「少女コマンドーIZUMI」~その1・22年目の一目惚れ~

 1980年代のテレビ界において、アイドルを主役に据えた番組は2種類あった。一つはアイドルをバラエティの中に落とし込み、アイドルのパーソナリティを引き出す方向性の番組、もう一つはアイドルをドラマの中に落としこんで、パーソナリティを一から作り上げる番組である。前者の例で言えば柏原芳恵と松本伊予が出演した「ピンキーパンチ大作戦」や「たのきん全力投球」などの公開番組、現在でいえば「SMAP×SMAP」や「鉄腕DASH」などだろう。後者の代表例はたのきんトリオの出演した「ただいま放課後」や山口百恵が主演した「赤いシリーズ」、堀ちえみが主演した「スチュワーデス物語」などの大映作品だろうか。以前本ブログでもとりあげた「スケバン刑事」シリーズもこれに類する

 今回ご紹介する作品は「少女コマンドーIZUMI」という番組。この作品、「スケバン刑事III」の後を受けて「スケバン刑事IV」として企画されたのであるが、企画内容が変化した結果、放送作品のようになった経緯がある。その内容は日本にある特殊機関により訓練と生体改造をうけた少女が、自分に不幸な運命を強いた機関に復讐する物語である。
 物語自体の魅力については次回に持ち越す。今回はあくまで主人公・五条いずみというキャラクターの魅力について書いてみたい。本作は最初の放送以降、東京地区での再放送もないまま、長いこと埋もれていた作品である。今回DVDで見直した結果、その魅力ある主役の少女の設定に、22年ぶりの再会でありながら、私はいまさら一目惚れしてしまったのである。

 先に基本情報から。「少女コマンドーIZUMI」は1987年秋に終了した「スケバン刑事III少女忍法帖伝奇」の後を受けて放送された作品である。先述のように当初は「スケバン刑事IV」として企画されたらしいが、DVDに封入されている脚本家のインタビューに寄れば、そもそもは第二次大戦を逃れたナチスが日本に逃れて日本を占領しようとするのを、四代目スケバン刑事が阻止するという話だったようである。これが映像化困難と判断したスタッフが、再度企画を練り直した結果が、本作の骨子となっているようだ。

 さて当時のフジテレビでは「ロボット8ちゃん」や「有限実行三姉妹シュシュトリアン」などを擁する「不思議コメディシリーズ」と、本作のような「アイドルアクションドラマ」路線の2本立てで東映制作の作品が制作されていた。不思議コメディシリーズは1981年にスタートする「ロボット8ちゃん」から連綿と続けられているシリーズであり、1993年の秋にアニメ枠にその座を明け渡すまでの間に、実に14作もの作品を世に送り出してきたのである。
 その一方で、当初は「おばけテレビてれもんじゃ」でスタートした枠とはいえ、1985年からスタートした「スケバン刑事」で方向性を決定付け、シリーズを3作続けるほどのヒット作となる。この間、「スケバン刑事」と冠せられた作品はテレビシリーズ3本、テレビスペシャル3本、劇場用映画2本にもなる。そのあとが本作「少女コマンドーIZUMI」の登場となるが、視聴率不全によりわずか15本で打ち切り。次の作品への穴埋めとして「藤子不二雄の夢カメラ」が放送されたのが1988年である。この路線の継承作としては時間枠を木曜日から月曜日に変更して1988年に「花のあすか組」が放送される。このときは同時に同じタイトルの劇場用作品がつみきみほ主演で公開されており、角川映画に関連するメディアミックスとして展開していた。
 その後1989年に不思議コメディシリーズ第9作として「魔法少女ちゅうかなぱいぱい」が放送される。この作品は「スケバン刑事」を制作していたスタッフが不思議コメディシリーズのスタッフと合流して作られた作品である。いうなればアイドルアクションドラマ路線の継承作として、その舞台を不思議コメディシリーズに移して展開されたと考えられる。それ以降、1991年の「美少女仮面ポワトリン」や「うたう!大竜宮城」などのヒット作を生み出していく。これが1980年代から90年代におけるフジテレビ系列の東映特撮作品の流れである。

 さて話が歴史的背景におよび、怒涛のようにズレたところで話を本筋に戻そう。問題は「少女コマンドーIZUMI」である。物語はさておき、まずはこのビジュアルをみていただきたい。

