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堀江由衣と平野綾をめぐる冒険~たった二つの冴えたやりかた?~

 前回、雑誌「CUT」をご紹介した折、「アニメと音楽」の話について触れた。それはアニメと音楽の持つ親和性もあるけれど、それ以上にバックヤードにいる声優さんの存在が大きいことは、いまさら指摘するまでもない。
 ここでもう一つ気になるのは、「アニソン」というものの質が変化している事実である。「アニソン」の範疇がものすごく広がってきている気がするのだ。それまでアニメという作品が前提としてあり、その主題歌や挿入歌、キャラクターソングなどのことを指していた「アニソン」という単語は、より広義になるとアニソンを歌っていた歌い手による、アニメを前提としない楽曲までを含むようになってきた。そしてアニソンの歌唱が声優の手により歌われたことは、声優をスターに押し上げる。音楽が声優の人気を後押ししているのであるが、人気の声優については「歌手」という側面が必須になってきている。現在人気の女性声優の多くがCDをリリースしている事実を考えれば、その重要性がお分かりいただけるだろう。とはいえ、一朝一夕でこのような事態になったのではない。現在のような状況が発生するためには、「声優ブーム」と「アニソンブーム」という二つの潮流が必要だったのである。

<声優ブーム前史>
 一口に「声優」と言ってはいるが、その前身はラジオドラマの演者である、放送劇団出身の俳優さんたちである。当時は各放送局が放送劇団を結成し、そこに専属の役者を置いて囲い込むことにより、自社のラジオ番組を担当させたのである。また日本にも洋画が流入し始め、現在のような字幕を読む習慣がなかった頃は、アフレコを行い日本語音声を作り出していた。こうした作業を行う俳優さんたちを、「アテ師」と呼んだのが、いわゆる声優の始まりだそうである。これは1950~60年代の話。現在「大ベテラン」とされる大御所の声優さんが「声優」という職業区分を嫌うのは、この「アテ師」の仕事があまり評価されなかったことに一因がある。また「自分はあくまで役者である」という自負がある方ならなおさらだろう。当時は録音技術が未発達であったから、ラジオの放送などはすべて一発本番。大ベテランの方々の多くのエピソードは、これに起因することが多い。だが当時人気を博した映画の吹き替えをする俳優さんは、「この人ならこの役者」という固定された配役があり人気を博す。例えば「クリント・イーストウッド」の山田康雄氏、「アラン・ドロン」の野沢那智氏などが代表だろうか。これによりささやかながら最初の声優ブームが到来する。そして1963年に国産アニメ第一号「鉄腕アトム」が誕生する。だが「声優」の認知度はまだ低い。
