漫画「R-中学生」~ヒトのリビドーをバカにするな!~

 今回ご紹介するマンガは月刊ヤングマガジン掲載の漫画である。漫画誌に関するイメージっていうのは、人それぞれに固定されていると感じているがどうだろう? 私にとっての漫画誌のイメージは、読み続けているマンガによって固定されている。だが「ヤングマガジン」などのマガジン系は、おおむね「ビーバップハイスクール」のような不良漫画に固定される。特にヤンマガ系の単行本の背表紙のパターンが固定されているので、アフタヌーンやモーニングのような自由度もなく、未だに息苦しいと感じている。と、まあそれはあくまで私の主観であるし、現状のマンガとはまったく縁もゆかりもない。

 とはいえ、本日ご紹介するこの漫画。その内容の鮮烈さは群を抜いている。主人公となる中学生の煩悩とは、かくも計り知れないものであったかと、自分を振り返り再認識することになるとは。痛々しいまでの中学生のリビドーが、今炸裂する。

R-中学生(1) (ヤングマガジンコミックス)R-中学生(1) (ヤングマガジンコミックス)
(2010/04/06)
ゴトウ ユキコ

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 今回ご紹介するゴトウユキコ著「R-中学生」は週刊および別冊ヤングマガジンでの掲載を経て、現在月刊ヤンマガで掲載されている漫画である。私はどういうわけか週刊での第1回をたまたま読んでいたが、そのあまりにもあまりな内容ゆえに、講談社の汚い商売に載せられた若い漫画家が、また吊るし上げられたのかぐらいに思っていた。事実、この漫画に表現されている中学生の煩悩だらけの日常という主観にもとづく漫画が、読者に受けるとも思えなかったし、お世辞にもこの絵柄がありだとも思えなかった。
 ところが蓋をあけてみると、第60回のちばてつや賞の大賞を受賞することになる。その結果を知って、私は我が目を疑ったし、この漫画の豊かな才能を見出すことができない我が節穴の目を、どれだけ呪ったものか。あいかわらず漫画を見抜くことが出来ないのである、私は。

 先ほども書いたが、この「R-中学生」という漫画には、非常に際立ったキャラクターが多数登場する。そのどれもが中学生なのであるが、そのキャラクターのほとんどが「性癖」という、本当に個人ではどうしようもできない自分に左右されて成立している。
 たとえば大賞となった第1回の主役は、汚物フェチの伊地知くん(中学2年生)である。この「汚物」とは、たんなる汚れ物ではない。この場に書くのもはばかられるので、各自で確認していただきたい。しかもそのにおいをかぐのが好きというのが、彼の性癖なのである。それをひた隠しにしながら、ごみ処理当番を続けていた彼の性癖は、ある日一年生の女子に見られることで、展開しはじめる。その子・小林ゆかりは、伊地知が好きだったので、その秘密を共有しながら付き合い始めることとなる。しかもゆかりの生理用品込みで。ところが伊地知があまりに自分の性癖に集中し始めることで、伊地知に「彼女」として扱ってもらえないことに苛立ったゆかりは・・・・という物語である。
 また他には、伊地知の同級でエロの探求者である堀田、常に黒いブラジャーを身につける副級長の稲沢さん、自分の幼児体型を気にしすぎる千賀さんなどが登場し、自分の煩悩と悩みをあらん限り紙面にぶつけてくるのである。

 この漫画のわかりやすいのは、その性癖のどれもが、自分や過去に自分の身の回りにいた友人たちの写し身であるかのような錯覚すら覚えることだ。伊地知の友人・堀田などは、どのクラスにも一人はいたような男子生徒である。男子の仲間内では「エロ」いことで有名で、女子には嫌われようとも男子には絶対の信頼を得ており、だいたいのエロ本の貸し出し主であったような男子生徒である。これに「雑木林の中に捨てられているエロ本」やら「母親に見つかって泣く泣く捨てた」やらいうわかりやすいエピソードが加われば、完璧である。「アナフィラキシーショック」を聞き間違えるのもむべなるかな。 また女生徒の黒い下着に反応したり、大人びようとしたりする女子生徒のエピソード、自分の性器の形状に驚く女生徒などの話は、すでに古典ですらある。この単行本に納められているエピソードの本質は、どれも一見古典的な話なのである。

