「銀河烈風バクシンガー」~幕末・歴史・日本人~

 現在NHKの大河ドラマで放映されている「龍馬伝」。おかげで日本ではにわかに幕末ブームとなっている。ちゃんちゃらおかしいのは、これにかこつけて自分たちを当時の「勤王の志士」に見立てる政治家のあさはかなことよ。だがそれほどあこがれる気持ちもよくわかる。坂本龍馬をはじめ、明治維新に燃えた多くの有能な若者を輩出し、酸鼻きわまる内乱の果てに手に入れた日本という国。そのために命をかけた多くの人々のロマンが結集している感じがする。そして帝国主義の日本を作り直そうと血気にはやった将校たちの決死の行動も、私が龍馬にあこがれて土佐に渡ったのも、すべてはこの明治維新という時代を駆け抜けた熱の固まりを味わいたいがためである。
 それならいっそ、そんな熱さをもって命を賭けてアステロイドを暴れ回った奴らも、思い出してみてはどうだろう。「銀河烈風隊」、「烈」。彼らが駆け抜けた太陽系の攻防を、あらためて知って欲しい。今回ご紹介する作品は「銀河烈風バクシンガー」である。

「J9って知ってるかい? 昔、太陽系でイキに暴れ回ってたっていうぜ!
 いまも世ン中荒れ放題、ぼやぼやしてると後ろからバッサリだ。
 どっちも、どっちも! どっちも、どっちも!!」(OPナレーションより)

 ビリー・ザ・ショット、ドン・コンドール、諸刃のシュッテンケンの3人が出てきたのはステロイドの片田舎ターマだという。私の住むところは東京都東村山市。まさに多摩地区(北多摩北)。実在の近藤勇、土方歳三、沖田総司が出てきたのも、東京は八王子だという。そう、彼らはここいらへんをうろうろしながら幼少期を過ごしてきたのである。それがやがて青年期を迎えると共に、田舎にくすぶっていないで、世の中に打って出たい。そして傾きかけた幕府に役に立ちたい。そんな一念から行動を開始した3人である。まさしくバクシンガーの連中と同じである。そして輸送船を襲う悪党を退治する3人に加勢したかっ飛びの佐馬と、小間使いの子供たちを助けた不死蝶のライラの2人を迎えて、5人で「銀河烈風隊」を名乗るところから物語はスタートする。

 物語の詳細は、前回同様まとめの回(http://naminomanima2.blog78.fc2.com/blog-entry-228.html)をご参照下さい。まず注目したのはこの世界観である。太陽系は木星がカーメンカーメンの策略により大爆発してすでに無く、地球軌道上には5つの惑星が同一軌道上に等間隔に並び、その惑星を中心にさらに5つの惑星が5つの軌道で回転している。その6つの惑星で構成される宇宙空間を「惑星海(ワクセイカイ)」と呼び、これらすべての惑星および太陽系の諸惑星やアステロイドに住むものを含めて、「ドメスティック・バクーフ」という公共の組織が管理する世界になっているのである。ところがこのバクシンガーの物語世界の人々は、どうやらこの惑星海という世界設定をそのまま受け入れているらしい。そもそも人間が地球を離れて暮らしはじめた背景には、地球上での人口爆発により住む処を追われた人々の受け皿としての宇宙開発であったのだ。カーメン・カーメンがそこまでお見通しであったかどうかは謎であるのだが、後世の人々にとっては、新しい住環境を犯罪が現況とは言え手に入れたのである。したがって、この世界でのカーメン・カーメンの存在はすでに「神」に等しい存在とされ、劇中では「ヌビア教団」などが出来る始末。その一方で、カーメンの手から人るを救おうとしたコズモレンジャーJ9たちも、十分評価に値するとし、この世界では伝説の救世主扱いされているのである。バクシンガーの物語は、木星爆発から600年たった世界において、管理のたがのゆるんだ太陽系の支配を夢見て、バクーフを打倒せんと立ち上がった若者たちと、倒れる大樹バクーフの側について自分たちの義に準じる形で失われていった若き魂たちの戦いの物語なのである。そう、歴史はきちんとカーメンにもJ9にも役割を与え、後日の評価を与えたのである。歴史とは基本的に過去に行われた事象を体系的にまとめることである。その意味において、ブライガーの物語がバクシンガーをへてサスライガーの物語に昇華された中に、彼らの活躍や暗躍が、正邪両面が正しく歴史として残されていること、そしてその評価が善悪に止まらない評価がなされていることが、より重要である。一国のトップの好き放題に歴史を改ざんするようなことはあってはならぬし、評価だってさまざまなものの見方で評価することが重要なのであると、この物語は教えてくれるのである。