 そして1977年に「宇宙戦艦ヤマト」の劇場編集版が公開されるや否や、第一次アニメブームが到来を告げる。それは同時に男性のヒーローを演じた声優さんを主体とする「第二次声優ブーム」だといっていい。ロボットアニメで数多くの主人公を演じた神谷明氏や富山敬氏、森功至氏、三ツ矢雄二氏などに人気が集中した。そうそう忘れてはいけないのが人気男性声優によるユニット「スラップスティック」があった。また声優さんによるアニメとは直接的に関係なくトークを繰り広げる、いわゆる「アニラジ」も、このころに誕生している。音楽やラジオなどの現在でも人気を博しているツールの多くは、この時期に集中して誕生しているのである。
 そして迎える90年代の「第3次声優ブーム」は、「女性声優」が主体となる。その萌芽は80年代にすでにあり、ロボットアニメが主体だったこのころのアニメに登場した数々のヒロイン役を演じた女性声優に注目が集まりだす。これが一変するのが1992年に登場した「美少女戦士セーラームーン」で主役5人(三石琴乃さん、久川綾さん等)を演じた声優さんたちである。現在ではすでにベテランとなっている彼女たちであるが、その出自の多くは「セーラームーン」やその類似作品である「美少女戦士もの」に出演した女性声優さん、そしてその傍らで実力を発揮し続けていた「林原めぐみ」さんたちである。声優による歌唱アルバムはこのころに徹底的に普遍化していく。それまでこうしたものと縁のなかった声優まで駆り出される。またアニメ作品とのタイアップにより、番組の名前を冠したキャラクターソングビジネスが定着していく。同時にイベントにおける声優の歌唱も一般化していき、ロボットアニメでは当たり前であったキャラクター商品ビジネスは、思いもかけない方向で展開し、番組の人気のバロメーターとなる。この現象は「新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始とリンクするように拡大し一般化していく中で、第3次声優ブームは本格化する。
 一時的にテレビアニメは本数が制限されることで沈静化を余儀なくされるが、その一方で不思議な現象が起こり始める。「アニソン」に注目が集まりだすのである。特に影山ヒロノブ氏を中心とする熱きアニソン歌唱集団「JAM Project」や、アニソンを「メタルロック」調で歌いきる「アニメタル」などの登場により、過去のアニソンががぜん注目を浴びたり、現在放送中のアニメ主題歌が脚光を浴びるのである。この事象の小さなきっかけも、「エヴァンゲリオン」であった可能性は高く、いずれにしても作品の質の一部として主題歌などの楽曲が注目されることになる。「音楽」というツールに反応し、キャラクターソングも引き上げられることになるが、より注目すべきはこうした楽曲を中心としたイベントが集客力を持つことに、作り手が気付き始めたのである。こうした流れに、これまでアニメの主題歌を歌ってきた声優なども影響を受ける。この時期、音楽で声優の世界を牽引してきた人物を上げるとするならば「林原めぐみ」と「椎名へきる」だろうか(実はこのころの作品群を聴き過ぎていて、私には特定できない)。こうして90年代後半からゼロ年代にいたる文脈は、すべて出そろったことになる。それは「女性声優ブーム」という流れと「アニソンブーム」という流れの2つの奔流なのだ。
 
