「少女コマンドーIZUMI」~その2・アイドルの虚構と現実~

 前回主役「五条いずみ」のことを書きすぎて、他の登場人物にまったく触れないままであったので、ここで紹介しておこう。
 1話で登場するのは「闇の学生中央委員会」の現役委員長である湯浅恵子(演 土田由美)。彼女はいずみと対等な立場に立とうとすることで、いずみを深く知ろうとする。その興味がいずみの核心に触れていく役どころである。当時らしい言葉で言えば、いずみのマブダチになるのである。
 また2話で初登場し、唯一いずみの無実を知っている少女・三枝佐織(演 桂川昌美)。彼女は2話で真実を吐露し、同時にいずみに助けられたことで、恵子やいずみの通う高校に編入し、いずみたちを追い掛け回す。お嬢様キャラでありいずみ・恵子とトライアングルでありながら、3人の中ではマスコット的な位置にいる。
 1話で登場した喫茶店の若きマスター・桑原健(演 湯江健幸)は恵子の彼氏。同時に横浜の事情通であり情報源なのだが、次第にただのお荷物になっていく。
 3年前にいずみを逮捕しようとした刑事・藤原(演 地井武男)は、再会したいずみの逮捕に執念を燃やすが、いずみの背後にある謎の組織の存在に気付き、やがていずみに協力することになる。
 そしていずみの最大の敵である石津麟一郎(演 渡辺裕之)はいずみにバイオフィードバック実験を施した人物。いずみの能力を知るためにさまざまなミッションを遂行させ、いずみを窮地に陥れる。そしていずみの日常を観察するために、ビリヤード勝負にかまけている客を装って、時折健の喫茶に出入りしている。以上が本作の中心人物である。
 
 さて1~5話の初期篇の物語では石津率いる機関が送り出す兵士たちといずみが戦うことで、石津はいずみの能力をチェックする。その過程で自分でも未知なる能力を開花させ始めるいずみは、石津たち機関にとって次第に恐怖の存在になっていく。続く6~10話の中期ででは機関の直接的な攻撃はやや緩み、かわっていずみの能力を生活のためのアルバイトに転用しようとする恵子と佐織のドタバタに関わっていくうちに、次第に人間らしい感情を戻していくいずみの物語である。そして11話以降では物語のすべての秘密が明かされていき、一度は仲間の協力で壊滅させた石津の機関が、再び復活していずみたちを巻き込んでいく物語となっている。

 初期篇ではまずいずみの秘められた能力が開花していく過程が描かれる。1話の追跡者への反撃といい、2話でのスナイパーとの一撃必殺の瞬発力、3話では11分09秒で男性兵士3人でも困難なミッションをやってのけたエピソードなどが披露される。4,5話の連続篇では脱走したはずの施設に、いずみは舞い戻るものの、そこにはいずみを迎撃するための様々な罠が仕掛けられており、恵子を連れながらの状況ではあっても、いずみはそれらの罠をことごとく突破して生還するのである。その様子をみて石津は、いずみの限界能力を測定不能と判断、しばらくはいずみに関して静観することになる。

 そして6~10話の中期篇では恵子や佐織の勧めで、いずみは事件解決業を営むことになる。それは彼女たちが斡旋したアパートなどの家賃を稼ぐためである。その中で藤原刑事との仲も緩み、次第に仲間のなかになじんでいくいずみの姿が見られ、徐々に笑顔を見せる瞬間も多くなってくる。そう、彼女の笑顔を見るために雌伏の時を耐えた結果、意外にも早くその笑顔を見ることが出来たのである。
 ここでのエピソードとしては藤原刑事を仇とねらうサソリという名のやくざ者を倒す手伝いをしたり(6話)、やくざの資金源としてねらわれているロックバンドの警護をしたり(9話)、いずみのように無理やり戦士にされそうになっている少年を助けたり(7話)といった展開が待っている。いずれの事件にも石津のいる機関が少しずつ絡んでいるため、彼女たちのこの行動が、徐々に機関の行動を制限していくことになる。
 とはいえいずみ自身の物語はまったく手付かずのままである。1話から登場した逆回しの時計も、いずみとレイコとのタイマンのなぞも。唯一わかっているのは2話で登場したレイコを殺した謎の男が、佐織に嘘の証言を強いたために、いずみが無実の罪を着せられたことと。それに4話で登場した、かつて陸上選手として期待されていた学生が行方不明になっており、その男子学生はいずみの隣の監房に入れられた。いずみ同様の厳しい軍事訓練を受けながら、バイオフィードバック実験の被検体にされて、死んでしまったこと。そしていずみだけがその実験に生き残ったことである。

