キカイダー01~仮面劇が語る神話~

 2010年6月11日に名優・池田駿介氏がお亡くなりになった。東映ニューフェイス第10期生であり、1963年に映画デビュー。数々の映画に出演するバイプレイヤーでありながら、「帰ってきたウルトラマン」の南隊員、「緊急指令10-4・10-10」の電波特捜隊の花形などの多くの特撮作品に出演された。今回ご紹介する「キカイダー01」という作品は、氏が主人公イチローを演じて主演した作品である。今回は個人を偲びつつ本作の魅力がお伝えできれば幸いである。

<永遠なる池田憲章氏の筆致>
 正直申し上げて本作については語りにくい。なぜかと問われれば、まず最初に私自身に本作の魅力を伝えてくれたのが、「アニメック」で連載されていた「日本特撮映画史 SFヒーロー列伝」を著した池田憲章氏であるからだ。氏の語り口のすさまじさは、以前「アイアンキング」を扱った記事でもご紹介した通りで、ともすれば作品以上に作品を雄弁に物語ってしまうほどの熱量で執筆されているのである。この語り口に私の筆致が迫れるなどと思っているわけではない。本作については、本作の後半に登場する、ビジンダーやワルダーのエピソードをピックアップしたうえで、人間の心を持たないロボットが人間になろうとするが故の「人間ドラマ」が展開されているとして紹介されている。私はこの意見を真っ向否定するものではないのだが、この論旨をもう少し展開させてみたいと思ったのである。はたして池田憲章氏の筆致にどこまで迫れるか。今回はその個人的な挑戦でもある。
<「01」のドラマ>
 「キカイダー01」は好評をもって最終回を迎えた前作「人造人間キカイダー」の後番組として、1973年に放送を開始した。現在では信じられないことであるが、この作品は現在のテレビ朝日系列の土曜日8時台に放送されているのである。裏番組は当然「8時だよ!全員集合」。当時の化け物番組の代名詞的番組である。この時間にあてて放送されたのがキカイダーシリーズであり、「デビルマン」や「キューティーハニー」であったのである。結果的な話を申し述べれば、私自身当時は「全員集合」を見ており、キカイダーやデビルマンは夕方の再放送で見たクチである。
 物語はキカイダーのラストで華々しく死んだと思われていたハカイダーが、プロフェッサー・ギルの脳を移植されて復活。同時にダークの擁する3人の科学者の脳をブルー、レッド、シルバーの3人の同型機に移植し、「ハカイダー部隊」として活動を開始するところから始まる。その目的は世界征服であるが、そのためには記憶を失った少年・アキラが必要だと言い、アキラ追撃を命じるハカイダー。そしてアキラにハカイダー部隊の魔の手が伸びようとしたその時、とある寺に安置されていた仁王像の中から、キカイダー01は復活を遂げる。
 光明寺博士によりキカイダーのプロトタイプとして制作された「01」は、太陽電池をエネルギー源として活動するロボットであり、キカイダー・ジローのような「良心回路」は持ち合わせていない、正義の戦士であった。彼は光明寺博士のプログラムに従い、世界に闇に閉ざされんとするときに復活したのである。そしてキカイダー01の戦いの日々がスタートしたのである。

 当初、ハカイダー部隊が追っていたアキラの争奪戦に終始していた戦いであるが、1話から登場したアキラの背中に隠されている設計図とそれにまつわる謎を追いながら、10話でハカイダー部隊は壊滅。時を同じくして登場した世界大犯罪組織シャドウの先兵・シャドウナイトの登場により、01対シャドウの戦いへと移り変わっていく。その中でアキラとアキラを追う謎の女性リエコ、そしてアキラの兄であるヒロシが登場する。そしてアキラ・ヒロシ兄弟に隠されていた秘密とは、プロフェッサー・ギルが残した巨大破壊兵器「ジャイアントデビル」の設計図であったが、これによるシャドウの世界征服計画は、キカイダー兄弟の手により粉砕される。
 後半からは目的を同じくするハカイダーがシャドウと合流、世界征服を目指しながらもキカイダー01抹殺のために、さまざまな作戦やロボットを登場させる。ビジンダーやワルダーが次々に登場し、01抹殺を図るものの、ビジンダーは不完全ながら良心回路をセットされて正義のロボットとなり、ワルダーは01との一騎打ちに敗れる。そしてキカイダー兄弟とビジンダーの協力によりシャドウは壊滅し、キカイダー兄弟は旅に出て終幕となる。
 池田氏の「SFヒーロー列伝」では、本作の魅力を2回に分けて余すことなく伝えられている。前半では前作の人気キャラクターであるハカイダーを中心に物語を語り、後半ではビジンダーおよびワルダーのエピソードを中心に語っておられる。特に後半で取り上げられているビジンダーとワルダーについては、良心回路を取り付けられた故に悩み始めるたり、人間の青年に想いを告げられるビジンダー、そして暗殺ロボットであるが故に善悪の判断ではなく“生業”として戦うワルダーに生まれたビジンダーへの淡い感情などをとりあげて、これらの物語をして人間となんら変わらないロボットたちの葛藤のドラマを、池田氏は「人間ドラマ」と称したのである。