 それを「オチ」をつけて、コメディたらしめる部分は、この漫画の白眉である。自分の母親が生活のために謝る姿を見て、エロDVDをすべて中古屋に売り払い、その金を差し出したり、大人に見られようと背伸びする妹に、「子供でいられるときを大事にしろと」のたまうお姉さん(←こいつもバカ)の一言が、性癖をもてあました中学生に、するどく突き刺さるのである。野球部で期待され、勉強も出来、彼女もいる完璧な中学男子が、その重圧に耐えかねて普通の男子中学生の生活を手に入れようとする話の、なんとバカばかしく感動的なことか。古典になるような中学生の悩みの一端が、結末で解きほぐされていくさまは、なぜか自分の心をほっとさせてくれるのである。

 人間誰しも・・・・だの、私もあのころ・・・だの言い出す気はさらさらない。けれど自分の中に隠されている感情を、もてあましたことがあるのは、事実である。さすがに自分が月経血の匂いに反応する性癖があるとは思わないけど、夏場でも小奇麗にコロンをふっている体育あとの教室のあまったるい匂いにやられていたことを、かすかに思い出すのである。どうにかして女子のスカートの中身を見ようと、エチケットブラシの鏡の角度をどうやって固定するかに、2時間も悩んだことを思い出すのである。そうしたリビドーをだれしも抱えたまま、気が付けばその性癖を隠して生きなければいけない社会に放り出されるのである。

 だから、こうした彼らが持っているリビドーを、どうやって解決したのだろうかと、ふと考えてみる。自分の中の自分にも気が付かない性衝動。いやまて、それって解決してるのか? ただ自分の中に押しとどめているだけではないのか? まあ、いいや。押しとどめるのも、何がしかの方法で発散するのも、大人になったいまだからできることである。ただそのバランスが崩れて、犯罪に手を染める前に思いとどまるのを望むだけかもしれない。

 さてこの漫画、実に絵が荒い。表紙などを拝見するに、森山塔などの絵を思い出すのだが、本編を読む限りではそんな感じでもない。しかもPNが「ゴトウユキコ」という女性名である。部分的には本当に落書きのようなコマも散見される。絵としてはまだまだこれからの漫画家さんである。だが物語に関しては申し分ない。そもよくぞこれほどまでに中学生のリビドーを赤裸々に語るものだと、その1点だけでも驚愕に値する。しかもこれが女性だという点がすばらしい。まあ女性にはバカ男子はバカにしか見えなかったろうし、まじめにしている男子はさぞミステリアスに写ったろう。われわれ男子にしたところで、やはり女子の会話はわけがわからない。そもそも話題の中心がまったく異なるのだから、わかるわけがないのだ。それを協力者がいるにしても、ここまで漫画で表現できるのだるから、絵に難があるにしても漫画家としてのよき資質を感じる。

 それにしてもこの漫画、どこにいくのだろう? とりあえず一クラス8名ほどのキャラクターが登場しているのであるが、永遠と他のクラスメイトを掘り下げていくのであろうか。あるいはこの物語をベースに、中学生のコイバナが花開くのであるのかもしれない。そんな展開もありだろうけど、中学生のリビドーを舐めてはいけない。他にもまだ「あるある」的な話があるだろうから、広げようはいくらでも。とりあえず、この漫画を読むたびに、自分の中の押しとどめたリビドーに、さいなまれるのを楽しみにしている。
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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

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No title

残念ながらこのマンガを見ていないのですが、
(人間誰しも・・・・のくだり)そんなことを考えていたのですね
ダンナ、ヘッヘッヘお人が悪い。
私なんざ忘れるほど昔から世間に対して、隠れキリシタンか邪神崇拝者のような心持で生きてきましたから今さらです。

しかしこういったリビドーが人間にあることを理解しない役人やら
自○党の議員なんかは頭がおかしいですね。

No title

うめさん
 コメントありがとう。
 まあ、多かれ少なかれ、誰にでもあるんでないの? 私もヒトの子ですから。でもヒトの縦笛くわえたことだけは断じてないけど。

 まあ国会議員の方々なんぞは、みなさん高潔にできてるんでないの? っつかそういうの、自己矛盾に埋没させて、忘れてるんだって。本音と建前はだれにでもあるからねえ。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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