 そうした謎がラストの5話で一気に解明する。全15話という中途半端な話数を見れば、あきらかに視聴率低迷を思わせるのだが、それとは裏腹に物語のボルテージは加速度的に上昇するのである。
11話開巻すぐに、いずみの過去が明かされる。いずみが天涯孤独になった理由である。両親の形見の指輪をきっかけに、語り始めるいずみの過去は、事故で母を亡くし、母が亡くなったその病院で父も死んだらしい。父がいずみに残した最後の手紙には、「友達をつくれ」と書かれていた。そしてその過去は、いずみが得た初めての友である恵子と佐織に明かされたのである。
 11話では石津は荷物の運搬を頼むフリをしていずみをおびき出し、その能力を石津自信の目で確かめる。そして自身の正体をいずみに明かすのである。12話では一見するとかわいらしく年相応の少女としてパーティに参加するいずみの話のようでいて、パーティに仕掛けられた罠にはまり、佐織は怪我をして病院に、恵子は機関にさらわれてしまう。やっとできた友達を救うため、反撃に出るいずみ。13話では機関の本部に突入し、次々と兵士たちをなぎ倒した先に立ちはだかるのは、短期間でバイオフィードバックを施され、洗脳された恵子の姿であった。激しいぶつかり合いの中で、恵子の記憶を取り戻したいずみは、ついに石津と対決する。そこで明かされたのは石津の過去である。彼こそはバイオフィードバックの被検者第1号であり、その力で強力な兵団をつくり、憂える日本国家を裏から牛耳ろうとする遠大な計画があったのだ。だがそれをたったひとりの少女に壊滅させられた男の怒りは、バイオフィードバックを発動させたいずみすら跳ね除ける。だがいずみは立ち上がり石津に真のバイオフィードバックの力を見せ付ける。最後のいずみの蹴りは石津を炎の中に叩き落す。いずみは一度は日常に戻っていくのであるが・・・。
 一度は死んだかに見えた石津であったが、機関の上層部が彼を救助していた。死んだと思っていた石津が生きている。そして石津率いるバイオフィードバック戦士たちが、国の重職にある人間たちを暗殺していく。事の次第を藤原刑事たちから知らされたいずみは、一人戦う決意をする。

 「R機関」。つまり石津が所属していた機関の名前である。その全貌を知るものは日本国内のごく限られた人間のみ。そしてその目的は日本を裏から支配することとし、そのために石津のバイオフィードバック兵士や強化された兵器類の開発実験などを行っていたという。石津は研究者としての能力を買われたが、同時にそのカリスマ性や日本を変えるための熱意を認められ、再度R機関に助けられたのだという。そのトップは竜崎という名の国防省のトップである。
 R機関に危険分子をみなされたいずみは、藤原とともに機関のあるビルに向かう。そこで3人のバイオフィードバック戦士と戦闘になる中で、石津と再会するいずみは、最後まで戦うことを自分に誓う。そして迎える最終話において、R機関のアジトを探しだし石津と最後の対決をする。だがすでにアジトはすでに爆破が始まっており、火花舞い散る中でいずみは石津と対峙する。そこでイデオロギーを対立させる二人。だがそこで石津は語る。金と権力を欲しての竜崎とは相容れないことを。石津が夢想した強い人間たちによる強い国づくりは、小さな世界で愛するものを愛しながら生きていく幸せの欲し方にいずみとも相容れない。だが二人の思うところの矛先は、欲得で若い命をもてあそんだ竜崎に向けられる。機関のアジトは大爆発する。トカゲの尻尾を切ったつもりでいる竜崎の車の前に、生きているはずがないいずみが現れる。そしてバズーカの咆哮一発、炎上する車ごと竜崎の野望は潰えたのである。そしていずみは幸せな日常へと戻り、平凡な女子高生へと戻っていくのであった。