<仮面劇の構造>
 紙面に限りがあるうえ、物語の紹介にできるだけ行を費やしているとはいえ、池田氏の述べる「人間ドラマ」という結論は、いささか急すぎるような気がする。
 アキラやヒロシ、そしてリエコやミサオという人間の登場人物が全般に登場するとはいえ、基本的にはキカイダー01、ハカイダー、ビジンダーなどのキャラクターが織りなすドラマである。たとえ人間のキャラクターとしてイチローやマリが登場するが、それらはみな「ロボット」なのである。つまり本作はこうしたキャラクターが織りなすドラマを中心とした「仮面劇」なのである。ここでさらに注目したいのは、それぞれのキャラクターの立ち位置である。01=イチローは、前作「人造人間キカイダー」の主人公・キカイダー=ジローのような良心回路を持っておらず、完全に「正義のヒーロー」として設定されている。その行動規範が「正義」に基づいており、彼の行動はともすればあまりに実直であるし、その剛性な判断は時に単純明快さをさらけ出す。だがそれをして相手に決して不快感を与えない清潔感があるのは、演ずる池田氏の演技があってのことかもしれない。蛇足を承知で横道にそれるが、生前池田氏は原作漫画での陽性でまっすぐな01=イチローを見て、自分が番組で演じたイチローにずっと悩んでいたらしく、石ノ森章太郎氏に面会した際は、自分の演技の不手際を泣きながら詫びたそうである。それを石ノ森氏は非の打ちどころのないイチローの演技を褒め称えたという。池田氏の演技があってのイチローの性格であることが伺えるエピソードである。
 一方で敵役であるハカイダーにしても、犯罪組織シャドウのビッグシャドウやシャドウナイト、ザダムにしても、悪役である己の役目をわきまえており、柔弱な心持など微塵も感じさせない。ハカイダーに至ってはかつての「悪のヒーロー」的な要素をとっぱらい、どんどん小悪党化していく。それはハカイダーの重要パーツである頭部に治められた脳が、光明寺博士のものからプロフェッサー・ギルのものに入れ替わったことに起因している可能性がある。こうした善悪の二項対立がまず前提としてあり、両極端に位置する。そしてこれにビジンダーやワルダーがこの二極の間で揺れ動くことで、本作のドラマが進行するのである。

 それまでハカイダー部隊、そしてシャドウが送り出す怪ロボットと戦い、悪の組織が企てる様々な世界征服作戦を粉砕してきたキカイダー01であるが、30話「悪魔?天使?ビジンダー出現」において、シャドウの01抹殺作戦としてビジンダー=マリが登場する。人間体の時は天使のような微笑みをたたえ、チェンジしてビジンダーになると悪魔のような強さで01に迫る。そして人間体の時にザダムにより激痛回路を入れられることで、マリの胸は激しく痛みだす。そしてマリの服の第3ボタンに連動して仕掛けられた核爆弾が爆発する仕組みになっている。激痛に苦しむマリの姿を解放しようとする01の優しさに付け込む作戦だったのだ。だが31話でイチローにより取り付けられた良心回路の働きが、シャドウに作られたロボットである出自と正義の心に挟まれて、中途半端な改造人間として生まれてしまったことに悩みながら生きていくことをマリに選択させるのである。

 その一方で01抹殺に幾度も失敗しているビッグシャドウは、業を煮やして01暗殺用のロボットを呼び寄せる。その名は「ワルダー」。機関銃や鎖分胴が仕込まれた愛刀を用いてライバルである01に戦いを挑む猛者であるのだが、その一方で犬を怖がるという癖を持つロボットである。なぜなら「自分には善悪の判断がつかないのに、犬は自分の判断で善悪を決めることができる」という理由で、犬を怖がっているのである。彼はおそらく出資者の命令次第で暗殺を請け負い、その契約を果たすためだけに作られたロボットであり、ことの善悪を判断する権利を与えられていないようなのだ。だがここで「絶対善」としての01の戦う姿を見て、また悩みながらもシャドウに反抗するビジンダー=マリの姿に心を打たれ、ワルダーは自分の判断のよりどころを欲して、ビジンダー=マリと文通をしてマリから学ぼうとするのである(38話)。ワルダーは01と幾度も戦うながら、人間の青年に想いを寄せられるマリに横恋慕したり(43,44話)、シャドウの開発した影法師ロボット作戦(本体と反対の性格の影ロボットを用いて世界を混乱させる作戦)でも、善悪の判断のつかないワルダー影ロボットができてしまったり(44話)と、ワルダーは自分の良心のなさを露呈させていく。だがワルダーはもう一つのどうしようもできないマリへの恋慕をかかえながら01と戦い、そして破れるのである。それはまるで無敵の剣豪が、それまで知らなかった感情を得て人間的な弱さをさらけ出すのに似ているのである。