 さてこの世界、宇宙空間を行き来するのは特別あつらえのロケットなのではない。なんとバイクなのである。それも搭乗者はヘルメットをかぶり、手袋をしとりあえず気密さえ守られていれば、その状態で宇宙に乗り出してしまえるのである。そしてバクーフのたががはずれた世界であるからして、こういう世界にはアウトローがいる。いやもっと言ってしまえば、いわゆる「不良」のみなさんが、バイクに乗って宇宙を暴れ回っている無法の世界なのである。だから惑星間で「シマ」があるヤクザのような連中がうろうろするし、そうした集団での抗争はすべてバイクでのドツキアイ。さながら暴走族、いやいや珍走団なみなさんのケンカ状態なのである。はために見ているとなんだか情けない限りなのであるが、こういった皆さんがなにやら意味を帯びてくるのが、この物語のキーなのだ。

 惑星海の惑星は、それこそ「土佐」や「長州」、「薩摩」などの維新志士たちの出身地にちなんだ名前が付けられている。志士たちも名前もまた、この物語ではすこしだけ名前を変えて登場するのである。少し紹介してみよう。

・イーゴ・モッコス(ゴワハンド星)→西郷隆盛
・オズマ・ドラーコ(トルサ星)→坂本龍馬
・ケイ・マローン(ロングー星)→桂小五郎
・シンザーク・ハイム(ロングー星)→高杉晋作
その他
・ゴーショシティ
・アエイズ星(会津)
・サクラ・ゲイト(桜田門)
・シェル・ゲイト(京都御所の蛤御門)

 もうさあ、笑えっていってんのか、まじめに受け取ればいいのか、ギリギリなんだよね、このネーミング。でも作り手はちゃあんとわかってもらえるように作ってあるんだよね。「ゴワハンド」なんて反則もいいところだけど、許せちゃう。これが本作の隠れた魅力の一つでもある。幕末のあの頃にいたあの人物が誰かなんて、少しだけ想像しながら見ると面白い。
 そしてこうした人物が中心になってバクーフを倒滅のために動き出す。そのとき、町にあふれて仕事にあぶれていた人や暴走族が、こうした人々を中心に集まりはじめる。同時にバクーフを守護する烈風隊にも人を募るのである。そして世界は一気にバクーフ打倒とそれを守護するアーウイン家(徳川家)と烈風隊との対立となり、戦乱の世界になっていく。このあたりをようく考えてみて欲しい。放映当時でも暴走族や不良による学校の荒廃が進んでいた時期である。バイクにまたがり無法の宇宙を遊び場している彼らは、まさにやつらの写し身だろう。けれどそんな彼らを、世界の変転が取り込んでいく。日常に不満しかない人々でも、その力に一定の方向を定める舵取りがいて、そのはけ口をきちんと与えてやれれば、彼らを導けるのではないか。果たしてスタッフにそんな想いを持っていた人がいたかは謎である。だが明治維新の熱量とは、本当はこうしたものだったという解釈に部分に、少しだけメスを入れる形で現代風刺をしていたのではないか。ささいな部分ではあるが、スタッフにももしかしたらそんな想いが隠されていたのかも知れない。

