文化部漫画の文脈~「とめはね!」や「ちはやふる」など~

 文化部。運動部ではなく文化部。中学や高校生時代に体育会系の部活動に所属していなければ、帰宅部か文科系クラブに所属していたはずだ。その昔、野球部やサッカー部、柔道部、剣道部などがメインをはるマンガはいくらでもあった。けど文化部が主役となるマンガはものすごく少ない。私の知る限り「究極超人あ~る」ぐらいのものだろう。いやもう実際他に知らないし。
 ところがである。最近このジャンルが増えに増えている。ここ1年のアニメ業界最大のムーブメントになっている「けいおん!」は、まさにこれに相当する。他にもいろいろある。例えば演劇部を舞台にした「ひとひら」、世界設定に無理はあるが麻雀を扱う麻雀部に所属する少女たちの物語「咲-saki-」なんかもある。なぜか少年誌ではなく青年誌や女性誌で受けていることも、注目に値する。今回は少し特殊な部活動である「書道部」をあつかった「とめはね!」と「競技かるた」を扱った「ちはやふる」を題材に、「文化部漫画」の成り立ちについて考えてみたい。

<文化部漫画前史>
 文化部漫画の起点があくまで私の主張通りに「究極超人あ~る」(ゆうきまさみ著)だとしたら、それ以前にこうしたものがなかったかといえばウソになる。「文化部」というジャンルを取っ払えば、基本的に「あ~る」は「学園コメディ」というジャンルになる。学校を舞台に、そのうちの生徒が圧倒的なキャラクターを持つが故に繰り広げるコメディは、その昔「週刊少年チャンピオン」に掲載されていた「ゆうひヶ丘の総理大臣」や「らんぽう」、「マカロニほうれん荘」などにたどりつく。また「週刊少年ジャンプ」に掲載され、」テレビアニメでも人気を博した「ど根性ガエル」もそうなるだろう。ちょっと変わったところでいけば、同じジャンプに掲載されていた「ストップ!ひばりくん」なども学園コメディである。文化部漫画の前にはまず「学園コメディ」というジャンルがあるのだ。
 もうひとつ少年誌をにぎわせていたのは「スポーツ根性もの」、いわゆる「スポ根」ものである。これについて説明が必要とは思えない。「巨人の星」や「ちかいの魔球」、「アストロ球団」などの野球漫画をはじめ、「キャプテン翼」や「シュート!」などのサッカー漫画、「スラムダンク」などのバスケットボールや「BAN BON!」などのバレーボール、「あしたのジョー」や「がんばれ元気」、「あしたの一歩」などのボクシング漫画など、このジャンルは枚挙にいとまがない。こうしたマンガが学校の放課後を彩るものでありながら、学園の枠すら堂々と越えてくるあたり、マンガというジャンル自体に広がりを見せた証拠である。あだち充はこうしたスポ根に恋愛の要素を持ち込み、「タッチ」や「陽あたり良好」などをヒットさせる。これもまた時代の転換期である。

<文化部マンガの文脈>
 こうした下地ができていたマンガの世界に、「職業」というジャンルを持ち出して、できるだけ狭いジャンルをマンガで描こうとしたマンガが現れる。一つには「食」を1ジャンルとして成立させた「美味しんぼ」や「クッキングパパ」、「ミスター味っ子」などがそうだ。いずれも大人気となりアニメ化されている。ある特定の人々に、無意味に料理の知識が備わっているのは、これらの作品のためである(←オレ)。
また「ファンシィダンス」の住職、「Bar.レモンンハート」や「夏子の酒」のお酒、「働きマン」のサラリーマンなど、「職業」にかかわらず、とにかくワンジャンルを選択して物語を形成するマンガが人気を博す。これは拡大する物語を消費し続けた結果、より細かく狭いジャンルを選択して、そこに活路を見出したマンガ界のあがきだったのかもしれない。だがこの時期に見出された活路は、人の数だけあるあまたの職業や、人間の興味の範囲を受け入れることで、さらにマンガの範囲を拡大させ、マンガの中で描かれた物語が収束しそうになるのを防いだように見えたのである。
 こうなるとどんな世界にもアンタッチャブルなジャンルがあるもので、部活マンガも突っ込みどころを探し始める。それが昨今のマンガの文脈だと言える。つまり「学園コメディ」というジャンルの流れに、いままでアンタッチャブルだった「文化部」に注目しだし、この展開が多様化し始めたというのが文化部漫画の文脈なのだ。もう1ジャンル考慮すれば、「音楽」というのも重要な文脈である。以前紹介した「ピアノの森」、「のだめカンタービレ」、「BECK」、「デトロイト・メタル・シティ」などがそうだ。