<「01」の神話性と脚本家・長坂秀佳>
 先に述べた対立軸を考えてみると、「正義」を標榜する01と、「悪」をうそぶくハカイダーやザダムの間を、行ったり来たりすることで、ビジンダーやワルダーが揺れ動く。それは人間が犯罪を犯しながらも、自分の罪を悔い改める姿を想像させる。そしてそれは「神」を名乗りながらも実に人間的な欲望を持ってさまざまなエピソードを彩る、ギリシャ神話の神々にも似ているのである。そう気付けば「キカイダー01」という作品が、「ロボット」というキャラクターを模して描かれた、ロボットによる「神話」だと言えないだろうか。一見単純なほどくり返される善悪の物語は、ビジンダーやワルダーという名キャラクターを得ることで、人間ではなしえない「神話性」を獲得していく。前作「人造人間キカイダー」で展開された悩める青年像をクローズアップした物語は、「仮面劇」という特殊な空間をブラウン管に現出させることで、「神話」となってテレビの前の子供たちに教訓を残していったのではないだろうか?

 本作の脚本を書いたのは長坂秀佳氏。前作でもメインライターを務めたが、他にも「イナズマン」、「イナズマンF」、「快傑ズバット」を経て、「特捜最前線」などの刑事ドラマを手掛ける。また「弟切草」などの小説やホラーテイストのゲームのシナリオ、2時間ドラマの脚本などで、現在も活躍される脚本家である。その作風は徹底してエンターテイメントよりでありながら、そこに設定されたテーマを完遂させるために全力で執筆し、時には些細な設定を切り落としてでもテーマを完結させることを優先させる脚本家だと感じる。本作でもその作劇手法は変わらない。一見するとターゲットである子供を小馬鹿にしたような単純な善悪の物語が紡がれる場合もあるが、それこそは脚本家・長坂秀佳がテレビの前の子供たちに真摯に向き合った結果として、これ以上のない程の教訓を込めて「神話性」を獲得していったのではないだろうか?

 さて、本来なら前作「人造人間キカイダー」を紹介してから本作の紹介に流れたかったのであるが、現在でも人気が高く、「SFヒーロー列伝」の連載においても、2度(2度目は4回に分けて詳細に語られた)に渡って語られている。私は「キカイダー」が大好きであるが故に、これを超える筆致や情熱で「キカイダー」を語ることができそうにない。また悲しくも先ごろ物故された池田駿介氏に、ささやかながら本記事をささげたいと思ったのである。本作を振り返り、DVDや周辺書籍などで池田氏の人柄に触れながら、今はただ静かに故人を偲びたいと思う。


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今回触れませんでしたが、渡辺宙明氏のBGMあってのキカイダーシリーズでもあります。
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コメント

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No title

できれば、01のあのハカイダーは光明寺製作オリジナルではなく、
ダーク製量産型であったが故のダメさであったと信じたいです。
オリジナルと違って無意味な変身機能や合体機能があったりとかしますし。

No title

うめさん
 アニメ版と違い、ハカイダーの量産型って描写が、実写版にはないのよね。
 でも無意味な機能は、ギルっぽいんじゃないかと。
 コメントありがとうございました。

No title

あの、ハカイダー部隊が壊滅するのは10話ですよ。

No title

なお様

 ご指摘ありがとうございました。ただいまDVDで8,9,10話を見直しました。ハカイダー部隊の壊滅は10話でした。
 記事を書くに当たって、メモを作っていたのですが、そのメモにも10話と記してありまして。なんでかなーと考えておりましたら、8話ってハカイダー四人衆がガッタイガーになって01に負けてますよね。漫画の「人造人間キカイダー」だと、あのガッタイガーがキカイダー兄弟に負けるところで、ハカイダー部隊が全滅し、ハカイダー1体になるんですよね。その記憶が強すぎたのかなと。

 ま、言い訳ですけどね・・・・。申し訳ありませんでした。

はじめまして

初めてコメントします。特撮大好き人間の鷲尾飛鳥です。見るだけでは飽き足らず、自分でヒロインを設定して、ヒロイン小説をすでに2作書き上げました。

No title

鷲尾飛鳥さま
 コメントありがとうございます。
 そうですか、そうですか。せっかくですので、ブログなどで発表されてはいかがでしょうか? 私も拝見してみたいです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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