 この物語の構成は、まるっきり「スケバン刑事II」と同様であり、その縮小版だともいえる。最初に少しだけ謎の秘密を明かしておいて、その真実は別の側面を持っており、中間のわりとどうでもいい話を挟んだ後で、怒涛のような謎解きがなされるという展開である。また最後の敵だと思っていた男はあの背後に組織を抱えており、その組織の壊滅こそが物語の結論となるすり替えがおこなわれているのである。

 少し面白かったのは序盤で登場したアイテムである逆回転する時計が、13話で早々に捨てられるのである。一見するとそれはいずみ自身がたとえ宿敵である石津を倒しても、取り戻せない過去は残るという比喩とも取れるのであるが、画面上はどうみても回収できない伏線を放り投げてしまったようにも見えることだ。この辺は11話冒頭でいずみが過去の事故で両親をなくしてしまった話を、あいまいなままでも出してしまったことで、いずみの過去を語る時間的余裕がなくなったことを示す端的な証拠であり、打ち切りが早々と決まっていたことを証明する事実でもある。
 したがって前述のすり替えは、いずみの過去を書かない代わりのオチの付け方だともいえるわけだ。辻褄が合わないのは別にいいとしても、ミステリアスな少女の過去というおいしい部分を捨てても、なぜいずみを国家権力と対決させようとしたのか、それが最終回に語られる石津とのイデオロギーの対立に見て取れる。

 石津の考えはあくまで国防に準じている。日本をドラスティックに変革するために必要な力。そのための強力な兵団を作り、石津が率いる人間が日本を率いる。そしてそのための人材は強くあらねばならず、その強さこそが日本を強くするという考えである。そのために石津自身は自分の体までささげたバイオフィードバックという技術にすがり、石津をもとめたR機関にそのありかを定めた。だが彼を引き上げた竜崎という官僚は、あくまでも自身の権力と財力を強化するために日本を裏から支配するという野望で動いている。竜崎はこの物語上は真の悪である。ここで石津は自分がこしらえた最強の兵士であるいずみに全権をゆだね、石津がやろうとしたことをいずみに託そうとする。だが多くを語らない石津の言葉からは、あまり多くの内容は読み取れないが、彼のカリスマ性は、竜崎ごときの愚者を淘汰するために、機関に所属していたように勘違いさせてしまう。ここにもすり替えが起きているのだ。
 一方のいずみであるが、いずみの怒りの矛先はあくまで自分に無実の罪を着せた張本人を倒し、自分の証を立てること、そして失われた3年間を取り戻すことである。物語の中では彼女の力は、それを邪魔する者にだけ向けられている。だがそこに自分だけではない、他にも多くの若者がバイオフィードバック実験の犠牲になっていることをいずみは知る。またバイオフィードバック実験の成功者である兵士には、同時にマインドコントロールを施され、人間として意思を剥奪されている。恵子がいずみと戦ったのもこれのせいである。そこでいずみの気持ちは本来の復讐から自分たちの自由を奪い、小さな世界での生活を壊し、愛するものを奪う敵として、石津や竜崎を定めている。ここにもすり替えが起きているのである。
 その互いのすり替えに気付かないまま、石津といずみの議論は平行線となるようでいて、なぜか竜崎を最後の敵として選択する。実になぜか最終目的が一致するパラドックスに陥ってしまうのである。

 だがここで「いずみ」という人間が戦ってきた時間を考えれば、石津のいうような「どんなものでも戦って勝ち取れ」という考え方ではなく、ただ愛することで事態を解決する方法として選んでいることのほうが物語としては感動的である。だがいずみは「勝ち取れ」という石津の言葉をまったく否定しない。彼女は「戦って勝ち取る」ものと「愛する」ことで守るという考え方の双方を受け入れることで物語を終結させ、どちらが正しいかという判断を視聴者に丸投げしたのである。

