機械に心が生まれるとき・特撮編1

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 「自我を持つロボット」というモチーフの物語は、洋の東西を問わず存在する。遡れば「メトロポリス」(1927)なんて映画に出てくるマリアなんかがいい例だろう。日本だとすでに「鉄腕アトム」が、生まれながらにして正義の心を持ったロボットとして登場しているではないか。これってなんか不思議じゃないか? ただの機械、それもいくら性能の良いコンピューターなどが搭載されているからって、正邪の判断を、ロジックで行っているってのは。アニメの世界だと「鉄人28号」を粗とする巨大ロボットアニメだと、ロボットを操縦する人間次第って事に落ち着いてしまうから、こんな悩みが発生しないのだけれど、自立型のロボットの場合だと、どうしても機械の判断を疑ってしまう。手塚治虫氏原作の漫画を大友克洋監督による「メトロポリス」なんかでも、少女型のロボットが何をもって判断し、心が芽生えるのかが、焦点となっている。ではどのような過程でロボットに心が発生するのか、今回は特撮作品の場合を考えてみたい。

 手塚治虫氏原作による作品群は、鉄腕アトムを外しており、そもそもロボットにもアイデンティティが持たされている。特撮作品では「マグマ大使」がそうだ。マグマ大使は、完全正義の心を持っているため、これに該当しない。
 1972年、東映製作の「ジャイアントロボ」におけるジャイアントロボは、地球制服と企むBF団が作った強力なロボットであるが、これに対抗するユニコーンの草間大作少年が、偶然にもこれを強奪し、正義のロボットとするところから話が始まる。そもそもロボは、同じ原作者である横山光輝氏の「鉄人28号」同様に、外部からコントロールされるロボットである。草間大作少年の命令を、電子頭脳である程度解釈をして、行動を起こすように見える。実際「戦え!ロボ」などという、えらく大雑把な命令でも、きちんと敵怪獣と格闘を始めるロボットであるから、その電子頭脳は優秀であることが伺える。
 ところがこのジャイアントロボは、その最終回である26話「ギロチン最後の日」において、大作少年の命令に背くことになる。熾烈をきわめたユニコーンとBF団の戦いは、ユニコーンの勝利を目前としたその時、BF団の首領であるギロチン帝王が突如として巨大化してロボと格闘戦を始めるに至る。すでに度重なる怪獣との戦いでエネルギーの残りも少なくなったロボ。エネルギーの固まりであるギロチン帝王を攻撃すれば、その爆発で地球が吹き飛んでしまうため、容易に攻撃が出来ないロボは、最後の力でギロチン帝王を抱きかかえ、宇宙に飛んでいく。宇宙を流れる隕石に体当たりして、ギロチンと共に自爆するためだ。大作の叫びもむなしく、宇宙に消えていくロボであった。
 ここで重要なのは、ロボの2つの自立行動だ。1つはロボは「やめろ」という命令に対して違反を犯していることだ。もうひとつ1つは、己の自己保存も顧みず、帝王と自爆するという、自らを破壊するような選択を行っていることだ。
 「アシモフ・コード」というのをご存じだろうか? 「ロボット三原則」とも呼ばれ、自立型のロボットの判断基準として、鉄腕アトムなどでも紹介された、SF作家アイザック・アシモフが自著「われはロボット」の中で考案した、ロボットの行動規範だ。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 ジャイアントロボは、上記の二条、三条に反していることになる。大作の命令を斟酌するほどの高性能の電子頭脳を持ちながら、3原則が組み込まれていないというのは、いくら宇宙人が製作したロボットとて、おかしいだろう。自立思考が必要ないなら、こんな優秀な電子頭脳なんかいらないし。だとすればロボの電子頭脳は、自立進化する電子頭脳だったと解釈すれば、大作やユニコーンの仲間達の行動の記録から、自己犠牲の精神をくみ取った可能性がある。そしてロボは、人間の思考でもかなり高いレベルの「自己犠牲」の精神を、人間との生活から、記憶として持ち得たと思われる。無機質なロボットが、「自己犠牲」に目覚め、人間の心を持った瞬間が、自分が破壊される瞬間だったとは、悲しいことこの上ない。故に、ドラマは高いレベルで今も人々の記憶に残ることになる。