<堀江由衣というケース>
 ではここ10年の功労者を上げるとするならば、誰だろうか? 「CUT」誌ではNHKの音楽番組プロデューサーにインタビューを敢行する。その記事の中では水樹奈々、堀江由衣、田村ゆかり(少し離れたところに坂本真綾)だという。この3人はほぼ共通しているのは、声優としての活動よりもやや音楽に重きを置いているタイプだと思われる。またその売り方はかなりまっとうな「アイドル道」に近しい。つまり「アイドル声優」を売り出すやり方なのだ。例として「堀江由衣」について考えてみよう。

 堀江由衣は1996年の声優オーディションをきっかけとして業界入りし、翌年のゲームで声優デビューする。時代はすでに「萌え」の時代である。アニメ作品も多様化し、不思議な等身で年齢不詳な少女たちが闊歩するいわゆる「萌えアニメ」が人気になりはじめる。彼女の声が求められたのは、ある意味で時代の要請であったのかもしれない。1998年にはデビューシングルを発売。「堀江由衣」の名前は次第に多くの作品で見ることが多くなるが、まだ代表作には恵まれていない。だが1999年に放送された「To Heart」におけるマルチという役を演じて、最初の人気に火が付き始める。その後2000年には、赤松健原作の「ラブひな」のヒロイン「なる」を演じることで大ブレイクする。その後もコンスタントに主役や脇役を演じ、現在ではバイプレイヤーとして主役を支えたり突っ込み役を演じたりしている。歌手としては2000年にファーストアルバム「水たまりに映るセカイ」をリリース。デビューイベントを成功させ、2002年には所属レコード会社主催のイベントに登場。同年自身の最初のライブツアーを敢行する。その後もアルバムリリースもツアーもコンスタントに行い、ラジオのDJとしても400回を超えて現在に至る長寿番組となっている。
 彼女の音楽を一言で言い表すなら、「徹底的に女の子」なのではないだろうか。例えばアイドルとしての松田聖子の楽曲を例に出すとすれば、彼女の楽曲は「松本隆」という作詞家によるプロデュースが基本になる。松田聖子の楽曲は堀江の楽曲同様「女の子の視線」が重要なキーワードになっているのだが、その実「松本隆」という一人の作詞家が松田聖子と言う一人の女性を通して様々な恋の物語を紡いでいるイメージであるのだが、堀江の楽曲はむしろ多くの作詞家が堀江の中に様々な「女の子像」を投影する形で、女の子としての「堀江由衣」の多面性を楽曲に託している。松田聖子の楽曲が曲単位でのドラマに閉じ込められているのに対し、堀江の楽曲の多面性ゆえに圧倒的大多数の女性像に結び付きやすく、受け取る側は「堀江由衣」の分化したパーソナリティを見ているような気にさせるのではないだろうか。「とらドラ!」の主題歌に使用された「バニラソルト」にしても「silky heart」にしても、作品のキャラクターソングではなく、作品のキーワードがちりばめられた別のエピソードの側面を持つ楽曲である。だが曲の中に「とらドラ!」という物語を思い起こさせると同時に、「堀江由衣」という人物の内面の葛藤のようにも感じられる歌詞なのである。こうした楽曲と歌う本人との錯誤感は歌い手にはつきものであるのだが、そのイメージ戦略としての堀江由衣の楽曲は、堀江の演じるキャラクターではなく、あくまで堀江自身であることが、彼女の楽曲群の最大の特徴だと思われる。そしてそれは「堀江由衣」という声優そのものの販売戦略なのかもしれない。

<平野綾というケース>
 一方で「平野綾」というのは、現在のアニメ業界の中では水樹奈々と人気を二分する存在であるのだが、水樹や前述の堀江とは異なる戦略で登場する。
 彼女は児童劇団に入った後、子役としてまずデビューする。その後2006年に声優として再デビューするのであるが、この年に得た役により、彼女の状況は一変する。ご周知の通りアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の主役「涼宮ハルヒ」に抜擢されるのである。彼女にとってこれがこれまでの人生の最大の転機であることはいうまでもない。彼女の最初のヒットはハルヒの主題歌である「冒険でしょでしょ?」だ。この曲の歌詞内容をよくよく見れば、ハルヒ自身がこれから向かおうとする不思議の世界にキョンを誘っている曲である。そしてこの視線はまさにハルヒというキャラクターが歌っているかのような歌詞である。「ハルヒ」というキャラクターは実に面白いもので、女性でありながら男性的な強さや強引さを併せ持つ、女性側から男性側に歩み寄るタイプの中性的な魅力を持っている。平野の場合、この曲が持っている「ハルヒらしさ」はイコール「男女両方の魅力を併せ持つ」というキャラクターの「核」が誕生する。実はこの「核」の部分こそが「平野綾」という歌手のキーポイントだ。実質的に「冒険でしょでしょ?」以降の彼女の楽曲には、すべからくこのイメージが付与されている。男女どちらともつかないジェンダーな魅力。そのくせ事物のすべてを肯定して見せる力強さがある。多くの楽曲がロックチューンであることも一因であるが、それ以上に歌詞内容は間違いなくジェンダーな魅力があり、同時に「応援ソング」的なメッセージをちらつかせる。これらがいずれも「涼宮ハルヒ」というキャライメージで固定化されていることがお分かりいただけるだろう。つまり彼女はひと山あてた「涼宮ハルヒ」のイメージを、いかに踏襲するかということに腐心した楽曲なのである。つまり「平野綾」の売り方は、最初にヒットしたキャラクターに依存した方法だったのである。