            DSTD7069_l[1]
            izumi2

 画像検索でも少ないのであるが、この少女の瞳、流れるような髪、小さくとがったあご、横に引き締められた唇、整った顔立ちを見て欲しい。こんな美少女がコマンドーって、何? って思うのがあたりまえである。22年前に1話から続けて視聴していたが、なぜか手元のビデオに残っているのは1話と最終話だけであり、どうにかして全話視聴したいと常々願っていた。私はこの少女に22年ぶりに再会し、あらためて一目惚れしたのである。

 第1話の冒頭から主人公いずみは脱出を決行する。そして次々と警備の兵士たちをなぎ倒しつつ、その脱出は静かに進んでいく。黒のセーラー服に長い髪をなびかせて、人一倍力みなぎるその瞳には、今は脱出することしか頭にないほどの集中力を見せる。背後に背負ったサバイバルパックからさまざまな機器を取り出して巧みに扱い、徐々に出口に近づいていく。そしてバズーカを足がかりに鉄条網を乗り越え、施設を振り返って始めて言葉を口にする。

いずみ「いつか必ずここへ戻ってくる。正面から戦いを挑むために!」

公道を走り去ろうとするいずみの前に、特殊装甲車がライトをつけて立ちはだかる。装甲車に搭載されているマシンガンを前に、いずみはひるむことなく手に持ったバズーカを準備し始める。そして装弾したバズーカを右肩にかまえ、装甲車に照準をしぼる。おもむろに発射したバズーカの弾は装甲車に命中し、爆発炎上する。その赤々とした炎をバックにバズーカを置いて走り去るいずみ。その炎は彼女の逃亡の成功を示していた。
 このバズーカ発射のシーンは、毎回のアバンタイトルとして放送されているから、これだけを見た人もいるのではなかろうか。この逃亡劇が「少女コマンドーIZUMI」という作品のキービジュアルのすべてともいえる。

 第1話「最終兵器、脱出」では、このあとでいずみ自身が生まれ育った町である横浜に戻ってくるところから始まる。あやしい車に命をねらわれ、食事に入った喫茶店でも彼女は受け入れてもらえない。そして闇の学生中央委員会会長・湯浅恵子と名乗る少女と出会う。後半に入っても謎のトレンチコートの男たちに襲われているいずみ。恵子と先ほどの喫茶店のマスターである健は、3年前におこった横浜埠頭での伝説を思い起こしていた。それも一人の少女を殺害した容疑で警察に追われながら、海に身を投げて死んだ「五条いずみ」という少女の伝説だ。二人は先ほど喫茶店で出会った同じ名前の少女から、埠頭の伝説を思い出していた。そしてこの事件は、いずみが少女戦士と変わり果てる序章に過ぎなかったのである。
 そして埠頭の先でいずみはさらなる戦いを強いられている。組織への回帰を指示する追跡者たちに、逃亡と復讐の思いを強く口にする中で、いずみはここで始めて己の真の力を解放する。

「バイオフィードバック 戦う意思がお前の肉体を最終兵器に変える!」

 おそいかかる追跡者。だが手にしたチェーンの付いた銀のリングを使い、見事に追跡者をあしらういずみ。その身体能力は追跡者や視聴者の想像をはるかに超える動きを見せる。無駄な動きは最小限であり、攻撃後の動きが次の攻撃の準備になっている。しかもブラフと見せかける攻撃までしてみせるいずみ。なすすべもなく沈んでいく追跡者たち。謎の組織の人間は、この状況をヘリの上から覗きながらつぶやく、「この美しい町は、今日から戦場になる」と。

 アバンタイトルのいずみの脱走劇。エレベーターの内部を自分の腕だけで施設の屋上に登りきるシーンや、外に出てから準備するのに、ためらいもなくスカートめくりあらわになった太ももにサバイバルナイフをセットしたりするあたり、前作「スケバン刑事」シリーズでは見られなかった戦闘描写がきちんとなされている。また冒頭から登場する逆回転する時計という謎の設定がここですでに登場している。サーチライトをよけながら、ロープを向こう側に渡し、ロープをわたるタイミングを見計らう動きなど、ミリタリー的な見せ方にぞくっとする。もちろんこの「ぞくっと」の中には、それを演じているのが年端もいかない少女である部分が大きい。そこから前述の逃走につながるのであるが、この一連のいずみの動作やしぐさに、彼女がどれほどの訓練を受けて脱出したのかがわかる。さまざまなオプションを使用して脱出をしながら、何よりも強いのは彼女自身であり、そして「サバイバル、それは生き残る意志のこと」と言い切るメンタルの強さである。その力強い意志の力を支えているのは、まさに「五条いずみ」というキャラクターを演じている女優自信なのである。