 そんな戦いの中で剛直なまでに信念としてアーウイン家を守護しながら、徐々に敗戦を受け止めながら敗走していく烈風隊がひたすらあわれで仕方がない。なにせことが「新撰組」を主軸に据えている話なので、局地的に主人公メカ・バクシンガーが活躍しても、体勢を覆すことは出来ない。銀河烈風隊の収益の一つは量産型バクシンガーの売買であったのだが、乗る人間が違うと、こんなにもだらしないものか。敗走していく烈風隊を見ながら、ふと善悪の相対性をみ、そして逆転しているのを見ると、なんともたぬきにでも化かされた気分になるのである。
 それまでの物語が烈風隊が徐々に成長し、時の政府に認められ、自分たちの力を背景に世界でのし上がっていく5人が、一転して敗走していくのである。EDにかかる名曲「アステロイド・ブルース」の出だし「♪ヘイヘイヘイ、誰がなんていったて、すべて上手くゆくさ、明日」という部分が、徐々に「上手くいかなく」なっていくのである。それだけ負けても、EDの歌は「大丈夫」と歌うのに、ちっとも大丈夫なんかじゃないのである。
 そのきっかけはやはりビリーの失明からだろうか。26話「燃えろ剣」にて失明が判明するビリーの身を案じ、それでも戦いの場におもむこうとするビリーの前に、シュッテンケンの剣が振り下ろされる。それを受けきったのも、失明したビリーなのである。そんな寂しさをさそう中、状況は悪化する。オズマが何者かに暗殺されたのである。それを機に緊張感が走り、一触即発の状態になる戦場。そしてオズマの死の報復に、トルサ艦隊が立ち上がる。だが戦場は自分たちが親しんだアステロイドである。ここを戦場にするわけにはいかない。そこでドン・コンドールはたった一人でトルサ艦隊に立ち向かい、激戦を制しながら量産型バクシンガーと一緒に爆死してしまうのである(37話)。そこからはもうなし崩しに近い。最後の砦と構えた戦場のはじで、佐馬は暗殺者ジル・クロードの仲間の手にかかり暗殺され(38話)、五稜郭をかたどったサンダビーダ要塞に立てこもる烈風隊であったが、連合軍の襲撃は思った以上に手強く、残るライラ、シュテッケン、ビリーの3人も、まるで死んでいった仲間たちのもとに駆けつけるかのように戦場に命を散らしていくのである。まさに烈風散華であった(39話)。

 なんかさあ、わかってはいたけど、やっぱり上手くいかなかったのよね。だからこそ「アステロイド・ブルース」は名曲たり得ているのかもしれない。けど、やっぱり寂しい最期ではあったわけだ。日本人が新撰組をつい愛してしまう理由が、モチーフとしたバクシンガーを見ていてかえってわかるような気がする。どうにも身動きが取れない時期って誰にでもあるし、そこから脱したいという想いがあって、どうにかしてもやっぱり上手くいかないって堂々巡り。新撰組の北へ敗走していく過程には、土方歳三の意地があったとも言われるが、もうすでに戦いの中に何も見いだせなくなっていたシュテッケンやライラ、ビリーには、仲間たちの所に行かせるしか、夢はなかったんだろうか?生きて愛しい人々と一緒に暮らす方法は選択できなかったのかと想いながら、散華といって命を散らすその威風堂々たる振る舞いに、散り際の美しさを見て取ってしまうのも、また同時に日本人のメンタリティなのかも知れない。作り手が日本人である以上、モチーフの新撰組に散り際の美しさを見た以上、自分たちの愛したキャラクターも同時に散らせてやりたいという気持ち、わかってあげられるのもまた日本人だけなのかもしれない。

