか遠くのシリウス星系にむけて、新しい旅路へと旅だって、本作は終了する。名曲「ABAYO FLY BYE」にのせて、カットバックで流れるJ9のメンバーたち。その顔になんのアステロイドでの生活になんの未練もない。

 かなりざっくりとした説明ではあったが、J9シリーズ第1作「ブライガー」39話はこれで幕を閉じる。次回予告ではすでに「バクシンガー」の活躍に、あのJ9と同じようなメンバーの顔が登場する。なにも悲しむことはない、おなじような顔ぶれが、新しい物語を紡いでいくことを期待させて、物語を閉じているのである。
 ここで特筆すべきはこのやたら陽気なキャラクターと、意外にも生真面目な物語を支えた音楽の存在である。タイムボカンシリーズの楽曲でならした山本正之氏の音楽は、時に妖奇に、時に悲しく、かの「必殺シリーズ」の楽曲を彷彿とさせる曲を提供。また歌入りの部門でも、ドラムのビートが効いたブラスロック調の楽曲で構成される。基本J9シリーズはこのロック調の部分が、びっくりするほど泣きの演技にも笑いの演技にも有効であるため、曲の選曲のよさもさることながら、曲自体に力があり、耳になじむのである。

 それにしても最近の1,2クールものばかりの風潮ではなかなかお目にかかれない幕引きである。魅力的なキャラクターに強引なブライガーの巨大化&変形理論、そしてなぜか最後だけやけに大仰な科学考証の「大アトゥーム計画」。なんだかどこまでいっても重なりそうもない不思議な要素が一杯詰まって出来た「ブライガー」という作品は、やっぱりあの時代ならではのごった煮らしく、あの時代ならではの作品かもしれない。作画云々で目くじらを立てる狭量な方々には、このおおらかな作品の楽しみ方は不釣り合いであろう。だが確実にこれがムーブメントを作り、時代を牽引した作品であることだけは間違いはない。OP映像だけと言わず、ぜひ本編も愛してやって欲しい作品である。

<2010.04.29追記>
 よくよく調べてみると、他所の感想サイトなどでも必ず取り上げられている点に、本作は「テレビアニメで史上初、ベッドシーンを描いた作品」というものがある。まったく本編で触れる気がなかったのだが、本作を語る上で、無視できない情報ゆえ、少しだけ触れておく。
 該当するのは27。28話「カルナバルの嵐」(前後編)の後編である。実のところこれがかなりしっとりとした話で、カルナバルの町で音楽プロデューサー連続殺人事件が起こる中、調査に出かけたエンジェル・お町が、事件に関連するコネクションに襲われたところを颯爽と助けに現れた「ロコ」という名の男と行きずりの恋に落ちてしまうのだが、果たして事件の真犯人は・・・・というお話である。
 シーン自体は昨今のエロアニメを見慣れた目では騒ぐほどの物ではないのだが、これがあの夕方の時間に流れたこと自体はやはり瞠目に値する。なにより彼らJ9のメンバーがいくら若くとも、そこはそれ世の中の裏の世界に生きる人々であるから、という作り手の本気がこのシーンを作らせたのは間違いない。ドロンジョのような「お色気担当キャラ、ここに置いときますね」的な意味ではなく、真に視聴者をアダルトな世界のハードな物語であることを印象づけるために、ギリギリの選択をしていたのかもしれない。しかもその選択にも「若さ」や「あやうさ」を感じるのであるから、お町というキャラ自身もスタッフも、テレビという媒体に背伸びしたかったのかも知れない。そう考えると、新しいものを作ることへの挑戦こそが、「ブライガー」という作品の真実なのかもしれない。「大アトウーム計画」や「宇宙の始末屋」、4人1チームの新しい構成なども、そうしたスタッフの挑戦的な意欲と若さ故の背伸びとするならば、納得できる話だと思える。


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