<文化部マンガの最前線>
 つまるところ「文化部マンガ」というのは収束できないマンガの最先端であり、まだマンガ界が触れていない余白を塗りつぶす行為だとも言える。だがその一方で、はたしてそのワンジャンルが物語を構成するだけの強い吸引力があるかどうかを試されるのである。
 「とめはね!」という作品があつかう「書道」、それも文字を書くことをパフォーマンスとして演じる部分を加味された上での「書道」というものを扱っている作品である。この作品の肝が、字を書くこと以上に、文字を書くために、私たちが知る以上の大きな動きを必要とするところである。「とめはね!」ではライバル同士となる2つの高校の書道部が対決するエピソードを基本に置きながら、オーソドックスな「書道」についてもきちんと開設を加えたうえで、パフォーマンスとしての「書道」を動きの中でうまく見せている。そのダイナミックな動きの作画を見ていると、ふと本作がラブコメ要素すら含まれる「学園物」だということすら忘れるほどである。だがこのワンジャンルを物にした本作は、今年の正月にはNHKにおいてドラマ化されており、人気のほどがうかがえる。
 一方の「ちはやふる」については、「競技かるた」である。面白いのはすでにある部活に主人公が参加するのではなく、主人公が「競技かるた」に夢中になり、まわりを巻き込むことで、高校に「かるた部」を作るというくだりがある。しかもこの「競技かるた」は、私たちが予想するよりもはるかに体力も知力も運も左右する競技であり、きわめて「熱い」。この「熱さ」ゆえに、物語は「少女マンガ」の枠を遥かに超えて、「スポ根マンガ」と化している。しかも主人公・千早は自分では気づいていないが、非常にかわいい。しかし彼女自身は自分のその付加価値をまったく気にしていない。言ってしまえば彼女は劇中で非常にモテるのだが、その一方でまったくの変人扱いされてもいる。だから千早を囲む二人のいい男の子たちとのラブロマンスも今後控えているだろう。まこと貪欲な作品である。「競技かるた」に限っても、ライバルであったものが時を経て仲間になり、ともに大会を目指しながら、千早はさらに高みを目指す。その過程でライバルが登場し、その都度くじける千早は打開の道を模索し、自分の信じた道を突き進む。そしてその姿は何を言わずとも仲間を奮い立たせるのである。これどんな「巨人の星」? 冗談ではない、少女マンガでありながらド少女漫画の王道「ガラスの仮面」にも肉薄するほどのスポ根マンガになりつつある「ちはやふる」なのである。

<おわりに>
 現在の文脈で考えると、やはり「けいおん!」がスポ根方面ではなく、むしろゆる~い方位面に向かっている。ある意味で「究極超人あ~る」のような学園コメディであれば、「けいおん!」はまさしく「あ~る」の直系のような気もしてくる。逆に「部活」にこだわらなければいくらでも「学園コメディ」はあるわけだ。ただ人気の文脈ということでいけば、「けいおん!」や「ちはやふる」、「とめはね!」の人気のほどが理解できる。「とめはね!」は今年1月にNHKにてドラマ化された。配役によるキャラクターの再限度が異常なまでに高く、見ているだけで楽しいドラマであった。そう考えると現在の文脈である「文化部漫画」には、映像化について障害が少ない。SFのような荒唐無稽さもなく、特殊な設定も必要ない。映画の世界ではすでにこの流れは訪れている。「スイングガールズ」のような音楽もあれば、俳句の高校生大会、「ロボコン」に出場する高校生など、いくらでもある。映画の流れでもこうであるのだから、マンガやアニメの世界もこれにならうのも当然だと言える。どちらが後先という話ではなく、こうしたジャンルをまたいで影響しあうのが、サブカルの世界のありようであることが、この1件でもよくわかる。その反面、荒唐無稽さが売りのSFやロボットもの、ヒーローものの凋落は著しい。これも比較の問題として考えてみれば、残念ながら理解できる話なのである。

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