 ここが前作「スケバン刑事」シリーズと大きく異なる点だと思う。脚本で、あるいは演じたドラマとして答えを出すやり方ではなく、そこから一歩歩み寄ってより実在性の高い議論をしたかったという脚本家のねらいが、放送期間短縮という絶望的な状況の中で生まれたのではないかと想像してみるのだ。それは本作が「スケバン刑事」シリーズのように合金製のヨーヨーを投げて戦うという、現実的に不可思議な状況の中で、より強いメッセージを残そうとしたことに対して、よりリアルな戦闘シーンを作り上げ、たとえ地味でも堅実でいて現実味のある架空のドラマを作り上げようとした本作スタッフが示した、一種のアンチテーゼだったのかもしれない。

 合金製のヨーヨーを振り回し、虚構のドラマをリアルに埋め込もうとした「スケバン刑事」シリーズは、戦うことで現実と虚構をいったりきたりしながら、現実にある問題提起をしようとして見せた「少女コマンドーIZUMI」という作品を生み出した。前回のアイドルアクションドラマのシリーズは「花のあすか組」に引き継がれるが、そこで絶えてしまった。80年代末期という時期は、芸能界でもアイドルの路線が揺らぎ始め、歌手としてデビューするアイドルが少なくなりつつあった。そこには「おニャンこくらぶ」という破壊者が登場し、現実の隣にいるようなアイドルがもてはやされた時代である。そしてすでに虚構は存在せず、アイドルを通じて虚構を作り上げるという作業が、完全に終焉を迎えた時期である。同時にファンがそれを欲した事実が、アイドルという虚構を衰退させてしまったのである。そばにいて欲しい、出来るだけ近づきたいというファンの願いが、アイドルという手の届かない虚構を破壊するなんて、思ってもみなかった。現在アイドルといえばジャニーズ系の男性グループか、AKB48やハロプロメインの小奇麗な衣装を身に着けた、カリスマ性のかけらもない少女たちである。このような人材では本作や「花のあすか組」のようなドラマが出来ようはずもない。だがそれを願ってしまったのは誰あろう、ファンである私たち一般人であることは、肝に銘じておくことなのかもしれない。


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No title

はじめましてinvestと申します。
2回にわたる少女コマンドーIZUMI論読ませていただきました。

リアルではそういうドラマはあり、五十嵐いづみさんが出演、バズーカーを打ってスケバン刑事のような悪を倒すというのは知ってましたが、内容までは全くしりませんでした。

25年たったいま、はじめて全話とおしで見てこれは面白すぎるとおもいました。
IZUMIの二面性、専門的な武器、主人公の悲劇、BGMなどどれもツボにはまった内容でした。

管理人さまが書かれたコラム、もっともだと思います。

このドラマってレビューされてる情報がほんとにすくなくて、探すのに苦労しました。

私もレビューしてみたしたので興味があったらごらんクダサイ。

IZUMI
http://blogs.yahoo.co.jp/inosetakesi/folder/1063109.html
あすか組
http://blogs.yahoo.co.jp/inosetakesi/folder/1047517.html

No title

investさま
 コメントいただきまして、ありがとうございます。

 ちゃんと統計を取ったわけではありませんが、うちのブログでアクセス数が多い記事が、なぜか「少女コマンドーIZUMI」でして、どうしてなんだろうと思ってはいましたが、本当にネットの中でも記事も情報も少ないんですね。

 2回に別けて記事を書きましたが、1回目は主役いずみ役の五十嵐いずみさんに関する記事、2回目は物語に関する記事でした。いまさらになって読み返すと、どうして?と思わなくもない表現が多々あり、読みにくかったかと思います。にもかかわらず、コメントまでいただけるとは、望外の喜びです。

 そう、面白いんですよ、この作品!
 ちょっと難しいのは、本作の位置づけなんですが、アイドルを主役に据えたドラマではあるのですが、「東映特撮ヒーロー」や「大映TVドラマ」、「東映不思議ヒロイン」など、以外にも位置づけがあいまいなんですよ。しかもそのジャンルがいちいち客を呼びにくいので、どうしても敬遠されがちですが、ちゃんと見るとそうとう面白いですよね。

 investさんの記事も拝見いたしました。各話ごとの記事も楽しくって、素敵な記事ですね。私ならつっこみどころをあら探ししちゃいますので、私にはかけませんw 「あすか組」はいつかこちらで記事を書くときの参考にさせていただきます。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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