 それにしても、主役ロボはどうにみても不細工だし、作画はぬるい。おまけにバイクに乗ってる新撰組だと。ほんとぶっ殺すぞと言いたくなる気持ちをグッとこらえて、一度見て欲しいというのが、今の私の心境である。だって日本人しかこれを評価できないなら、日本人が見るしかないじゃないの。いや正当な評価なんてどうでもいいや。この散り際に涙してほしいし、彼らが生きたこの熱さを知って欲しいと、心から考えているだけなんだ。欲しいのは評価ではなく、これを見て一緒に泣いてくれる感性だけである。今ひとたび迎えたにわか幕末ブームなら、本作にある負けることで明治維新に協力した側の涙を、共に感じてほしいのだ。

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買いだと思うのよ、奥さん。
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最近の記事はちょっと分からないのが多いので、スーパーロボット大図鑑を引っ張りだしてみました。

この頃のアニメは色々なものがありますね。

しかし本編はどこで見たらよいのでしょうか?

購入するしかないのかな。
どうされていますか?

No title

とぴろさま
 なんと申しましょうか、あまりにも自分の趣味丸出しで、ご迷惑をおかけしております。

 買えないですよねえ・・・(泣笑)。
 レンタルを捜す、もしくはネットで動画を探すというのがまっとうです。
 ただこの時代の作品って、ネットでも探しにくいのが実状です。

 私が本ブログで記事にしている作品は、ほぼレンタルか自宅にあるもの、そしてネットで見られる作品ですが、この「自宅にある物」というのがくせものですね。すいません、ごめんなさい。作品チョイスは慎重に。

No title

とぴろさま
 
 朗報です。動画配信サイト「Gyao!」にて、全話無料配信中です。

 http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/13588.html

 捜すと意外にあるもんなんですね(いやあ、あるとは思わなかった)。

 今後はこういう作品の場合、こうした情報も載せるようにいたします。

 またツタヤオンラインでのDVD宅配レンタルにも、ありましたことを付け加えておきます。

 多少はお金がかかるかと思いますが、見る方法に光明が差してきました。

 日常もお忙しいでしょうから、体に無理のない範囲で視聴いただければ幸いです。

うわぁ、わざわざ探して頂いてありがとうございます(>_<)

自分もっぱら録画かレンタルなのでネット視聴というのは思い付きませんでした。
次からはもう少し自分で探す努力します。

近所のレンタル屋は軽く見たのですが、最近アニメコーナーが少し拡張してきて嬉しいです。

めぞん一刻もそれで増えたので見ているのですが…。
TSUTAYAはあまり行かなかったので行ってみます!
本当にありがとうございます。

No title

ネーミングで腹抱えて笑わせていただきました。
シェル・ゲイトてwwwwww

ストーリーより音楽が印象に残ってます

このシリーズ、正直ストーリーはあんまり覚えていないのですよね。
ブライガーやバクシンガーは見ていたはずなんですけど。
(サスライガーは記憶に無いので見てなかったのかも)
でも山本正之さんの曲はすごい印象に残っています。
特にブライガーのOPとバクシンガーのEDは名曲だと思います
山本正之さんはタイムボカンシリーズのコミカルなイメージが強いですが
こういう格好いい曲も書いてるんですよね。

No title

がたがたさま
 そこかぁ~っ、そこなのかっ! まあ、そんなもんかもねえ(しみじみ)。

mineさま
 でしょうね。でもねサスライガーはだれも見ていないからいう訳じゃないけど、面白いのよ。
どんだけ面白いかは、そのうち書くからね。しばしお待ちを。

神戸中央郵便局

神戸中央郵便局の新撰組や天誅組や坂本龍馬の描く理想の未来とは?

【ameba blog Casshern】
http://my.ameba.jp/menu.do?guid=ON
【Gree RAMBO】
http://m.gree.jp/?mode=home&act=top&from=footer&gree_mobile=f2d6927ff0720dbbd78ac1556a00b302
【mixi RAMBO】
http://m.mixi.jp/home.pl?
【はてなyasuosera119】
http://d.hatena.ne.jp/yasuosera119/archivemobile
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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