 昭和47年には、「人造人間キカイダー」が放送を開始する。個人的なことを言わせて貰えば、本作は私の中での特撮ドラマの最高峰だと思っている。それはこれからご紹介する、本作の魅力故だ。
 キカイダーことジローは、光明寺博士により製作されたロボットだ。博士は悪の科学者プロフェッサー・ギルが主催する悪の組織・ダークの野望をくじくため、ダーク破壊部隊のロボット達と互角以上に戦うことが出来るロボットであるキカイダーを製作した。だがその調整が未完のまま、キカイダーは放り出される。そしてジローは日本中を旅しながら、ダークとの対決を繰り返すことになる、というのが本作の骨子だ。
 ジローには「良心回路」と呼ばれる回路が取り付けられている。これは光明寺博士が、人間と同様の正邪の認識に基づき判断するための回路であるが、良心回路が未調整のままであったため、ギルの吹く笛により、悪い行動を起こしてしまうことがあり、そのためジローは人に嫌われたり、警察に追われることになり、ロボットであるジローは、まるで人間の青年のように悩むのである。
 この良心回路の設定が、なんとも斬新である。未調整故に不安定で、ちょっとしたきっかけで、悪にも善にもなるという事実、それゆえ葛藤するジロー、開発者の娘である光子への淡い恋模様など、なんら人間ドラマと変わらぬシチュエーションが満載されている作品なのだ。特にジローが、愛する光子に、自分がロボットだと思われたくないために、ジローの機械部分を見せたくないと言い張るところや、ギルの笛に操られていたとはいえ、光子に暴力をふるってしまったジローが落ち込んだりするシーンなど、成長過程の青年の姿そのままである。
 最終回ではダークを壊滅させたジローが、光明寺博士やその娘達とスイスで暮らすことを辞して旅に出るところで終わる。光明寺が「君の良心回路を完成できなかったのが悔やまれる」とジローに言うと、「僕はこのままでいい、不完全な心のままで、旅をして心を鍛える」と言って、握手して博士と別れるという、なんともすがすがしいラストである。まさに青年はあらたな成長のために旅立っていくわけだ。それまでのジローの葛藤の日々を思い起こせば、このシーン涙しないはずがない。

 さてキカイダーにおける「良心回路」とは、ロボット自身の行動の正邪を決める自立回路だ。これが不完全故にジローは悩むわけだけど、それを乗り越え、最終回に「このままでいい」とまで言わしめた理由は、ジローは「人間になりたいという願い」があったからだ。それはジローの光子への恋心が悠然と物語る。しかしそれが無理であること、自分の使命を考えると、自分がロボットであるからこそ、使命が果たせることも理解している。それでもせめて人間と同じ心を持ちたいと願うジローのジレンマこそ、この「人造人間キカイダー」という特撮ドラマの白眉である。だがこのようなジレンマは、人間誰しもが持っているのではないだろうか? まさに「青春期の悩み」ともとれる、モラトリアムな時代における自己の確立は、他者との関わり合いの中でこそ育まれる。たとえば11話「ゴールドウルフが地獄に吠える」では、ゴールドウルフというロボットが登場する。ゴールドウルフはキカイダー同様、光明寺博士により製作されたロボットである。しかし良心回路はキカイダー以上に未完成であり、それ故にギルによりいとも簡単に操られてしまい、悪事に荷担する。それを人間体のゴールドウルフは恥じていたが、結局ギルの命令に逆らえず、キカイダーと戦い散っていったのである。この戦闘は、まさに良心回路の表裏での戦いであるとも言える。こうした経験が、ジローを強くしていったからこそ、ジローは最終回で、日本中を旅して心を鍛えるといったのだろう。やはり記憶が機械に心を発生させるキーになっている。

 例によってまた長すぎるようだ。次回も引き続き、東映特撮作品を例にして、機械に心が生まれる瞬間を追っていきたいと思う。まだまだあるでよ。
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