<声優歌謡の今後?>
 基本的には声優さんの売り出しかたは、この二つしかない。おそらくはこれ以降の声優さんもこれ以外の方法は思いつけないだろう。「けいおん!」の「放課後ティータイム」は平野綾の売り方のより具体的な例であるし、キャラクターを拒否すれば「スフィア」の4人組のような楽曲になるだろう。「スフィア」のメンバーはその一方で個々人でも活躍しているのだが、戸松遥にしても豊崎愛生にしても、彼女がたちが担当したキャラクターに依存する楽曲の範疇からは一歩も外に出ていない。一方で「坂本真綾」などは堀江由衣同様に、独自のセンスの楽曲の提供を受けている。彼女もまた自分が演じたキャラクターに束縛されない。そのことが彼女が多くの作家により楽曲を歌うことができる背景となっている。
 では今後の展開はと問われれば、彼女たちが「声優」という仕事を生業といている以上、演じるキャラクターに引っ張られないわけがない。一方それを「売り」としている声優さんもまた、そのキャラクターの人気に陰りがでてくれば、おのずと飽きられてしまうだろうことは、容易に予想がつく。平野綾がたとえ「ハルヒ」のキャラを引っ張っていたとしても、「アイドルロック」というジャンルでなら生き延びることができる可能性もある。歌手としての可能性を模索するのならば、別のジャンルを選ぶ選択肢だってある。彼女がこれから歌う楽曲の変遷は、彼女が選ぶ選択の結果である。
一方の堀江由衣については、あくまで楽曲すら彼女の一部なのであり、彼女が異なるジャンルへ転向することは、かえって人気を危ういものとしてしまうだろう。逆に彼女は今のやり方を、17歳(?)を越えてなお続けていくしかないのである。それは彼女のファンが最も望む姿だろうからだ。だがその一方で、アニメの声優としては「自分の核」となるキャラクターが持てないままとなることも考えられる。平野が「ハルヒ」で当てたのと違い、堀江に関して言えば現在主役の位置からは遠のいている。それでもバイプレイヤーとして位置しているものの、なかなか「化物語」の「羽川翼」のようなわけにはいかないだろう。
 こうなると演じるキャラクターをとるか、自分のキャラクターをとるか? どちらにしても声優という仕事を前にして、厳しい選択肢ではある。
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テーマ : 声優
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

非公開コメント

やはり人気のあるキャラクターと声優を同一視してしまうのはファンとしては仕方ない思いますが、飯島真理さんのようにどうしてもミンメイになりきれなかった方と同じ感じを平野綾さんには感じます。
自分が売れたのは「ハルヒのお蔭」であるのを認めたくないのでしょうが、周りは彼女にハルヒをやらせたいし、ファンもそれを望んでいます。

ハルヒのブームもいずれ去るときが来ます。
それまでは彼女にはハルヒをやっていてほしいのですが、自分を否定されているように感じてしまうのでしょうか、最近はハルヒから脱却したがっているようにしか感じられません。

その点、堀江由衣さんには感服いたします。

徹底するということはやはり難しい事なのでしょうか。

No title

とぴろさま
 コメントありがとうございます。
 平野綾嬢に関して言えば、彼女の目指していたラインと売り方のラインがほぼ同一線上だったのが幸いしているとしか思えない節があります。ただ彼女がこれまでと異なるラインを目指すつもりがあるのかどうか、忙しい彼女にはゆっくりとそれを考える余裕がないのではないかと推察します。

 飯島真理さんの場合は、シンガー・飯島真理として自分の進みたい方向性がはっきりあったのが、災いしたような例かもしれません。長いものには巻かれろ的に売れたとしても、長いものの側にしてみれば、人気に陰りが見えたタレントに執着する理由がないのも道理です。国外に脱出して心機一転を図ったのは、彼女にとっては大正解だったはず。まあ売りだそうとしていた会社にとっては、残念な話でしょうが(笑)。

とぴろさんが指摘されるように、「徹底的にする」ってやっぱり難しい。林原めぐみや堀江由衣の例は、レアケースかもしれません。これから登場する予備軍の女性声優さんたちは、はたしてどうなるのか?
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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