 本編に入るとすぐにケミカルウオッシュのスリムタイプのジーパンに、白のTシャツ、こげ茶の皮ジャンパーのいでたちとなる。別に高校にいるわけではないので、セーラー服である必然がない。こういうあたりもスタッフが気を使っている証拠だろう。だがその中身である細身で長髪の少女の基本的なビジュアルがなければ、まったく成立しない。もう一度先画像を見て欲しい。過去の「スケバン刑事」シリーズでも「目力」には十分に気を使ったスタッフが、本作品の質にあわせて選んだのが彼女「五十嵐いずみ」である。80年代末期から90年代初頭にかけて活躍した女優さんであるが、本作の挿入歌で歌手デビューも果たしている。残念ながら2001年に結婚を機に引退しているらしい。
 彼女の表情がよりクローズアップされるのは1話後半。謎のトレンチコートの追跡者との戦闘シーンである。怒りに燃える彼女の表情は険しい。だがそこに逃亡者としての悲哀がある。そして同時に歴然とした力の差による相手への憐憫かもしれない。いずみの表情には謎が秘められており、憂いがある。そして「バイオフィードバック」による尋常ではない強さが、これらすべてのキャラクターを支えているのである。

 彼女の表情は1話の間はずっと硬い。笑わないのである。それは物語や彼女の過去が、彼女の表情すら固定してしまっているからだ。事実この笑顔が本編中で見られるタイミングが、彼女が本来の少女に戻るタイミングだから、本編中でも気の使いどころだ。
 ところがEDを終えて次回予告がちゃらちゃらと流れ終わったとき、事態は一変する。

「あなたがターゲット、バーンっ!」

 とにこやかに振り返るいずみが画面の中にいるのである。この笑顔に私の心臓は完璧に打ち抜かれたのである。いやもう「惚れた」といっていいだろう。おじさん、陥落。
 次回は本作の物語について語り、「スケバン刑事」シリーズとは異なる魅力に迫ってみたい。


少女コマンドー IZUMI [DVD]少女コマンドー IZUMI [DVD]
(2007/03/21)
五十嵐いづみ土田由美

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テーマ : 特撮
ジャンル : サブカル

コメント

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No title

「不思議コメディシリーズ」が無くなった理由としては、
アニメ部の「セーラームーン」とかぶってしまい、商業上難しくなったため。

No title

はいあきさま

 情報をお寄せいただき、ありがとうございます。
 「不思議コメディシリーズ」が1993年に終了、「セーラームーン」のスタートが1992年ですので、おっしゃる通りなのでしょう。最終作「有言実行シュシュトリアン」の放送中にスタートした「セーラームーン」によって、玩具の売り上げ不振を理由に打ち切ったという話のようですね。wikiにもそのように書かれておりました。

 ともに東映製作の作品で、スポンサーは「バンダイ」なわけですが、結局はおもちゃの売り上げ不振が理由で「不思議コメディシリーズ」は失われたわけですね。「スケバン刑事」のような少女アクションドラマは、その後に完全に失われたわけではなく、「ドクちゃん」やら「キュ-ティーハニーTHE LIVE」などに継承されたのかなあと。こうした少女アクションドラマっておもちゃ関連がないだけに、こういったスポンサー関連に対する耐性があるコンテンツなのかもしれませんね。

 

お久しぶりです

以前、プレセペでお世話になった者です。お元気そうでなによりです。

さて、いきなりツッコミいれちゃいますけど…
>いずみ自身が生まれ育った町である横浜に戻ってくるところから始まる。

ストーリー内で横浜と明言してたかは不明ですけど、実際の撮影の場所は「東京の芝浦」です。
あの当時、ウォーターフロントとか言って、あの辺りが結構盛り上がっていたので、横浜よりも時代の最先端だったりします。

ちなみに、エンディングの「Just for love」に映る橋ですが、その昔アニメ「黒神」で出てきたこともありますよ。


No title

涼宮ヤルカスキーさま

 情報、およびツッコミありがとうございます。

 「横浜」に関しては、第1話における湯江健一の役の台詞にあった「ハマの伝説」に由来していますが、確かに「横浜」を指定する言葉ではなかったかもしれません。

 「黒神」って、一応最後まで見たはずなんですけどねえ。おぼえてないですねえwww 情報ありがとうございました!
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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